絵が描きたい、画用紙に、12色のクレヨンで、色を全部全部使って、遠い日に見たあの大きな坂で夕陽を背負っていたあの子の、逆光でよくは窺えなかった表情を、描き足して僕なりの納得に落として、そうして綺麗に忘れてしまいたい
2022-06-14 03:40:34死体が埋まってるって話とか、本当はダニの死骸だとか、彼は本当はそんなことを言っていなかったとか、そんな些事は桜の柄が綺麗なよく日干しした布団に転がりながら夏目漱石を読んで忘れてやれよ
2022-06-10 02:03:06眠気を抱えているときに、ことばをどうこうしようとするのは、金魚掬いとよく似ている。どうせ手元に得たとて短命に終るところまでを含めて。
2022-06-07 19:05:44寝惚けた梅雨が巨きな軀を這摺れば、取り残される体液が、沢山の小さな小さな輪に化ける。小さな。そうね、丁度貴方の頭蓋を一周分かしら。気象予報士の指し棒が示す域に居着くようになった、赤と青の、棘棘があるでしょう。六月の体液を成分にしたあれが輪状に結ばって、じきに脳を吸いにくるわ。
2022-06-05 18:48:26拾った枝に飴細工を施した其れを。時に癪な感情を寝具に散かし乍ら抱いて眠った其の杖、の頭を。喉首へ、ぐうと引き寄せてやれば、ぎいと呼吸が狭まります。悪夢を引摺る千鳥足は格子と形り、無数の手を寄越します。こんなお天気の悪い日にも、後悔の滝をもそいつはぺろりと平らげてくれたから、憎い
2022-06-04 20:23:07身体中の管という管から、何か、虫の這うような音がするので、わたくしはきっと、ずっと楽器にあこがれて、ふっと無力にたそがれて。
2022-06-04 02:10:39〝何を伝えたくて書いているのか〟訊ねられましたって、申したい懺悔も込めたい愛も一つとしてない事しか垂れには参りません。そう云う種の植物だか動物なのだなと、そうして、へんだなあとかきれいだなあとか各々で分別しながら、時々、きっと眺めていてください
2022-06-02 23:27:56愛想は何処かと君が問う、なにせ此の肌無彩色。体液が通うていもせぬ性器には、泥濘の死を迎えたい商いへ遣るのとおんなじ吐息が巻付けられて。湿った札束の隙間を泳ぎ、何処からとも無く惚れて解れて、ヒトの形に紙切った。君と僕の為だけに、誰一人とて帰れぬように、カミの手足を炙りませんか。
2022-06-02 23:16:41膝に沈めた顔 隠した目を伏す 百の色は徐々に彩度を溶した 僕の〝個〟は鉄の砂漠へ埋葬した積りが 自称・無償の愛、の、旱。照され 干され 殻殼に。喉笛で訴える、「せめて私の善行を貨幣代りとした愛に」と。与えられる特別な空間、特別の温度で。特別な腕が抱きくる、空空しき愛で閉ざされる。
2022-05-30 09:21:58顔を布で隠した長身の女から、一ツの印結びを教えて貰う夢を見た。朝、現実に持ち帰ってしまったまじないを布団の中で真似たが、何も起こりはしない。然し二日、三日と続け、無意識を縫って指はあの奇妙な形を作った。いつか私は、あの女に骨までねぶられるのだろう。否、もしかすると、既に私の指は。
2022-05-28 02:43:15無音が響き渡る深夜を好ましく、けれど自死へ急かされるふうに思うのは、静寂こそが心身をじわりじわりと蝕む快楽へと落す何よりの薬だと神経がようく知っているからなのかもしれない。
2022-05-13 01:26:20意味深な唇の振動を縫塞ぎ殺めたのは恥知ずな夜の帳を留めたと同じ郷愁が芳る糸。目頭辺りで満月の贋作が〝愛情深き母親、と云う作品をやれ〟と告げられた洗剤みたいな微笑をする。癪でならない。癪でならない。知った振りの有象無象に演るべきは何か。やあ有難う有難うと笑えば眠れるとでもいうのか。
2022-05-05 01:47:15装丁カフェで小説のハイライトを作ろう! #装丁カフェ #小説ハイライト pirirara.com pic.twitter.com/OIdV6khfTN
2022-05-01 13:25:14時には何故か大空を旅してみたくなるものさ、けれど金がなけりゃ気球のミニチュアすら手に入らない。雲が固形ではないのだと知ったのはいつだっけ、ママが僕を嫌いだと知ったのはいつだっけ、飛行機に夢を見なくなってからどれほど経つ?十代が自殺したニュースに嫉妬するようになってどれほど経つ?
2022-04-30 03:30:09まだ三時だねと君は言う、弄び飽きた枕の含んだ熱、それは屹度命を宿した。抱いても潰しても返事を寄越さないからつい殴って仕舞った一時間前を想う。まだ生きてるんだねと君は言う、枕の耳にも届く声で、それはそれは愛らしいピル・ケースの中ほどより、それはそれは悍ましいキル・ゲームの顔付きで。
2022-04-30 03:07:05もっと殴って。もっと謗って。蛙の腹に爆竹を詰める様に、或いは手持花火を鈴虫の番いに降らせる様に。燻っていた残虐性をブーツの踵に灯したら僕に頂戴、成る可く遠くへ投げて頂戴。人権は貴女のポーチの中に、或いは使わく調理具の中に。キッと睨んで嫉妬めかせて。そっと壊して、ごっこ遊びで。
2022-04-22 22:14:44背伸びで買った一眼レフ、走り書きの余白に宿る傲慢、青い厭世感を煮詰めた台詞、本棚で繭に戻る純文学、鼻を摘んで世辞を遣った友人の詩、せっせと掻き集めた希死念慮、風邪薬を一ツだけ多く飲んでみる日、彩度をうんと下げたセルフィー、冒頭だけの小説、フェードアウトの一行日記、愛、愛、愛、愛。
2022-04-14 21:34:25機械に成りてえ、そう祈り続けたさ、神とやらに。するってえと、どうだ。足腰だけが鉄に変ってくれたのさ。見えやせんが、食欲もこの所有りゃしねえし、内臓も変化したかもしれないねえ。操者のアテも生産性も見込めン俺あ、早う鉄屑に戻して頂きたいが、やれやれ、鉄味の血は未だ赤く熱ちいんだな。
2022-04-13 14:58:05『愛の成分が知りたくってほつれを弄んだ 恋も随分してなくって絡れさせて遊んだ ファッション雑誌を読まなくなって長い 渇いたコンタクトレンズであの子の心なんて読める訳ないだろ』
2022-04-03 23:37:10頭を空回さず一本の道が通った文章が書けたのは、随分な年月振りです。たいへんに珍しい偶発ですから、彩雲でも見掛けたように感じて頂ければ。
2022-04-03 17:49:19幼き日、絵画に感動し筆を握った。成長の道すがら、詩歌へ夢を見てペンに替えた。書きごとの夜に窓から流れ込んだ歌声に恋し、アコースティック・ギターを抱えた。そして暫く。憧れを寄せた歌手が入水自殺をしたのだとニュースで耳にした。人は優れた者の模倣をするというが、果たして。#140字SS
2022-04-03 17:43:39聞かん坊の思は今に、睡眠薬と腕を組み私の息を鎮める約束。枕の端に脚を開いて居ります難解な現代詩集に、閑散とした頁。此の拙さをひたと守る頭蓋の外では、空白は多分に、写実と在るので御座いましょう? 期待に酷似したユメ・マボロシの物質を浸ませた無が、ほどかれる時を恵んではやらないよ。
2022-04-02 23:49:46『刻んだビートに乗り遅れないように 吸って吐いてぱっと跳んで 着地するのは楽園、なんて柄じゃないけど 前髪を上げてみるのも悪くないかな』
2022-03-30 10:26:34劣等感、きみのゆき場はいずこかな。停留所、看板の機嫌を窺い滑り来る交通機関車両は、額の電光文字の行先も曖昧字体だというのに。羨望感、きみの死に場はいずこかな。信号機。見下ろす縞の黒色を踏まずに歩いたとて、陽に押し貫かれました影ッ仔は如何に足掻けど梯子の隙間へ落ちるのに。
2022-03-30 10:23:25