4【ネタバレ】森博嗣の初読感想 W,Gシリーズ

前回(Part3)までの【ネタバレ】森博嗣 初読感想ッ！
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簡易まとめ
・まがたんが人の子だと分かるらしいから頑張って読む
・不死の人間もウォーカロンも切ない生き物
・「生命体であるならば次の命を繋いでほしい」という願いを持っている自分を知るなど
物語を通じて自分を発見できるので読書は最高です

読む前のわたくし
「海月くんを弟にする」
「海月くんは普通の一般家庭出身の普通の子であってほしい」
「各務みたいな危険な人の子ではありませんように」
「山吹や加部谷とずっと友達でいてほしい」

読んだ後のわたくし
「離れ離れでもズッ友だって信じてる」
「初めから幸せなんてなかった」
「海月くんの幸せを願っても一生叶わない気がしてしまう」
「海月くんを弟にする、世界の果てまで私が連れていく」(後述)

Wシリーズ、未来ものSFなのに表紙にアナログ感の強いマチエールを使用した作品を使用していて好感度が高いです。身近なモチーフの集合体からは「未来は現代から地続きで広がっているのよ」という印象を受けます。

君は愛を信じているか

愛情を確かめ合う行為に対し「非生産的」とか言っちゃっていているけど、性行為に嫌悪感を抱いているとかではなく、あくまで「100年以上も愛を信じられるのか」という話です。
リアルではたった一人を100年以上愛し続けた人間はいないと思うので、「百年以上たった一人を愛すること」は「寿命が延びた」という設定上のファンタジーを感じます。
愛情って劣化しないの？ あれ、自分で言っていて私は愛を信じていないのかもしれないと気づいてちょっと切なくなってきちゃったぞ。
年齢と共に性欲が減退しないなら、あり得るのかな…自分、愛情は年齢共に表現方法が変わると思って生きているので、すごく引っかかったなあ。

ツイートだと略し方ミスっちゃっているんですけど、ここで言われているのは「母性」という愛についてだね
まあ子供が生まれない世界なら確かにそれは無くなっちゃうのかなあ～と思いました。でも、母性(父性もね)は人間に与えられる最初の愛だと思うので、そこが変容しちゃっているのはちょっとめげちゃう。

ハードもソフトも人間が変わっていくのか、なんだろう…
言語化に時間がかかりそうなので抽象的な走り書きになっちゃうんだけど、ライブ感で読んでください。
雑味が無い。合理的になりすぎる。雑味…
ボディが完璧に近づくほどに不合理になっちゃうの、うまい采配ですよね。人口が減少しちゃっているので全然うまくはないんだけど。
ていうか肉親を殺した四季が作り出した世界がコレですよ。ねえまがたん今どんな気持ちで生きてるの？ 何をもってして生きるとあなたが定義しているのかは凡人の私には半分も理解できないけれど

私は不完全な人間という生き物を愛していて、不完全と不完全が身も心も一緒くたになっちゃってお互いの輪郭が溶け合っちゃうそういう恋愛を見るたび「人間最高だな、人間かわいいな、人間は超愛しい生き物だな」と思ってしまうのです。みんな愛のもとに迷子になって愛のために生きて死ね。という考えの持ち主なので、だから結構、ここ変わっちゃうか～～～未来～～～～（額を押さえる）
メタですがSFは現代社会の問題を味付けして語っているお話だったりするじゃないですか。だから余計にショック。

抽象的かつ厨二的な言い回しですが、私は「そぎ落としてそぎ落として世界の最後に残るのが愛」だと考えている人間なので、そこに私の信じる愛が無いのなら、何を信じればいいのだろう…
どんなに怖くたってすべての終わりに愛があるから目を反らさず生きている(桜流し／宇多田ヒカル)人間には耐えられないな～と思いながら読みました。

講談社タイガ「魔法の色を知っているか？」森博嗣　p259より
「私は、何をすれば良いでしょうか？」
「ご自身が、それを決めるのです」

四季とハギリのこの会話もそうだけど、全てのシリーズにおいてそれを問われている気がする。最初に問われたのは多分、S&Mの数学者の話だったと思うんだけど（4年も前に読んだから記憶違いなら申し訳ないです）

人生は選択の繰り返しで「教えてよねえ、選ばぬまま、過ぎ去ったその道の行く末を」(ポッピンアパシー/米津玄師)と思いながら、でも振り返らないでみんな生きてるんでしょ、そうでしょ
いや萌絵とか犀川は自分で選んだ道じゃなくて四季に選ばされた道かもしれないから軽く眩暈
はあ、もしGで動画作ってって言われたらポッピンアパシーだな。つらいな。（※私は手描き動画を作るオタクです）

そしてハギリ、ハギリは何を選択してどこへ行くんだろうか。
あと、できればずっとウグイといいコンビしていてほしいけど、このシリーズは医療が進んでいる割にサクッと人が死にそうだという気配を感じ取っているので（ていうかもう何も信じていないだけ）、アネバネとウグイどちらかが死んで仕事を引き継ぐ展開があっても仕方ない覚悟はしてあります

リアルに追われてしまいなかなか予定撮り読書時間を作れずにいた私

フォロワ「犀川先生に何かあったとしても…？」
わたくし「やめて」

<!-- 読む前の世界線ここまで -->

<!-- 読んだ後の世界線ここから -->

フォロワ「これを予備知識なしに突然読まされたリアタイ勢の気持ちも考えて！？！？！？」
わたくし「あまりにもかわいそう」

犀川先生も「成長するにつれて鈍感になることが大人になるということ」というようなことを言っていたと思うのですが、本当に納得しかない。
（私の場合は、世界の眩しさと鋭さから身を守ることで、自らを覆う殻を頑丈にかつ滑らかにして何も引っかからないように強固にしていくことで、やわい中身を守って、刺激から遠ざかることで大人になったフリをしているだけかもしれないのですが）

読み終えた直後は衝撃を受けつつもそれはそれとして心地よい感情の中にいたんですけど、
読後二時間くらいして、海月が取りこぼしてきたものやもう二度と手に入らないもの、失ってきたものの多さに段々焦点が合ってきてしまって、殻の中で泣いていました。遅延性の毒です。私の中の凶暴な私が、俺をもっと鈍感にさせろと言って暴れていました。

なおフォロワによると年単位で時たま毒が回るらしいので覚悟しておきます。

「魔法の色を」の方に少し触れるんですけど、ナクチュが…
フォロワに指摘されるまで気づけなくて…
ミナス～とルナティック～はすぐ分かったんだけど…

私は犀川と萌絵が大好きなので、未来に彼らの痕跡が無いことがほんの少し哀しかったので、まさか海月くんが…泣いてしまったポイントのひとつです。
自分、宇多田ヒカルの桜流しが物語の完成品として体の真ん中に刺さっている人間なので「貴方が守った町のどこかで今日も響く健やかな産声を聞きたいんだ、私たちの続きの足音を聴きたいんだ」という人間なのですが、
世界の果て、淡く青い空と白い砂漠の境界に一人で佇んでいる海月を想像してめちゃくちゃ泣いた。いや実際はめっちゃ人がいて組織的な働きがあったのでしょうけど、心象風景ね。
そしてそこに至るまでに、彼はきっと、いろんなものを捨てながら生きてきたのだと想像しています。でもその行きついた先が真賀田四季なの、どうなの？ むり

私が真賀田四季を愛せてないからそう思っちゃうのかな…
前のまとめからの繰り返しになりますが、私が彼女に対して抱いている感情は嫌悪ではなく恐怖です

好きな人が未来を継ぐはたらきをしたことは嬉しいけれど、それ以上に私は、海月にはおじいちゃんになっても山吹達と一緒にいてほしかったです。数年に一度フラッと会ってちょっと喋って、また明日も会うみたいに別れてまたお互いの生活に戻る、そういう彼らの未来を願っていたので胸が苦しい。時を巻き戻せるなら28歳くらいの海月を呼び止めてくれ加部谷、もう一度告白してくれ加部谷～～。

なんで海月はこの人生を選んでしまったのだろう。

p186
(罪の発祥を突き詰めていくといくらでも「誰のせいでそうなったのか」理由を見つけられてしまうので)「(略)罪はどこまでも連鎖する」
「だんだん薄くなるわよ、遠ざかるほど。ああ、もしかして、貴方はその事故で自分を責めようとしているわけ？ ご両親が関っただけじゃないの。貴方には無関係じゃないの？」
「真賀田博士のように両親を殺せなかった責任があります。」

海月は「物事を正しく認識したいだけ」(頁失念)と言っていたから、彼はきっとずっとこういう人なんですね。願わくば私は海のように大きな愛情で海月をフワフワたゆたわせていきたいのだが　あー

選ばぬまま過ぎ去ったその道の行く末に、もっと幸せな海月がいても全然ありじゃないか…それが本当に悲しい。
しかもそれが大学時代からって、なんなんだよ。

不真面目な感想

どんな風に海月が変わっていったって歳を取ったって環境が変わったって私が海月くんを弟にしたい気持ちは一向に変わらないのですが…

いっろんなショックから自分を遠ざけての感想としては
「めっちゃ喋るやん海月くん」
「きみ昔はワインを飲んで「美味しいですね」とか言う子じゃなかったでしょ」
です。
いや全然弟にするしカレー作ってあげますけど、
これからは
「このカレー、肉が少ないね」
「コクが少なくない？油気にしてるの？」
って言われちゃうのか…いやそれはそれで全然
「太るの気にしてるのか？ バカだな、少しは自分で考えろ。運動すればいいだろ」とか言ってくれるなら全然ありだな（私の頭は正常に動作しています、みんな頑張ってついてきて）

あとこれまで容姿についておそらく描写が無かったと思うのですが、
海月のビジュアルが「好青年のやせ型の黒髪で前髪がある」という記述を見つけ、公式との解釈一致にはしゃぎました。

我「私の中の海月像は、175cmやせ型黒髪、前髪が伸びると横に分けるので額が出る、耳たぶは密着型、目は奥二重で肌が綺麗で唇は薄め、手首の関節が骨ばっている。」
フォロワ「行間を読みすぎｗｗｗｗｗ」
我「山吹は176cm普通体型ですぐ筋肉がつくタイプだけど腰回りがぷにぷにしがち、髪は染めたり染めなかったりで伸びたら一気に切るので髪型変わりがちだけど襟足が伸びると苛々してすぐ切りに行く方、耳たぶは分離型、目と眉がはっきりしている、口が大きくて爪が丸い。」
フォロワ「行間を読みすぎ（ドン引き）」

あと言ってないけど、山吹はスニーカーが好き（履くのが好きなのではなく、購入時に性能やデザインを見比べるのが好きというだけで強いこだわりは持っていない）という私の中の設定があります。
海月ですか？ 同じ靴下を2つか3つまとめ買いする、同じ内容の食事が2回以上続いても平気、冬場はリップクリームが無いと辛いけどよく無くすし服のポケットに入れっぱなしのまま洗濯しがち、という脳内設定があります。私の頭は大丈夫ですがみなさんついて来られているでしょうか

みんな優しい

今回フォロワ達に海月ショックから助けてもらえたんですけど、みんなこの本を読んだ後たくさん感じるものや考えたことがあって、刊行から数年たった今だから、こうして新参者の私にかける言葉を所有しているのだろうなあと想像しました。
あと森ミスの民、頭のいい人が多くて、言語化が苦手な私の「つらい」しか言っていない感想にも付き合ってもらえたし、私が言葉にできるまでちゃんと待ってくれたりとか、それに対するレスポンスが真摯だったりとか、人の優しさに触れてしまった～。森ミスを読んだ人たちがそれぞれが願う幸せの形に近づけるようお祈り申し上げる～～

私の幸せの形は、海月くんを弟にして山吹を兄にして加部谷ときゃっきゃしながら犀川家にしょっちゅう出入りするそんな世界かな…ふふ、手に入らないね………

次は「ψの悲劇」って、また悲劇なのー！？！？
しかし次に読むのはWシリーズだったはず、次回更新へ続く

まとめ
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