『甘きを喰えよ、心の臓』

朴＠色々と限界値 @hzy195

「――大丈夫です。あんまりにおなか減ってたみたいだったので雑炊出したら土鍋いっぱい空っぽにしてましたよ。いや現役男子高校生はやっぱりいっぱい食べますねえ。まだ足りないって顔だったのでうどんとかも食べさせましたけど、いっそすがすがしいくらいでした」

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何となく、その時流れた涙のことは伏せてしまった。

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でも、ならば、俺がもっとちゃんと頑張らなければならなかったのに。 俺は長男なのに。 ――堪忍袋の緒が切れるってのはああいうときのことを言うんだよなあ。俺知ってる。

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――ゴン！ 「いっだぁ！ナニコレ痛い！竈門君のデコ…はきれいなもんだなナニコレ痛い！血ぃ出てない！？かいがく後で何とかしてこれ！」 「笑えるｗ」 「ぶち殺すぞ！いや俺が今ぶち殺したいのはお前だわ竈門、いいか」 大人でも、子供でも、長男であっても、できることには限りがあるんだ。

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どうにも、憐憫を含んだ声だった。 「大人だって子供に対してスーパーマンになれんことはあるよ。同じように子供は大人にとってのスーパーマンになりえないことがあるんだ。それを思い上がっちゃだめだ」 すべての子供が大人にとってのスーパーマンなら、俺ら義兄弟は親に捨てられることはなかった。

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「医者だってすべての人を救えないのに、どうしてお前がお前の家族全員を背負って潰されることがないって言えるの」 「ていうかまず医者に感謝してくれよ。お前の父ちゃん治ったのはひとまずお前の父ちゃんの主治医が力を尽くしてくれたからだろ。

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それだけでも奇跡なことってあるんだ。天が恵みをくださると言ったらそれだけだ。それ以上を望むのは神様にだって酷なことだ」 静かに、スマートフォンの画面がビデオ通話に切り替わって彼らにフォーカスを合わせた。

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探していた頼れる長男は、ぐったりと見知らぬ青年にもたれかかって力尽きている。 そこにいたのは、それこそ天からのみ使いのような金の髪持つ青年だった。 まるで神域にいるのかと端末の向こうで息をのむ。 それでも、会話は日常だった。 「――な、竈門君、明日の朝は何を食べる？」 「あした」

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「うん明日。ていうかもう腹減ったのかよ切実な音立ててるよやだ…でも眠いだろ。今うちの冷蔵庫の中掃除しきっちゃったから、食材買ってくるから明日の楽しみにしてちょっと待って」 「…おいしいもの」 「美味しいものか。甘いもの？しょっぱいもの？辛いのはしばらくやめておこうな」

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「……」 「ああ、思いつかないなら勝手に作るよ。だし巻き卵好き？竈門君」 「うん」 「俺それと同じくらい納豆入れた卵焼き好き。両方作っていい？」 「…はい」 「あっ嫌がってるね食わず嫌いかお前…まあ作るけど。食いたきゃどうぞ、兄貴泊まる？」 「俺はいったん先生に報告に帰る」

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「わかった、朝になったら俺からも連絡するわ。急に悪かった。ありがとな」 「寝るのか？」 「いや俺これから仕事だわな。朝方になったらスーパーも食材補充するだろ、それまでこの部屋で待機してる」 「寝ろ」 「昔から俺が寝れない体質なの知ってんだろ。

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データだけ店舗スタッフに引き継いだら仮眠取るわい…寝た？竈門君」 「……」 「あの、そういうわけで、竈門君のお母さ…？？？なんでビデオ通話になってる？兄貴テメエ！スミマセンこんな金髪の風体の悪いのの家に息子さんお預かりして！でもできれば朝までお預かりさせてほしい！お願いします！

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（小声）」 「ねえお母さんお父さん、冨岡先生が…我妻先輩？」 「あっ竈門さん久しぶりだね、相変わらず愛くるしい。半年ぶりに俺の胸が締め付けられるほどです」 「言い方がキモイ」 「るっさいわ！トミセンと誰が今こいつ探してくれてたの？」 「夜も遅いので、今は冨岡先生だけが…ご近所なので…

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お兄ちゃん我妻先輩のところにいたんですね。さすが鼻がいいわ…」 「？わからんけど、ご兄弟も心配してたでしょ、すぐ連絡できんでごめんね、なんかすっごい嫌がってさあ」 「いいえ、…安心しました」 「そうお？それを聞いて俺の方こそ安心しました。夜も遅いしおやすみなさいしようか、竈門さん」

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「はい。お願いします。おやすみなさい」 「おやすみ…っっだぁ！かいがく！なんでたんこぶに湿布でたたいた！？」 ――ブツッ

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こういうのをだらだらと書きだすと書きたいネタが飽和したってことなんだよな俺知ってる

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長男、「校門を通るといいにおいがする」ってことだけ認識しててねずこちゃんに話したことがある　だから学校結構好きだった　そんなことやってて認識しないから我妻先輩の卒業後崩れる

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あがつませんぱい「俺は食いたいときに食いたいもんしか食わん」と豪語している　付き合いめちゃくちゃいいくせにそういう だからたんじろくんへの（食物的な）甘やかしがものすごい　大体欲求が理解できちゃうから あと基本がそれで飽食の時代にそこそこ平和に育って食いだめしないで太らない

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「――ねずこちゃん。俺はね、一緒に暮らすのが一番いい兄妹の形だとは必ずしも思わんのよ」 俺の頚ね、母親に梱包用ロープ、わかる？アレで絞められた跡が残ってたんだってさ。 それでゴミ箱入れられてたの。すごいでしょ。

朴＠色々と限界値 @hzy195

母親とね、当時一緒に暮らしてた男が逮捕された。「結束バンドで締め付けるのはかわいそうだった」って言ってたんだって。すごいなと思うよ。他人事みたい？うんそんな感じ。 かいがくだって似たようなもんだよ。爺ちゃんは紛れもなく人格者だし、

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そういう人に引き取られたのはすっごい運がよかったって言えるよ。 でも、だから自分も同じようにふるまえるかって言ったらさ、そんなわけないでしょ。 そんなことができるんだったら、俺の頚なんかでっかい剪定用ばさみでぶった切っちまえばよかったんだ。

朴＠色々と限界値 @hzy195

「だから俺たちは離れた方がうまくいった。どんなに仲が良く尊敬しあういい家族だって、その選択の権利だけは保証されていないといけない」

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なんか拙宅の他のスレッドでもそうだけどねずこちゃんに対して激烈に暗黒面だすあがつまなんで…？言いやすいの…？無意識領域に彼女しか入れないからなの…？

朴＠色々と限界値 @hzy195

父さんのパンは世界一だ。パン生地をこねるようになって五年たっても、俺ではまだかなわない。 何時だって美味しい。俺はご飯派だけど、決してパンのおいしさがわからないわけじゃない。 それなのに、なぜなんだ。 噛めば噛むほど口の中から水分が奪われる。濃い目の味付けでも、薄目の味付けでも、

朴＠色々と限界値 @hzy195

違和感が募る。欲しいのはこれじゃなくて、もっと。 「ふ、ぅ～～～～っ」 父さんのパンは世界一で。たまに修行もかねて焼かせてもらう俺のパンだって一般的には悪くないと思うのに。 砂粒をじゃりじゃり噛むような心地だ。なんで、なんでだ。

朴＠色々と限界値 @hzy195

味に飽きたのかな？食感に飽きられる立場か？ なんでこんなに、その味を匂いを美味しくないなんて感じるのか。 「うえっ……」 ヤバい。また吐く。 帰りたいのに帰れない。誰にも見てほしくない。 星の光をきんいろに弾いたようなその人が目の前に現れて座り込んだのは、その時だったと記憶している。

朴＠色々と限界値 @hzy195

あがつませんぱいの手はひんやり冷え性だといいなー 性癖って言うのもあるんですが長男が苦手なクロワッサンとかデニッシュ生地とか手早く成形するのうまそうだなって…長男手があたたかすぎてバター速攻で溶けそう問題

朴＠色々と限界値 @hzy195

昔バイトしてたパン屋さんは店長が徹夜してパン生地こねても回らないことざらだったからさすがにミニクロワッサン（袋に五個詰め合わせで売る感じの）なんかは業者の成形済み生地買って焼いてたけど長男意地でもそういうのやらなそうだなって…

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いやミニクロワッサン、幼稚園とかにも卸していたのでとにかく同じ規格でまとまった数が必要だったってのもあるんですが

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――にいちゃん。 ――兄ちゃん、なんか手伝えることない？ ――兄ちゃん顔色悪いよ、俺たちにもなんかさせて。 ――お願いだから休んで、お兄ちゃん。 「――だいじょうぶだ、にいちゃんが、なんとか、して、や――……」 すう。 「――さみしい男だねえ、お前さんは」 頭を、儚く撫でられたような気がした。

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商品の入った紙袋の中に戻してしまう炭（エチケット袋） トラウマ

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「眠って、食べて。――まるで、鬼のようだ、って？」 「！」 「俺の実家にねえ、『善逸伝』なんてはた迷惑な書物が代々伝わってたのよ。まあ俺の両親は読んでなかったか、借金の担保ぐらいにはしたかったんじゃないかと思うんだけど。爺ちゃんがね、俺を引き取った時、それも一緒に引き取ってさあ」

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「似てるよね、確かに。あの本の中では女の子だったけど…ああ、名前も同じ、ねずこちゃんだね。人を食わなきゃ救えると考えるんだからあの本の中の筆者のヒーローはすごかった。おかげで古文だけは成績良かったのよ俺」

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「なあ、たんじろ」 「心を込められれば込められるほど、受け取れないものになる時はあるよ。誰だってそうだ。特に恥ずべきものじゃない。あとからああそう言えばって受け取ったってかまわないし、無理なら忘れたふりをしたっていいんだ。人の気持ちなんて自分勝手で自己満足で、そういうものだろ」

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「お前は、お前の守るべきものをちゃんと守ったと俺は思うけど。それが余すことなく完璧でなくちゃいけないだなんて誰が言ったの」

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「だって、俺、長男、」 「お前その認識だといつか大事な兄妹殺すぞ」

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それに、お前が全部完璧にやっちまったら、親父さんだって復帰しがいがないだろう。ご家族だっていたたまれない。 ちょっとくらい仕事残すくらいがちょうどいいんだろうよ、クソガキ。

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そうだ、初めて泣いたのだ、と思った。 初めて正気で、感情のままに泣いたのだ。

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世の中、割と結局金だよなあ、と骨身にこたえる毎日である。

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「見聞は、自ら広げに行かなければ広がらないよ」と父は言った。

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あっやめてあがつま病まないで

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うっうるせえー！爺ちゃんが褒めてくれた髪だぞ！兄貴が「目立ちすぎてイラつく」と言いながらほんのり悪くないって音を立ててくれた色だぞ！染められるわけがねえだろ！ しかし地毛ですって主張しても信じられることなく落とされまくるのは…え？学校側への素行調査で黒髪だった時代の写真見た？

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普段の素行が？問題？え？嘘過ぎない？ 今更になって内申を積み立ててくれた学校と風紀委員顧問のトミセンに感謝の念を覚えてもしょうがねえんだよなあ…うん今度会ったらお礼を…いやそれでも暴力教師なことには変わらん。増長はさせたくない。いや全部素だからそういうタイプではないだろうけど。

朴＠色々と限界値 @hzy195

高卒でってのはこういう時に厄介だ。大学通って新卒ならもうちょっと融通利くのかもしれん。高卒って学校の名前を背負うところがあるからな…うちの学校の名前は評判いいから俺にとってむしろプラスに働いているのだろうがそれでも俺の能力値がアレでアレ過ぎて落とされるんだろうな…

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俺ってやつは本当に無力だぜ…。

朴＠色々と限界値 @hzy195

俺ってやつは本当に愚かだぜ。 まさかとは思っていたよ。思ってたけどさあ！ 「君の仕事はここにはないんだよね」って言われるとほんと心が死ぬからやめてくれ。「君の先輩たちが抱えてる仕事の中でも簡単な仕事を『やらせてもらってる』だけなんだよねえ。成長がないよねえ。要らないよねえ」

朴＠色々と限界値 @hzy195

「店頭にも立てない、誰でもできる仕事しかできない、それで給料もらえると思ってるの？バイトでも雇えば事足りるよ。明日から来なくていいから。パートさんたちとの交渉も終わって復帰するしさ、君がやってた仕事は君の先輩たちの仕事に戻る。そしたら君の存在価値なんてどこにも無いでしょ」

朴＠色々と限界値 @hzy195

「何度も言ったでしょ。『君はいてもいなくてもいい人材だ』って。空気読んでほしかったよね。半年で何も成長できないクズなんだよね君は。そんなのもろくにできない。信用できる人格じゃない」

朴＠色々と限界値 @hzy195

わかってた。 先輩たちは気安かったけど、どこかこっちを嘲笑しているザリザリとした音がしてた。上役たちは粘っこかった。土日や深夜帯までの在宅ワーク、申請は出してたけれど、本当はどこまで受理されてたんだろう。先輩たちが自分がやったと主張すれば、たぶんそれが『真実』となったろう。

朴＠色々と限界値 @hzy195

ああ、昔里親たちのところをたらいまわしにされてたような駄目な人間だから――いや、俺はほんとに人間だろうか――駄目だ昔爺ちゃんに拳骨落とされたんだ。 それでも俺は、いるだけで誰かの所属する組織を壊す。それが家庭でも、会社でも。そういうことだ。 そういうことだったのだろうと納得した。