母の死から数年、成長した双子の王子。 夜毎開かれる伯父の趣味の夜会に辟易した二人は城の者に内緒で深夜の脱走を決意するが…
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

いばらの壁の向こうから~双子の王子の物語~ 【Episode1】巣立ちの日 pic.twitter.com/QTKZPFdCz8

2021-04-13 21:40:07
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

【Ⅰ】 春の夜の空気はまだ冷たく、いばらの壁に守られたヴォストニアの大地を照らす大きな満月はさながら氷の玉のような青さだ。 しかし王宮の夜会の声は賑やかで、楽師達の奏でる流麗な弦楽器と笑いさざめく貴人たちの声は吹き荒む夜風の声をかき消すほどだった。

2021-04-13 21:45:03
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そんな喧騒も薄れた静かな夜の回廊に響く足音と、ぼんやりと心もとなく暗い回廊を照らす明かりが一つ。 …足音の主は一人の男だ。豪奢な金の刺繍を施した礼服に身を包んだその姿は一目で王家に仕える高貴な身分の者とわかる。 が、その容貌は服装とはあまりにも異なっていた。

2021-04-13 21:49:06
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僅かな蝋燭の灯りに照らし出された皺だらけの顔の中、闇を睨むような血走った目がぎらりと光る。 鉤で吊り上げたような醜い鼻、黄ばんだ歯を剥き出しにした食いしばったような口元は、すれ違う者が目にしたならば回廊が揺れるほどの金切り声を上げるだろう。 その不気味な男はある扉の前で足を止めた。

2021-04-13 21:56:06
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「王子、失礼致します。チェーザレが参りました」 見た目に反し…と言うべきか、礼服に似つかわしくと言うべきか、落ち着いた恭しい声で男は扉の向こうにいるであろう”彼ら”に呼び掛けた。刹那、 「どうぞ」 澄んだ声が扉の向こうから返ってきて、男はこれまた恭しい所作で扉を開けた。

2021-04-13 22:01:07
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灯りの点らぬ豪奢な部屋を明々と照らすのは、赤々と燃える暖炉の火。その傍にいたのは半馬身の二人の少年。 一人は窓の傍に腰を下ろし、傍らに座す金色の子犬を撫でており、傍らに立つもう一人はいかにも不機嫌そうに腕組みをしている。 「お二人ともやはりここにおられましたか」 pic.twitter.com/irdsjb4T9b

2021-04-13 22:04:29
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「お休みのところ恐縮でございますが王子、どうぞ席へお戻りください。ご来賓の皆様もお二方をお待ちです。やはり夜会には主役のお二人がいなければ…」 おもねるように言いさす男に、 「冗談じゃねぇ、いい加減こっちも飽き飽きしてんだよ!」 声を上げたのは黒馬の少年…アンジェロだ。

2021-04-13 22:12:46
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「夜会夜会って今月に入って何回目だよ、なんならだんだん回数増えてってんじゃねぇのか?顔を合わせりゃおべんちゃらしか言わねぇ余所者の相手にいい加減うんざりしてんだよこっちも!」 不機嫌そうに声を張り上げるアンジェロを、 「アンジー」 傍らに座す白馬の少年が制止する。 …リチャードだ。

2021-04-13 22:16:25
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「ごめんチェーザレ、アンジーは苦手な貴族の女の子にしつこくされて、今機嫌が悪いんだよ。もう少ししたら俺が行くから先に会場に戻っていてくれるかい?」 アンジェロの剣幕にすっかり縮み上がった男に、打って変わって穏やかに語り掛ける。

2021-04-13 22:19:23
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「おいリック、別にもういいじゃねぇか、ほっとけよ。どうせ会場にゃ伯父上がいるんだろ?なら俺たちは…」 「だとしたらなおさらだよ、伯父上の顔を潰す気か?」 きっぱりと言い返すリチャードの声に思わずアンジェロは言葉をのんだ。 「そういうことだから。先に戻っていてくれ、すぐに行くよ」

2021-04-13 22:22:10
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「かしこまりました、それでは会場でお待ちしております」 姿勢を正し、男は一礼すると部屋を出ていった。 …再び沈黙が訪れる。 数瞬の後、「くぅん」とリチャードの傍らにあった金色の子犬が鼻を鳴らした。 「ごめんよスリ、また行かなきゃ」 リチャードは子犬の頭を優しく撫でた。

2021-04-13 22:25:44
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【Ⅱ】 アンジェロの不機嫌には理由があった。 これまで王宮の中とは言え教育の時間以外は比較的自由に過ごしてきた二人に対し、ここ二月程前から伯父・エリック王が行動に制限を課すようなことが増えたのだ。 城の外への外出は勿論のこと城にいる間ですら学習と称し監視の目がつくようになっていた。

2021-04-14 21:26:17
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更に二人を辟易させたのは夜毎開かれる夜会だ。 気前が良く祭り好きなエリックが趣味の一環で国内外の貴人達を集めて宴を開くことは度々あったが、このところその回数は異常な程に増えていた。月に一度の定例会に加え、今夜は気分がいいから等と気まぐれな理由で開かれる夜会は週に3度を数えた。

2021-04-14 21:31:15
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その度に客の接待に駆り出される双子の王子にとってはたまったものではない。 伯父や家臣たちはこれも後学の為と決して手を抜くことを許さず、二人は疲れ果てるまで作り笑いと心にもないお世辞とで「余所者」達のご機嫌を取ることを強いられた。

2021-04-14 21:34:03
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

初めは敬愛する伯父の為にと心を込めて客を持て成していた二人も、こうも頻繁に客の相手を求められては身も心も疲れ果てるばかりだ。 おまけに夜会の晩は客の声が騒がしく、二人から静かで自由な夜を容赦なく奪っていく。 そうして遂に耐えかねた二人はこうして夜会を抜け出したというわけだった。

2021-04-14 21:41:13
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「…一体どうしちまったんだろうな伯父上。 確かに宴好きなのは知ってたけど、流石にやりすぎじゃねぇか?貴族共もどうしてこうも毎度気前よく集まってやるかね、どうかしてるぜ」 「彼らは国王からお声がかかっただけで有頂天なのさ。最近は伯父上に呼ばれた数を自慢している奴もいるって」

2021-04-14 21:45:49
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

リチャードはため息を吐いた。 「でも」 再び顔を上げる。 「伯父上もなんの考えもなしにこんなことはしはないはずさ、きっと何か理由があるはず…」 思案顔のリチャードへ、 「だといいけどな」 アンジェロはどかっと地べたに座り込んだ。 窓の外をひゅう、と冷たい風が駆けていった。

2021-04-14 21:49:57
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【Ⅲ】 「…ック」 耳元で微かに何か聞こえた気がした。 しかし連日の夜会で疲れ果てたリチャードはすぐにそれが夢の中のことなのだろうと朦朧とする意識の中で思った。 「…リック」 今度ははっきりと自分を呼ぶ声を認識した。 しかしそれ以上に疲労がその声を意識に取り入れることを許さない。

2021-04-15 01:05:30
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「おいリック、起きろ!」 しかしそれすら振り払うような大きな声と振動で、ようやくリチャードは厚い革のように目を覆っていた瞼を開いた。 …視界に入ったのは夜闇に塗り潰された寝台の天蓋、そして… 「アンジー!」 傍らに立った見慣れた姿に思わず声を上げる。 「しっ!バカ、声でけぇよ!」

2021-04-15 01:09:03
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「どうしたんだよ、こんな夜中に…」 いぶかるリチャードに、 「こんな夜中だからだよ」 にやりと口元を釣り上げるとアンジェロは何をリチャードの方に放ってよこした…フード付きのケープのようだ。 「それ着ろ、すぐ出るぞ」 「出るって…どこに?」 要領を得ぬアンジェロの言葉に問うリチャード。

2021-04-15 01:12:32
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「一箇所だけ城の塀が壊れてるところを見つけたんだ。門番の奴、勝手口の鍵を机の上に置きっぱなしにしてやがったからくすねてきた、これで外に出られるぞ」 突然飛び出したアンジェロの突飛な提案に思わずリチャードは目を丸くした。 「いや…出てどうするんだよ」 「決まってるだろ、夜遊びだよ!」

2021-04-15 01:16:27
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「どうせ夜に遊ぶならあんな気取った奴らとじゃなくて、もっと楽しいとこに行こうぜ、来いよ!」 「でも...」 一瞬躊躇ったリチャードだったが、ふとこの程の退屈な夜会の情景が頭をよぎった。 それに対してうんざりした気持ちが心を覆った頃には、リチャードはアンジェロと共に部屋を抜け出していた。

2021-04-15 01:20:18
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部屋を抜け出しアンジェロに言われるままリチャードは勝手口から鍵を開けて外に出た。 …月は既に東に傾きかけている。 「あっちの方に一か所だけ壁が脆くなってるところがある、俺ら二人で蹴り上げればすぐだぜ。 行くぞ、夜警が見回りに来たら大事だからな」 アンジェロは城壁の西端を指差し笑った。 pic.twitter.com/SAIT5NanmO

2021-04-15 01:30:20
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【Ⅳ】 アンジェロの言うとおり、一箇所だけ脆くなった西端の城壁は二人の「馬力」で蹴り付けるとすぐに崩れ、丁度一人分通れそうな穴になった。 「でもこんなのすぐにバレるんじゃないか?」 心配そうに言うリチャードに 「なぁに、蔦でも多めに被せとけばバレねぇって」 笑うアンジェロ。

2021-04-15 14:59:18
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こうして双子の王子の夜の逃走劇が始まった。 とは言うものの「だいたい夜警が交代するのって朝方だよな、それまでに帰ればいいか」 「そもそも明るかったら下手するとバレるよ。日が昇る前には戻らないと…」 このまま行方を眩ませて…というつもりは二人にはないらしい。 繁華街も城と目と鼻の先だ。

2021-04-15 15:02:48
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いつもはお付きの者達に付き添われてやってくる城下町も二人だけ、それも夜だと全く異なる顔を見せるのを、二人は初めて目の辺りにした。 城の窓から見るだけだった街の灯の中を二人は恐る恐る進んでいった。 質の良い寝間着に外套を羽織ったおかしな姿を訝る者もあったが身元がばれた気配はない。

2021-04-15 15:07:45
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「ところで出てきたまではいいけどこのあとどうする?行く宛は?」 勢いで出てきてしまったものの確かにリチャードの言うとおり二人には特に行く宛はない。 が、 「そう焦んなって。別にいいじゃねえか、普段見れねぇ珍しいもんが見られんなら。ゆっくりしようぜ」 対してアンジェロは呑気なものだ。

2021-04-15 15:19:54
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しばらくは町を見物して回った二人だったが、「小腹が減ったな」アンジェロがぽつりと呟いた。 確かに、普段ならとうにベッドに居る時間にこうして外を歩いているのだから無理もない話だろう。 と、ちょうど目の前にパブの看板が見えてきた。 「よし、せっかくだ。一杯ひっかけてくか!」

2021-04-16 00:20:02
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「一杯って…まずいよ、まだ成人もしてないのに。もし伯父上に知られたら…」 慌てて止めに入るリチャードに、 「固えこと言うなよ、伯父上だったら俺らくらいのときにゃ酒や煙草くらいやってるだろ。ほら、せっかく町に出たのに見物だけなんてケチなこと言うなって!」

2021-04-16 00:25:35
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アンジェロに押し切られ、手をひかれるままリチャードはパブの扉を開いた。 カランカランと軽やかなベルの音が鳴り、 「あら、随分若いお客さんだね。 あんた達、今いくつ?」 ジョッキを複数手にした浅黒い肌のウェイトレスが近づいてきて、二人を見やると声を上げた。

2021-04-16 00:28:56
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「馬鹿にすんなよ、これでも2年も前に成人してんだぜ」 鼻息荒くアンジェロが答えた。 「え、えーと…ほら見て。俺たちは双子だから母さんのお腹の中で栄養を取り合ったから小さく見えるんだよ」 慌ててリチャードも相槌を打つ。 「ふうん」 ウェイトレスは小さく鼻を鳴らすと二人を席へ通した。

2021-04-16 00:31:35
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「よし、それじゃあ我らの自由に!若さに!乾杯!」 ミードの入ったジョッキを片手にアンジェロが声を上げる横で、リチャードは少し身を縮め、 「…乾杯」 小さな声で応えた。 寝間着姿の若い二人に店の者たちの視線が集まるのも気にせず、二人は初めての盃に口をつけた。 …甘く苦い大人の味だ。 pic.twitter.com/YVoA2ABhp7

2021-04-16 00:34:33
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「よし、これでオッケー!」 明け方、ミードを飲み過ぎてよたる足取りで二人はこっそり城に戻り壁の穴を蔦で塞いだ。 「夜警の奴が来る前にとっとと部屋に戻るぞ…って、大丈夫かお前?」 ほろ酔い気分で上機嫌のアンジェロを尻目にリチャードは顔を手で覆って俯いている。 どうやら悪酔いしたらしい。

2021-04-17 01:02:13
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「だってあのお酒、ずるいよ。甘いからミルクで割るといくらでも飲めちゃうんだもの…」 甘味好きなリチャードはどうやらミードのミルク割りが痛く気に入ったようで調子に乗って飲みすぎたようだ。 「これだからお子ちゃまはよ!ま、俺もビールの旨さはわかんなかったけど」 肩をすくめるアンジェロ。

2021-04-17 01:05:18
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「とにかくさっさと戻ろうぜ。明日の朝はその、なんだ…風邪引いて熱っぽいとでも言っとけ」 アンジェロの肩を借り、リチャードはよたよた千鳥足で城に戻って行った。 …白む東の空の逆光を受けた黒い人影が城門の上から二人を見下ろし、やがてまだ残る闇に音もなく消えたことを二人は知らない。

2021-04-17 01:11:13
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【Ⅴ】 幸か不幸かそれからも壁の穴の存在は城の者に発覚することはなく、双子の王子の夜の脱走劇は続いた。 どういうわけかその後「調子に乗りすぎたから」とエリック王は夜毎開いていた夜会をぱったりとやめてしまい、そのことも相まって王子達の夜遊びも回数が増していくのは必定だった。

2021-04-17 16:37:02
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もう何度目のことだろう、その夜もいつものように寝間着姿にケープを羽織った二人は人目を盗んで夜の城下に繰り出していた。 夜遊びも慣れたもので既に行きつけの店まで出来ていた二人はその晩もいつもの店に向かうことにした。 と。 「ねぇ、お兄さんたち!」 双子の王子達の後ろから声がかかる。

2021-04-17 16:41:13
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「ん、なんだ?」 すわ客引きかと声の方を振り返ると、「あ、お店のお姉さん」リチャードが声を上げた。 いつも通っている店の数人いるウェイトレスのうちの一人がそこにいた。 いつもならこの時間は仕事をしているはずなのだが。

2021-04-17 16:43:39
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「珍しいな、姉さん今日は仕事はいいのかい?」 アンジェロがウェイトレスに問う。 「今日はお店休みなのよ、店長が悪いもの食べて当たっちゃったみたいでさ」 カラカラと笑いながら女が答えた。 「そうなんだ…じゃあどうしようか、せっかく出てきたけど」 リチャードがアンジェロに問う。

2021-04-17 16:46:11
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「ねぇ、そんなことよりさ、あたしの知り合いの店が近くにあるんだよ。こう言っちゃなんだがうちの店より美味い酒が飲めるんだ。すぐそこだから一緒にどうだい?」 くい、と顎をしゃくって女はすぐ脇の小道を指して言った。 「どうする?」 「俺は別にいいけど」 アンジェロの問いに頷くリチャード。

2021-04-17 16:50:43
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「んじゃあ、お言葉に甘えてご一緒させてもらうぜ。姉さん、店ってどこなんだい?」 「そうこなくっちゃ、こっちだよ!」 女は明るい声で言うとアンジェロの腕を引いて小道に入った。

2021-04-17 16:54:47
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「あれ…ここって…」 リチャードが声を上げた。 二人が行きついた先は袋小路、飲み屋の軒先などない完全な裏通りだ。 「はいご苦労さん、あんた達、これでいいんだろ?」 訝る二人を尻目に女は元来た道の向こうに声をかけた。 すると建物の陰からぞろぞろと黒い影が現れ、見る間に二人を取り囲んだ。 pic.twitter.com/QhlgMC96qe

2021-04-17 17:06:13
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「おい、こりゃどういうことだ?」 女を睨みつけたアンジェロに向かって女は鼻で笑う。 「いつもいつも随分仕立てのいい寝間着で店に来るもんだからよ、ついお前らに目が行ってな。おまけに羽振りもいいと来てやがる」 二人を取り囲む醜悪なゴブリン達の背後から、一際大柄なオークが出てきて言った。

2021-04-17 22:47:35
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「へへ、今日も遊ぶ金たんまり持って来てるんだろ、お坊ちゃん達よ。 ホレ、出すもん出しな」 ナイフをちらつかせながら先頭にいたゴブリンが言う。 「キジも鳴かずば撃たれまいだぜ、俺らの根城で目立ったマネしたのが運の尽きだったな!」 隣にいたゴブリンも二人に向かってナイフを突きつけた。

2021-04-17 22:52:05
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「アンジー…」 不安げに、というよりは少し困ったような声でリチャードはアンジェロに声をかけた。 「ああ、わーってるよ」 ふん、と鼻を鳴らすアンジェロ。 「そうそう、いい子にしてりゃ悪いようには…」 言いさしたゴブリンの言葉はそこで途切れた。

2021-04-17 22:57:25
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

アンジェロは目にも留まらぬ速さで自身の横にいた女を突き飛ばすと、女の傍に立て掛けてあった端材と思しき木の棒を手に取ると真正面にいたゴブリンの肩口目掛けて思い切り振り下ろしたのだ。 ばきっ、と派手な音を立ててゴブリンの肩口が嫌な歪み方をした。 「ぎぃあァッ!」 苦痛にゴブリンが叫ぶ。

2021-04-17 23:01:26
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「リック!」 次いでアンジェロはもう一本あった端材をリチャードに投げて寄越すとそれを受け取ったリチャードも流れるような所作で道を塞いだゴブリンを薙ぎ倒す。 「キャーッ!だ、誰か、誰かこいつらを止めて!」 青ざめた顔で女が叫ぶとそれに呼応するように建物の影から数人のゴブリンが現れた。

2021-04-17 23:06:10
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「てめぇらこそ誰に喧嘩売ってるかわかってなさそうだな!チンピラ風情が俺らに敵うわけがねえってこと、教えてやるよ!」 増援の醜悪な小鬼共とその親玉であろうオークにアンジェロは端材の切っ先を向けた。 「クソガキが…嘗めた真似しやがって、やっちまえ!」 オークの怒鳴り声が夜の街に響いた。

2021-04-17 23:19:39
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

かくしてゴブリン軍団対双子の王子の深夜の激闘が幕を開けた。 数で攻めるゴブリン軍団だったが、「グエッ」 束になってかかったところでリチャードの後ろ蹴りで蹴り飛ばされる。 「リック、ザコは頼むぜ。俺はこのデカブツ片付けるからよ!」 端材を片手に果敢に殴り込むアンジェロに押されるオーク。

2021-04-18 21:44:05
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「クソ、親分がやられちまう!」 「あんなガキに押されてるだって?!」 リチャードに叩きのめされながらゴブリンたちがオークを見て叫ぶ。 実情は彼らの言葉通りだ、体格では勝っているもののアンジェロの宮廷仕込の剣術(?)に押され、オークは見る間に壁際に追い詰められていた。

2021-04-18 21:48:22
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まとめたひと
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

Dazレンダリング中に絵を描いてる日本のおばちゃん。一応18歳以上推奨。※All rights reserved.🚫AIの無断学習禁止。我愛台湾.Xforio→xfolio.jp/portfolio/Seir…🔞クルップ→crepu.net/user/SeiryuD