極彩色の食卓の律子さんと燕くんの日常料理ツイノベ
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みお @miobott

#twnovel 贈り物にはほとんど反応を示さない律子だが、梅雨の時期に届いた金平糖にだけはひどく喜んだ。「梅雨っていいわね。何でも色が綺麗に見えるもの。でもせっかくだからこんな雨が降るといいのにね燕くん」彼女は何粒かを燕の手に注ぐ。くすんだ空気を切り裂いたそれは、確かに虹色の雨だった。 pic.twitter.com/iVSwmutzMh

2019-06-09 20:46:40
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#twnovel 「一個しかないから半分こね」ケーキを前に余裕を見せる律子だが、執心の目線はケーキの苺に注がれている。「どうぞ、苺は差し上げます」呆れて燕が言えば律子は幸福の満面の笑み。「赤を食べたい気分だったの」そう言って彼女は今日も色を食べつくし、燕は色に染まる彼女を目で味わうのだ。 pic.twitter.com/d7Q3nldFN6

2019-06-13 22:12:36
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#twnovel もう1時間近くしゃっくりの止まらない燕は不機嫌の色。そんな燕に律子は呑気に声をかける。「茄子の色ってどんな色?」炒めて油を吸った茄子を見つめて。「…紫?」燕がそう呟くと不思議としゃっくりが止まる。驚いて口を抑える燕に「おまじない」と律子は下手なウインク。「年の功でしょ?」 pic.twitter.com/E1Qk7cagM6

2019-06-15 22:01:33
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#twnovel 「そら豆って昔は死とか不吉の象徴だったのですって」律子は妙な知識を披露することがある。そら豆のさやを摘んで光にかざし「綺麗な緑。こんな棺桶なら入ってもいいかもしれないわ」など余計なことを呟くので燕はそれを奪って捨てる。「まだ早いです」焦りの香りは青臭さに混じって消えた。 pic.twitter.com/lZlzqMtg6S

2019-06-16 19:13:03
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#twnovel それは確かに綺麗なグラスだった。物に執着しないはずの律子が、それだけは大切にする。「琥珀の色が透けて綺麗ね」彼女は優しくグラスを撫でる。丸みを帯びたグラスに少し濃い目の紅茶を注げば眩しいほどで、いかにも律子好みだった。誰から贈られたものかその指の動きに燕は軽く嫉妬する。 pic.twitter.com/2O3tWS7oQm

2019-06-17 20:59:18
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みお @miobott

#twnovel 律子が珍しくたこ焼きを買ってきた。「地味な色ですし、好きではないのかと」「私だっていつも綺麗な色ばっかり欲しがるわけじゃないのよ」不服そうな律子だが、爪楊枝でたこ焼きを高く上げ「みてみて、紅生姜の赤が綺麗」と、無邪気に笑う律子を見て、今日も燕は笑いをこらえる羽目になる。 pic.twitter.com/lhsJM6nRkg

2019-06-19 20:20:43
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#twnovel 「ワインレッド、クリームイエロー、蛍光の黄色」歌うように律子は食事を楽しむ。「泡立つグリーンに透明のソーダ」連日続くうだる暑さにせがまれ作った、甘いゼリーを浮かべたソーダ水。色は咀嚼され彼女の口から体内へ。なるほどこの人は、極彩色を栄養とするのだ。と、燕は今更感心した。 pic.twitter.com/8MWrYgXJlT

2019-06-20 21:24:26
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みお @miobott

micromagazine.net/kotonohabunko/… 極彩色ツイノベはこれで一旦終わり~。どうしても食べさせたかった某ゼリーソーダ。また明日にでもモーメントでまとめておこうとおもいます。 読んでいただきありがとうございました!加工楽しいので不定期に食べ物ツイノベはしたい。

2019-06-20 21:24:27
みお @miobott

#twnovel 飲めない癖に律子は時々ビールをねだる。「ずっと昔、夏に見た琥珀色の月光。あの色によく似てるわ」幸せそうに笑う彼女は、匂いで酔ってやがて夢の中。「…苦」ビールを舐めた燕は眉を寄せる。彼女が見た美しい月光。いつ誰とどこで見たのか。つまらない勘ぐりを冷たい泡と共に飲み下した。 pic.twitter.com/kVuD2cWMI6

2019-07-02 21:14:06
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みお @miobott

#twnovel 「素敵。雪に夕日が落ちてるみたい」雑誌に掲載されたかき氷を眺め律子がため息を漏らす。店の住所は遥か西の地だ。「今度旅行にでもいきますか」何気なく漏らした燕の言葉に律子は驚きそして笑った。「約束するなんて凄く久しぶり」その寂しそうな声に、燕は旅行の計画を組み立て始める。 pic.twitter.com/CmdzKCvmfI

2019-07-07 19:09:12
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#twnovel 「私、カレーは夏の食べ物だって思ってるの」カレーを前に律子がいう。「この茶色が?」「花火が焦げたあとの夜空の色よ」彼女はカレーを幸せそうに噛みしめる。「作るのは暑くて苦労しますけどね」「いつも涼し気な燕くんが暑そうなのも見ていて楽しいわ」彼女は意地悪な子供の目で笑った。 pic.twitter.com/rSSengCAMt

2019-07-13 19:09:12
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みお @miobott

#twnovel わざとらしいほどの緑の液体、上に浮かぶ真っ白なソフトクリーム。底にゆっくり沈む白い筋を見つめて、律子は真剣な表情のまま燕を見上げた。「クリームソーダっていいわね。北の海に浮かぶ氷河みたい。涼しそう」なんてことはない風景の向こうに、律子はいつでも雄大な風景を見つけるのだ。 pic.twitter.com/5Awz3RePvy

2019-07-15 21:02:08
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みお @miobott

#twnovel 「子供の頃は苦手だったのに燕くんの作る赤いナポリタンを食べてから好きになってしまったの」律子は赤く染まった麺を眺めていう。「そんなに褒めても避けたピーマンの言い訳にはなりませんよ」残りの好き嫌いも全部直していきましょう。燕がいうと、彼女は「できるだけ」と渋い顔をした。 pic.twitter.com/XXjAdlTfYX

2019-07-19 21:01:38
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まとめたひと
みお @miobott

食べたり飲んだり書いたり。 書籍化📖 「上島さんの思い出晩ごはん」「極彩色の食卓シリーズ」「深川花街たつみ屋のお料理番」「彼女は食べて除霊する」 ヘッダーは@moshio_tsumuriさんthx お仕事依頼等は m.miobott@gmail.comまでお気軽に。 BOOTHで同人誌通販もしてます。