王宮から独り立ちし、外界での生活を始めたリチャードはある日町はずれの港で東の島国からやってきた半羊人の娘・リュウと出会う。 自分同様家を飛び出し、独り立ちを決意したリュウは父の旧友の女狩人を探しているという。 女狩人探しに協力するリチャードを待ち受けていたものとは?
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

午後の暖かな光が部屋に差し込んでくる。数日ぶりの晴れ模様だ。 窓の格子から差し込む光線がもう半分ほど読み終わった分厚い魔術書を照らす。 と。 「?」 ふいに光線が何かに遮られ魔術書の上に暗い影を落とした。 次の瞬間、 「おいリック!遊びに来たぞ!」 どこからともなく聞き慣れた声がした。

2021-05-02 02:00:07
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「あ!」 リチャードは思わず声を上げた。 顔を上げたすぐそこ、窓の外に見た顔が…また会いたいと願っていた彼女の笑顔があった。 が。 「え?!ちょ、ここ二階だぞ?!」 リチャードは驚き立ち上がった。 ここは屋敷の二階の寝室だ。 それ以前に安々と一般人が立ち入れる余裕はないはずだ。 pic.twitter.com/79M3ZCMxKg

2021-05-02 02:03:40
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「りゅ、リュウ、どうやってここに…」 「え?なんか見回りのおっちゃんいなくなったから塀登って入った」 まるで普通の事のように言ってのけるリュウ。 よくよく考えれば商船に忍び込むくらいなのですこれくらい彼女にとっては何ということはないのだろう。 「ていうかここ二階なのにどうやって…」

2021-05-02 02:06:02
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「お前なぁ、あたし高い山から来たんだぞ。切り立った崖を毎日登ってるのにこんな足引っ掛けるところたくさんある壁くらいどってことないって!」 ふんすといつものように鼻を鳴らすリュウと背負った子豚。 「ぷむー!」 「パチコも一緒に来たいって言うから連れてきた!」 「パ、パチコ??」

2021-05-02 02:08:25
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

どうやら会わないうちにこの子豚の名前はパチコになったらしい。 「なあ、うち来いよ!アンナさんがぱんけーき焼いてくれるって!」 色々思案するリチャードの気も知らず満面の笑顔でリュウが言う。 「楓糖のしろっぷいっぱいかけて食べるんだ、すっげぇ美味いぞ!」 その言葉に甘味好きの心が疼いた。

2021-05-02 02:12:31
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「わかった、今支度するから降りて待っててくれ。すぐに行くから!」 「そう来なくっちゃな!急いで来いよ!」 言うとスッとリュウの頭が窓の外に消えた。 …刹那、ギャーというチェーザレの悲鳴が聞こえたが、リチャードは気にせず出かける支度を始めた。 「スリ、行くぞ」 【To be next episode…】

2021-05-02 02:15:46