なんやかんやあって江澄や師姐を養うために自ら性器を切り落として宦官になった魏嬰が、宦官は奸邪であり国家に巣食う蛆虫と教えられてきた官吏の藍湛(皇帝の教育係を務めるような名門出身)と宮廷で出会い、なんやかんやあって忘羨になるまでの妄想ツイ。魏嬰だけでなく藍啓仁も宦官になるので注意!!
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地獄のホテルにお熱なkirishima(🇮🇳🇨🇳沼と🇰🇷ミュ20↑shipper @hananinakuguis7

いつまでも己を小僧扱いすると陛下は御立腹だ。ただでさえ気の短い陛下を刺激するならやり方をよほど考えないと、飢えた獅子に素手で殴りかかるも同じだぞ。もう日を決めてしまった以上覆す事はできないが、せめて藍先生があたら寿命を縮めぬよう、よくよく言い聞かせるべきだ。藍湛、聞いてるのか?」

2021-10-28 13:29:49
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頭をがしがしとかきむしる魏嬰をしげしげと見つめ、こくんと頷く藍湛。「忠告感謝する。明日の話し合いの場に私も同席する事は可能か?」「願ってもないな。藍先生がまずい事を口走りそうになったら、首に手刀を入れて沈めてしまえ。俺はこれで失礼するぞ。明日、陛下の御前で会おう」藍湛に握られた

2021-10-28 13:43:45
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ままだった手をやさしくふりほどき、励ますように彼の手の甲をぺしぺしと叩いて去っていく魏嬰を、息をするのも忘れて見送る藍湛。その時なかなか戻らぬ甥を案じて己を呼ばわる叔父の声が響き、はっと我に返った藍湛が踵を返す。魏嬰は藍湛に握られた手を不思議そうに見つながら皇帝のもとに帰っていく

2021-10-28 13:57:01
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翌日、皇帝の御前で顔を合わせた忘羨は聶兄と藍先生の間のぴりぴりとした空気に身を固くするが、そんな二人など眼中にない藍啓仁は挨拶もそこそこに跪き、「この老骨は愛する祖国への最後の奉公として、陛下を死してお諫めする事も厭わず」と宣言。声高らかに宦官を重用する事の愚と柔弱な皇太子を矯正

2021-10-28 15:20:15
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しない事の危険を解く藍先生に激昂する聶兄と凍りつく忘羨。「貴様にこれの、懐桑の何がわかる?!」と卓を殴りつける皇帝に「宦官はすべからく悪であり、先祖を裏切る忘恩の徒に他なりませぬ! お父上がご存命なら、かような奸邪に心惑わされる事はなかったはず! 陛下は天晴れ暗君と御成りだ!」

2021-10-28 15:26:20
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「藍啓仁、いくらなんでも不敬が過ぎるぞ!」内心大パニックであわてて会話に割って入った魏嬰を、藍先生は「皇室に巣食う蛆虫は黙っておれ!」と一喝。それを聞いた瞬間、聶明玦の瞳が血に飢えた虎のように危険な色を帯びて光る。「蛆虫…お前にとってこれは蛆虫か。藍啓仁、これほどの不敬を働く以上

2021-10-28 15:50:53
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貴様が死を恐れていない事は明白だが、だからといって朕にお前を罰する手段がないとでも? だとしたら随分と舐められたものよ…! お前が蛆虫と断じた者が乗り越えてきた痛みや苦しみを、その身で以て味わうがいい…! 誰かある! 不敬の罪により藍啓仁を宮刑に処す! 彼の者を連行せよ!!」

2021-10-28 16:07:35
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「陛下、どうかお慈悲を!」勢いよく叩頭する藍湛の背中をぶっ叩いて「控えろ藍忘機!」と叫んでから隣に跪く魏嬰。藍啓仁が自ら赦しも乞わぬうちから皇帝に譲歩を迫るのはやばすぎるという判断。「陛下、藍先生が心より我が身の不徳を恥じて、罪を謝しても変わらず宮刑にされるおつもりですか?」

2021-10-28 21:38:21
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「藍啓仁がお前の足下に跪き、心から過ちを認めるというなら考えてやらなくもないが…」無理ゲーすぎて気が遠くなる魏嬰に話は終わりだとばかりに手を打ち鳴らす聶兄。「刑の執行は七日後とする。魏無羨、お前には今よりあれの独房の監視を命ずる。朕の条件を過不足なく伝え、あの偏屈爺に己が命運を

2021-10-28 22:45:09
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選ばせよ!」呆然自失の藍湛をどやしつけながら、藍先生のいる牢までなんとか引きずって来た魏嬰。手負いの獣のような眼光で自分を射る藍啓仁を、負けじと睨み返して刑が執行される日と皇帝が出した条件を伝える。「ハッ、私に誇りを捨てろと言うか? 貴様の足元に跪き、みっともなく赦しを乞えと?」

2021-10-28 22:56:53
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「俺だってあんたが宮刑を免れる方法が他にあるなら、好きにしろって言うさ! そうじゃないから困ってるんだろうが! 藍啓仁、男根を切り落とすってのは、あんたよりずっと若くて頑丈な男すら命を落としかねない荒業なんだぞ。宦官ごとき畜生に謝る事は誇りが許さないからなんてふざけた理由で、

2021-10-29 18:11:15
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宦官になるやつがあるかッ! 父母からもらった身体を損なうのが獣の所業なら、五体満足であれるよう努めるのは人間の義務、親に孝養を尽くすも同じだ。宦官ごときに一瞬謝るふりをするくらいで、あんたの御先祖様は目くじら立てたりしないはず――」「黙れ小僧! 貴様が藍家の、私の誇りの何を知る!」

2021-10-29 19:06:16
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「叔父上、彼は貴方を案じて」「黙れ忘機! あれほど説いて聞かせたというのに容易く篭絡されおって…! お前の顔なぞ見たくもないッ! 私の前から消え失せよ!」口を縫う術でもかけられたみたいに声を失い、それでも負けじと睨む甥を叔父が一喝「年長者への礼はどうした! 私は去ねと言ったのだ」

2021-10-29 19:32:44
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きっと叔父をひと睨みし、全身から不服のオーラを漂わせながら去る藍湛にいや大人しく去るんかい! と呆然とする魏嬰。こんな時まで雅正発揮してる場合か! 俺にこのオッサンを説得できるとでも?! 俺を買い被るのも大概にしろよ藍忘機~ッ! 魏嬰が頭を抱えたその時、牢と通路を隔てる扉の前に

2021-11-01 15:11:29
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立つ番人が細身の御史から歴戦の猛者といった風情の禁軍兵士と交代する。「魏元帥、陛下は私に藍啓仁が条件を呑むか宮刑を受けるまで牢に外部の人間の立ち入りを許すなとお命じになりました。よって今この瞬間から此処は開かずの扉です。藍忘機殿は勿論、余人をまた連れ来める等とは思わぬ事です」

2021-11-01 15:58:33
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万策尽きたら藍湛を連れて来て、泣き落としでもなんでもさせようと考えていた魏嬰は、宦官の身で禁軍元帥に据えられ四苦八苦していた自分を陰日向なく助けてくれた副官/目付け役の登場に天を仰ぐ。これマジで俺が説得するしかないやつじゃねーか! 顔を引きつらせる魏嬰を鷹の目の鋭さで射貫く副官

2021-11-01 16:58:31
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もう悪戯は企みませんとばかりに両手を上げた魏嬰に、わかればよろしいと頷く副官は謹厳実直で知られた男で、階級が上の者にも意見するのを躊躇わないと評判だった。二人のやりとりに確かな信頼関係を見て取り、皇帝の寵愛を良い事に禁軍を恣にしているという魏嬰の噂にかすかな違和感を抱く藍啓仁

2021-11-01 20:05:26
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だが、ハッと我に返って惑わされるな! と自らに言い聞かせる。宦官は須らく悪であり、道徳に反する存在だ。自らの意志で父母からもらった身体を損ない、先祖が代々守り伝えてきた家名を断絶させる等という行いは、罪深いの一言ではすまされない。罰を恐れて自分が頭を下げてしまえば、そんな罪人が

2021-11-01 20:37:51
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宮廷を牛耳っている現状を認めてしまう事になる。それでは先祖に、教え子たちに顔向けできぬと思った時、牢の前にどかっと魏嬰が座り込む。「藍先生、俺と少し話をしないか?」「貴様と話す事などないわ!」「まあそう言わずに。なあ先生、人が宦官になるのってどんな時だと思う?」「欲にかられたとき

2021-11-01 21:05:27
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であろう」「オイオイ、そんな雑にまとめてくれるなよ。家族に売られて宦官になるやつもあれば、戦に負けて去勢されるやつもある。先生だって陛下を怒らせたばっかりに今、宦官になるかならないかの瀬戸際だろ。あんたが諫言したのは欲心からか?」「私が言っておるのは貴様のような自宮者の事だ」

2021-11-01 21:20:31
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「汚い欲のために悪鬼に魂を売り渡し――」「藍啓仁、元帥の寛大さにこれ以上甘えるなら、私にも考えがある」扉を守っていた副官が、大剣の鍔をちゃきっと鳴らすのを手で制した魏嬰。「まあ生きていたいとか誰かを守りたいとかそういうのだって欲のうちだし、あんたの言葉は間違っちゃいないさ。でもな、

2021-11-01 23:30:46
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魂を売るのはそれしか売るものがないからだ。人が相手にしてくれるなら、悪鬼と取引する必要もない。…先生は人はいつでも正しい道を歩むべきだし、それができると思ってるよな。でもこの世には狭くて暗い一本道しか用意されない人間もいる。宦官ってのはそういうやつらが選ぶ道だ。先生はどうだ?」

2021-11-02 00:48:21
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「何が言いたい」「あんたの前には本当にその道しかないのかって聞いてるんだ。天下の往来を行けるのに呪われた隘路を選べば、必ず悔いる事になる。その後悔はお前を殺すぞ、藍啓仁」年齢に似つかわしくない老成を湛えた魏嬰の声に思わず息をのむ藍啓仁だが、気を取り直して目の前の小僧を睨みつける。

2021-11-02 09:25:39
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「命を惜しむな名こそ惜しめ、決して直言を恐れるなというのが藍氏の掟だ。私はその教えを胸に育ち、子弟たちにもそう教えて生きてきた。そんな私がどうして今、罰を恐れて引き下がれよう…! 己が信じてきたものに自ら砂をかけ、背を向けるのは死ぬ事とどう違うというのだ! 答えよ、魏無羨ッ!」

2021-11-02 10:58:03
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宮刑を回避するためなら捨てるべき"こだわり"に見えていたそれは、藍啓仁がその生涯をかけると決めた信仰だったのだと悟り、愕然とする魏嬰。由緒正しき名門に生まれ、祝福を受けて正道を歩んできた男が、たった一つの信仰のために地位や名誉やあらゆるものを投げ捨てようとしている事に衝撃を受ける

2021-11-02 11:50:58
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「…あんたにとって信念を違えるのは死も同じだという事はわかった。でも、これだけは忘れないでくれ。先生が気持ちを変えたとしても、それを裁いたり嗤ったりする資格のあるやつなんてこの世にはいない。品性の下劣なやつらが何を言うかなんて恐れで、自分の人生の選択肢を狭めるべきじゃない」

2021-11-02 12:36:22
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眉間にしわを寄せた藍啓仁にしまったという顔をして、口をぱちんと抑える魏嬰が、力なく笑って付け足す。「陛下に直言できる藍先生が、有象無象の言を恐れたりなんてしないよな。余計な事を言った。その…俺が言いたいのは、いつでも気が変わったら教えてくれって事なんだ。刑の執行まであと六日ある。

2021-11-02 12:49:13
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じっくり考えて決めてくれ」複雑に絡み合った知恵の輪を眺めるように魏嬰を観察する叔父上だが、冬場の牢の底冷えするような空気にけほけほと咳き込み始める。それを見てあわてて立ち上がり、毛布を持って来る、あと何か温かいものも! と速足で牢を出ていった魏嬰に、取り残される叔父上と副官。

2021-11-02 12:57:49
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「…あれは何故、私を気に掛けるような素振りを見せる。あの小僧にとっては私など小うるさい儒者でしかあるまいに」「彼にとっては些末事なのでしょうな。なにせ陛下の鞭から皇太子殿下を庇って、覇下を振りかぶられても一歩も退かなかったような御仁です。我々ただ人の尺度でどうして測れましょう?」

2021-11-02 13:58:31
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情報量の多さに目を白黒させている叔父上に、当時一宦官でしかなかった魏嬰が練兵場でやってのけた一大スタントを説明し、皇帝や皇太子に義兄弟のように愛されるまでの波乱万丈を語る副官に、言葉巧みに宦官魏嬰が皇帝や皇太子に取り入ったと聞いていた藍啓仁は唖然。風聞と現実の落差に額を抑える

2021-11-02 14:46:35
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その時ぱたぱたと足音が近づいてきて、大きな行李を背負い脇に火鉢を抱えた魏嬰が戻ってくる。行李の蓋を開けて分厚い毛布や綿入れ、襟巻を藍先生に渡し、火鉢をセットして薬缶を沸かしはじめる魏嬰。にっと笑って懐から薬包を取り出す。「天下第一の名医様が煎じてくれた感冒薬だ。今薬湯にするよ」

2021-11-02 18:52:07
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「…お前は医師とも親交があるのか?」「俺がやけを起こして刀で陽物を切り落とした時、たまたま居合わせて処置してくれた恩人だよ。優れた薬師や医官を輩出してきた一族の中でも医聖と謳われるほどの腕前なんだが、本家の連中が反乱を企てて、連座で親類まるごと死刑になりかけてな…。どうにか助ける

2021-11-02 21:43:10
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術はないかと皇太子殿下に縋ったら、結婚を名目に下賜を願えばいいと言われて…」「それではお前が美女を囲い、その親族と暮らしているというのは…」「囲うなんてとんでもない。俺よりよほど甲斐性がある女傑だぜ。書類上は妻だが、俺にとってはこの世の何より怖くて頭の上がらない姉みたいなものさ」

2021-11-02 21:54:34
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これの悪評、もしやこういうものがほとんどなのか…? と副官にちらりと目をやる藍啓仁。よく出来ましたとばかりに頷く副官に知りたくなかった…と顔が引きつる叔父上。目と目で通じ合う二人に気づく事なく薬湯をこしらえた魏嬰が藍啓仁に杯を差し出す。「不安なら毒見をしてもいいがどうする、先生」

2021-11-02 22:57:13
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「頂こう」薬草の苦味に顔をしかめるが、ひりひりと熱を持ち始めていた喉が少しだけ楽になり、叔父上の肩から力が抜ける。空の杯を受けとった魏嬰が己の表情を見て、安堵したように頬を緩めるのに戸惑いを感じ、毛布をかぶって背を向ける藍先生。「魏無羨、おしゃべりは終わりだ。私はもう寝る!」

2021-11-02 23:41:40
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「おやすみ、先生」こいつは宦官で、宦官とは皇帝に寄生する蛆虫なのだから、こいつもまた蛆虫なのだと己に言い聞かせながら眠りに落ちる藍啓仁。泥のような眠りの底に沈んでいた意識が、ぽそぽそとした話し声によって浮上する。「――万の言葉を尽くしたところで、藍啓仁が思いとどまるとは思えませぬ。

2021-11-02 23:56:40
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宦官ごときと散々貴方を蔑んできた相手に、何故そこまで心を砕かれるのです? 元帥と同じ苦しみを味わえば、もう二度とかような口ぶりで貴方を罵る事はできますまい」「…お前がここまで怒るのはめずらしい。明日は雪の上に雷か?」「貴方が怒らぬからです」ぴしゃりと言う副官にふっと魏嬰が息を吐く

2021-11-03 00:08:18
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「心を砕くとかそんな大仰な事じゃない。先達として、藍先生に後悔してほしくないだけさ」「元帥は悔いておられるので?」「たとえ時を巻き戻せたとしても、俺は同じ選択をするよ。なんせ他に道がないんだからな。でもそれは悔いがないって事とは違う」「詳しく聞いてもよろしいので?」「面白い話じゃ

2021-11-03 00:15:56
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ないぞ、俺の身の上話なんて」「聞かせていただけるなら光栄です」盗み聞きを禁じるという掟は藍氏にはないが、どう考えても雅正に反する。身じろぎするなりして自分が起きている事を二人に示すべきだと理性ではよくわかっているのに、毛布に包まったまま息をひそめて、耳をそばだててしまう藍啓仁

2021-11-03 00:25:42
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「俺は幼い時分に孤児になって路上で暮らしていたところを、両親の友だった人に拾われたんだ。その人は地元の名士で、嵐みたいな細君と温厚な娘、意地っ張りで努力家の息子がいた。俺は雨風や食べる物の心配がいらない、やさしい義理の姉弟がいる生活を手に入れた。でも何事にも代償はある。どこの馬の

2021-11-03 10:39:38
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骨とも知れぬ子どもを家に引き入れたおじさんに、夫人の猜疑心は高まった。両親の不和に師姐や師弟が傷ついているのを見ても、俺はあの家を出れなかった。いつか必ず贖うからと、自分の幸福を優先した。彼らのそばにいる理由が欲しくて、俺は師弟と一つの約束をした。"お前が科挙に合格したら、俺は

2021-11-03 11:06:51
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武科挙を受けて瞬きのうちに将軍になるから、お前もさっさと大臣になれよ。俺は武で、お前は文で、天下に俺たちの家門を知らしめよう。天子の下に双傑ありと広く江湖まで響き渡るように"ってな…。ふざけて一緒に笑えるやつがいると、大それた事を望むのは楽しい。俺はあそこですごく幸せだったんだ」

2021-11-03 11:33:23
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望郷を感じさせる声に名状しがたい感情を覚える叔父上。武官を選出する武科挙は科挙のように一生かかっても合格できない人が続出する類の難関じゃないけど、聶兄が帝位に就いてから難易度が増して、一発合格できるような試験じゃなくなってる。師弟が科挙に合格した瞬間に武科挙を受けて及第する自信が

2021-11-03 11:59:03
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あったなら宦官になる前の腕前は相当なものだったのだろう。何故そんな男が自ら翼を切り落とすような真似をした? どんな達人でも宦官になれば筋肉は萎え、並みの軍人のように剣を振り回す事はできなくなる。軽口だとしても、刹那のうちに将軍になってみせると宣った男がする選択とは思えない藍先生

2021-11-03 12:07:15
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「…ならば何故、宦官の道を選ばれたので?」「どうしても金が入用だったから。機械いじりは得手だし、宦官になって兵器作りに携われたら、一兵卒から始める武官よりずっと早くまとまった金が入るだろ。俺が馬鹿だったせいで、師姐や師弟はすべてを失った。何をしたところで贖えないとわかっていても、

2021-11-03 12:59:10
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罪滅ぼしがしたかったんだ」「貴方はいかなる意味でも罪を犯せるような御仁ではない。どんな陥穽にはまったのです?」断固たる副官の口調に、吐息とも笑いともつかない、くぐもった声をもらす魏嬰。「あの日、俺はおじさんの遣いで隣の県まで出かけてた。途中で強盗が馬車を襲っているのに行き会った

2021-11-03 13:23:27
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から伸して、役所に突き出したんだ。そのまま県境を越えて、言いつけられた用を済ませて帰ったら、焼け落ちた邸で…動かないおじさんとおばさんを抱きしめて二人が泣いてた。俺が捕まえた強盗は県令が溺愛してる妾の息子で、父親が手勢を差し向けたんだ。両親を返せ、みんなを返せと言って泣きながら

2021-11-03 14:17:56
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俺の首を絞める師弟を師姐が引き離して…体の弱い人なのに、どこにあんな力があったんだろうな…。隣の州の夫人の親戚のところに落ち着いた時には、師弟は抜け殻同然だった。進士になって父母や家門の誇りとなるべく生きてきたのに、科挙どころか暮らし向きの心配をしなきゃいけない境遇になったんだ。

2021-11-03 14:47:25
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師姐の婚資だって覚束なくて、こんな事になったのは全部俺のせいなのに、あの人は三人で乗り越えようって言ったんだ。悲しくて申し訳なくてうれしくて、俺はずっと一緒だと言った。その日の夜、二人が眠ったのを確認して俺はそのまま都を目指した、何が何でも師弟の学資と師姐の婚資を稼ぐつもりで。

2021-11-03 15:03:27
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まあその時は自分が宦官になるなんて、夢にも思ってなかったけどな。宦官なんて偉くなるのは一握りで、他はなんとか食っていける程度だと聞いてたから」とぷとぷと杯を満たす音がして、魏嬰が美味そうに喉を鳴らすのを聞きながら、何故こんな事を経験してなおこれは酒を愉しめるのだろうと思う藍先生

2021-11-03 15:33:31
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まとめたひと
kirishimakagura(🇮🇳🇨🇳🇰🇷ドラとミュ好き20↑shipper @hananinakuguis7

虎に翼、RRR、hzbn、red book/銀河鉄道の夜(🇰🇷ミュ)マイディアミスター/ストーブリーグ、legally blonde/newsies/hamilton(Bway)山姥切長義にマウモア、魏無羨と温氏残党。マロmarshmallow-qa.com/kirishimakagur…