0
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 町がクリスマス色に染まってきた頃のことだった。 「私、このままじゃさみしいクリスマスを送ることになる」 「………………だから?」 だから何? それを俺に言ってどうするんですか? 「私、可哀想。クリスマスは一人だなんて」 「家族と過ごせば?」

2016-01-04 01:12:12
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL はい、はじまりはじまり。で、まぁ、はい。やりたいことがあったのでこんなことになりましたが。途中でバックレるかもしれません。

2016-01-04 01:04:15
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「違う!クリスマスは恋人と過ごすの!!」 「そんな決まりねーし」 「私とつきあって!」 「何回も断ってるだろーが!しつこいやつだな!」 それに毎回俺の優雅な昼休みを邪魔しやがって! 「どうせ俺以外にも候補がいるんだろ。それでいいじゃん」 「良くないし!」

2016-01-04 01:15:26
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL そうやって言い合っていると、また無言で伊万里がやって来た。 この頃そんなのばっかだ。 全部こいつのせいだ。 そして、無言のまま弁当を広げ始めた頃に元カノはこの場を去る。 もはやパターン化していた。

2016-01-04 01:27:34
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 俺と伊万里の間にはなんだかよくわからない、気まずい空気が流れている。 普通に会話はする。 でも続かない。 伊万里の方から話すのをやめてしまうせいだ。 なぜ。 なぜこんなことになってしまったんだ。

2016-01-04 01:28:40
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「そ、そういやもうじきクリスマスだな」 俺はさっき元カノが言っていたことを思い出して、クリスマスの話題を出した。 そうですね。と、後輩はそれだけしか言わなかった。 ぐ… 「お前はどうすんの?」 「クリスマスケーキを作ります」 「作っちゃうの…?」

2016-01-04 11:21:44
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 料理得意なのはわかっていたが。 作ってしまうのか。 「…聖は?」 「保育園でクリスマスパーティーがあるらしいので。行っている間に作るつもりです」 「ふーん…俺も手伝おうか? 」 「本当に?」 「え?」 何だ。何でそんなに食い入るような勢いなんだ。

2016-01-04 11:24:14
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いや…まぁ…うん…」 「約束、してくれますか?ドタキャンとかなしですよ?」 「そんなことしねぇよ…」 何なんだ。どうしたんだ、こいつ。 伊万里の勢いに戸惑っていたら、予鈴がなった。 俺達は慌てて立ち上がり、それぞれ教室に戻った。

2016-01-04 11:26:11
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 放課後。 「よー、いまりん。帰るの?」 「ハチは一緒じゃねーの?」 伊万里が靴を履き替えていたら、一日兄弟が声をかけてきた。 面倒なのに捕まった。 伊万里は心の中で舌打ちをする。 彼はこの双子たちが苦手だった。 「今日も元カノちゃん来たんだろ?」

2016-01-04 11:42:26
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL あの場に兄弟はいなかったはずなのに、なぜそのことを… 伊万里は警戒する。 「しつこいよなぁ、元カノちゃん」 「あの場に同席させられるいまりんの身にもなれよな」 「俺は別に…」 確かに彼らの言うとおりではあった。

2016-01-04 11:45:31
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL なのであまり強く否定できなかった。 「ハチもひどいことするね」 「ハチがいろって言ってんだろ?」 「俺達が助太刀しても全く効果ないしね」 「まーあの子は空気読めないから」 勝手にペラペラと喋る二人。 「…正直あの場にいるのはきついですけれど」

2016-01-05 00:00:38
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 普段ならそんなこと口にしない。特にこの二人の前では。 なのにうっかりそう言ってしまった。 「あ、やっぱり?」と、二人の反応は大してなかったが、少し後悔する。 それほどまでに自分はあの場にいたくなかったのか。 「今日はなんて言ってたの?」

2016-01-05 00:04:27
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「クリスマスだからよりを戻したいと…」 自分で言っておきながらよくわからない説明だった。 しかし双子は理解したらしい。 「クリスマスにぼっちは嫌だってか」 「恋人とイチャイチャしたい的な。そういう感じするよねー彼女」 「ハチとじゃ無理だろうけど」 「確かに」

2016-01-05 00:06:23
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 二人は頷いている。 「椿君!」 そこへ、問題の彼女が現れた。 しかもなぜか伊万里の名が呼ばれた。 「ちょっといいかな」 彼女は真剣な表情だった。 はぁ。と、生返事をしてしまう。 というか嫌そうにしてしまったのが、顔に出ていたかもしれない。

2016-01-05 00:10:13
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「元カノちゃーん、俺達いまりんと帰るんだけど時間かかる?」 「俺達いない方がいい感じ?」 双子なりの助け船なのか、全く予定にないことを二人は口にした。 「…いてくれてもいいけど…すぐ終わると思う…し…」 ぎこちない。 一体何なんだろうか。

2016-01-05 00:12:06
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「早く終わらせるために単刀直入に言うけど」 この人、単刀直入なんて言葉知ってるんだと、違う方面で驚く。 「やっくんが私とよりを戻してくれないのは、椿君がいるから?」 どう答えればいいのかわからない質問だった。 単刀直入ならもっと的確に言えばいいものの。

2016-01-05 00:15:16
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 双子たちも自分と同じ事を思っていそうな表情をしていた。 「すみません。おっしゃってることがよくわからないんですけど」 「私、ちゃんと知りたいの。あなたとやっくんはどういう関係?」 ただの先輩後輩です。と、言いたいところだが。

2016-01-05 00:17:28
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「…質問を質問で返して申し訳ないんですけれど」 このとき伊万里はこの状況が最高に面倒くさいと感じていた。 そしてこの、八尋の元カノの存在も。 今まで黙って傍観していたが、まさか自分に矛先が向くとは思わなかった。 いや、彼女なら十分にあり得る可能性だったか。

2016-01-05 00:20:48
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL とにかく終わらせたいというのが本音だった。 「元カノさんは本当に、先輩のことが好きなんですか?」 前置きの後、伊万里は鋭く言った。 「…好きじゃなかったらよりを戻したいなんて言わないよ」 「ただ彼氏という存在が欲しいだけなんじゃないですか?」

2016-01-05 00:22:53
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「なっ…」 一日兄弟もいる手前もあり、彼女は怒りやら羞恥やらで顔を赤くした。 「俺はあなたのことをよく知りません。でも先輩とのやりとりを見ていたら、そんなふうにしか思えないのですが」 「ち…違うもん!私はやっぱりやっくんのことがっ…」

2016-01-05 00:24:49
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「先輩は初めからあなたのことなんて好きではなかったんですよ」 彼女の言葉を遮る。 「先輩はあなたにふられたと言っていましたが、それは違います。あなたが、先輩に捨てられたんですよ」 「…………。」 「これ以上俺達の邪魔、しないでもらえますか」

2016-01-05 00:27:18
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL ある意味とどめの一言だった。 心なしか彼女の顔が青い。 「…クリスマス、先輩は俺と一緒にいてくれると約束してくださいました。何が言いたいかわかりますよね?」 こればかりは一日兄弟も驚いているようだった。 伊万里としては穴があれば入りたい気分であったが。

2016-01-05 00:30:24
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いい加減しつこいなと思っていたんです…。先輩もうんざりしているようですし。まだ諦めないと言うなら 、女子が相手だろうと容赦はしません」 気がつけば彼女はうつむき、肩を震わせていた。 しまった。言い過ぎたかもしれない。

2016-01-05 00:32:59
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 少し焦っていると、彼女は顔をあげ伊万里をにらみつけた。 「望むところよ!!」 「…はい?」 予想外の反応だった。 理解が追い付かず、唖然としている間に彼女は彼らの前から姿を消した。

2016-01-05 00:36:00
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いやー…その、なんていうか」 「どんまい」 二人は伊万里の肩に手を置いた。 ものすごく重く感じられる。 「正式にライバルとしてロックオンされちゃったな」 「マジでどんまい。いまりんとしては、諦めてくれると思ったんだろ?」 その通りなので返す言葉もない。

2016-01-05 23:48:12
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL こんな、はずじゃなかったのに。 伊万里は頭を抱える。 「おーい、伊万里ぃー帰ろうぜ…げっ!何でお前らここにいるんだよ!?」 呑気な様子でやって来た八尋は、一日兄弟の姿を見て顔をしかめた。 「いまりんに同情してたの」 「本当、お前ってやつは…」

2016-01-13 00:35:32
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 呆れた様子の一日兄弟。 八尋はますます不愉快な気分になった。 「なんだよ、言いたいことがあるなららっきり言いやがれ」 「一度自分の愚かさを反省しろ」 声を揃えて二人は言う。 「はぁ!?」 「やめてください…一日さん…もういいんで…」

2016-01-24 02:21:27
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 伊万里までなんだか双子の味方をしているみたいでよけいに不機嫌になる。 「んだよ…」 一人だけ何だか蚊帳の外みたいなのですねる。 「先輩、帰りましょう」 最初に帰ろうって言ったのは俺なんだけど、と、無意味な八つ当たりをしようとしてやめる。

2016-01-24 02:23:28
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「じゃーねーいまりん~」 「お前ら!俺には挨拶那しか!?」 手をふる一日兄弟をにらみつけるも、二人は何の反応も示さなかった。 どこまでも不愉快なやつらである。 八尋は渋々諦めて、伊万里の隣に並んだ。 「お前、あいつらと何話してたんだ?」

2016-01-25 01:35:09
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL そう尋ねると少しの間の後、 「…何でもないです」 とだけ言った。 「何でもなくないだろ。何なんだよ」 「先輩には関係のないことです」 ちょっとどころではなく、かなりムッとした。 そう言い方は気に入らない。 しかし同時に向きになるのも何だか大人げないと思った

2016-01-25 01:37:40
ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「…クリスマス」 そんな八尋の心境も知らずに、伊万里はボソッと言った。 「クリスマス?」 「本当に、いつも通り俺の家に来てくれますよね?」 「……?行くけど……?」 やけにしつこく聞いてくる。

2016-01-25 01:39:51