きまぐれ更新
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城水めぐみ @Meg4632

月波与生さんの句集『ライムライト』より 稜線を見せ合う初めての人と 家族葬遺書には一つ誤字があり 蓮根を食べると穴の味がする 水のない絵本で溺死する鯨 遮断機が上がればどっと油蝉 二十世紀のしりとりだから休めない 鍵盤連打薬莢の音ばかり 戦争も平和も肉を焼く匂い 歳月を星空にする拡張子

2024-04-05 07:59:27
城水めぐみ @Meg4632

久保奈央さんの句集『Ferris Wheel -virginal-』より お林檎とお紅茶付きの丁寧語 水玉の愚痴を吐き出すゲゲロゲロ 裏返す洗濯物に星の砂 猫じゃらし無口な人に振ってみる 一人だけ娘がいますカタツムリ 駄々こねてマーブルチョコが乱舞する 集まりが悪いと嘆く女王蜂 一人でも乗っておいきよ観覧車

2024-04-05 07:58:52
城水めぐみ @Meg4632

妹尾凛さんの句集『Ring』より 雨の日をむすぶ一枚のふろしき ももいろのでんぶ平和にふりかける 本日は晴天ちゃらんぽらんと水 こんなところで草かんむりの夢をみる うみのほうみていましたねかたつむり このごろの肺には月が住んでいる 水滴とそれ以外の世界。以上 しらぬまに雨の匂いの本となる

2024-04-03 17:23:43
城水めぐみ @Meg4632

樋口由紀子さんの句集『めるくまーる』より 空想のかたまりである蝶ネクタイ はらわたのビー玉行ったり来たりする 暗がりに連れていったら泣く日本 自転車で轢くにはちょうどいい椿 筆順はまちがってるけど朝である 下着からはみ出しているいい気持ち 空箱はすぐに燃えるしすぐに泣く

2024-04-03 17:23:04
城水めぐみ @Meg4632

河島いち子さんの句集『樹の音』より 灰皿に灰を落として牙を落として いっせいに葦が乱れて返り討ち 首にかかった紐も飾りにしてしまう てのひらに一本悪い線がある 挫折など無縁 甲羅を干している くもの糸きらきら誰を試すのか 袋の口開けると蝶が雪崩出る 念押して帽子は木枯しに飛んだ

2023-12-07 12:53:02
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暮田真名さんの句集『ふりょの星』より 飴色になるまで廊下に立っている 先生もはじめはみんな紙吹雪 寵愛を受けて現像液のなか 恋すれば筐体になるときがくる 葬列の行きつく先のブックエンド いいところだったのに火を盗まれる 画数を減らして飛行船に乗る 音がないところもあるが友達だ

2023-12-07 12:52:28
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もりともみちさんの句集『パラドクス』より 骨になるボタンを押してからポテト 渋皮の下には麗しき孤独 煉獄の看板にあるおいでやす 花びらが哀しい明日を言い当てる 一つだけ裏返らない白がある 線上をなぜ点Pは動くのか 身ぐるみを剥がされマネキンの最期 うずまきの中にゴッホの息遣い

2023-12-01 20:53:20
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伊藤聖子さんの句集『半人前のマリモ』より 替え芯は裸のままで待たされる かりそめの足を崩している人魚 刺すことも考えている金平糖 「光るだけ損よ。」と話し合う金貨 今 開封された野原の湿り加減 焼き芋を包むパンダの死亡記事 鶴を折るダイヤ乱したその人へ アフォガードゆるやかなキミの遺言

2023-12-01 20:52:47
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雪上牡丹餅さんの句集『降ってきたリンゴ』より 立つ鳥が残した毒は無味無臭 出ていった悪霊に出すバイト代 「あれからX年」で終わる悲劇 現役を秘密兵器のまま終える ゴミ箱と呼ばれるために作られる ルービックキューブの中身愛してる 勇気出しゼロを分母に入れてみる 本当はアップルパイにある平和

2023-12-01 17:07:15
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成瀬悠さんの句集『序章あるいは序説もしくは序論』より 朝ぼらけ誤訳誤植の現実感 こざとへんにはどうしても負けちゃうね 正午にはヘリコプターは萎れてる 月を待ち万華鏡すら口噤む ピーマンの中身はハトだ白鳩だ 貶されて分厚い護符も石となる 泥酔し隙を伺う尻子玉 ト書きだけ予定調和の外にいる

2023-12-01 17:06:35
城水めぐみ @Meg4632

井丸昌紀さんの句集『飲みなはれあんたの金で好きなだけ』より 掴みよい形をしてる不仕合せ あと一人乗れると誘う宝船 あわててもあわてなくてもみんな死ぬ 人畜無害蓋のない玉手箱 考える人右手はとうに痺れてる 泥酔の友の鼻先手をかざす 短いが一番怖い黄信号 誰か作って酒の飲めなくなる薬

2023-10-09 16:50:23
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小原由佳さんの句集『反対側の窓』より 一冊の絵本開いたまま大人 人形の空洞ずっと欲がある 千羽鶴今日で解散してもらう なんでやねんがガムの歯型になっている 本当は休火山よね父さんは カルピスの希釈が違うまま暮らす お借りした傘にあなたの町の雨 ぶらんこを拠点に活動しています

2023-10-09 16:48:50
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徳田ひろ子さんの句集『青』より 好きと書く二円足りない切手はる はしゃぎすぎじゃないか藁人形諸君 仮の世へ仮の姿でゴミを出す 傘開く小さな闇を産むために 音たてて崩れてみたい砂糖菓子 口開けてこの世の果てを見て御座る 傘立てに王貞治の左足 父の茶碗だったもくもく雲がたつ

2023-09-27 17:27:45
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兵頭全郎さんの句集『n≠0』より サクラ咲く時「もっと」って言うんです 大人来て丁寧に積む薄い紙 無線LAN圏外になる三角巾 題詠「秋」影長からず軽からず 傘がない空がないから仕方ない 法螺貝を通った風の帰り道 あやとりを手放すときのつむじ風 卒業をほぼフルーチェの固さまで

2023-09-27 17:27:20
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阪本きりりさんの句集『ベビーピンク』より 子猫生誕 聖書ひらりと越えて行く 体毛を増やし人語で呻いてる 週の真ん中どちらの闇も畏まり クレヨンは凶暴窓を塗りつぶす メルヘンの剣でくりぬく子供部屋 知恵の実を少女ふたりがもてあそぶ 広辞苑ばらして秋へ眩暈する 錠剤の白を並べて喪にふける

2023-09-26 12:02:22
城水めぐみ @Meg4632

芳賀博子さんの句集『髷を切る』より 壁の染みあるいは逆立ちの蜥蜴 難題のてっぺんに振る粉砂糖 ロング缶1本 本日の墓標 すさまじいピンクになって事切れる かたつむり教義に背く方向へ 魂胆がよくわからないぬれおかき おしまいに羽音をたてる洗濯機 今日ちゃんと私がいたという指紋

2023-09-26 12:01:37
城水めぐみ @Meg4632

加藤鰹さんの句集『かつぶし』より あなたって実はカニカマだったのね ちらり出た尻尾に酒を追加する 伝言ゲームいつでもあいつから狂う 肩組んでいたのが実はブルータス シーソーの真ん中に居るカメレオン 花手桶ぶら下げ岐路に佇っている 天守閣から雑兵が見えますか それぞれの八月それぞれの花火

2023-09-12 12:12:26
城水めぐみ @Meg4632

川合大祐さんの句集『スロー・リバー』より 図書館が燃え崩れゆく『失われ 永劫が7~11時だったころ 同心円みんなさみしくなりなさい 妻と呼ぶ何だか違う霧である ほらそこに脚とみずうみ落ちている 猿としてさまざまな火を持ち歩く しかしまだ人のかたちの罅である マリヤその判決文は詩じゃないか

2023-09-12 12:11:20
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『石部明の川柳と挑発』より 一本の縄とはしゃいでいる命 軍艦の変なところが濡れている 体から誰か出てゆく水の音 劇薬と記す夕陽を入れた瓶 晩秋の便器しくしく泣くばかり 西日射す部屋で毀れる生殖器 またがって桔梗の首を締めている 椅子よりも一つ多い死者の数 わたくしが鍵になるまで捏ねている

2023-09-09 16:28:35
城水めぐみ @Meg4632

西沢葉火さんの句集『クラドフレビスレインボー』より 枕木が一本欠けていて和音 一族の者なら雨になる匂い 逃げてきた古い怪獣映画から ともだちは猫が咥えて行ったきり 祝福の空から垂れ下がる乳房 方舟やエレベーターに蝿と僕 滅ぼした者に聞こえるパピプペポ 縁側にかつて栄えていた積み木

2023-09-09 16:28:26
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夕凪子さんの句集『水の刑』より 矢を抜いてしまえば酸化はじまれり キュルキュルとシャワー泣かせる背の鱗 向日葵が吠えたかたちに枯れている 右左違うわたしを縫い合わす 邪心疑心搾り出してるマヨネーズ 突いてゆく熟れた葡萄を標的に 一時休戦鼻に眼鏡の跡をつけ 水にしか見えないけれど薬です

2023-09-08 12:03:45
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竹井紫乙さんの句集『ひよこ』より 時々は顔が転がる事もある 少しずつ部屋に命の缶運ぶ 美しい音楽である君の舌 どしゃ降りで埋めたおもちゃが顔を出す 叱る事ためらう猫の美しさ ふと異臭昔の犬が来たらしい しんしんとあの娘も雪に埋もれてる 清らかな連続性である祭り 大人には大人の水がある旅路

2023-09-08 12:03:31
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黒川佳津子さんの句集『約束の旅』より 包丁に逆らってみる絹豆腐 瓶割って逃がしてあげる紙の船 タクト振る私を誰も見ていない 虎だなんてねはじめに言って欲しかった 飽きられたことに気付かぬくまのプー アイスティー金属音を立てている 皆ついておいでと尻尾光らせる 秒針は急ぐ 短針押しのけて

2023-09-05 12:03:16
城水めぐみ @Meg4632

千春さんの作品集『てとてと』より 「入ってもいいですか」「いいですよー」ちつ お薬の匂いがへそにフォークさす 例えば、女の自分に慣れてきた どうして思うようになってくれないの、もずく 二杯目はさらさら砂の心臓部分 大陸があふれるほどの樹木葬 千春ちゃん今日をいっぱい浴びなさい

2023-09-05 12:02:04
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赤松ますみさんの句集『むらさきになったり透けてしまったり』より 鈴虫が鳴く結界の右左 妖精がすり抜けてゆくピアス穴 ここまでは水玉 ここからは谺 今くちびるは幽体離脱したところ 銀杏の葉散る真ん中の哲学書 正解が出そうで出ない鯉の口 蝋燭の炎の先の先の先 海はもう森の寝息になっている

2023-09-03 15:55:44
城水めぐみ @Meg4632

茉莉亜まりさんの句文集『雫が海となる神話』より 鮫という狂気 鯨という慈愛 諦念の象は繋がれつつ光る にんげんを吸った雲から土砂降りに 樹海から三歩下がれば水の音 いのちとやこんなちいさな金の鈴 永久歯抜けて分身ひとつ死す 太陽という完全を逃げている こんな玉貰ってよりの地獄変

2023-09-03 15:51:22
城水めぐみ @Meg4632

島村美津子さんの川柳集『われもこう』より くっきりと私が見える晴れた日に 生きてゆく軽いさみしい咳をして 何もかも衰え耳が美しい 青い鳥になろうと青い実を食べる 訪ね来よ小鳥も猫も人間も 花びらは死者の冷たさみんな死ぬ 選ばれて花の老婆と呼ばれけり あかり消し誰にともなくありがとう

2021-04-14 21:27:19
城水めぐみ @Meg4632

八上桐子さんの句集『hibi』より こうすれば銀の楽器になる蛇口 呼べばしばらく水に浮かんでいる名前 そうか川もしずかな獣だったのか 皆去ってさくらの下が濡れている えんぴつを離す 舟がきましたね 紫陽花へ向く六月の頭蓋骨 歩いたことないリカちゃんのふくらはぎ 手首から先はカモメになりたがる

2020-03-17 07:10:05
城水めぐみ @Meg4632

小林康浩さんの句集『道化師』より 逆光の耳のかたちと向かい合う 幸せそうなト音記号を引っこ抜く 月の粉浴びて無粋な四字熟語 下校時刻は過ぎて四半世紀経つ にんげんを転がしながら散る桜 虚虚虚虚と鳴いて極楽鳥墜ちた お互い様だからと許す鼻の穴 あの日からこの日を見ると欠けている

2020-02-24 17:53:08
城水めぐみ @Meg4632

寺西文子さんの句集『主婦の星』より 一人より二人が淋し脈の音 ひと針の傷でもこれは恋の傷 わたくしの晴れをしまっておく小箱 透き通る二の腕今宵抱かれたし 甘すぎるぜんざいにある現在地 とんがったものならみんな友達に 勇気ある花だ砂漠に咲いている 缶詰を開けたときから過去になる

2020-02-24 17:52:59
城水めぐみ @Meg4632

鳥海ゆいさんの句集『寂しさ指数』より 風船の数だけ風船の残骸 この先も和解はしない白と白 左右の手ネジ巻きあって春になる はきはきとしゃべって友達がいない 遅番のミッキーと乗る京葉線 水平線消えてる今がチャンスです さびしくなくなくなくない? 寂しいよ また一人残されハッカドロップス

2020-02-24 17:52:50
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 高熱のピエロにかわり樽に乗る/吉田利秋 真刀とわかってからも斬られ役/米澤久男 聞く耳はもたぬひまわり西を向く/流郷貞子 コピー機で増殖される怒怒怒怒怒/渡辺美輪 amazon.co.jp/dp/4924899399/…

2019-10-19 16:31:52
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 仕事ですからとおもちゃになるお猿/松岡瑞枝 保護色に飽きて七色唐辛子/丸本うらら 人間の口から洩れている光/峯裕見子 黙っていると破裂しそうなプチトマト/宮本草子 勢いがあったんですね瘤がある/安井茂樹 夢を追う鰯は口を真四角に/夕凪子

2019-10-19 16:30:13
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 針の穴愛はだまって落ちて行った/野原萌 恥じ入って浮き出してくる虎模様/芳賀博子 現住所枕のなかを彷徨えり/樋口由紀子 どん底で空が幾分高くなる/平井美智子 ゆっくりと水は流れて豆腐澄む/弘津秋の子 真実はまだ口の中ハッカ飴/前田邦子

2019-10-19 16:29:38
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『川柳の森 現代の秀句』より 花殻摘んでわたくしだけのおそうしき/道家えい子 何だ何だと大きな月が昇りくる/時実新子 袋から出して袋にしまう夜/徳永政二 母性蹂躙ザクロに指を突っ込んで/徳道かづみ 小鳥止まる無害な枝となる私/鳥海ゆい さくらんぼの口移しなら頂こう/中野文擴

2019-10-19 16:29:00
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 妄想が朝々変じ花粉症/杣游 刺せば咲く 包丁の刃は上向きに/高鶴礼子 花が散りままごと遊びやめました/田村ひろ子 引き返す虹の半分みるために/丹原伸枝 何をそんなに猿も私も歯を出して/坪井篤子 横になりますとマヨネーズのチューブ/寺西文子

2019-10-19 16:28:12
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 掃きぐせのついた箒を渡される/近藤ゆかり 選ばれて花の老婆と呼ばれけり/島村美津子 沖へみな向いてそれぞれ体温差/上藤多織 横丁を曲がれば住所不定なり/新家完司 生きてきた僕の首輪の大きさで/杉山昌善 勃起したままで日本佇ちつくす/曽我碌郎

2019-10-19 16:27:29
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 飛降りはできない僕は浮いちゃうんだ/加島修 いずれこの蕾も叛くうす紅よ/河島いち子 天気晴朗タンポポ死んで飛んで行く/川瀬晶子 胸の血が固まる鴇の形して/岸本きよの 皆ついておいでと尻尾光らせる/黒川佳津子 念仏を切って貼るキャラメルの箱/小林康浩

2019-10-19 16:26:38
城水めぐみ @Meg4632

『川柳の森 現代の秀句』より 沈む男 を見ているピエロ を見ている私/新井恵子 さくら咲き血を滲ませる非常口/石部明 コスモスがみだらに揺れて恥ずかしい/宇田ミドリ 紙の駒ゆっくり王手 王手なり/大西玉江 三月の埴輪と埴輪恋に落ち/大西俊和 人形は涙が止まらない病気/小川敦子

2019-10-19 16:25:53
城水めぐみ @Meg4632

金子喜代さんの句集『一人芝居』より おとうとに罪を被せた日の微熱 潮風に髑髏のピアスよく笑う 妻なんだから羽は畳んでおきなさい 表札は性器のごとく掲げられ 幻のあの子がせがむ汽車ぽっぽ 足裏に孤独が溜まるフラミンゴ 負けた日のスイカの種がよく飛ぶよ いくつ死を運び終えたか蟻の列

2019-05-11 14:13:23
城水めぐみ @Meg4632

佐藤之さんの句集『不条理の羅列』より 黒と白混ざって赤となる日あり 強情な唇に塗る桜色 不仕合わせピンクばかりが減っていく 本当はノーと言いたい風みどり 好きな色だけじゃないけど全部君 流し目で会釈をかえす黒い猫 攻め込んだ敵の陣地の青い空 空色の靴を履いてる迷子です

2019-05-11 14:12:50
城水めぐみ @Meg4632

福岡理惠さんの句集『シャードーボクシング』より 肉球や役にも立たぬ君が好き 着ぐるみのうさぎのままに愛される かあさんを乗せて戻らぬ笹の舟 刃こぼれの刀も入れる父の墓 それぞれを生きてひとつの鍵の穴 疑いは金魚の墓のその下に 春隣ためらい傷のあるあたり 逃げるなどト書きにはない冬木立

2019-05-11 14:12:17
城水めぐみ @Meg4632

若林よしえさんの句集『明日』より 恨まれる覚悟は出来た目玉焼き この次は私だ文庫本しまう 順不同あの世へ並ぶ整理券 落ち椿どうせすぐには黙らない コーラスの誰が敵やら味方やら 投げ付けた笑い袋がまだ笑う 側室が手塩にかけるマルチーズ 抜け殻を一枚焼いていく夕日 未来から届く白紙の委任状

2019-02-17 21:22:37
城水めぐみ @Meg4632

新井恵子さんの句集『あふれだす未来』より ポケットの穴みなふさいだら大人 星を見るとき一本の棒となる スカートのここらあたりに笑い皺 風船を放し少女の日を終える 涙零さぬ女の首の凄い白 妻でいるにははめる釦が足りませぬ 雨に濡れ野性を帯びる人、車 指輪はずして左の手から鳥になる

2019-02-17 21:15:14
城水めぐみ @Meg4632

前田邦子さんの句集『ポポポ』より お薬のような名前の花もらう 手の甲へポポポと涙ポポと落ち それぞれの穴にそれぞれ雨の音 吊り革にさみしい手首ぶらさげて 髪洗う今日を汚した両の手で 袖口が伸びきっている虚言癖 傷深く彫れば版画の白になる 花ふぶき成仏なんかするもんか

2019-02-17 15:50:16
城水めぐみ @Meg4632

渡辺美輪さんの句集『北極星』より 好きなだけ笑え ピエロの赤い鼻 キッチンの棚に眠っている殺意 早咲きの桜 軽率すぎました いつからかころがっているガラス玉 大切な話カステラ厚く切る カギカッコひとつで括るのはやめて ひび割れた道路にたんぽぽが咲いた ゴシックの未来の文字が軽すぎる

2019-02-17 15:46:08
城水めぐみ @Meg4632

中川千都子さんの句集『石の名前』より 目立たぬよう黙る ヒョウ柄は脱がぬ 母の日の手のひら光るもの貰う 正当な理由で裾が濡れている 糸切れて夜に放たれゆく真珠 有限で無限わたしは美しい 光るもの全部外して透き通る 横たわるほとんど水でできている にんげんを脱ぐ日に打ちあがる花火

2019-02-17 11:16:15
城水めぐみ @Meg4632

道家えい子さんの句集『硝子のキリン』より ほろ酔いの花びらとじる音のする ほんとのことは多分駱駝の瘤の中 塩っけの足りない愛とおままごと 最終のバスに乗るまで薔薇でいる あの彼(ひと)が別れたそうよ小鈴鳴る 硝子のキリンふるさと抱いて立ちつくす 九回裏ですピンクになるチャンス

2019-02-17 11:12:27
城水めぐみ @Meg4632

坪井篤子さんの句集『花花』より 底なしのバケツに花を生けている どっかりと椅子に沈んで死んでいる 次次発に乗って百合の香薄めおり 結実の梅を見殺す四月バカ 眠くてならぬ死にかけている誰か どうだっていいけど光る非常口 おもちゃ屋の棚でときどき宙返り あの世まで積み上げてゆく砂糖菓子

2018-11-17 14:23:37
城水めぐみ @Meg4632

田村ひろ子さんの句集『夢のしっぽ』より 深淵を覗けば覗き返す花 迷子だと気づいた夜のヴァイオリン 崩れゆく積み木の音の中にいる 空っぽの皿と私が残される まぶしさに慣れればただの向こう岸 やわらかな日ざしも届く落とし穴 azamiagent.com/modules/myalbu…

2018-11-17 14:19:45
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まとめたひと
城水めぐみ @Meg4632

しろみず・めぐみ|川柳する人|2016年より現代川柳を作句|『現代川柳かもめ舎』『現代川柳』『川柳の話』会員『川柳文学コロキュウム』元誌友|ZINE『mimoza』(書肆ミモザ)| 2019年第7回『現代川柳』作家賞準賞2022年度『現代川柳かもめ舎』鴎盟賞|2023年12月川柳句集『甘藍の芽』(港の人)上梓