泣き虫神様（晴）が見守る赤ちゃんに転生した道の育児日記

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

結局離れてねぇじゃねえかと言う話なんですが、そこはほら、把握しておかないと。道に悪い虫がついたり、悪意に晒されたりしないようにしないとダメじゃないですか。監視ではないです、言うなら見守りサービス。全てはおまえのために。

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昔は本当に些細なことで道は命を落としかけていたけれど、晴の守りと、道が何度も転生したお陰で運命力も弱くなったのか、大きくなってからは命を落としかねない事故はなく。町に住み着く怪異は晴が怖くて道に手を出してこないし、道も力が強くなってきたので、ある程度自分で何とかできるようになって

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晴も安心していた。言うなら、油断していた。驕りがあったかもしれない。道の魂が13歳まで生きたことは、晴が見てきた中でも初めてのことで、今度こそ大丈夫だと思っていたから。 道が15歳になった時。 道に振られた女子生徒が、道を突き飛ばした。車の行き交う道路に。

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指輪を通して見ていた晴は血の気が引いた。あわてて指輪を通じて、道の元へ馳せ参じ、女生徒を突き動かした悪意を霧散させた。 車にはねられ、アスファルトに血を流して倒れる道に駆け寄って、抱きしめるけれど、どんどん血が流れていく。白い直衣が道の血で染まっていく。

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死んでしまう。道が、道が死んでしまう。ひゅうひゅうと浅い呼吸ばかりが唇からこぼれるばかりで、道の傷を防げるような術を紡げない。 どうしよう、道が死んでしまう。

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「しっかりなさいな！」 ぴしゃりと、晴を叱りつける声がして、華奢な手のひらが道の体に翳された。 「んもう！私、本当は人間の運命に口出しできない立場なんですからね？！あとで他の神様から追求されたら、全力であなたのせいにしますから！」 たまもの前が道の体に術をかけていた。

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道の体から流れる血が止まった。傷を塞ぐことはできないが、これ以上血が流れることがないように、たまもの前は血液を道の体に押し止めていた。 「血は私が留めます。あなたは、救急車が来るまで道さんの心臓が止まらないよう、強制的に動かしてなさい」 「ああ、わかった」

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道、道。どうか死なないで。もっともっと生きていてほしい。おまえの魂は、何度も何度も夭逝し、この世界を殆ど知ることなく死んでしまっていて、やっと、やっと15まで生きられたのだから。もっと、おまえに生きていてほしい。 おまえに、もっと、私が守り続けた世界を見てほしい。

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救急車に運ばれる間も晴の術とたまもの前の術のおかげで、それ以上血を失うことなく何とか生還した道。 手術が終わり、集中治療室で目を覚ますと泣きじゃくる両親と、忙しそうな看護士と医師。ほどなく一般病棟に移れば、険しい顔の警察の事情聴取が待っていた。

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病室には自分一人しかいなくて、わざわざ個室頼んだのかと思ってる道。事件については目撃者がいたのもあって、特に追求されることもなかった。 ゆらゆらと揺れる薄緑のカーテン。窓の外の青空。どれもこれも色が淡くて、現実とは思えない眩しさだ。

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車が迫った時、慌てた様子の晴の姿を見た気がしたのに、なぜか自分の側には晴がいない。指輪もしっかりと鎮座しており、相変わらず指輪が他人には見えていない様子をみると晴がいなくなった訳ではなさそうだ。容態も安定しているので、今は付き添いもいない。 「……せーめー、」 話し相手になって。

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指輪に話しかければ、ベッド脇に珍しく赤い直衣姿の晴が立っていた。 ……いや、いつもの白い直衣姿なのだが、服が赤く汚れている。こんなに鮮やかに赤く染まることなど。 道「……せーめー、さすがに今まで血液汚れを放置しておくのは衛生的によくないかと」 晴「……そういう問題です？」

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道があっけらかんと話すものだから、晴は深くため息をついて服を浄化した。道の血液で真っ赤に汚れていた直衣が、いつものぴかぴかの真っ白な直衣になる。 道「どんな汚れでも、数日も放置するのはよくないでしょう？」 晴「……私には、余り汚れとか関係ありませんけどね」 道「では、なぜ放置を？」

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晴「……おまえが、死ぬかと思いました」 道「はあ」 晴「ずっと、死なないように見守ってきたのに。驕っていたのかもしれません。また守れないのかと思いました」 道「……はぁ、」 晴「手術が終わって、それから、おまえが呼びかけるまで日が経っていることに気付きませんでした」

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道「そうですか。待たせたみたいでごめんなさい」 晴「……勝手に死なないでください」 道「……はい」 晴「もっと、もっと長生きして、天寿を全うしてくれないと困ります」 道「はい」 晴「……しなないで、いかないで」 道「わかりました。勝手に死にません」

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ベッド脇に立ちすくみ、ぽろぽろと涙をこぼす晴を、道は仕方ないなぁと笑った。 道「儂の神様は泣き虫ですからね」 手始めに、暇なので絵本を読んでくれませんか。道がそう言うと、晴はずびっと鼻をすすって絵本を術で取り出した。