抜粋) 『摂食障害との出会いと挑戦～アンチマニュアル的鼎談』松木邦裕・瀧井正人・鈴木智美著 岩崎学術出版社 2014.10.20

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↓　この本は３回繰り返して読みました。野間先生の仰られる通り、現在格闘中の方々にどう取られるかは、ぼくも不安で、レビューも書いてません。ですが、治療者側への提言要望については、参考になる部分が多々あると思われ、以下に少し、抜粋して見ます。#摂食障害

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#摂食障害　摂食障害という病は、一つの生き方であり、あり方であって、その生き方、あり方にどう関わるのかという課題が現れます。普通の医療的発想に基づくと、そこまで行き届かない所で、つまり目の前の症状を軽減することでよしとするような治療を行うにとどまってしまいます。(前掲書 p.4)

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#摂食障害　前掲書①(p.155-)入院中に下剤とか小銭を下着に入れたり水を多量に飲んだりして体重測定をごまかします。私たちには大体彼女らがやる病理行動は予想がついているのだから、そこをあらかじめ予想をしていて、そのことが起こったら、ただちに私たちが直接対応するか、直接できなけれ

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#摂食障害　前掲書②(p.156)ばナースに対応してもらって、その後私たちが対応するとか、その場その場でのイミディエートな治療的対処が非常に大切になると思います。なかなかそこのところができない治療者が多いですよね。うやむやにしていくというのが結構多い。それはやっぱり治療者が、

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#摂食障害　前掲書③(p.157)そういう状況に直面した時に、患者から表われる強い反応や反発とその破局的結末の可能性を恐れているんです。治療者がきちんと彼女らの真の問題に向き合う心の準備が出来ていなくて、ほどほどのところで何とか収まればいいというような、そういう気持ちでしか関わっ

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#摂食障害　前掲書④(P.157)ていないから、表面だけを見ていたら見過ごされそうなものはそのままあっさり見過ごす。だけど、そういうものを放置したらそこから治療そのものが全部崩れていきますから、私たちが回避することなく、向かい合う姿勢を持っておかないといけない。

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#摂食障害　前掲書⑤(p.157)　回避することは、その患者と同じ姿勢をとっていることですし、共謀ですから。(←欄下註 :152 治療プロセスの中で分析者と被分析者とがともに治療に反する共通の方向で無意識的な反応をすること。無意識的に成長や発達、治癒に反する方向で結びつくこと。)

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#摂食障害　前掲書⑥(p.158)「なぜ摂食障害の治療をしてるんですか？」って聞きたくなるような治療者もいるんですよ。患者さんに本当に大切な事実は何かとか、そういうことにきちんと関わろうというチャレンジングな姿勢を治療者が持てるかどうかというのが、そこにあるんじゃないでしょうか。

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#摂食障害　前掲書⑦(p.158)治療者として好かれるいい人としていたい人がいると思います。プライドが高くて患者にいつも尊敬されていたい人がいます。患者は自分の問題をすべて私たちに投影するから、私たちは一時悪人にされるじゃないですか。だから悪い人である時期をやり過ごしていかなきゃ

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#摂食障害　前掲書⑧(p.158)いけないんだけど、その時の傷つきに耐えられない治療者もいるんじゃないでしょうか。治療者と自己愛の問題でいえば、自己愛的な人には摂食障害の治療は無理なんじゃないでしょうか。(笑)自己愛と自己愛が一緒になって、お互いの自己愛を傷つけない関係になる。

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#摂食障害　前掲書⑨(p.159)摂食障害は自己愛的側面が大きい病気だから、その部分に変に親和性のある人が、それにひきつけられてこの世界にやってきて、住みついていて。患者さんの治療経過は散々なのに、それに気づかずにいつまでも摂食障害に関わることを止められない人っていますね。

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#摂食障害　前掲書⑩(p.159)この治療をしていると、こちらの自己愛はズタズタにされますから、自己愛の問題を抱えている治療者は患者さんに真剣には関われないようにも思います。ただ最近は、とりあえず症状さえ治まればいいという、そういう治療を求めている患者さんも多いですし、

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#摂食障害　前掲書⑪(p.159-60)治療者側もそういう治療に集中する風潮があると思います。患者が示している事実、つまり歪んだ在り方が目に入っていないか、その事実を考察できない事態です。結局、精神科とか心療内科の医者になる人たちが、一体何のためにその道に入っているのかという、

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#摂食障害　前掲書⑫(p.160)その治療者自身のあり方に関わる本質的な問題に入ることになってしまうんじゃないでしょうか。患者が訴えてくることがらを無思考にただ減らしたり楽にしたりするために、精神科医とか心療内科医になっているのか、それともその人の心とかあり方の本質を見定めそこに

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#摂食障害　前掲書⑬(p.160-1)働きかけようと思ってその分野の医師になっているのかという、そこの違いですね。精神科医の内科医化とも言える。開業内科医は、患者がその時に訴えて来る症状を軽減しましょうという形で診察しているのが日常でしょう。摂食障害の治療だってその方式でやると

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#摂食障害　前掲書⑭(p.161)いう発想を持ち込めば、そうなっちゃう。それは見方を変えれば、その人を一生患者にしておいて構わないと治療者が思っているということになる。それはその患者自身の責任だと。しかしながら、こころの病にその発想でよいのかとのことをじっくり考えるのが、

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#摂食障害　前掲書⑮(161)心療内科医や精神科になる人の通るべき過程ではないか。できるものなら、その人をもう患者であることを終わらせたい、という発想がない治療者がいる。そこには、DSMが関係すると思います。DSMには治そうという発想がないんじゃないか。病人を見つけようという発想

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#摂食障害　前掲書⑯(p.161)はあります。DSMを使ったら誰でも彼でも病気になりますから。(笑)DSMの診断基準をチェックリスト的に使って診断していると、経験から学べません。治療者としての創造性が失われます。自分自身の臨床経験に見出される発見の重要性がわからないままでしょう。

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#摂食障害　前掲書⑰(p.161)そうなると、臨床に対する関心も工夫も生まれません。治療者自身のこころが栄養失調でやせていくだけになります。

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#摂食障害　前掲書⑱(p.166)患者さんが依存的な部分を表せて、ちゃんと治療関係が結べて、自分の辛い所を伝えてくれるようになるという、そこへ行き着くまで、治療者がほどほどに納めたりせず頑張れば、患者さんは心の中の苦しさや孤独、虚しさなどの情緒体験を教えて下さると思っています。

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#摂食障害　前掲書⑲(p.192-3)治療者が心に留めておいて欲しいことは五つあります。一つめは「問題行動は必ず起こる」ということ。二つめは、治療者は何度も何度も患者さんに裏切られるわけで、そのとき裏切られたという怒りだとかが湧き起るし、無力感とか絶望感とかを、やっぱり抱きます。

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#摂食障害　前掲書⑳(p.193)でもそれは、患者さんの中にもあるものだということをわかっておいてほしい。三つめは、患者さんたちというのは、基本的には人を信用できない悲しい人たちなので、治療者が、多少患者さんが揺れてもドンと構えておくということ。四つめは、「治そうって焦らないで

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#摂食障害　前掲書㉑(p.193)ください」ということ。五つめは、反復強迫を嫌わないということ。本人は治ることに抵抗がある。抵抗というか、それは本人たちには恐れなんですね。治ることを極度に恐れている状態があるので、同じ状態に戻ってしまうということがあるというのは、それは当たり前の

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#摂食障害　前掲書㉒(p.193)ことなんだと。嫌わずに、そういうことがまた起こっているなという目で、しっかり見てほしい。

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#摂食障害　前掲書㉓(p.196)患者さんにしてみればそうせざるをえないような、それで自分を必死で守っているところがあって、たとえば非常に頑固で嘘をついたりするわけですけれども、その人にとってみれば、そうせざるを得ないというのがあって、そういうところをこちらが認めてあげないと

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#摂食障害　前掲書㉔(p.196)対応できないですね。理解する事も出来ないし、受け止めてあげることもできない。一般の精神科の患者は、統合失調症にしろ、神経症的な人にしろ、自分の苦痛とか不安を私たちに提示して来ます。妄想などの自分の心的現実に苦しんでいて、それを「どうにかしてくれ」

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#摂食障害　前掲書㉕(p.197)と私たちのもとに来るのが、一般の精神科の患者さんですね。けれども、摂食障害の人たちは自分の心的現実を隠します。その苦しさをストレートに出しません。そこがずいぶん違います。普通の精神科医は、そういう心的現実からの苦しさを医者に自分から提示して来るの

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#摂食障害　前掲書㉖(p.197)が患者だと思っていて、摂食障害はそうしないもんだから、今までの関わり方が全然通用しなくて、どこから関わっていいのかわからないのですね。そこのところで動けなくなる。

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#摂食障害　前掲書㉗(p.199-200)患者さん家族には、「まず、治療者を選びなさい」っていいたいですね。ただし治療者を選ぶのも本人の否認のあり方というか回避のあり方の一つで、「治らないで済む治療者を選ぶ」ケースがあります。(笑)家族へのアリバイ作りだけのために通うケース。

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#摂食障害　前掲書㉘(p.201-2)ある程度治った方は、懐古的に、この摂食障害というものが自分にとって何だったかというのは見ることが出来るように思います。ある人は、これをしてなかったら自分は死ぬしかなかったって。だから死ぬ代わりに、代わりにというか死なないで済んだという意味では

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#摂食障害　前掲書㉙(p.201-2)摂食障害という方法で助けられたっていう部分はあるんだっておっしゃっていました。こうやって楽しめる人生があるんだっていうことに、今は気づけたけれども、その時はもう本当にこれしかないって思ってたんだ、と。本人が自分の人生というものを考えることが

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#摂食障害　前掲書㉚(p.202)できるようになった時に、この病気にしがみついたその時を振り返ることが出来れば、「ああ自分にとって、こんな意味があったんだ」と気づくことができるのでしょう。 他方、治りきれない人は、自分で自分を洗脳し続けるしかない人のようにも見えます。

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#摂食障害　前掲書㉛(p.202)過食・嘔吐を繰り返している現在のあり方をしていないと、もっと悲惨なひどいことになるから、今の自分はまだましなんだというような、自己洗脳をしているしかない状態に入ってしまうんじゃないでしょうか。元の生き方に戻ってしまう人たちが少なからずいます。

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#摂食障害　前掲書㉜(p.206)現実原則が機能しないで摂食障害を発症した人たちの治療をする時に、単に症状を改善する治療だけではなく、こころの実力を養うことに力を入れる方が、治療の本質ではないかと。こころの問題をもっと大切に考えるような、社会全般の価値観の変化があって欲しいです。

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#摂食障害　前掲書㉝(p.207)患者さんたちには、ありのままの自分を受け入れましょうと伝えたいです。理想的な自分でなくても、平凡な自分であっても悲劇にはならないということを知って欲しいと思います。

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#摂食障害　前掲書㉞(p.209)真剣に生きるがゆえに、苦しみと出会い、葛藤し、それに耐えられなくて、自分の問題を回避したり、否認したりせざるを得ない悲しみを持った彼女たちに、なんとか病を放棄して本来の姿を取り戻してほしいという思いを治療者は持っています。

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#摂食障害　前掲書㉟(p.209)摂食障害は、行動の病ですけど、その本質はこころの病です。表向きの症状だけ取り除いても、治癒するものではありません。

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#摂食障害　前掲書㊱(p.210)治療者には、摂食障害の表向きの症状に翻弄されずに、そのこころと向き合ってみませんか、と言いたいですね。きっと、人のこころの深さを教えてくれるでしょうし、生きる意味を考える時間を与えてくれます。それは、とても貴重な体験でもあると思います。

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#摂食障害　前掲書㊲(p.231)補遺/松本邦裕９章　摂食障害は治るのでしょうか。２０年以上の長い経過でとらえますと、極端なやせと拒食、頻繁な過食・嘔吐などの表在化している病状という点だけを見ると和らぎます。身体のみを診る治療者には、治ったように表面上は見える所に行き着きます。

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#摂食障害　前掲書㊳(p.231)しかし、そのこころが、言わば治ったといえる状態にあるのか、そうではなくて、いまだ摂食障害の人特有の無能感や絶望感、破局感をこころに強く抱いているのかは、本人自身が誰よりも知っていることでしょう。そしてなおも、それをいまだ知りたくない、それだけを

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#摂食障害　前掲書㊴(p.232)消してしまえばよいと思い続けている人がほとんどなのです。こうして表面に表れる病態は、アルコールや睡眠薬、下剤、利尿剤などの慢性の常用、つまり嗜好、睡眠障害、慢性うつ病、性的乱脈、社会的ひきこもりに移行します。

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#摂食障害　前掲書㊵(p.232)摂食障害という心の悲劇は、起こしてしまったことを、いかなる方法をもってしてもなかったことにはできません。しかしこの悲劇を続ける必要もありません。その悲劇から不幸の少ない生き方へと向かう努力は、一度しかない人生においてやってみる価値のあることです。

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#摂食障害　前掲書㊶(p.209 & 232)摂食障害という悲劇の状態でいる限り、生きている喜びと出会うことができないのですから、悲劇は手放すべきなのです。一緒に病気の部分と戦う同志として治療者は支援しますし、彼女たちにも勇気をもって健康への努力を試みてほしいのです。

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表面的な治療ということで申しますと、精神病を経て虚心坦懐に至るというよりは、統合失調症患者がある種の不自然な超然さに至っているだけの状態を「あえて」受容しているような不誠実さを、精神医療の関係者に見出してしまうことが少なくないと、春日武彦は述べています。また、他方で、春日は

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コントロール願望に囚われている医師は結構多いとも述べていて、このことは、本著の治療の構造設定・方法についての章を読んでいる時に、頭をよぎりました。摂食障害の場合には、ストラグルとも呼べるやり取りになる点で意味合いが違うかも知れませんが。それから、治療のターゲットに対するスタンス

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の取り方の違いについて。腎不全とか、IVHを必要とするほど内科的には危機的な状態とか、BMIが８点とかでちょっと間違えば死ぬような患者さんに任意入院で閉鎖に入ってもらって治療契約を結ぶとかいうことと比較するのは、これまたカテゴリーの誤りになるかもしれませんけれど、「失敗した物語」

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にどう向き合うか、という姿勢について、春日がDV被害者の女性について述べたくだりがあります。(『精神科医は腹の底で何を考えているか』幻冬舎新書(pp.143-146)) DV被害の女性が二次的に生じた不安とか不眠とか神経症症状などで精神科医のもとを訪ねて来た場合。彼女の症状に対し

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てその場しのぎの治療なんかしていても仕方がない。DV対策を講じなければどうにもならない。ただし対策の実際は、結局のところ彼女が暴力男ときっぱり別れるしかない。それを前提に、別れたことに由来する空虚感だとか生き方そのものにまつわる問題に立ち向かうといった段取りとなるだろう。

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しかしながら、彼女は結局のところ、ある種のドラマチックさ、濃くて過剰な人間関係でなければ満足のいかない人なのである。精神科医に相談しなければならないほどに波乱万丈な人間関係の渦中にいることこそが、屈折はしているが彼女なりの濃厚で濃密な人生なのであろう。だから治療者が無理に介入して