そうでなきゃたとえ二重スパイとかであってもこれ以上雷一門の醜聞を増やす意味って全然ないもんな…デメリットしかない。 桑島家そのものか、お義兄ちゃんか、どっちかが鬼舞辻の手の届く範囲に居るんだ。
2023-08-17 21:35:09お義兄ちゃんからの鬼舞辻情報を仲介するライター。今世無惨様、配下の心は読めないし基本虚弱だから部下は死ぬほど強いけど本人は頭と恐喝で勝負してる(致命)
2023-08-17 21:45:22「なんでもすると言ったか?」 「はい」 「フン。――ならば、今宵のパーティー、上客たちの前でストリップショーでもしてもらおうか。お前の顔も体も、まあ不器量なりに、無駄に動かさなければそう悪くない造りだ」 「……それで、あなたが、ほんの少しでも俺を信じてくださるのなら、」 やりましょう。
2023-08-18 02:24:59「――つまらん」 「……」 「冗談だ。せっかくこちらが厳選して招いた上客の前にお前のようなブスを出してもこちらの格が下がるだけ――まあ、自由に凌辱してもいいと言うなら、また別の話だが――そんな、バチバチと放電するような目つきを持つ者が、寝首を掻く以外で私の傍に寄るものかよ。そのあたり、
2023-08-18 02:30:21あの、――なんという名前だったか、お前の兄弟弟子の方がずっとマシな目をしていたな。あちらの方が人間としての世渡りはうまいだろう?」 「さあ――俺は、生まれてこの方、みなしごとしての世界しか知りませんので」 「フン。それでお前は何を望む?私のベッドには近寄らせぬが、
2023-08-18 02:33:33配下の慰み者やペットとしてでも下げ渡されたいか、それとも拘束されて座敷牢にでも押し込むのも風流か。――私も病を持っていたころそこで生活していたことがあるが、そこそこ居心地は悪くない。いやいっそ、裸に剥いて首輪をつけて写真を撮り、産屋敷に送り付けてやるのも嫌がらせとしては滑稽か…」
2023-08-18 02:36:42ここ(鬼の住処)に来た以上は、人間としてのどんな尊厳もなくなるものと、理解していて来たのだろう?――お前が、壱〇〇年前に私を殺した奴らの中にいたかは覚えていないが、それで竈門炭治郎と産屋敷たちが逸り隙を見せるのならば、それでよし。何もなくとも――お前の中で何かは毀れる。自尊心?
2023-08-18 02:40:22自己肯定?それとも、お前が勝手に信ずるただの欺瞞か。私は刀が刃零れしていくのを見るのが好きでな。己を『そうあれかし』と定めた者、命を刈り取るしかできないものが勝手に毀れていくのを見るのは、どんな享楽よりも心地がいい――」 壱〇〇年前、私は産屋敷にしてやられたが。
2023-08-18 02:44:34「歓迎するさ、『我妻善逸』。己の価値を知らないお前が、のこのことここにやってきたことに感謝しよう。お前が来たことそれこそが、私の勝ちを運命づける決定打となるだろうことを、ここに乾杯しようじゃないか」
2023-08-18 02:47:03ぎゃあん、ぎゃおうと怪獣が喉をぶっ壊すような声が、家から遠ざかってもでかく聞こえる。 「呼ぶな」 ぜんいつ。 「呼ぶなよ…」 ぜんいつ。 とうとう耳をふさいで蹲った。 ぜんいつぜんいつぜんいつぜんいつぜんいつ。 そんな音が聴こえるわけがない。 何かの間違いだ。
2023-08-18 02:58:50そうでなくば、それは俺の醜い期待だ。 ぎゃあああああお、とひと際大きな叫び声とざわめきが聴こえて。 立ち昇った音と異様な空気に、でも戻って何があったか、確かめるのもどうやってもできなくて。 もう何もかも嫌になった俺は、霹靂の踏み込みでそこからただただ、一直線に逃げるしかなかった。
2023-08-18 03:01:56――かみさま、祈ります。 聴こえてないかな、でも、今、人でなしの俺が祈ります。 アイツが、あの子が、あの人たちが。 幸せであるように。幸いのただなかに在るように。 祈ります。祈ります。 ――かみさま。 ごき、と、いやな音が、とうとうその頚から発されて、落ちた。
2023-08-18 04:12:26――かいがくに、生まれる前の記憶はなかった。 一度でも鬼と変転したものの中で、昔の記憶を保持しているケースは、そうでなかったものと比べて多くない。そもそも記憶を持ってるケースそのものが多くないのだから、なおさらその確率たるや。 だから、竈門兄妹に記憶がないことも想定内ではあったのだ。
2023-08-20 03:49:32はあ、と無惨は溜息を吐いた。 「相も変わらず産屋敷はやることが豪胆と言うより雑だ。こいつをこうして寄こした時点で私を殺す、世間には自爆テロと報じられて世論が一つ二つステージを上がるだろうに」
2023-08-20 04:24:17「――いいのかとは、私も訊いたんですよ。そしたら、『なんでダメです?』と返されて。『いいんですよ。何が駄目です。いいなあ、きっと幸せでしょうね。俺もいつか、それが見れたら、』」 きっと際限もなく、幸せだろうな、と。 「そんなにも、幸甚の中で苦しみを味わうような寂しさを、君は、」
2023-08-21 17:32:22何でそんな、地獄のごとき苦しみの中で、幸福と言う毒の快楽を塗った鉤爪で。手ひどく深く、引っ掻かれたかのような貌をしているんだろう。 そんな、絶後の苦しみをまるで待ち望んでようやっと抱き寄せ、受け入れたような、そんな、貌を。
2023-08-21 19:27:42「貴様もずいぶんと、気狂いの頭をしているな」 ああそうだ、あの時お前たちは皆そういう顔をしていた。 私にとってはずいぶんと醜悪で、滑稽なほど、死ぬのが必定だと知りながらも生き抜きたいというその矛盾。どれだけ私がそれを惧れ、それでもそれを眺めて笑えたものか、貴様は知っているだろう?
2023-08-21 19:34:18何時かを、見た。 血を吐いて意識を失い倒れる間際に、その子と横たわり見つめあっているお前を見た。 何時かそうやって笑いあうだろう、一瞬で白昼の夢を見た。 その子を家族として迎え入れるのだろうお前を見た。 ならば、俺は、それを壊さないようにしなければならない。
2023-08-21 22:51:09――ああ、痛い。痛い。 静寂は、ざらざらとした砂嵐のような絶えぬ殴打として鼓膜に響く。 何もかもを聴きとるよりも、それがずっとずっと痛かった。
2023-08-21 22:54:27じ、と互いに瞳孔の先を見つめ合って逸らさなかった。 ……唇が、少しだけちゅう、とくっついて。 笑ってしまった。泣いちまったのはごめんな。もう、ずっと、無理だったんだよ。 これ以上一緒にいるのはどう我慢しても無理だった。
2023-08-21 23:36:03お前は、もう、誰を一番にしようと自由になった。 俺にとってそれ以上の勝利はなかった。無惨を打ち倒したあの薄明の朝日の光を見つめたときより、笑い転げたいほどずっと爽快な気分だった。
2023-08-21 23:41:48「お前、禰豆子を娶りたいんじゃなかったのか?」 震える声でお前は言った。 流石にそこまで恥知らずじゃないと、俺は返した。 お前の『家族』を、俺が奪えるはずがない。 かといって俺がお前の家族になれるというわけでもないから、それはもう仕方がないんだ。
2023-08-22 00:25:40「なぜ腹を切らないのか」と生まれなおしてからさんざん言われた。 「なぜ頸を斬らないのか」「なぜ腹を切らないのか」「なぜいまだにここにいるのか」
2023-08-23 09:48:32耳をふさぐことは許されないと思ったのだからそうしたさ。 「――なぜ、お前は今ものうのうと生きているのか」 さあ、それは、俺こそが最も知りたいことだ。
2023-08-23 09:48:41「お前のボロボロの遺骸を回収したのは俺だ」 「あーその節は申し訳なく…ありがとうございますねぇ…フフッ」 「…それはほとんど違法ドラッグの域にある薬です。依存性はそれほど高くないとはいえ…」 「あははは、大丈夫ですよお、「まわされた」時に呑んだののほうがよっぽど…」 「成神君」
2023-08-28 07:31:47「それは「以前の」話ですね?」 「……今、年号っていつですか」 「令和の世ですよ。戻ってきたようで何よりです」 「しのぶさん、痛いです」 「痛いですねえ。痛み止めにこちらからもモルヒネを出しますが…まずはその薬が完全に抜けてからですね」 「痛いじゃないですか」 「痛くあってくださいね」
2023-08-28 07:35:51おいで、と少し低めの、甘さを転がす声が聴こえた。 黄金の髪と鼈甲飴の瞳を眩しく細めた人だった。見知らぬ人だ。警戒すべきだったのに。 何故だろう、少しも不審を感じずに、俺と禰豆子はその人の後について行って。 漸く意識が戻ってきたのは、夜のとばりの中で走る車の後部座席でのことだった。
2023-08-28 07:50:22「――君が、人間のことを嫌いでも別にいいんですよ」 「ただ、今は人間として私は君を心配します。同時に、人間だからこそ、いつか私は君に死を導くような命令も出します。君に嘘は言えませんから、本音を言いましょうね。これが私の正直な胸懐です」 「――はい」 「ありがとうございます、しのぶさん」
2023-08-28 08:33:22「かわいそうとか思うなよ」 「……」 「会ったこともない人たちだ。それでも俺は幸せだ。会わないことで守れるものもある、会わないからこそ至上の幸福を信じられる関係もある。俺が考えて選択した結果のことだ。お前さんは優しいからつい考えちまうんだろうが、俺には必要のないものだ。
2023-09-14 09:22:42「腹を裂いて生き胆を獲られた、それでも悲鳴一つ決して上げず、うこぎを包んだ手を最期まで決して開かなかった」 それが、果たして誰のためだったのか。
2023-09-14 09:23:21手の力がようやっと緩み、そうして男がついに事切れたことを知る。その時、青天に霹靂がピリッと奔った姿を、確かに雀の黒い目は抜け出そうとしていた指の隙間から垣間見た。
2023-09-14 09:23:54それは途端に日雷の鋭い奔流の裁きと育ち、次の一瞬、その地域一帯に幾百条もの雷光が轟音とともに満ち墜ちたと、雀と遠目から見た近隣の住民からの証言である。
2023-09-14 09:24:02