Xでたまに書き連ねているSSSとでも呼ぶべき何か
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@kai3years

自分のそれとは色合いからして、あまりに異なるからだろうか。手の届く位置に頭があると、不意に、触れてみたくなるのは。「どうした」遠くから向けられる視線にも警戒を切らさないこの男が、自分の指には、無遠慮に髪へ挿し込むことも、許してくれる。

2023-11-06 12:01:13
@kai3years

目尻にかかる白髪を、耳へと架けるようにしながら、後ろへ。少し癖のある髪は、項のあたりで上向きに、泡立てきったクリームの先っぽみたいに跳ねている。わしゃわしゃと雑に掻き回し、掌をつつく毛先のちくちくとした感触を楽しんでいると、サンクレッドはくるりと振り返った。

2023-11-06 12:01:13
@kai3years

わざとらしく鼻先を撫でた両手が、ぞろりと前髪を掻き上げる。いつからかジャンドゥレーヌを呼ぶのもサボりがちになり、伸ばしっぱなしの黒髪は、時折、目を刺すようにもなった。それがごっそりと持ち上げられて、視界が一気に広くなる。中心にある男の顔も、普段より明るく、よく見えた。

2023-11-06 12:01:14
@kai3years

「お前」「ん?」「こうすると男前だな」「こうしなくても男前だろが」軽口を叩き合いながら、まじまじとこちらの顔を見るサンクレッドを抱き寄せる。「短くしてもいいんじゃないか」「すぐ伸びるのが面倒でなあ」「なら逆に伸ばしてから上げて、後ろで結えばいい」「ん、んー…?」

2023-11-06 12:01:15
@kai3years

考えたこともなかったが、それはなかなかの妙案に思えた。後ろへ伸びていく分には、視界をちらつくこともない。ジャンドゥレーヌの世話になる頻度を下げられるというのもいい。「…そうしてみるか」「ん」自分の案が採用されたことに対する満足か、あるいは恋人をさらに自分の好みにできる喜びか。

2023-11-06 12:01:16
@kai3years

ふっと笑ったサンクレッドにも、返礼として何か提案をしてやりたいとは思うものの、どうにも気の利いたことは浮かばない。「お前はいつも『今』がいいな」代わりに胸中を打ち明けてやると、サンクレッドはしゃっくりを寸前で呑み込んだような顔をして、僅かに目を逸らした。

2023-11-06 12:01:16
@kai3years

キスをしようと、ただそれだけで唇に指を当てたとき、サンクレッドは、ぱかりと口をひらいて見せることがある。まるで内部を、歯列を、舌を、すべて明け渡すかのように。誘い込まれるように指を挿れても、抵抗は返らない。熱い舌がねっとりとまとわりつくように絡んで、じゅう、と吸い音を立てるだけ。

2023-11-07 21:56:00
@kai3years

温かな口腔にうっとりしながら、柔らかい内壁を傷つけないよう、ゆっくりと指を動かすと、追い縋るように付いてくる。それでも弱い上顎をかりかりとくすぐってやれば、ん、と肩を震わせて、絡まっていた舌がほどける。いつも思う。感じやすくて、快楽に貪欲で、そこが愛しいと。

2023-11-07 21:56:01
@kai3years

ひらきっぱなしの唇が、端から唾液を溢れさせる。それを逃さず舐め取ると、首を捻ろうとする気配がした。もう指はいい、そんなところを舐めるくらいなら、こっちに欲しい。絡んだ視線は潤みながらも雄弁に訴えていて、逆らう理由もない自分は、指を抜き、代わりに吸い寄せられた。

2023-11-07 21:56:03
@kai3years

暗礁、魔物、今となってはずいぶん減ったが、海賊など。陸路に比べてぶち当たる頻度こそ少ないものの、海路における障害は、一つ一つが命取りだ。だからといって見張り役を、今は乗客でしかない自分が担う必要はないのだが、そこはさがというものか。自然と舳先に立ち寄って、サンクレッドは海を見る。

2023-11-08 18:15:48
@kai3years

オールド・シャーレアンへの旅路。特に感傷の類いはないが、久々だな、という気持ちはある。あらゆる意味で人間だということが疑わしかった師、そんな存在にサンクレッドより順応していた弟妹弟子たち。元気だろうか、と思うまでもない。元気でない方がどうかしている。「もう見えてるのか?」

2023-11-08 18:15:48
@kai3years

ゆっくりとした足取りで、隣に男が並んだ。「見える訳ないだろ。まだ二日はかかる」「それにしちゃお前が真剣に前を見つめてるもんだから」この英雄は、オールド・シャーレアンをはじめて訪れる。エオルゼアでの活躍も冒険者という職業も響いていないあの街では、あまり歓迎はされないだろう。

2023-11-08 18:15:48
@kai3years

それでも、新天地へ至ろうとする横顔は、期待に満ちていた。「楽しみか?」「そうだな」尋ねると、明快な答えが寄越された。「冒険者としても当然だが、リムサ・ロミンサからオールド・シャーレアン」そして、向けられた声に続いて、柔らかな眼差しがこちらを見る。「お前のルーツを辿るみたいで」

2023-11-08 18:15:49
@kai3years

「…たまにこっちが恥ずかしくなるほどクサいことを言うな、お前は」「愛の吟遊詩人だった男に言われたくないっすね」減らない口を塞ぐには、周りに人目がありすぎる。代わりにブーツの甲を踏み、ぐりぐりと踵を回してやったが、それさえも厚い革と金属に阻まれ、効果は薄かった。

2023-11-08 18:15:49
@kai3years

「おや、失礼いたしました。タタル嬢が朝食を用意してくださいましたので、お伝えに上がった次第。わざとではありませんので、ご容赦を」「おはよう、冒険者さ…お二人さん!お寛ぎのところごめんなさいね、会議が始まるわよ?」「おはよー、起きてるかわああああ!?見てない!何も見てないからな!」

2023-11-09 17:26:24
@kai3years

「おい、起きろ。集まれ、だそうだ」「失礼するよ。………。失礼したッ!」「レディに見せるものじゃないわね。二人ともまずは下着を穿いて。その後なら『おはよう』を受け付けるわ」「お二人とも、おはようございまっす!皆さんお待ちでっすので、早めにいらしてくだっさいね!」

2023-11-09 17:26:25
@kai3years

「…リーチかかったな」「やかましい」のんびりとほざいた男の鼻を、それなりの力で抓み上げる。いでで、と篭った声を出しつつ、裸の腰に廻した腕は解かないあたりが、いよいよ憎い。解放した鼻先も、すぐに髪へと埋められる。「残るはヤ・シュトラか」「それだけは…それだけは絶対に避けたい…」

2023-11-09 17:26:25
@kai3years

「ずっと同じこと言い続けてんな」そうだ。裸で抱き合ったまま、すぴすぴ眠っているところを、あくまで「英雄殿」を起こしに来たウリエンジェに、見られたときから。同じ轍は踏むまいと、強く決意したはずなのに、それを何度も繰り返す羽目になっている。決意とは何だったのか。

2023-11-09 17:26:26
@kai3years

「お前の寝心地がよすぎるのが悪い」「俺の何だよ。ベッド?腕枕?」「全部だ」「誘われてる」「誘ってない」今にもその気になりそうな男を、なんとか引き剥がし、ベッドから立つ。いい歳をした男同士の共寝など、見せたくも見られたくもない。それでもやはり、後ろ髪を引かれるような思いはある。

2023-11-09 17:26:26
@kai3years

「お前もさっさと起きろ」「へいへい」ずるりと遅れて起き上がるのは、爪痕、吸い痕、その他もろもろ、情事の名残を浮かせた体。見ているだけで心が昨夜に引き戻されるような気がして、顔を背ける。「俺のパンツどこ?」「俺が知るか!」声を張り上げ、やや強引に、空気を朝へと切り替えた。

2023-11-09 17:26:27
@kai3years

Q. ヤ・シュトラさんだけが遭遇してないそうでっすが、秘訣などあるのでっすか? A. サンクレッドが寝過ごす場所なんて、この世に一つしかないでしょう? わざわざ確認しに足を運ぶだけ無駄ではないかしら。彼が起きてこなかった時点で、推して知るべし、というものよ。

2023-11-09 17:26:27
@kai3years

「俺は、お前より先に死ぬ」身を寄せ合ったベッドの中で、睦言のように、予言のように、そして、確定事項のように、サンクレッドは囁いた。「その後、お前は『それなりに』でもいい、幸せになれるよな?」なめらかに動く唇はこちらのそれを掠めていたが、無理やり塞ぐ気にはなれなかった。

2023-11-10 13:55:08
@kai3years

「そうだな」代わりに、真摯な答えを。「なれると思う」考え、想い、抱き合う男に返してやる。「やりたいことなら、山ほどある。人生の目的にゃ事欠かないだろ。こう見えてモテない訳でもないしな。新しい恋人を作って、結婚して、相手がそれを望んでくれる女なら、子供を作ってもいい」

2023-11-10 13:55:08
@kai3years

絵本に描かれているような、ありふれた幸せは、想像しやすい。その中に置かれた自分はきっと、心から笑えているだろう。「幸せにはなれる。けどな」不穏を覚って強張った、蒼白い頬に手を当てる。「その幸せの、あらゆる瞬間を、俺は、叶うなら、お前と迎えたかったと思い続けるだろう」

2023-11-10 13:55:09
@kai3years

99%の真水に1%の海水を落としたとて、人は、それを飲めはする。飲んで、生きていけはする。「何処へ行っても、何をしても、もういないお前の影を見る」死なない限りは、生きていく。塞ぎようのない虚を抱きながら。「まあ…そういう『それなりに』でもよければ、幸せになってやるよ」

2023-11-10 13:55:09
@kai3years

サンクレッドはしばしの間、じっと、口を噤んでいた。琥珀の目が憐憫と自嘲を綯い交ぜにして、薄い涙の膜に灯りを反射し、幽かに光る。「…それは、」幸せなんかじゃない。震えた唇を今度こそ無理やり塞いで、言葉を止めた。いつか、立場を逆にしたとき、己がそれを言わないようにと。

2023-11-10 13:55:09
@kai3years

ガレマルドでの潜入任務中、湯を沸かすことは、禁忌だった。静寂のうちに起こせる火というものはこの世に存在せず、熱、湯気、音、匂い、それらすべてが、居場所を気取られる要素となるからだ。だから暖を「採る」ことはなく、専ら「失わない」ことに、サンクレッドは苦心していた。

2023-11-11 18:31:32
@kai3years

断熱効果の高い、それでいて動きを狭めない服を着込み、ないよりはマシな防氷剤を飲み、可能な限りの風を避け。それでも次第に失われていく体温は、糧食で補った。そのことを苦痛とは思わない。それはサンクレッドの役目だ。誰かにやらせるくらいなら、自分が負う方が気楽でもある。けれど。

2023-11-11 18:31:33
@kai3years

「ほらよ。お前の」差し出されたマグの上、たっぷりと煙る白い湯気。微かに交じる酒の香りは、大人だけの楽しみだ。覗き込んだマグの中身は、ただ透き通った紅い茶ではなく、ミルクを惜しみなく注がれて、柔らかな白にほどけている。「美味い」先に啜った男が、満足そうに目を細めた。

2023-11-11 18:31:33
@kai3years

サンクレッドもマグを傾け、口に含み、喉を通す。「確かに」滴り落ちた雫が、体を中から温めていく。血の巡りに乗るかのように、四肢を、先端まで、緩めていく。「幸せだな」「大袈裟な奴だ」なめらかに動く舌を回して、憎まれ口を叩いてやる。そんな自分を眺めながら、男は、さらに目を細めた。

2023-11-11 18:31:33
@kai3years

「やめて!お願い!」「サンクレッド!」「お気を確かに!それ以上は…!」耳鳴りでしかなかったものが、次第に言葉の形をとる。どうやら自分に向けられている。そして、あれは、仲間の声だ。「あ…?」小さな虫が散るように、意識の靄が去っていく。それでも残る混濁は、拳の痛みがついに晴らした。

2023-11-12 10:37:01
@kai3years

角度も何も考慮せず殴っていたのだろう、左の手。特に薄い節骨の皮は剥け、血が吹き出している。しかし、剥けたそばから、新たな皮膚が傷を塞ごうと生じてもいる。「…」温かい。この温かさを、自分はよく知っている。ほんの僅かな負傷でも、ちょうど余っていたからとばかり投げられる、虹色の。

2023-11-12 10:37:01
@kai3years

「…大丈夫か?」地に組み敷いた体から、聞き慣れた声がした。整った顔にけだものの拳を幾度もめり込まされて、歪んだ鼻から、破れた唇から、血を流している男の声が。「…サンクレッド」名を呼ぶ声が、情けないくらい、派手に震えた。「取り敢えず、どいてくれるか。重い」

2023-11-12 10:37:02
@kai3years

からかう口調は軽やかで、甘い笑みさえ孕んでいる。それが耳から頭に沁みて、頽れ、彼を抱え込んだ。「やれやれ。仕方のない奴だ」ぽんぽんと、背を叩かれる。仲間たちが駆け寄ってくるまで、そのまま、動けなかった。

2023-11-12 10:37:02
@kai3years

こちらに寄せた光サン #meteorcred twitter.com/beencap/status…

2023-11-12 10:37:36
김멍개 @beencap

산크레드 혼란 걸린 빛전한테 오히려 오로라 붙여줄거같움.. pic.twitter.com/xzdAT0R1JF

2023-11-11 23:02:53
@kai3years

この男にブーツを解かせることは、何度となくあった。抱き合う前のサンクレッドを、彼は、自ら「準備」したがる。許されるならコートから脱がせてやりたい、ということらしいが、流石にそこまでされるのは気恥ずかしさが先に立つので、お断り申し上げている。折衷案としての、ブーツだ。

2023-11-13 14:51:06
@kai3years

だから、それを脱がされるのには、さほどの抵抗感はない。床に跪かれ、恭しく足を扱われるのにも、すっかり慣れた。すっかり慣れた、はずだった。「落ち着かないか?」目敏く見抜いた男が、声をかけてくる。「別に」対して、咄嗟に返した嘘の、不出来なことといったら。「ん。少しも剥がれてないな」

2023-11-13 14:51:07
@kai3years

やがてサンクレッドの裸足を掌に掬い上げた男は、心底から満足そうに、その指先を見つめて言った。爪。見慣れた乳白色が並んでいるはずのそこには、目を突くほどに鮮やかな青色が瞬いている。月から見たアーテリスのような、間近で見た彼の目のような。五つの爪にきらきらと、満遍なく塗られている。

2023-11-13 14:51:09
@kai3years

ラザハンの胡粉は彩りも定着ぶりも完璧で、男の言うよう、剥がれも欠けもなく、美しく輝いていた。数日とはいえ、任務で離れ、戦闘さえおこなっていたのに。宝石のようにかっちりと、サンクレッドの足を飾っている。「きれいだ」それを、至上の喜びとばかり、男はとろりと謳った。

2023-11-13 14:51:12
@kai3years

こういう部屋があるらしいとは、冒険者仲間から聞いていた。詳しくはまったくわからないが、多分アラグのせいだろうとも。「愛してるとお互いに伝えないと出られない部屋」掲げられた文字を読む横で、サンクレッドが心底げんなりだという顔を隠さない。「何の冗談だ?あるいは嫌がらせか?」

2023-11-13 20:03:33
@kai3years

「俺ら二人にピンポイントで嫌がらせしたい奴いるか?」軽く考えを馳せてはみるが、見当さえ付く気がしない。噂どおりにアラグの仕業なら、考えるだけ無駄かもしれない。ともかく、わかっているのは、一つ。閉じ込められた以上は脱出しなければならない、ということである。「「愛してる」」

2023-11-13 20:03:33
@kai3years

ハモった。にも関わらず、扉は頑として開かない。「えー」不服の声を漏らしたのち、もう一度、揃って試してみる。が、やはり開く気配がない。「どういうこった。俺たちが、条件を読み違えてるのか…?」「確かに、愛してると『言わなくては』出られない部屋、とは書いてないな」「んーじゃあ」

2023-11-13 20:03:34
@kai3years

持ち前の勘を発揮して逃げようとしたサンクレッドを捕らえ、しばらく、ディープキスをぶちかます。やがて互いの息が荒れても、扉は、ぴくりとも動かなかった。「よく、見ろ、お互い、に、って、あるだろ、が…!」言われてみれば、ぜえぜえと肩を上下させている、サンクレッドの指摘どおりだ。

2023-11-13 20:03:34
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@kai3years

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