「脳科学から見た解離ーそのスイッチングのメカニズムについて」岡野健一郎
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花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

月のクレーターは、東ヨーロッパやアメリカでは、女性の横顔に見えるという人が多いですよね。 で、思うんですが、クレーターの黒い部分に注目して、「餅つきをしているウサギ」とみる時と、「女性の横顔」にみえる時とでは、何が違うか、というお話です。

2017-02-17 10:33:53
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で、ネッカーの立方体の話をしたいなと思って、ちょっと検索してみたら、少し前の話題も出てきました。でも、今は、ネッカーの立方体だけに絞ってつぶやきまふ。 twitter.com/believe2200/st…

2015-10-08 21:18:32
𝒃𝒆𝒍𝒊𝒆𝒗𝒆𝟤𝟤𝟢𝟢 @believe2200

日本語ではこの説明が一番良かった。ポイントは環境光。ネッカーの立方体っぽい感じ。 「なぜドレスの色の錯覚はおきたか?-色の恒常性」- - Sideswipe kazoo04.hatenablog.com/entry/2015/02/… pic.twitter.com/Y7KdYveYeR

2015-02-28 15:21:50
𝒃𝒆𝒍𝒊𝒆𝒗𝒆𝟤𝟤𝟢𝟢 @believe2200

日本語ではこの説明が一番良かった。ポイントは環境光。ネッカーの立方体っぽい感じ。 「なぜドレスの色の錯覚はおきたか?-色の恒常性」- - Sideswipe kazoo04.hatenablog.com/entry/2015/02/… pic.twitter.com/Y7KdYveYeR

2015-02-28 15:21:50
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ネッカーの立方体は、心理学の教科書なんかにも出てきますので、ご存じの方も多いと思います。この立方体は右上方に張り出しているようにも、左下方に張り出しているようにも見え、しかもそれらは決して同時には見えません。

2015-10-08 21:26:20
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これはいわゆる多安定知覚(multistable perception)の例とされ、脳の二つの状態が互いに排除し合うことを意味するので、単眼視競合(monocular rivalry)とも呼ばれます。 これはスイッチングのシンプルな例ともいえそうです。

2015-10-08 21:31:17
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一方の見え方をしている間は、決して他方の見え方はしません。そして一方から他方への移行は瞬間的で、しばしば「いま切り替わった!」という感覚を伴います。

2015-10-08 21:36:16
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脳科学における神経ネットワークモデルでは、精神現象とネットワークでの電気的な興奮のパターンの対応、という仮説をとります。心身の機能を個別な特定の神経細胞群の興奮として考えよう、というわけです。(科学哲学的批判については割愛w)

2015-10-08 21:42:24
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神経細胞群は「モジュール(module)」(単位)と表現されます。互いのネットワークの興奮が同時に生じないような機構を仮定し、スイッチングをモジュール間の切り替え、ないし連絡の断絶と捉えようとする見方があります。

2015-10-08 21:48:08
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状態Aを生むモジュールAを構成する神経細胞のグループの興奮と状態Bの興奮とは交互には生じても同時には起きないという仕組みが必要なんじゃないか、と考えて、それがスイッチングというメカニズムを支えているとするわけです。

2015-10-08 21:51:22
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ネッカーの立方体でいえば、それぞれの見え方は異なるモジュールにより生じ、それらを構成する神経細胞群は、たとえオーバーラップしていたとしても、全体としては同時には興奮しないと考える。

2015-10-08 21:56:04
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脳生理学的には、二つの可能性が考えられると。ひとつは、モジュールAを構成する神経細胞のネットワークが興奮する際の電気的抵抗が低いために、それがひとつの強力な「アトラクタ」を形成し、意図的にないしはある種のきっかけにより、同様に低い電気的抵抗を伴うモジュールBの興奮が生じない限りは

2015-10-08 22:01:10
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それにとどまる傾向を有するという可能性。もうひとつの可能性としては、ひとつのモジュールの興奮が同時に他を制限するようなメカニズム。いわゆる骨格筋の緊張と弛緩のように、互いに拮抗する筋肉に生じる相反抑制(reciprocal inhibition)という仕組みですね。

2015-10-08 22:06:04
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で、複数の姿勢とか理解とかをとりうる状況にある場合、(月の影の見方のように)わたしたちの対処の仕方には2通りあるという説。 ひとつはネッカーの立方体のように、一度にひとつの体験しか持てない場合。そこではスイッチングのメカニズムが重要な役割を演じている。【多重的(解離的)な心】

2015-10-08 22:16:28
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もうひとつは、複数の相反する心理状態がほぼ同時に体験される場合。たとえば、両価性(ambivalence)と呼ばれる心性が典型的で、対人関係において陽性の感情と陰性のそれとが共存し、それらが微妙に交じり合う。【多面的な心】

2015-10-08 22:21:33
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心には「多重的」と「多面的」の2つのあり方が存在し、それらが状況に応じて使い分けられているのではないか、という仮説。~岡野憲一郎「脳科学から見た解離~そのスイッチングのメカニズムについて~」『こころのりんしょう à・la・carte』 2009 vol.28 No.2 p330

2015-10-08 22:31:12
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心の「多重的」と「多面的」な2つの在り方についてのお話の続き。 ここからは、解離に興味のある方だけお読みください。

2015-10-08 23:13:05
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あ、その前に、さきほどのネッカーの立方体の例でいえば。 人の脳みそで情報として選ばれた時点ですでにバイアスがかかっているんだ、ぐらいのざっくりまとめでも構いませんww

2015-10-08 23:26:41
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さて、脳への直接の刺激でも解離は生じます。側頭頭頂連合野・海馬・扁桃核への刺激で解離様の体験や夢幻様体験が生じます。側頭頭頂接合部への刺激は体外離脱体験と関連しています。側頭葉はこめかみよりも少し後部。こめかみがtemple(神聖なる殿堂)といわれるのには由来があるわけですね。

2015-10-08 23:33:44
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特定の薬物の投与でも解離様の現象を生みます。文字通り解離性の薬物(dissociative drugs)と呼ばれるものは、NMDA拮抗薬、セロトニン系の幻覚剤、モルヒネ作動薬などで、PCP(フェンサイクリジン)とケタミンは有名です。麻酔薬として開発され、NMD拮抗薬に分類されて

2015-10-08 23:40:45
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いますが、これらも体外離脱体験や身体イメージなどの歪曲、などの解離性症状を起こすことが知られています。NMDAの受容体が海馬に非常に多いこととも関連し、ストレスが海馬のNMDA受容体を介して解離性の症状を起こすのではないかという仮説が導かれています。

2015-10-08 23:49:22
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んでもって、皆様おなじみの構造的解離(Structural Dissociation)理論というものがありますね。EPとANPの2つの状態が解離にはあるというやつですけども、大脳生理学的にはそれぞれが別個の相反する特徴にあるのを従来の解離理論では混同してきたのではないかという。

2015-10-09 00:05:05
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(以下、補足) 2つの状態は、EP(emotional personality, 感情的な側面をつかさどる人格)とANP(apparent normal personality, 表面上平静さを保つ人格)と呼ばれる。

2017-02-17 11:30:33
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ANPにおいてはもっぱら危険な刺激を回避する形で日常生活が営まれている。その際外傷的な記憶からは目が逸らされ、前頭葉、後頭葉、前頂葉のいずれも賦活されることで現在の知覚、認知活動に専念すると同時に、感情をつかさどる偏桃体は抑制されている。

2017-02-17 11:35:54
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またそこに自律神経系も関与し、特に腹側迷走神経の活動が増す。このANPの状態は通常の日常生活を営むだけでなく、感情が伴わない、PTSDの離隔反応(detached response)にも相当するといわれる。

2017-02-17 11:40:27
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他方では、EPの状態ではANPとほぼ反対の事態が生じ、扁桃核や島皮質の活動が高まり、海馬、前帯状回、内側前頭前野の活動は低下し、逆に扁桃核の活動は背側迷走神経と共に昂進している。

2017-02-17 11:47:11
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これらのANP、EPの2つの生物学的な状態は、やはりひとつの人格から他への入れ替わりという形で瞬時に生じては消失するという性質を備えていることになる。

2017-02-17 11:48:43
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様々な知覚や体性感覚は側頭葉や前頂葉により処理されることを考えれば、両者の連合野としての側頭頭頂接合部がそこに重要な役割を果たしていることは、はじめから十分予想される。解離という体験には脳の活動という基盤が存在する。

2017-02-17 11:54:43
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📌対外離脱体験や人格交代を有する患者さんの訴えは妄言ではなく、脳科学的な基盤という実態を備えていることを示している。p.327

2017-02-17 11:57:21
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これらの研究は特に、解離が脳に対する刺激により、即座に切り替わるという事情を明らかにしている。大脳皮質への直接刺激により、ないしは薬物投与によりそれは生じ、それらの消失とともにおさまる。

2017-02-17 12:03:21
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それはあたかも環境からの刺激、ないしは内的な誘因により人格状態がスイッチするDIDの病態に対応している。ただしそのスイッチングのメカニズムは複雑で現在の脳科学のレベルでは知りようがない。

2017-02-17 12:06:45
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ところで患者さんに別人格の呼び出しをお願いした時にしばしば報告される頭痛である。それはスイッチングをつかさどる部位の刺激によるものではないか?  頭痛が脳内の血管壁の拡張により引き起こされ、それがその局所の血流量の増大を意味するのであれば、それも根拠のない予測ではなさそうだ。

2017-02-17 12:20:40
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最近のバイリンガリズムの研究によれば、異なる言語はしばしば言語野の同じ部位が重複して用いられ、それらの使い分けや移行には優位(左)半球の尾状核の頭部が深く関与しているとされる。

2017-02-17 12:26:20
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以上のスイッチングに関する考察から、複数の姿勢や理解を取りうる状況での私たちの対処の仕方には、2つある。  1つは、ネッカーの立方体やバイリンガリズムのように、一度にひとつの体験しか持てない場合であり、そこではスイッチングのメカニズムが重要な役割を演じる。多重的(解離的)な心。

2017-02-17 12:41:29
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もうひとつは、複数の相反する心理状態がほぼ同時に体験される場合である。通常の対人関係において、たとえば両価性(ambivalence)と呼ばれる心性などに典型的に見られ、その場合は特定の他者に向けて陽性の感情と陰性のそれとが共存し、それらが微妙に交じり合う。

2017-02-17 12:48:10
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また人格の複数の面が同時に表現される場合もある。そこでこちらは「多面的な心」と呼ぼう。

2017-02-17 12:50:25
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このように心には「多重的」「多面的」の2つのあり方が本来的に存在し、それが状況に応じて使い分けられているという仮説を設けることがとりあえずできよう。p.330

2017-02-17 12:53:28
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スイッチングによる「多重的な心」は言語による情報の処理や目の前の危険を回避したり、精神的な破綻から身を守るといった闘争逃避に関して促進される一方、「多面的な心」は母性の発揮や他者との協調の際には促進される可能性があるのではないだろうか。(岡野健一郎)

2017-02-17 12:57:46