泣き虫神様（晴）が見守る赤ちゃんに転生した道の育児日記

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「好きな子？別にいないです。興味ない」という道は、今日も元気にお外で友達と遊んで、お勉強して、晴に抱っこされたり本を読んだりして元気にすごしてる。道を寝かしつけながら、このまま元気に健やかに大きくなってほしいなと思う晴。 「ぁ、……せーめー、どの……？わしは、」 晴は凍りついた。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

震えながら、道の胸をぽんぽんと叩く。言葉を選んで話しかける。震えそうになる声を悟られないよう、優しく。 「おまえは夢を見ているんですよ」 「ゆ、め……」 「そう、夢です。ゆっくり息をはいて、目をとじて……」 晴の言う通りにする道の額を優しく撫でる。 「おやすみ、どうまん」 記憶を封じた

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

泣き虫神様晴が転生した道を赤ちゃんから見守ってる晴道の話。 近くで子供を狙った不審者が出るという注意が回ってくる。当然、道のご両親も心配するし、道にも知らない人にはついて行ってはダメよと注意する。 「具合が悪そうな人は？」 「そういう時は、大人を呼んできますと答えてね」 「はーい！」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

下校中、いい感じの枝を拾った道が楽しそうにぶんぶん振り回しながら帰ってたら、道端でうずくまってる女の人を見かけるんですよ。道は思わず駆け寄る。 「大丈夫ですか？」 女の人はとても苦しそうで、思わず道は手を伸ばすんですが、そうしたら静電気みたいなのが走って、道の手をはじく。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

え、と思ってたら、女の人が本当に苦しそうに呻くんですが、どんどん顔つきが変わっていく。口は耳まで裂けて、目はつりあがり恐ろしい顔になる。恐怖で震えている道をそっと後ろから晴が抱きかかえて、よしよしと背中をぽんぽんと叩くと道の震えがおさまっていった。 「……低級霊ごときが」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道は晴の狩衣をぎゅっと握りしめてるんですけど、よしよしと頭を撫でる晴の手にほっと息をつく。よしよし、怖かったね、もう大丈夫ですよ。 「地獄の猛火で焼かれるがいい」 そう言うと少しだけ熱気が道の頬を撫でて、あっという間に澄んだ空気になる。きょとりと晴を見上げたら晴は笑ってたんです。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「道、人と人ではないものを見分けられるようにならなくてはダメですよ」 「……はぁい」 「でも、苦しんでいる人に声をかけてあげる優しさは、とても良いことです。ただ、おまえのご両親が仰っていたとおり、今は物騒ですからね。気を付けましょう」 「はい！」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

おろしてもらって、二人で手を繋いで帰る。晴と繋いでない方の手は相変わらずいい感じの枝を持ってる道。晴はこっそり道の通学路に悪いものが出ないように、狐火で焼いて浄化していった。 狐火がでる道として、オカ板に紹介された。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

お父さんはむーとか、そういうオカルト大好きです。心霊スポットとか行かないけど、そういうお話大好き。お母さんはお化けとか幽霊とか嫌い。ホラー映画の予告見ただけで眠れなくなるタイプ。 なので、お父さんはこっそりタブレットで見てる。道はお母さん似で怖い話大嫌い。お化けも幽霊も嫌い。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

父「この近所で狐火が出るんだって！」 母「えー？！やだー！！」 道「きつねびってなぁに？」 父「お化けとかが出す火だよ」 道「えー！！お化けやだー！！」 晴「大丈夫ですよ、道。その狐火、私の火なので」 道「……せーめーの火？」 晴「はい、私の火です」 ホラークラッシャーせーめー

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そもそも、この家に悪いものは入ってこれない。道を寝かしつけながら、晴はちらりと窓の外を見た。怪異が涎を垂らし、窓に張り付いて道を見ている。中に入ってくる勇気もないくせに。まあ、入ってきたら狐火で焼き尽くしてやりますが。 すやすやと眠る道の胸をぽんぽんとリズムよく叩く。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おまえの眠りを妨げるものは、私が全部燃やし尽くしてあげますよ。だから安心して大きくなりなさい」　 窓の外で涎を垂らしてみていた怪異が、聞くに耐えない悲鳴をあげて燃えていた。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道は大きくなるにつれて、力が強くなってくるんですが、お休みの日に晴と一緒に折り紙で遊んでた。 「道、せっかくだから面白いものを見せてあげますよ」 晴が足のあるツルを折り紙で作って息を吹きかけたら、よたよた動く式神ができた。本気で作った訳じゃないので、めっちゃよたよた。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「ンンン……！せーめー、なにこれ……！（笑いをこらえてる」 「足付きツルです」 「が、がに股じゃん……！」 「見てください、スクワットするんですよこれ」 「ンンンンン……！！」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「儂も作れるようになる？」 「道ならすぐできますよ。動くように命令しながら息を吹きかけてごらんなさい」 「じゃあ……」 蛙を折って、晴の言うとおり動けと願ながら息を吹きかける。 蛙なのに魚のようにビチビチ跳ねる式神ができた

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴が見せてくれる式神は、こういう適当に作った小さくて変な動きするやつもあれば、大きくて美しい鳥が札を投げるだけででてきたりするやつもあって、そのたびに「せーめーすごい！」って言う。もう小学生になったけど、せーめーに抱っこされるのは好きでよくねだる。せーめー抱っこして。はいはい。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

お父さんのお膝には乗らないけれど、せーめーのお膝には乗る。お母さんのお膝を枕にしたいとねだらないけど、せーめーのお膝を枕にして寝る。 他の人から可愛いと言われたら、少しむっとするお年頃だけどせーめーが言ってくれるのは好き。 「せーめー、せーめー」 「はいはい、何かな？私の可愛い道」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴はずっと道のそばにいるので、何もかも筒抜けなんですが、つい晴には「お父さんとお母さんには内緒ね」と秘密にしてほしいことを言う。全部知ってるけど、そうなんだね内緒だねと話を合わせてくれる晴。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

下校中、よく懐いてくれたよその猫が死んだ時も晴にしがみついて泣いた。 「命あるもの、いつかは別れがくるものだよ」 「……せーめーも、いつかいなくなる？」 「私はいなくならない。最期までおまえと一緒だとも」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

最期まで一緒という言葉を聞いて、道は安心するんですが、晴は内心「あーあ、約束してしまった」と思ってる。神様である晴と道との間で、道が人として死ぬまでずっと一緒にいると契約がなされた。まあ、もともと道が天寿を全うするまで側にいるつもりでしたが。ゆりかごからずっと。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

今までは自主的に、神様の気まぐれで人間見てますー暇つぶしですーというスタンスだったんだけど、晴れて「道が死ぬまで一緒にいる」という契約が結ばれました。チャララ、ラ、チャッチャーン！ 「（最期まで一緒にいたとして、おまえが死んで、また私は新しくおまえが生まれてくるまで一人か）」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

この約束で、晴はこれからずっと道から嫌がられても側を離れず一緒にいることが確定したんだけど、あくまでそれは今世の道との約束なので、来世には適用されない。また生まれてくる道の魂を見守るつもりだけれど、今世のように力がないかもしれない。姿どころか声も何も認識できないかもしれない。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

今世で道を守り、道を愛して、それを返されることを知ってしまった自分は、来世ただただ風のように道を見守るだけで満足するのか。声をかけて返される喜びを知ってしまった神様が、愛する魂から一瞥もされないことに耐えきれるのか。 「……私の、道」 見えたとしても、また愛してくれるのか。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「ゆびわ？」 「うん、最期まで一緒にいると約束しましたが、万が一、私がおまえの側を離れることがあった時。その時、その指輪が私の代わりにおまえを守るよう呪いをかけています」 シンプルな指輪を渡されて、道はふーんと思ってる。晴が側を離れるイメージがつかないけれど、万が一と言っていたし。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「でも、これ大きいよ？」 「ああ、大丈夫です。はめればわかります」 「うん？」 明らかにまだ幼い道の指には大きすぎる。大丈夫だという晴に首を傾げながら、道は晴の言われるままに左手を差し出した。道の左手をとって、大きい指輪を薬指に通す。途端に指輪が小さくなり、道の指ぴったりになった。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「ぴったりになった！」 「ぴったりになるように、呪いをこめましたからね。大きくなっても、おまえの指にあうようになってますから安心なさい」 「うん！ありがとう、せーめー！」 ぎゅーっと抱きついてくる道の頭を優しく撫でる。これで、完全に契約はなされた。今世の道を側で守る契約。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「それ、別に指輪でなくても良くなくないですぅ？どう見ても『お前を逃がさない』という強烈な独占欲にしか見えませんがぁ？」という知り合いの言葉が晴の脳裏を過ったけど、華麗にスルーした。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

指輪ははめたあと、すうっと溶けるように消えた。手のひらを蛍光灯にかざしたりして、指輪を探す道。勿論晴のお膝の上に座ってる。 「……ゆびわ、なくなっちゃった」 「なくなってませんよ。見えなくなっただけです。おまえがもっと力をつければ、見えるようになります」 「そっかぁ」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

学校で将来の夢という宿題がでて、ううんと晴のお膝に座って唸ってる。お母さんもお父さんもお仕事でまだ帰ってこない。ううん、将来の夢。 「せーめーの、しょうらいのゆめって何？」 「私ですか？……おまえが健やかに育って、天寿を全うしてくれることを見守ることですかねぇ」 「よくわかんない」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

むう、と膨れっ面する道にからからと笑う晴。道の体を抱き止めて、ゆらゆらと揺らした。 「おまえが、日々を楽しく過ごしてくれることが夢ですよ」 「ずっと楽しいよ？お父さんもお母さんも、せーめーもいっしょでずーーっと楽しいよ！」 「フフ、ありがとう。私もおまえと一緒で楽しいですよ」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

にこっと笑顔になる道に、晴は目を細めて喜んだ。ああ、こんなに大きくなった。生まれたときは両手で簡単に抱えられる程度の大きさだったのに、こんなに大きく健やかに育った。目頭がじんわり熱くなる。 「道は大きくなったら、何になりたいんですか？」 「うーん……えーっとね、たくさんあって」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おじいちゃんみたいなお坊さんにもなりたいし、電車の運転手さんにもなりたいな。あのね、せーめーみたいに術をたーくさん、使える人にもなりたい！」 泣いた。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「なれます、おまえならなれますとも」 道の左手をとって、指輪をはめた薬指にちゅっと口づける。 それを見守るのだと。この子は絶対に自分が生かすのだと、改めて誓いを込めて。 この子が天寿を全うするまで、必ず守り抜くと。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そして、この子の最期を看取って、また新しく道の魂が生まれてくるまで待つ。平安の京の記憶と、今世の記憶があれば、新しい命が例え自分を認識できなくても平気だ。楽しくて優しくて甘やかな記憶があれば、数十年、数百年待てる。きっと待てる。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「私の、可愛い道」 健やかに育ってくれるなら、それだけでいい。おまえが望む道をすすめるのなら、それを見守れるなら。 例え来世のおまえが、私を認識できなくとも、今世の記憶があるならきっと耐えられるから。 健やかに生きた記憶があるなら、ただの風でも耐えられるから。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

神様晴と転生道の話、子育て見守りルートと○○○○○○○○ルートとあるのですが、 この○○○○○○○○ルートは不健全なため、こういう形でtweetしたがいいのか、ベッター（PW入力式）で叫べばいいのか悩みますね…… fse.tw/MgBmrQvc#all

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

泣き虫な神様晴が、転生した道を赤ちゃんから見守る話。晴道なんだけど、晴道になりきらない雰囲気だよなとしみじみ思いました。 晴は道の前世の記憶が蘇りかけるたびに、術で押さえ込んでいるんだけど、道の力が強くなるたびに記憶が揺り起こされる頻度が高くなってくる。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

中学生になった道。何度も。何度も何度も助けようとして助からなかった道の魂が、初めて13歳を迎えたのをみて泣く晴。学生服着た道の姿を写真とりまくる両親もだが、晴はその後ろで号泣しててちょっとひいた。いくら両親には見えないからって泣きすぎでは？

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

さすがに中学生になったので、俗物的な話もちらほら同級生とかから入ってくる訳ですよ。左手の薬指にはめられてる指輪のこととかね！ 道「……せーめー、何で左手の薬指だったんですか？」 晴「ああ、一般的には結婚指輪が左手の薬指にされますが、そもそも宗教によって変わってきまして」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴「北欧や東欧では右手薬指、あとプロテスタントも右手薬指に結婚指輪をします。日本では左手薬指が一般的ですけどね」 道「へー……」 晴「指にはそれぞれ意味があります。陰陽五行は元々五指を意味していたとされ、特に薬指は体の中心であると考えられている訳です」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴「特に左手の薬指は、最も心臓が近い指とされ、強い力を持つ指になるのです。結婚指輪を薬指にするということは、陰陽道としてもよい事でもあるんですよ」 道「つまり、力を抑えるため？」 晴「もちろん、それもありますが……」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴「おまえに危機が迫ったとき。その指輪が枷にならぬよう、危険を感じた時は封が解ける仕組みとなっています」 強い力は、より強い怪異を呼ぶ。だからこそ、あれらに目を付けられないよう目くらましをこめての指輪ではあるが、それが枷となってはいけない。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

もし、怪異に襲われても身を守れるように命にかかわることがあれば、その指輪が一度だけ。使い捨てではあるが、身代わりになるようになっている。 もちろん、それが発動した瞬間に、私がその場に呼び出される訳だが。 晴「……おまえが大きくなった時、私が側にいない方がよいことも増えます」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

寂しいことだが四六時中、側に居続けては道の情緒にもよくないだろう。健やかに育てと願うならばこそ、一人ですごさねばならぬことも増える。 道「……せーめーはいなくなるの？」 晴「いなくなりませんよ。おまえのずっと側に。指輪を介して、ずっとおまえと共にあります。ただ、姿が側にないだけ」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

中学生になった道には、もう指輪が見えているんですよね。他の人には見えない指輪だけど、道は力が強くなってきてるから、見えなかった指輪が見えるようになった。 道「この指輪に話しかけたらせーめーに聞こえる？」 晴「あはは、そんな機能は付けてませんでしたが、面白そうですね。つけましょう」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道の左手を優しくとって、すりすりと愛おしげに道の手を撫でる晴。ちょっと恥ずかしいけど、晴だしなと思ってる道。赤ちゃんから一緒なので、割と距離感バグってる感がある。 晴「はい、できましたよ。これで、指輪に小声で話しかけたら私に繋がります」 道「ありがとうございます」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴「あれですね、仮○ライダーの腕時計型の通信機みたいですね」 道「……腕時計型？スマホ型ではなくて？」 昨今の通信機はスマホ型が主流ですね。ちょっとジェネレーションギャップを感じた。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

それから、晴は道にぴったりとくっついてすごすことはなくなる訳です。学校から戻って、一人ででかけるという時はついてくるけれど、学校の友人と遊ぶ時は家で待つようになる。 今までずっと晴が隣にいるのが当たり前だったから、少しだけ居心地悪くて、道は帰宅したら晴に何があったか話すんですね。

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道「そういえば、せーめーは儂が学校に行っている間なにを？」 晴「何もしてませんよ？」 道「何も？」 晴「おまえくらいしか見える者もいませんし……ああ、この町で悪さをする怪異を少々懲らしめてやったりはしてます。それ以外は基本的に窓の外をぼうっと眺めてますよ」

泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

最近は骨のある奴もいませんから、だいたいは窓の外を眺めてますよと笑う晴。暇なら着いてきてもいいのにと言えば、晴はにこやかに笑って、おまえが話してくれますからと言うだけ。 まあ、ぶっちゃけ。指輪を通じて道の心の機微も、何が起こってるかも全部見えてますからね！！