本当の題名を、『キャバレーの女』(縁総受け傾向)のアナザーストーリー。キャバレーで働く「とある秘密」を抱えた縁の前に現れた、高等遊民な無や将校の兄上、商人の炭/吉さんの三人の男。そんな三人の男を翻弄していた【女】の素顔と正体に迫る。戦前の退廃的でノスタルジックな俺の強めの幻覚Part.3-2
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ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

彼は少し考えるように黙り込むと、ジャケットから1枚のチケットを取り出す。 「今度、昼間に会わないか」 「……わたしと?」 「お前以外に誰がいるんだ」 と呆れたように笑う彼に、じわりと視界が滲む。 「ええ、よろこんで」 こくりと頷くと、愛しげに瞳を細める彼の胸元にすりよった。

2020-05-06 15:59:19
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

無様とのデートが決まった【女】は自分の洋服を取り出して、久しぶりに新しい洋服を買いに行こうと思った。どうせなら、うんとお洒落をして彼と逢いたい、そんな乙女心からだった。【男】の仕事の休みと自分の休みが重なった日、【女】はショッピングに出かけようと部屋を出た。 「あの男との逢瀬か」

2020-05-06 16:03:30
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

>>>兄上、【女】の自宅へ凸<<<

2020-05-06 16:04:08
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

横を見れば、兄が部屋の扉の横な寄りかかっていた。ひゅっと息を飲み込んだけど、それを表には出さずに毅然とした態度で素っ気なく答える。 「あなたに関係おありかしら」 そう言って横を通り過ぎようとすると腕を捕まれ、部屋へと引きずり込まれた。

2020-05-06 16:08:39
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

まるで腕を折らんばかりの強さに眉を寄せる。そのまま玄関先で兄に押し倒され、上にのしかかられる。何にもしていない自分と、鍛えている兄では例え双子とはいえ体格差があり、ビクリともしない。その瞳に宿る業火のような炎に身を震わせた。

2020-05-06 16:11:16
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「っ、やめて!!」 まるで悲鳴のような正史の声を上げても、兄は【女】の首筋に顔をうずめて、鎖骨に歯を立てる。足を割られて、兄の膝が自身の股座に触れそうになった時、【女】は兄の頬に平手打ちをしていた。 ─パシンッ 「っ、貴様……っ」 振り上げられた腕に、幼少時の記憶が重なる。

2020-05-06 16:14:44
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「(──ああ、おとうさま……っ)」 振り上げられた腕が父と重なり、思わず身を縮こませた。怯える【女】に兄は腕を下ろして、【女】の上から退いた。自分の体を守るように小さく縮こませて、【女】は昔の記憶を思い出していた。昔、1度だけだが、父に手を上げられたことがあった。

2020-05-06 16:17:29
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

痛くて怖くて恐ろしくて、頬の痛みと地面に打ち付けた体の痛みがまざまざと思い出された。あの時は、お母様が助けてくれた。けれど、今はお母様はいない。そんな時助けてくれたのは兄だった。でも、今自分に手をあげようとしたのは、そんな兄だった。もう、【女】にはわけがわからなかった。

2020-05-06 16:19:48
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

優しかった兄はもういない。こんな兄なんて知らない。知りたくなかった。"わたし"が、兄を、こんな風にさせてしまったのだ。そう考えれば考えるほど、【女】は自分の存在が許さなくなる。「(こんなことなら、いっそ、あの時に消えてしまえばよかった)」と思うも、脳裏には紅梅の彼が浮かんで離れない

2020-05-06 16:22:40
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「……こんなの許されませんわ」と呟けば、兄は「そうだな」と肯定した。「……奥様がいらっしゃるのでしょう」と再度とえば、「それでも、だ」と兄はいっそ穏やかに言う。ああ、やめてほしい。そんな声色を出さないで欲しい。同じ声で、泣いてい弟を宥める声と同じ声で、わたしに愛を囁かないでほしい

2020-05-06 16:27:33
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「焦がれてしまったからだ。──お前に、手を伸ばさずにいられぬのだ」 兄の言葉はあまりも誠実で真っ直ぐだった。だからこそ、兄が本気で、わたしに惚れているとわかった。分かってしまった。グシャリと何かが潰れる音が聞こえた。 「…………出ていってください」 「……また」 と兄は部屋を出た

2020-05-06 16:31:09
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

兄が部屋から出ていってたのを見送って、わたしはその場に座り込んだ。「ごめんなさい、ごめんなさい……っ……わたしが、早く消えていれば、こんなことにならなかったのに、ごめんなさい……ごめんなさい……」と【男】に謝る。もうだめだった。もう耐えきれない。

2020-05-06 16:34:42
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「ちがう。お前だけが悪いわけではない。そもそも、私がお前を受け入れてやれなかったのが悪いのだ」と、【男】は【女】を慰める。【女】は首を横に振りながら、ほろほろと涙を流す。「すまない、すまなかった……私が兄を傍で見たかったんだ。私は兄をあまり覚えていなかったから…すまない…っ」

2020-05-06 16:39:00
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

【男】も【女】も涙が涸れてしまうほど泣いた。もう、☀️の心は限界だったのだ。ギリギリに保たれていた均等が2人の男の存在によって崩れてしまい、修復不可能になっていた。悪い者なんて誰一人もいない。父も、母も、家族も、☀️も。悪い者は誰もいない。ただ、皆が相手を思うが故に起きた悲劇だった。

2020-05-06 16:43:08
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

泣き腫らした瞳でぼんやりと天井を見上げながら、【女】がポツリと答えた。 「もう、おわりにしましょう」 【男】は【女】の言葉に息を飲む。それは、【女】自身の死を意味することだった。 「だから、彼と日の下で会わせて。さよならも、ちゃんとするわ」 【男】は頷くことしかできなかった。

2020-05-06 16:45:54
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

【女】は顔を洗って着替え直して、ショッピングに出かける。そして、立ち襟で膝下丈のフレアワンピースと、首にまくショール、ヒールの低いパンプスを買って、自宅へ帰る。そして、お気に入りの洋服や必要最低限のもの以外は全て処分した。

2020-05-06 17:11:46
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

その次の日は、【男】は【女】が自分のものを処分したことを知る。それが、【女】の覚悟を垣間見てしまい、【男】は胸が苦しくなった。【女】が本当に死ぬわけではない。それはあくまで、比喩でしかない。けれど、【女】はあまりにも生身の人間だった。そうさせたのは、間違いなく【男】自身だった

2020-05-06 17:16:37
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まとめたひと
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

おい!!!!!なんで🎴の耳飾り触った!!!!!ゆうさき(腐/25↑) kmtの縁受け・黒十(字書き)/twst創作寮生·オリキャラ語り(🥥推しの右固定)/一次創作 ※単行本・プレイ感想ネタバレ 左右固定 自衛中 18↓FR等勘弁。アイコンは彩季さまから🙏 詳細はツイプロ