【魔法少女（笑）】八尋伊万里関連

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 伊万里はいつだって俺に優しく微笑んでくれた。 幼い、ガキだった俺に。 でも、いつからだろう。 俺に向ける笑顔と、あの人に向ける笑顔が違うってことに気がついたのは。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL あの人のことが嫌いなわけではない。 むしろ好きな方だ。 伊万里の学校の先輩らしいけど、俺にも親切だった。 遊んでくれたし、困っていたら助けてくれた。 だから、伊万里が熱で倒れたときも…ガキだった俺はすぐにあの人に助けを求めた。 …なのに。どうして。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL イライラむかむかするんだろう。 伊万里があの人と一緒にいることが気に食わない。 嫉妬？まさか。 伊万里が取られちゃう？ それが不安で仕方がない？ …でも無理だ。 伊万里にとって俺は、いつまでもガキでしかない。 年の差は、埋まらない。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 早起きは三文の徳とかいう言葉がある。 早起きのおかげで学校に遅刻しないのはいいことだ。 授業中寝てしまうのは難点だが。 三文というのはごくわずかなという意味らしいので、十分だとは思うけど。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 何が言いたいかって。 俺が早起きなおかげで、SOSをキャッチできたということだ。 いやまぁ、早朝っつーか。 学生なら普通に朝起きる時間なんだけど。 飯食って時間に余裕があるので、朝のテレビ番組を俺は見てまったりしていた。 そこへ、突如ケータイが鳴り響いた。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 朝から電話なんて。 嫌がらせかとも思った。 しかし画面を見ると、表示されているのは椿伊万里の名。 あいつが朝から電話？ 不思議で仕方なかったが、出ないわけにもいかないので応答する。 確かにあいつのケータイからだったが、その電話口は本人ではなかった。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 俺はすぐに家を出て、あの高級マンションに向かった。 合鍵で全て通り抜ける。 …そういや何で合鍵持ってんだ？ まぁいいや。 あいつが住む部屋の扉を開けると、そこ出て待っていたらしい聖が飛びついてきた。 今にも泣き出しそうな顔をしている。 鉄仮面が珍しい。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「あらま…大丈夫か、お前…」 中に入ると、テーブルに顔を伏せてぐったりしている後輩がいた。 毛布は聖がかぶせたのか。 「…せん…ぱい…？」 額に手を当てるとかなり熱かった。 「熱出てるな、これは」 「どうして…先輩が…」 「聖に呼ばれて来たんだよ」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL とりあえず寝かせるか。 「聖。部屋のドア開けとけ。こいつベッドに運ぶから」 そう言うと、聖はすぐに部屋の扉を開けにいった。 「お前も熱とか出すんだなー。よいしょっと」 ぐったりしている後輩を抱える。 重い。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 部屋まで運んでひとまず寝かせた。 心配そうに聖はじっと傍に座っている。 「大丈夫だって」 と言っても、離れようとしなかった。 そんな調子なので、保育園に行く時間になって説得するのに苦労した。 「心配なのはわかるけど、行かないと後で伊万里に怒られるぞ」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL うつむいている。 「大丈夫だってば。俺がちゃんと看病しててやるから、な？たぶん伊万里はお前が保育園に行かなかったって聞いたら、すげぇガッカリすると思うぞ。俺が迎えにも行ってやるからさ。帰りに伊万里が早くよくなるようにって何か買おうぜ」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL そんな説得でなんとか納得してくれたようで、俺は保育園に聖を送り届けた。 戻る途中で早くから開いているスーパーに立ち寄る。 スポーツドリンクやら買い込んで帰宅。 一日兄弟にメールで看病のために休むから上手いこと言っといてと頼む。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 11月11日。 一日兄弟が教室で、ポッキーゲームなるものをして女子たちを沸かせているのを目撃。 …ドン引き。 何のファンサービスだよ。 足早に教室の前を通り過ぎた。 見つかったら非常に面倒である。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 何がポッキーの日だ。プリッツの日だ。 俺はトッポが好きです。 中庭のさびれたテーブルに肘をつく。 「…で？」 「だから、私とポッキーゲームで勝負しよう。」 一日兄弟の観覧をせずに俺に言い寄ってくる物好きな女子が、ここに一人いた。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「勝負して、私が勝ったらよりを戻して。」 「それ、ポッキーゲームじゃなくてもよくない？」 つーかこいつもしつけぇなぁ！ 「何？負けるのが嫌なの！？」 「そんなこと一言も言ってねぇし…」 何で俺…こんなのと付き合っていたんだろう…

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「あのさー…俺はこれからランチタイムだから、どっか行ってくれない…」 「はぁ？手ぶらのくせに？ランチタイム？何を食べるの？草？」 「そこまで貧乏じゃない！！」 失礼なやつだな。 そんなんでよく寄りを戻したいとか言えるよ。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「草でも何でも食べればいいけど、私とよりを戻してくれるまでここを動かない。」 おい、ポッキーゲームはどうした。 「それは困るな〜ねぇ、夕乃。」 「ああ。ハチも困ってるみたいだし、友達としては見過ごせないな〜なぁ、朝乃。」 ………はい、出ました。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「何でお前らここにいる…ファンたちはいいのかよ…」 「ファン？何のこと？」 二人して首を傾げる。 しらばっくれやがって！！ 「何やら友達が大変そうだからね、こうして助けに来たってわけさ！」 「友達ならお互い助けあわなきゃな！」 誰と誰が友達だって？

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL あー…厄介な奴らにバレてしまった…これは一生オモチャにされる… 「な、何で一日君たちが出てくるのよ。これは私たちの問題で…」 「いーや、俺達にも大いに関係あるね、元カノちゃん。」 「俺達は友達だって言っただろう？元カノちゃん。」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 勝手に友達にしないでもらいたい。 「元カノちゃんはハチともう一度やり直したいみたいだけど、それはダメだよ。」 「別れてからハチの良さに気づいてしまったかな？でも残念。遅かったね、元カノちゃん。」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 俺は完全に一日兄弟のオモチャにされているようだが…この女を追い払ってくれるというなら仕方あるまい。 大人しく弄ばれよう。 「ど、どういうこと…？」 「あれあれー？聞かなくても何となくわかったんじゃないのー？女の勘ってやつでさー」 「それでも聞きたいー？」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 意地悪な笑みを浮かべる兄弟。 「ハチにはさー…嫁（笑）がいるからどう足掻いても君には転ばないよ。」 「そうそう。忠実で献身的な嫁（笑）がね。」 俺は大きく頷いた。 「そういうことだ。だから諦め……………って、はぁぁぁぁ！！！？？？」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 何言ってんの、何言ってくれてんの、こいつら！ 嫁？嫁って何だ！？ いや、嫁（笑）か！ どっちでもいいけど！ ていうか俺に嫁（笑）なんていたの？ どこの誰！？ 「え…まさか…やっくん…彼女、いるの？」 いやいやいや！いませんけど！？ 彼女も嫁も！

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 俺は必死に首を左右にふるが、見てもらえなかった。 「いるよ。ものすごく家庭的な嫁が」 「何言ってるんだよ、朝乃。嫁なんだから家庭的に決まってるだろ」 「ああ、そうだったね。夕乃。」 おい、てめぇら何笑ってんだ。 肩も声も震えてんぞ。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「やっくん…彼女いるならそう言ってよ…」 そんな傷ついた顔されても俺にはなんのことか… 「たぶんもうじき来るよ。」 「弁当を持って、来るよ。」 弁当…ってまさか。 あれのことを言っているのか！ 「お前らなぁっ…」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL そろそろここいらで説教しないと、ややこしいことになる。 「でも、私！今やっくんに彼女がいようと諦めないから！！」 ちょっとぉー！黙っててくれますー！？ お願いだから元カノさん引っ込んでてー！ 「誰？どこのクラスの子？」 「一年だよ。」 おい！！兄弟！やめろ！

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いいかげんにしろ、お前ら！人で遊ぶな！お前も他の男と遊んでろよ！俺のことは放っておいてくれ！」 「ひどい…やっくん…私をそんな、尻軽女みたいに…」 「いや実際そうじゃねーか」 「ひどい！！！」 俺達のやり取りを聞いて、兄弟が吹き出した。 こいつら…

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「ああ、もう最悪の昼休みだ！台無しだ！お前らがどっか行かないって言うなら、俺が場所変える！ついてくんなよ！」 そう言って、立ち上がって後ろを振り返ると。 「………。」 いた。 嫁（笑）が。 弁当を持って立っていた。 いつもの無表情で。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「他の場所へ移るんですか？」 「ああ…うん…ここは騒がしいからな…ていうかお前…いつからいたの…」 「ついさっきです。盛り上がっているみたいだったので。水をさすのもどうかと。」 「そう……」 一日兄弟はゲラゲラ笑っている。 ムカつく…

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 元カノさんはきょとんとしている。 あー…こいつらは面識あるんだっけ。 俺のせいで。 「あの…遅くなってすみません。」 何を勘違いしたのか、後輩は謝ってきた。 謝りたいのはこっちです… 「俺、邪魔なら教室に戻りますけど。」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「邪魔じゃない！邪魔じゃない！」 「むしろ大歓迎！って、邪魔なのは俺らの方だよね！」 俺と後輩は無理やり座らされた。 まだよけいなことを言うか、こいつら。 「一日さんたちさっきまで教室にいませんでしたっけ？」 「親友のピンチに駆けつけたんだよ」 誰が親友だ。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「女子の大群が一日さんたちを探していましたけど」 「いいの、いいの」 一日兄弟はニコニコしている。 …女子たちに捕まってしまえばいいのに。 「…なぁ、お前。女子たちに一日兄弟はここにいるって密告してこいよ」 元カノさんに俺は言った。

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@sousakuTL 「そうやって私を追い払う気？」 とんでもない解釈をされてしまった。 そんな俺の隣で後輩はテキパキと弁当を広げている。 箸を受け取り、俺は「いただきます」と言って食べ始めた。 うん。美味い。 「ねぇ、やっくん。お願いだから教えてよ。どこの誰なのか」

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@sousakuTL 俺は無視して食べ続ける。 お茶がほしいな。 「先輩。どうぞ」 「んあ」 お茶の入ったカップが横から渡される。 うん！お茶も美味い！ 「お前ら…」 「熟年の夫婦かよ…」 呆れた一日兄弟の声。 無視無視。 「ああ、そうだ。一日さん」 後輩がそんな兄弟を見上げた。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「さっき女子の大群が一日さんたちを探してるって言いましたよね…教室からいなくなったとするなら、きっとここだろうと思って居場所を教えてしまいました」 密告する間でもなくすでにこいつがしてやがった。 兄弟はお互い顔を見合わせてから「やっべ」と言って逃げて行った。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL ざまぁねぇやい。 これでうるさいのが一人…いや二人減った。 「さすが伊万里」 「あの人たち、うるさいので…」 手厳しいな。 本当のことだけど。 呑気に笑っていたら、元カノさんの険しい表情が視界に入って、さっと目をそらした。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いやぁ、今日も伊万里君のお弁当は美味いなぁ」 話をそらすために言ったが、少しわざとらしかったか。 「何ですか改まって。別にいつもと変わりませんよ」 「いつもの変わらない美味しさってことだよ！褒め言葉は素直に受け取っておきなさい！」 「ありがとうございます」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 会話は途切れた。 次の話をしなければ！ 「そ、そういや今日はポッキーの日？だっけ？」 「みたいですね。クラスでもみんなポッキーやらプリッツやらを持参してきていました。どうでもいいことですが」 「だよなー」 冷めてやがるぜ…

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「なんでもかんでもなんちゃらの日とか言ってさー何が楽しいんだか。俺には理解できないね」 「俺もそう思います。」 こうやって会話していても、元カノさんがどこかへ行く気配はない。 はぁ…勘弁してくれよ…

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「…もうお前どっか行けよ」 「やっくんの彼女のこと知るまで動かない」 強情な奴め。 兄弟が言っていた嫁なら俺の隣にいるぞ。気づけよ。 「彼女？」 伊万里が不思議そうに俺を見た。 慌てて首を左右にふる。 「ねぇ、そういう女の子のほうがいいの？」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「そういうのってどういうの…」 「だから、家庭的な子。お弁当がどうって。私みたいなおバカは嫌なの？確かに私は料理なんてできないし、頭も悪いし…」 自分で言って落ち込みだす。 なんだ、気にしてたのか。 「そうへこむなよ。確かにお前はバカだけど顔は可愛いじゃん」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL いや、ちょっと待てよ。 俺めちゃくちゃ最低なこと言ってねぇか？ 案の定、ものすごい目で見られた。 あー…また本音が… 隣りにいる嫁（笑）は興味なさげにスマホをいじっている。 助けてくれよぉ、伊万里ぃ。 いつも助けてくれるじゃん〜

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL ドラえもんにすがるのび太の気分だった。 「こんなこと言っちゃう俺だし、もうやめとけよ。もっと他にいい男いるだろ」 「やっくんじゃなきゃダメなの」 「何でだよ…」 「彼女に会わせて。それからどうするか考える」 俺の意志は！？

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL もうつきあってられねぇ。 やめだやめだ。 こいつはいないものとして、残りの時間を過ごそう。 「…お前はさっきから何を見てるんだよ。まさか、ゲームか！？」 先輩が大変な目にあっているというのに、こいつは！ 「俺はそんなものしません」 だよね〜

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「スーパーのチラシを見ているんです。今日は特売の日だから」 「あー…そっかー…水曜だもんなー…」 チラシの入る日だ。 「つーかネットでチラシ見れるんだ…世の中は進んでるなぁ…」 「便利ではありますが、でもやっぱり紙で見るにこしたことはないです」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「確かに見づらそうだもんな〜」 傍から聞けばスーパーのチラシだとか、男子高校生が何言ってんだという会話だろう。 元カノさんの頭の上にはたくさんの？が飛んでいる。 「ということは、今日スーパー寄るの？」 「はい。卵が安いです」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 卵か… 「俺も一緒に行くよ」 「大丈夫ですよ。俺一人で」 「一人じゃないだろ、聖を迎えに行ってから行くんだろ？」 「そうですけど…」 「卵持ってさらには園児を連れてって、卵割れたらどうするんだよ」 「俺の心配をしてくれてるんじゃないんですね」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「いくら聖が手のかからない園児といえどもいつ何時突拍子もない行動に出るかわからないだろう！？」 なぜか伊万里の目は冷たい。 「…というのもありますが、いつも飯食わせてもらってるお礼でもあります」 「そうですか。だったら今日は沢山買えますね」

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 素っ気なく言って、伊万里は再びスマホに目を落とした。 おい〜もうちょっと先輩の話し相手になって〜 元カノさんがすごい顔をしてるから〜 というかそろそろ兄弟が言っていた嫁（笑）に気づけたのではないだろうか。 嫁ではないけど。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 最後にとっておいた卵焼きを口に放り込んで、俺は両手を合わせた。 「ごちそうさまでした。今日も美味しゅうございました」 「それはどうもご丁寧に」 俺が片付けるよりか前に、伊万里が先に弁当を仕舞い始めた。 何か今になって亭主関白な気分になってきたんだが…