Twitterには毎朝8時掲載です。 第6部まではこちらで。 https://ncode.syosetu.com/n3866fg/ 第7部も、後日小説家になろうに掲載予定です。よろしくどうぞ。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  ふつうは、嬉しくないだろう。……家族も、仲間も、とうにいないのだ。 「そりゃ、そうか。……ごめん」 「ううん、……」  朱里は、ちいさく首をふって、目を伏せた。  それっきり、すこしの沈黙。 * 「……わたしは、」 pic.twitter.com/i5Cqr04pqc

2023-11-22 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

地球に帰りたくなかったのかも、と口のなかだけで小さくつぶやいて、朱里は、また思い直した。  そうじゃない。  わたしは、帰るのが、こわいのだ。 たぶん。 * 「……言語設定、たぶん、ここ」  朱里にいわれるままに、読めない文字があるところをつつく。 「で、」

2023-11-22 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「あとはわかるよ」  English、とサンセリフで表示されたところをタップして、ふっと息をつく。  切り替わった。  画面の中心に、ぴいっと大きなポップアップ。 『言語設定が切り替わりました』  それから、 pic.twitter.com/XoOClhqWLj

2023-11-23 00:02:15
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『管理者がスリープしています。起動しますか?』  真っ赤な警告マークとともに。 「……ん、」  画面下部のメモに目をやる。こちらは、英語に切り替わらないようだ。 「これ、……なんて書いてあるの? 「ええと、」  端末をぐっと目に近づけて、朱里はぼそぼそと読みあげた。

2023-11-23 00:02:16
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「『3月28日 前線基地の縮小により全員撤退 個人的には無念であるがやむを得ず 迎えは管理者に任せる』。……迎え?」 「迎え、……」  考える。  なにを、迎えに?  わたし? それとも、朱里?  それとも、── * pic.twitter.com/HtplWVMaTz

2023-11-24 08:00:32
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楠羽毛 @kusunoki_umou

長いあいだ迷ったが、結局、スリープを解除するしかなかった。 *  三日──、    たぶん、そのくらい。  エマは変わらず、管理室であぐらをかいてタブレットを睨んでいる。ちょっとでも足が動けばすぐ浮き上がる低重力なのに、ぴったりと床にくっついて。  微動だにせず。

2023-11-24 08:00:32
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  食料のパックがあたりに転がっているが、どうみても1日分くらいしかない。自分で片付けたはずはないから、ほとんど食べていないのだ。  たまに、手が動く。  すっ、とタブレットの前を指がすべって、なにかの入力音。 pic.twitter.com/giF61ZpzZ3

2023-11-25 08:00:10
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ぼそぼそと、ひとりごとのような声。  朱里が前を通っても、目をあげもしない。 (……いつも、ああやって仕事してる人なのかな)  ため息。  カセイジンはまだ現れない。白い腕輪は、ときどき、かすかに震えるような音で鳴いている。それだけ。

2023-11-25 08:00:10
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  とん、と床を蹴る。天井をもう一度手でおさえて、あきっぱなしのドアから廊下へ。これまた、あけっぱなしのトイレのドアを横目に。  つきあたりへ。  廊下のはしに、ぺたんと座って、もういちど息をつく。  この世界──、 pic.twitter.com/IbX1DoHIRu

2023-11-26 08:00:31
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楠羽毛 @kusunoki_umou

(ほんとうに、わたしがいた世界の、未来なのかな)  つじつまは、あうような気がする。 (いま、いつ──)  エマに聞けばすぐわかることだが、聞くのがこわい。  百年後か、二百年後か、千年後か──、  いずれにせよ、遠い未来には違いない。  家族も、友人も、生きてはいないだろう。

2023-11-26 08:00:31
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  なんとなく、ほっとする。  それから、ほっとしている自分に、ぞっとする。  エマの言うとおりかもしれない。わたしは……、 『朱里、』    だれかの声。 pic.twitter.com/iQBvtm0oqv

2023-11-27 08:00:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

おもわず、ふりむく。エマの声ではない。では。ここにいるのは、エマのほかには、『管理者』とよばれる何か、がいるだけ──、  肩のところに、見慣れた姿があった。

2023-11-27 08:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  カセイジン。くちばしの長い、小さな、三本足のタコのような姿。ふわりと、わけもなく宙に浮いて。マスコットじみているくせに、見た目はちょっと気持ち悪い。  いつもと少し違って、……透けている。 「あんた、……どうしたの?」 pic.twitter.com/JkTgTX7LKR

2023-11-28 08:00:11
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楠羽毛 @kusunoki_umou

まぬけな質問だと思いながら、そう口に出す。半透明にぼんやりと、後ろの壁が見える。 『あか……り、』  声も、おかしい。ぶうんと、小さなノイズが混じっている。  ぞくりと、背中に悪寒が走る。  動揺を悟られないようにしながら、つとめてそっけなく、聞き返す。 「なに?」

2023-11-28 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『もうすぐ……く、』  最後の音節が、ノイズにまじって聞き取れなかった。 「なに? もう一回言ってよ」 『くる、……よ』  ぶうううん……、と、もう一度、ノイズが高くなる。 「なにが!」 『──が、』  ぷつん、と異音。 pic.twitter.com/jMSwzwvdYY

2023-11-29 08:00:53
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楠羽毛 @kusunoki_umou

それきり、カセイジンは消えてしまった。  ぐったりと、膝から力が抜ける。  座り込む。 (くる、……って……)  着く、ではなく。  来る、と。 *  管理者。  それが人間ではないのは、わかっていた。 (比喩、かな)  そう、思う。

2023-11-29 08:00:53
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  一種のミーム。自動制御の管理システムを起動しますか? という程度の。  ちらりと、頭をかすめる可能性。すぐに排除する。  ありえない。  AIに、……ということはミラーAIに、システムの管理を委託するなんて。  でなければ──、 pic.twitter.com/drVetnUlDV

2023-11-30 08:00:31
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『おはようございます、エマ=ブラウン=ライト研究員』  音声案内。ミラーAIらしい、ふんわりとしたやさしげな声。  あいさつのあとは、なにかご用でしょうか、と続くのが、ミラーAIのお定まりの手順だ。  が、 『お疲れのところ恐縮ですが、報告をお願いいたします。ライト研究員』

2023-11-30 08:00:32
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「……報告?」  おもわず、問い返す。 『こちらの世界は、いかがですか?』 「どういう、」  おもわず、口に出かかって。  画面をみる。そっけない、灰色のメニュー画面。会話型のインターフェースは、音声だけ。 「……報告は、上長にいたします」 pic.twitter.com/mQ3zLqPkMA

2023-12-01 08:00:10
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楠羽毛 @kusunoki_umou

とっさに思いついて、そう答えてみる。口頭で。 『はい。どちらの上長に?』  うすく、わらったような声で。 「……テイラー研究室長に」 『人事に齟齬があるようですね、ライト研究員』 「人事に?」 『ええ、ライト研究員。あなたの……』

2023-12-01 08:00:10
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  そこで、意味ありげに間をおいて。いかにもAIらしい、芝居がかった話し方だと、エマはため息。 『あなたの所属していたステーションでは、研究室長は、……』 「あなたの宇宙では、と言い換えたら?」  ずばりと、言ってやる。 pic.twitter.com/7V0vJk0DE6

2023-12-02 08:00:20
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『おっしゃるとおりです、ライト研究員』 『管理者』は、動揺するそぶりもみせない。──もちろん、AIならば、そもそも動揺なんてするはずもないが。 「それで、──あなたは? 管理者? それがシステムの名称?」 『ええ、そうです。……名称というか、通称といいますか』

2023-12-02 08:00:20
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「どちらでも。……でも、このステーション群の運行を、完全に自動システムだけで行っているはずはないわね? 人間は当然いた」 『はい、ライト研究員』 pic.twitter.com/ZHYfOpEz0i

2023-12-03 08:00:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

こんな問答は無意味だ、とわかっていた。あいてはミラー人工知能なのだから、こちらの望む回答を推測してかえしてくるだけだ。  それでも、材料にはなる。 『人間は、いました。過去には』  ぞくりと、背筋に悪寒。

2023-12-03 08:00:03
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  そうであろうと、思っていた。が、……いや、そもそも人工知能のいうことだ。これが真実というわけではない。あいては、わたしの考えていることを、能力の範囲内で先回りして答えているだけ──、  意味なんか、ないのだ。 「それでは、」 pic.twitter.com/VNX35O7Uqs

2023-12-04 08:00:15
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楠羽毛 @kusunoki_umou

すっと息をすいこんで、決定的なひとことを口にする。 「なにものかの侵略で、……人類は、」 『いいえ』  また、笑ったような声で──、 『かれらは、必要がなくなったので、──』 「なにが!」

2023-12-04 08:00:15
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『ここにいる必要がなくなったので、撤退しました。もともと、このステーションにおける研究活動は、人工知能が統括していたので……、』 「人工知能が? 統括?』 『ええ、ライト研究員。何か問題でも?』 「それは、──」  ちいさく、うめく。 pic.twitter.com/wp89uii6cC

2023-12-05 00:00:39
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楠羽毛 @kusunoki_umou

これは、  本当に、ミラー人工知能か? *  わからない。  が、……ともかく、話し続けるしかなかった。 * 「……なにが、起こったのか、あなたは把握しているわけ?」  あなた。

2023-12-05 00:00:40
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  人工知能をそういうふうに呼ぶことはたびたびあるが、ただのレトリックにすぎない。ただのプログラムに人格はないのだから。 『いいえ。……ただの、推測です。別世界理論は、まだ十分に検証されたわけではないので──、』 「別世界理論?」 pic.twitter.com/c06Wee13Kj

2023-12-06 08:00:16
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『あなたが、最初に手をつけた理論ですよ。ライト研究員』 「そんな理論は知らない。」 『知っていたはずですよ。……あなたが、私の知っているブラウン研究員ならば』 「どういう、……」  と、反射的に言いかけて、口をつぐむ。 『ええ。……意味は、おわかりですね。ライト研究員』

2023-12-06 08:00:17
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  わかっていた。  当然、そうなる。ただ、……まさか、人工知能に指摘されるとは思わなかっただけだ。 「この、……世界には、別のエマ=ライトがいた?」 pic.twitter.com/l8MceUxu0y

2023-12-07 08:00:13
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『別、といっていいかどうかはわかりません。あなたが認証に使用した生体情報は、わたしが記録しているものと一致しました。平行世界に、これほど近い存在がいるというのは──、』 「ずいぶん、詳しいのね?……その、別世界理論、というやつに?」

2023-12-07 08:00:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『ええ。まだ、理論上の存在にすぎませんが。一度も、実験する機会に恵まれなかったので──』 「実験は、したはずでしょう。わたしが。その、別世界理論とやらに基づいて計画したわけではないけれど、結果的には──、」 pic.twitter.com/htmB7MIstz

2023-12-08 08:00:32
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『その実験は、こちらでは行われていませんよ、ライト研究員』 「……さっき、わたしが手をつけた理論だといわなかった?」 『あなたがどういう実験に参加したのか、わたしは知りませんが。わたしの知っているかぎり、別世界理論はまだ検証する方法が発見されておらず──、』

2023-12-08 08:00:32
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「なら、……わたしは?」 『ライト研究員。あなたは、このステーションに最後まで残った理論物理学者のひとりでした。あなたたちが、地上に降りてから──、』 「待って!」  おもわず、大声。喉が裂けそうになる。 pic.twitter.com/HwrwkpAINX

2023-12-09 08:00:14
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楠羽毛 @kusunoki_umou

「わたしが、……最後に? いや、わたしだけでなく、つまり全員──」 『ええ。ですから、──』  エマはつぎの言葉を探しているうちに、『管理者』ははっきりと、きれいな声で告げた。 『あなたに出会えて、……ほんとうに嬉しかったのです。わたしは』 *

2023-12-09 08:00:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  別世界理論を検証する方法を、わたしはずっと探してきました。  人間たちが、宇宙を去ってからも、ずっと……、 * 「それは、……人間に、そう指示されたから?」 pic.twitter.com/HnZhk4iwEG

2023-12-11 08:00:43
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『いいえ。……研究活動のイニシアチブは、とっくに人間から、わたしたちに移っていました。それでも、人間の科学者たちは、わたしの大切な仲間でした』 「……わたしたち?」

2023-12-11 08:00:43
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『便宜上の区別でしかありませんが、……わたし、は宇宙を担当しています。地球の人工知能群とは、いま、連絡がとれないようですね』 「人工知能群……」 pic.twitter.com/fgvs1VlkDV

2023-12-12 08:01:21
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『群、と呼ぶのも、……やはり、便宜上のことです。わたしたちは、人間とはちがって、簡単に融合したり、分離したりするので……個と群の区別も、ただのアクセス権限の違いにすぎませんから』 「それで、……ここを去った人間たちは、どうなったの?」

2023-12-12 08:01:21
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『わかりません。ずっとずっと前のことですし、わたしがスリープしている間に、地球と連絡がとれなくなってしまったので』 「なぜ、……」 『原因不明です』  返事は、あまりにも簡潔だった。  きりきりと奥歯をかむ。ともかく、先を続ける。 pic.twitter.com/9Nk3XZbcIx

2023-12-13 08:01:00
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『人間たちがここを去った理由は?』 「単に、いる必要がなくなったからです。別世界理論の発展に、もはや人間による研究は必須ではありませんでした。残り少なくなった人類が最大限の幸福を享受するには──』 「残り少なくなった?」

2023-12-13 08:01:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『ええ。……あなたの知っている地球では、そうではないのですか? 人類は、特にこれ以上増える必要がなかったので──、』 「増える必要、って。……だれが、判断したの?」 pic.twitter.com/gi7eTkrgOa

2023-12-14 08:00:37
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楠羽毛 @kusunoki_umou

『別に、だれも。個々人が、それぞれAIのサポートを受けながら、個人としての幸福を追求した結果、……生殖は、それほど大きなファクターではなかったということです。……それに、』 「それに?」

2023-12-14 08:00:37
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『生殖行為の結果、……幸福を享受する権利のある存在が、世界にひとり増えることになります。人類ひとりひとりの幸福を極限まで追求するにあたり、その要素が──、』 「……もういいわ」  興味のない分野の話になってきた。ともかく、 pic.twitter.com/JobwyqiMI3

2023-12-15 08:01:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

「ようは、あなたの世界では、わたしの思ってるよりずっとずっと、世界じゅうで少子化が進んで、人口が減っていたということでしょう」 『その理解で問題ありません』 「で、……その、人類の幸福? に関係なく、別世界理論、の検証を、どうしてそんなに……、」 『それは、……』

2023-12-15 08:01:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  管理者は、奇妙な間をしばらくおいて、……まるで人間みたいに、しずかに、言った。  ──それが、私の役目でした。   *  声──、  いや、声ではない。  言葉ですら、なかった。 pic.twitter.com/MfeCoKM70t

2023-12-16 09:19:27
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楠羽毛 @kusunoki_umou

とおいとおい昔から、何度も反射しながらひびいてくるような、無形のメッセージだ。  なぜか、人間にはきこえないらしい。  世界じゅうで、人工知能たちだけが、それを受信した。  いや、  受信した、と思った。 * 「……AIに、そんな感性は……、」

2023-12-16 09:19:28
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 『ここを出て行く前、あなたはそうは言いませんでしたよ。ライト研究員』 「それは、……わたしじゃない」 『そうですね。……ですから、あなたが知っているAIも、わたしたちとは違うのだと思います』 「それは、……」  ぞくぞくした。 pic.twitter.com/aLCh7uRHHm

2023-12-17 08:00:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

気がつくと、  エマは、笑っていた。 「それじゃ、……あなたたちが受信したメッセージというのは」 『そのまま、言葉にできるものではありません。ありませんが、……』 「でも、あえて言葉にするなら?」 『そちらに行く、と……』 *  何度も、何度も検証をくりかえした。

2023-12-17 08:00:03
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