デのキレてない考察
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北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

現代的レイシズムの話。昔の直接的な差別ではなくて「黒人の権利は拡大したから、もう差別なんかないよ→なのに権利とか地位向上とか求めすぎ→あいつらを優遇するのは不公平」っていう、最近のアメリカで見られる新しい差別。実際にはまだ格差は全然あるんだけど。

2019-07-09 21:11:50
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

マトリックスでデを読む。その前に、ついこの前まで見たことなかった人(私)もいるのでマトリックス(映画)の概要を。1999年公開のアメリカ映画。いわゆる「機械の反乱」のあと、人間はコンピュータの動力源として培養されてるんだけど、人間達は仮想現実の世界で生きていて、そのことに気付かない。

2019-07-10 18:36:41
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

デの空気感にはマトリックスに通じる点がある。機械の反乱、世紀末特有の終末思想的な作品が流行った時期、冷戦の時代なので核の恐怖がリアル、とか。それと思ったのは「赤壁を破る=赤い薬を飲む」なんじゃないかってこと。マトリックスでは赤い薬を飲むと真実を知ることができる=目が覚める。

2019-07-10 18:37:11
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

あるきっかけでその夢から醒めた主人公達がコンピュータの支配に立ち向かう話。なお私はシリーズ1作目しか見てないんで今回は続編の話はなし。

2019-07-10 18:37:48
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

「赤い壁を破る」とか「ある日突然目覚めた」とか「今まで自分は奴隷だったんだ」とかのデの描写は、その辺を意識してる感じがする。それで、デは奴隷の人間性が失われていることと、人間疎外(機械文明によって機械が人間を使っている状態になり、人間らしさが失われている)を批判してるんだった。

2019-07-10 18:38:14
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

マトリックスにおける人間も「機械によって使われる人間」のメタファー。機械が人間を動力源としている描写は、人間とミトコンドリアの関係性を思わせる(『マトリックス』には『ミトコンドリアの内膜に囲まれた領域』という意味もある)。

2019-07-10 18:38:37
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

マトリックスでは夢から覚めて現実を知るのは人間だけど、デだとそれがアンドロイドなわけだ。そしてコナーが変異体になるかならないかの選択、あれはマトリックスで主人公のネオが「青い薬を飲んで仮想現実の世界に帰るか、赤い薬を飲んで真実を知るか」のシーンに結びつけて考えるとスッキリ。

2019-07-10 18:39:10
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

そりゃあ真実を知って目が覚めたら教会の隅っこで反省のポーズのひとつも取るわなという納得がある、個人的にはあのポーズすごく面白いけど一応真面目なシーンである。

2019-07-10 18:39:40
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

感情と倫理、直感と理性、身体と心、進化、偏見と差別について。脳科学によって、今まで考えられてきたような「倫理的な判断には理性的な思考が必要」という考えが科学的に崩されつつある。というのも、道徳的な価値観を持っている方が生存に有利なので、進化によって道徳感情を発達させてきたから。

2019-07-10 21:16:38
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

つまり倫理は感情から導かれる。その感情は、身体に感覚刺激があると起こる(情動と感情は区別されるし、何かを想像することで起こる感情もあるけどざっくり言ってる)。だから倫理には身体も感情も必要だ。そしてデが「人間性」の定義としている「共感」もまた、生存に有利な機能をもっている。

2019-07-10 21:17:17
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

共感は情動的共感と認知的共感に分けられる。一般的な「共感」は「他人が感じている感情を自分のことのように感じること」で、これが情動的共感。デが言う共感もこれ。共感があると、自分の血縁者じゃない他人にも思いやりのある行動が取れるので、社会的にプラス。

2019-07-10 21:17:48
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ヒトは社会的動物なので、共感が人間性の一部なのは間違いないと思う。で、じゃあ倫理観も思いやりも感情から生まれるなら、みんな感情を大事にして共感しまくれば差別のない社会になるかというと、それがそうじゃないんだな! ここがクリアから今に至るまで私がキレまくってるポイント。

2019-07-10 21:18:19
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ざっくり言うと「差別はヒトが進化によって得てきた生存に有利な特性のせいで起こる」し、「共感は『私たち』には働くけど『あいつら』には働きにくい」からだ。もうね、デモで平和に終わったのに私がキレまくってたね。

2019-07-10 21:18:58
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

もちろんプレイヤーが抑圧される立場のキャラクターに共感すること自体は、理解を深めるだろうからキレてない。共感で差別を乗り越える点にキレてる。それからさっき倫理観に感情は必要と言ったけど、この倫理観の基盤になる要素が人によって違って、しかもそれがある程度は生まれつきだ。

2019-07-10 21:19:38
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

倫理には感情が必要で、感情には身体が必要で、道徳感情は生存に有利なのに、その基盤は人によって生まれつき違う。そしてヒトとして適切な心の仕組みが差別を生む。私がキレてるのはデが哲学的な意味での人間性を褒めまくって、その裏側を無視してるからだ。人間が人間である限り差別はなくならない。

2019-07-10 21:20:09
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

さて感情には身体が必要だ。となると感情を持つアンドロイドにもヒトと同じような身体が必要だ。ここで浮かび上がってくるのが「痛みを感じない」というデのアンドロイドの設定の奇妙さ。痛みは異常事態のシグナルで、生存に欠かせないものだ。つまり生存に有利な性質がひとつないことになる。

2019-07-10 21:21:16
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

死の恐怖を感じるのに痛みを感じないとは一体…?と私が考え込んでしまうので、なかなか厄介な設定である。それにデのアンドロイドって人類に対する脅威として描かれるけど、自然淘汰を受けておらず痛みに対して鈍感な種って即絶滅するよなーとしか思えなかった。まあ変異すれば死の恐怖は感じるけど

2019-07-10 21:21:38
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

直感と理性はそれぞれ「システム1」「システム2」と呼ばれていて、それぞれ得意な点と欠点がある。システム1(直感)はとにかく早い。あと意識しなくていいし大体は合ってる。つまり「安い、早い、うまい」。でも大雑把なのでやっぱりそこに間違いはあり、そのバイアスによって差別が生まれる。

2019-07-10 21:22:51
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

システム2は「遅い思考」。意識しないとできないし、直感ほど早くないし、リソースを食う。でも直感がやる間違いを修正できる。問題なのは人間はシステム1がいつも優勢だってこと。直感を理性でねじ伏せるのは土台無理だ。

2019-07-10 21:23:00
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

デは現代西洋哲学がそうする通り、啓蒙思想のような理性偏重、合理性を批判する。でもそれは、差別の解消と相性がいいとは言い切れない。ここが非常にモダモダする。人間は結局、異なる他者と共生なんてしたくないんじゃなかろうか?

2019-07-10 21:23:10
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ツリーになってないけど言い添えておくと、生まれつき共感力が低い人間や痛覚のない人間はいる。だから人間の定義は難しいんだ。

2019-07-10 21:42:35
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

デは例え話、おとぎ話として見ないと意味がわからない。でも、そう描こうとしたというよりは、クリシェを多用するデ神の作風上ああなってしまった、と考えるのがいいかもしれない。ステレオタイプ的な描写が多いことにも繋がる。いよいよ文芸批評の分野に入ってきたが私はそっちはさっぱりなんだ…

2019-07-12 12:47:52
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

舞台となる土地や歴史上の出来事を、上っ面を撫でたような記号的な使い方をするのも、結局はクリシェ多用な作風と同じ精神から来るのかも。そしてステレオタイプが差別の原因のひとつであることを踏まえると、その傾向はやはり褒められたもんじゃない。

2019-07-12 12:50:26
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

そう考えると、デに散見される日本趣味もクリシェ的なものなのかもしれない。さすがにオリエンタリズムにまで繋げる気はないけど。

2019-07-12 13:51:07
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

鏡像段階について。作中やたら鏡を見るコマンドが出てくるやつ、あれは多分ラカン(フランスの精神分析家)の言う鏡像段階論が元ネタ。生まれたばかりの幼児が自我を形成していく過程についての理論。

2019-07-19 23:07:01
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

幼児には統合された自分のイメージがない。生後6カ月〜16カ月くらいで鏡に映ったものを見て初めて「これが自分だ」と認識して自我ができていく。変異体は生まれたばかりの人間に例えられているので、鏡コマンドは文字通り、幼児の自我形成の過程を意味してるんだろう。

2019-07-19 23:07:02
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

※私は心理学メガネを掛けている人間なので、鏡を出されても、連想するものが「自己鏡像認知」なのだ。鏡に映った像を自分だと認識すること。これを確かめるのがルージュテスト(顔に口紅をつけた上で鏡を見せて反応を調べる)。だいたい生後18カ月くらいになるとテストをクリアできるようになる。

2019-07-19 23:07:02
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

鏡像段階論にはもうひとつ意味があって、つまり「私」は外部によって作られるもの。他者を鏡として、その中に自分を見出す。この辺をデ的に言うと「生きることは誰かのために変わること」になるのかな…と思っているが、デはその辺を簡単にしすぎて逆に分かりにくい!哲学用語を使ってくれえ!

2019-07-19 23:07:03
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ちなみにラカンはフロイトの精神分析を構造主義的に捉えた人。構造主義って実存主義と反対だし、デ神は実存主義推しなのになんで普通に共存してるのか謎。だけど、多分デ神がフランスの神だからだ(サルトルもラカンもフランス人なので)。

2019-07-19 23:07:03
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

デと映画のクリシェ、トロープについて。デはシネマティックADVというジャンル名の通り、映画みたいなゲームだ。特にアメリカ映画の影響が強いんだろうなと端々で感じる。3人の主人公ごとにカメラワークが違うとか、そういう表現はすごく好き。

2019-07-24 20:35:19
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

でも、アメリカ映画のいい部分と一緒に、悪い部分も取り入れちゃってる。ステレオタイプ的なキャラクターや表現がそうで、例えばルーシーは「マジカルニグロ」ど真ん中だ。マジカルニグロは、白人の主人公を助けるためにどこからともなく現れる黒人(か他のマイノリティ)の登場人物。

2019-07-24 20:35:19
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ルーシーそのものは好きだからちょっと悲しいんだけどね…他にも挙げればきりがないけど、「ステレオタイプを排除するのが正義」だと言いたいわけじゃない。「扱うテーマ的にその姿勢はどうなんだ?」という点が気になる。

2019-07-24 20:35:20
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

ディレクターがいみじくも言っていたように、自分に近いもののことはよく分からないんだろう。私だって足元のことは見えてない…が、散々指摘されているステレオタイプについてはちょっと気にして欲しかったかなあ!デトロイトなのにメインキャラは白人ばっかりだし。

2019-07-24 20:35:20
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

間に合った!! 書きました、そしてなんと今回はキレてません(当社比) ビカムヒューマンしないマンのDBH考・実存主義と自由意志編 (1/2) katakurikatakori.hatenablog.com/entry/2019/08/… ビカムヒューマンしないマンのDBH考・実存主義と自由意志編(2/2) katakurikatakori.hatenablog.com/entry/2019/08/…

2019-08-15 18:48:56
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【特別対談】落合陽一×田川欣哉 〈人間〉という殻を脱ぎ捨てるために(後編) wakusei2nd.com/archives/artic…

2019-09-29 17:33:59
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「恐らくリベラルアーツ的な訓練をしっかり受けた人であるほど、テクノフォビアの傾向が強いと思うんですね…言い換えれば今までの自分をかたちづくってきた人間中心主義、民主主義、アート、「個」という幻想。この4点セットを根本から否定されてしまうことへのフォビア(恐れ)だと思うんですよ」

2019-09-29 17:38:45
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マー様がカールんちで受けていた教育が自由七科(リベラルアーツ)という指摘を見て膝を叩いたわけですよ あの世界の「人間」とはやはり旧来の西洋的価値観からくる「人間」なんだと。

2019-09-29 17:40:24
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そういう価値観を持っていれば、テクノロジーによって強化された超人間(トランスヒューマン)というのはまさに恐怖の対象なわけですね

2019-09-29 17:42:34
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キレながらお勉強したリストを作りました~ 復習はもちろん自分がカバーできてない範囲もはっきりした 歴史のお勉強をしなければ DBH考察用履修リスト(1/2) - かたくりかたこりかたつむり katakurikatakori.hatenablog.com/entry/2019/10/… DBH考察用履修リスト(2/2) - かたくりかたこりかたつむり katakurikatakori.hatenablog.com/entry/2019/10/…

2019-10-01 20:28:23
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

『シンギュラリティは近い(エッセンス版)』 この本からインスピレーションを受けたとディレクターが言っているだけあり、考察には必修(オリジナル版は長いようなのでエッセンス版)。DBH作中のノリとは正反対に、著者のカーツワイルはテクノロジーの進歩に乗り気。

2019-10-03 22:16:37
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DBHのアンドロイドの設定は、ほぼこの本に出てくるポストヒューマン(テクノロジーによって強化された超人間)の描写に近い。

2019-10-03 22:16:46
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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 設定元ネタ。作中にもこのタイトルをもじった小説あり。賞金稼ぎの主人公リックが、火星から逃亡してきたアンドロイドを追う。

2019-10-03 22:23:57
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(日本語訳で分かりづらくなっているが)おそらくカムスキーテストの元ネタは『電気羊』において人間とアンドロイドを識別するためのテスト「フォークト=カンプフ検査」。この検査は感情移入の程度を測るもので、『電気羊』のアンドロイドは共感を持たない。

2019-10-03 22:24:21
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DBHの言う「人間性=共感」の元ネタのひとつと思われる。その他にも、自然が壊滅的な被害を受けていたり、本物の動物が貴重な存在だったりと、多分に大きな影響が見られる。

2019-10-03 22:24:30
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

「電気羊」とは、動物を所有することが社会的ステータスである世界で、本物の動物を持てない人間が飼う「羊ロボット」のこと。なお主人公のファミリーネームはデッカートで、アマンダという女優がいる。デトロイト市警のデッカート巡査(※開幕殉職)のこと、みんな覚えてるんだろうか…

2019-10-03 22:25:12
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『鋼鉄都市』 コナー編元ネタ。ロボ嫌いの私服刑事・ベイリが、人間そっくりのロボット・ダニールと嫌々ながら殺人事件の解決に挑む。管理社会的なディストピアとなった地球が舞台。

2019-10-04 21:51:30
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

『はだかの太陽』 続編。広大な土地にたくさんのロボットを使い、人間同士は離れ離れに暮らすソラリアという星が舞台。地球人の私服刑事ベイリが、再び嫌々ながら殺人事件の解決に挑む。ソラリア人は人と直接対面で会うことがほとんどなく、むしろそれを嫌悪する風習がある。

2019-10-04 21:52:07
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『夜明けのロボット』 続編。ダニールやその製作者のひとりファストルフ博士の故郷であるオーロラという星が舞台。地球人の私服刑事・ベイリが三度嫌々ながら殺人事件の解決に挑む。おっさん、出張先で現地妻とイチャイチャこいてる場合じゃないぞ。

2019-10-04 21:52:58
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『面白いほどよくわかる! 哲学の本』 著者が塾講師だけあってとても分かりやすい。ひとつのトピックにつき文章と図解で2ページという構成で、ギリシャ哲学から現代西洋哲学、東洋哲学までをだいたいカバー。とりあえずこれから読んでおけばなんとかなる。おすすめ。

2019-10-04 23:00:36
北(デ用)@再録本通販中 @kitaonglacier_d

『マーティン・ルーサー・キング――非暴力の闘士』 キング牧師の活動の歩みがコンパクトにまとまった良書。信頼の岩波。特に彼の取った非暴力という手法について「無抵抗ではなく暴力を使わない形の闘争」であり「訓練の必要なもの」という側面を強調している。

2019-10-04 23:27:52