円居さんのTweets (Post)に対して触発されて色々書いていた。以下、その目的に近似するかもしれない本として紹介したものの書誌: ▼最初の手堅い1+2冊 渡辺照宏. 1974. 『仏教 第2版』. 岩波新書[青C150]/岩波書店. amzn.to/3x4qvgZ 馬場紀寿. 2018. 『初期仏教:ブッダの思想をたどる』岩波新書(新赤1735)/岩波書店. amzn.to/4aFJ89J 渡辺照宏. 1967. 『お経の話』. 岩波新書[青C153]/岩波書店. amzn.to/3vnwbSS 続きを読む
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円居挽 @vanmadoy

中高生の頃に聖書まわりのエピソード読み漁るってオタクあるあるな気がするけど、仏教だと「とりあえずこれ読んどけ」みたいなのが無い気がする

2024-03-21 01:18:13
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八宗綱要(鎌倉時代に編まれた、平安までの諸派の教理を要約したもの)の現代版があればいいんですけどね。

2024-03-21 08:16:41
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あと、キリスト教は「イエスに関するエピソード」がそのまま信仰の基礎づけになる(なぜなら聖書のうち特に新約編の福音書に書かれた出来事を信じることが肝要だから)のに対して、仏教はブッダが悟った事実を信じてもそれだけでは信仰の基礎づけには足りない、という違いがあるね。

2024-03-21 11:40:03
仏教の思想【全12冊 合本版】 (角川ソフィア文庫)

増谷 文雄,梅原 猛,上山 春平,櫻部 建,梶山 雄一,服部 正明,田村 芳朗,鎌田 茂雄,柳田 聖山,塚本 善隆,宮坂 宥勝,高崎 直道,紀野 一義

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初期仏教ならまだブッダ言行録を追うだけでなんとかなるけど(倶舎論とか入るとすでにブッダ自身の言葉を離れてるとも言えるからめんどいが、それはさておき)、大乗仏教になると「それぞれの経典自体はもはや架構されたブッダを通じて悟りの実態が語り直されている」ので、聖書より拡散的である。

2024-03-21 11:43:29
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菩薩やら如来やらの神格を導入した信仰としての仏教と、神格なしでひたすら認識論と存在論の淡いを問い続ける初期仏教と、その両方をやっている現代仏教諸派と、が入り乱れているので、何がエントリーすべき仏教入門なのかわかりづらいし、自然と党派的なリコメンドに引きづられがちだよね。

2024-03-21 11:47:04
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最初に触れた『八宗綱要』は、凝然の作。講談社学術文庫から鎌田茂雄訳で出ている。原著は南都六宗(倶舎・成実・律・法相・三論・華厳)に平安二宗(天台・真言)を足した八宗の由来と教理について、鎌倉時代の僧侶がまとめたもの。禅と浄土教についても短評あり。amzn.to/3x89v9O

2024-03-21 11:54:01
八宗綱要 (講談社学術文庫)

凝然 大徳,鎌田 茂雄

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あと現代仏教学としては師茂樹. 2021.『最澄と徳一:仏教史上最大の対決』. 岩波新書(新赤1899)/岩波書店. amzn.to/4cr9Og0 みたいな、新研究に基づいた話もあったりして、通り一遍でない新しい仏教研究の話はどんどん出ている。

2024-03-21 13:09:30
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やや仏教学本筋からは外れますが、赤松明彦. 2018. 『インド哲学10講』岩波新書(新赤1709)/岩波書店. amzn.to/4a3ubOw などは、仏教思想が出て少し後もインド圏で成熟していった六派哲学と、現代に至るまでの仏教含む東洋思想との関係を比較考察していて面白いです。

2024-03-21 13:14:19
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馬場紀寿. 2018. 『初期仏教:ブッダの思想をたどる』岩波新書(新赤1735)/岩波書店. amzn.to/4aFJ89J に関する過去の感想もあったわ。 twitter.com/tricken/status…

2024-03-21 13:25:53
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馬場紀寿『初期仏教』(岩波新書1735)たぶん読了。前半がひたすら文献学的禁欲に基づく絞り込み、後半が絞り込みに基づく初期仏教の教理析出の仕事。前半後半合わせて「こうやれば少なくとも文献学者にテキトー扱いされないのか!」というパフォーマンスの指標として参考になった。

2018-11-12 00:12:38
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@min_t_official 岩波新書では青版に渡辺照宏『仏教 第2版』amzn.to/3x4qvgZ と『お経の話』があるんだけど、それだけで全体が見えるかというとまた微妙だったりする(でも未だに古典だと思います)

2024-03-24 00:46:48
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『お経の話』のリンクが貼れてなかった。1960sの本なんですよ、岩波新書の青版なので。 amzn.to/3vnwbSS

2024-03-24 00:47:35
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今の研究では、「最古層経典」と「古層経典」のあいだでも、四諦八正道が解かれたタイミングについて議論があるのか。こんな風に俗説が未だ覆ったりするから余計に「この一冊でいい」が通らないんだよな。>仏教 - Wikipedia ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F…

2024-03-24 03:44:36
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Wikipeではこれが引かれている>並川孝儀「初期韻文経典にみる修行に関する説示 : 三十七道品と三界」(小野田俊蔵教授 本庄良文教授古稀記念号)佛教大学仏教学会紀要 28 1-21, 2023-03-25

2024-03-24 03:46:10
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古層とされるパーリ語仏典でさえ「釈迦が生きている間に確かにそう言った」とは断言できない理屈で彩られているのだから、釈迦本人が言った内容だけで構成された仏教を仮定するなら、マジで最低限の戒定慧だけになってしまう。それは現代日本でアクセスできすぎる仏教実践とは大きく食い違うよな。

2024-03-24 03:48:27
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それでも、三学(戒定慧)を「戒律を守り(【戒】)、瞑想修行をして(【定】)、{諸行無常, 一切皆苦, 諸法無我}を信じつつその内実をよく考え続けなさい(【慧】)」の組み合わせとするなら、四諦八正道や三十七道支も三学のレジュメを細かく切り直しただけで互換性はあると言える。

2024-03-24 04:04:47
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唐代中国仏教(北伝仏教)の基礎から日本仏教の伝統は大きくはみ出してはおらず、また唐代の時にすでに四諦八正道として整理されていたので、現代日本でも三学よりは四諦八正道の整理の方が通りがいい感じになっているのだろう。

2024-03-24 04:07:21
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今更原理主義的に三学とのみ言っても結局そのうちの慧=般若=基本教理については「苦とォ、無常とォ、無我があってェ」と論点を数え上げることになるのだから、なら今や最初から四諦(この諦というのは要諦の諦なので4 principals くらいの意味になるだろう)でいいじゃん、とはなるわな。

2024-03-24 04:11:43
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イエス・キリストやムハンマドの言葉は神に言わされた面がある、という教理なので彼らが言った/書かされた範囲での言行録が重要なわけだが、釈迦の言葉は別に神に言わされたわけではない。なので死後に「こうまとめても釈迦の主張からはそうズレんだろ」みたいな言い換えもわりと許されてる感ある。

2024-03-24 04:16:24
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一方、大乗仏教の中には、釈迦の主張は法身(=人々を時に悟らしめる、全世界の中心みたいな存在)によってもたらされている、と解釈する立場もあって、その考えに整合する釈迦像を再構築して書かれた経典もある。「あなたのアクセスする仏教の釈迦はどういう位置付けっすか?」は確認する必要がある。

2024-03-24 04:19:32

(1) 渡辺1974『仏教 第二版』の内容紹介

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渡辺照宏『仏教 第二版』p. 53「仏教諸派にとって大まかに5種類のブッダがいて、そのどれを選ぶかによって仏教思想は違ってくるよね」というまとめかたがあったのを再確認した。さすが古典。 pic.twitter.com/2BaHib8HJe

2024-03-24 04:29:56
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こういうブッダ観をoptionとして選べるところからすでに始まってるのだから、とりあえずアタナシウス派キリスト教一択な現代キリスト教よりだいぶハッカー精神を期待されてる宗教ではあると思う、仏教諸派。LinuxのCLI叩くところからいきなりスタートさせられる感じ

2024-03-24 04:34:35
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最小構成でやるなら「悪いことせず苦と対峙しなさい、以上」というタスクスケジューラがインストールされるだけだが、GUIつきお任せオプションを選んだら曼荼羅と密教ボンズがリッチな環境でついてくる(ただしサブスク料金はかかる)、みたいな感じでしょ、仏教OSインストーラ

2024-03-24 04:37:12
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仏教文献学の人たちは、過去にコーディングされた仏教OSのコンパイルミスを日々修復してgitにプッシュしてくれてると言える。暫く玄奘サーバから流れてくるディストリビューションに依存していたがそこのコードには色々誤りが含まれていたから。

2024-03-24 04:39:52
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今週書いた内容の一部をまとめたけど、昨日読み返していたら渡辺照宏『仏教 第二版』(岩波新書 1974)が結局1冊目としてはいい気がしてきた。やや歯応えはあるけど。>「とりあえずこれ読んどけ」系の仏教教養本がキリスト教・聖書周りより少ない件(2024-03-21) min.togetter.com/yhyIuO6

2024-03-24 09:36:08
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偏りのない仏教概説書に期待される要件は、おそらく (1) 最新説に基づくブッダ伝の概説 (2) ブッダ生前に説かれたとされる範囲の思想の要約 (3) ブッダ死後の文献学的拡散の要約 (4) ブッダ観が人間〜神格の間を取りうることで仏教諸派が林立してきたことの概説 (5) 上記を特定宗派に偏らず語ること

2024-03-24 09:44:14
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ということだと思われる。その上で (a) 「ブッダさん、いいこというじゃん」を取得したい人は(1)(2) だけで済み、(b) 待って、じゃあ自分らの知るあの如来やら菩薩やらって何? を知りたい人は (3)(4) を追加で読めば良い。でも「今の仏教言説どうしてこうなった」には(5) の観点がなければならない。

2024-03-24 09:48:23

(2) 馬場2018『初期仏教』の内容紹介

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『初期仏教』(馬場 2018)も手元にあったので読み直すと、ガウタマの死後すぐに結集されたのは「法と律」であってのちの「三蔵」の段階には遷移していなかった、という指摘があった(馬場2018, 55–66)

2024-03-24 12:17:24
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また初期仏典の中でもよく知られる「犀の角」も、ガウタマ自身の言葉ではなく当時の苦行文学を参考に作られた信徒の創作ではないかと推察されている(馬場2018, 72)。これは「初期仏典っていいな〜、大乗仏教と違ってブッダ自身の言葉があるもん!」と感動した経験のある人にとっては衝撃では。

2024-03-24 12:18:55
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馬場によれば、「法と律」が定められた(=結集仏典)頃に、現存する資料から最も近似するものは「四阿含」「経分別」「健度部」だったのではということらしい(馬場2018, 80)。ブッダ伝は法ではなく律の付録としてついている(同, 83–84)という話も面白い。

2024-03-24 12:33:07
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キリスト教において四福音書で語られる事実に若干の異同があるように、初期仏典のうち現存が確認されている5種類の「律」が語るブッダ伝も若干の相違がある(馬場2018, 87 表4)。ただし梵天勧請初転宝輪など、共観が確認できる部分も福音書的。

2024-03-24 12:36:07
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上座部ほか五部派が、表現の違いや多寡はあるものの、{十二支縁起, 四諦, 五蘊, 施, 戒, 生天, 十二処, 十八界}の諸概念は伝えている。ここから、紀元前3世紀以前のブッダ教団の思想は推察できるかもしれないという。添付の表5は(馬場2018, 95)のもの。 pic.twitter.com/nvPgZbScNt

2024-03-24 12:48:09
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>「布施」「戒」「四聖諦」「縁起」「五蘊」「六処」などの教えは、紀元前に、かつ大乗仏教の興起以前に存在していたことがわかる。これらが初期仏教で広く伝承されていた思想であることは確実である。初期仏教の思想における「主旋律」があったとすれば、これらを措いて他にない。 (馬場2018, 105)

2024-03-24 12:51:00
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(1)渡辺照宏『仏教 第二版』からの(2)馬場紀寿『初期仏教』(特に3章以降)の2冊で文献学的基礎を固めた後に(3)角川ソフィア文庫『仏教の思想』シリーズや佼成出版社『構築された仏教思想』シリーズで気になる宗派・教派を補完する、というのが多分いいんじゃないか。カルト巻き込まれも防げそうだし。

2024-03-24 14:15:27
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このデッキ組みだと、図書館で岩波新書2冊借りるだけで済むし、買っても2000円しないで確かな知識が得られるのでいいんじゃないですか。日中韓の大乗仏教事情は渡辺本だけだと俯瞰的視点が足りないけど。

2024-03-24 14:20:48

(3) 渡辺1967『お経の話』の内容紹介

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渡辺照宏『仏教 第二版』は,第二版とセットで『お経の話』も出てるが、この本の序盤には仏典成立と漢訳の経緯を述べつつ、必ずしもパーリ語仏典が大乗より常に古層とは限らない(ゆえにパーリ語=初期仏教=ブッダ存命中の思想みたいな断定はできねえよ)と1970s時点ですでに戒めてるのがレベル高い。

2024-03-25 20:52:12
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どんなに初期仏教に「神格化されないブッダ」を求めたところで、あらゆる仏典が共通して「梵天=ブラフマンが独覚したばかりのブッダに話しかけて布教するよう呼びかけた」エピソードは出てくるので、どんなに遡っても神格の関与ゼロにはできないんだよな。梵天さえ捨てたら初期仏教経典全てNGになる。

2024-03-25 20:54:44
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人間寄りブッダを伝えるあらゆる穏当な仏典でさえ梵天のような神格を省かないなら、神格だらけの華厳経や大日経と、梵天以外人間しか出てこないが梵天は省けない初期仏典との間に本質的な差はあるのか? という疑問が出る。

2024-03-25 20:57:13
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「初期仏教ブームの後にも大乗仏教の巻き返しはありうる。初期仏教も起源に遡れる文献学的状況じゃないんだし、そもそもパーリ語仏典は出家者集団風の禁欲的な性格が強すぎて、きっと出家者と在家者と両方に説法していただろうブッダの総合性を損なってるね」とさえ読めそうな『お経の話』序盤の筆致。

2024-03-25 21:02:30
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