現世での討伐。歩道橋の上で脇差とやり合う長谷部くん。一方僕は地上で薙刀や大太刀に囲まれた。一人でやれないことはないけれど。「光忠ァ!」声と共に長谷部くんが降ってきた。大太刀を脳天から圧し斬る皆焼、ひらめくカソックの裾とストラが鮮烈だ。「無事か」「ありがとう、惚れ直したよ」「煩い」
2024-04-25 06:42:00燭台切が歩道橋から飛び降りて大太刀を叩き割るバージョンもかっこいいね 燕尾の裏地の華と珍しく乱れた前髪が長谷部くんの眼に灼きつく x.com/kanfrog/status…
2024-04-25 07:32:58飼育しているペンギンに求愛された。餌のバケツに目もくれず、俺を見上げ盛んに声を上げてくる。「わかったわかった」分かってないとでも言いたげに、翼でぺちぺちと叩かれる。「俺も好きだぞ、ミツタダ」ぺちぺち。満更でもないが、生憎今世ではヒトとペンギン。「来世では一緒になろうな」ぺちぺち。
2024-04-25 06:51:25燭台切と偶然入浴時間が重なった。二人きりだねなんて言うから意識してしまう。分厚い体、火照った肌。後ろに撫でつけられた黒髪。金の両目の視線の熱量だけでのぼせてしまいそうだ。「そんなに見るな」「僕は見たい」「馬鹿」ぶくぶくと息を吐きながら深く湯に浸かる。これではいつまでも上がれない。
2024-04-27 18:49:49具とパスタの入ったフライパンにケチャップを入れ、手早く炒める。盛り付けの仕上げに乗せたのは卵黄だ。「すごく美味しい」「そうか」「僕、君のナポリタン好きだよ」「これだけしかできないがな」照れながらパスタを巻く長谷部くん。「僕、きっと永遠に君に惚れ直すんだろうなあ」「それは光栄だ」
2024-04-29 06:54:33主と本丸の皆の計らいで、俺と光忠は今日からこの離れで暮らす。襖を開けると、部屋の中からは瑞々しい藺草の香り。「おお」「すごいね、新しい畳だ」思わず出た声に光忠が笑う。新たな暮らし。しかし、隣にある笑顔は何一つ変わらない。「緊張してる?」「お前と共にいるのに、か?」「敵わないなあ」
2024-04-29 17:53:22「貸出期間は二週間です」「はい」週に一度繰り返されるやりとり。しかし今日は違った。「そのシリーズ面白いよね」「はい、すごく」「僕も昔夢中で読んだよ。良ければ感想教えてね」黒髪の司書さんが笑う。どう答えたか覚えていない。本の内容も頭に入らない。けれど、これほど楽しみな返却日もない。
2024-05-01 06:01:52シャッ、シャッという音に顔を上げると燭台切が小刀で鉛筆を削っていた。「古風なことだ」「こういう下準備は好きだから。例えば君のために爪を短くしたり」「は?」「君も好きだろう」僕に整えられるのが。そう言って手をぐっと開き、黒手袋の指を見せつける。「ねえ。答えて」沈黙は何よりも強い是。
2024-05-04 00:09:25小さい僕らに乞われて糸電話を作った。早速、紙コップを持った二人は庭へ。「ぼく、はせくんがすき」「おれもみつがすき」筒抜けな告白にほっこりしていると長谷部くんが通り掛かった。「何を笑っている」「二人が可愛くてね」ふん、と背を向けて去っていく。彼とこそ糸電話で話してみたい、そう思う。
2024-05-04 00:41:30「ラムネ飲むかい」燭台切だった。見慣れない瓶を二本持っている。「主からの差し入れ」「飲む」「何だか分からずに言ったね?」試行錯誤の末に蓋を開けた。思い切ってごくりと飲むとまるで喉が焼けるようだ。助けを求めて隣を見ると、涙目の燭台切。「お前も知らなかったんじゃないか」「……まあね」
2024-05-04 22:09:40木陰で汗を拭いていると長谷部くんが顔を出した。東袋を手に提げている。「お疲れ、光忠」「どうしたの」「差し入れだ」袋から出てきたのは麦茶と、味噌を添えた胡瓜。畑を眺めながら二人でぼりぼりと齧る。「沁みるなあ。ありがとう」「いや、その、お前の真似をしただけで」「……暑いね」「暑いな」
2024-05-05 10:34:18「大きい俺たち、番にならないのかな」はせくんが首を傾げる。大きい僕と長谷部くんは誰が見ても両想い、けれどずっと親友でいる。「二人だともっと強くなれるのにね」教えてやりたいな、と呟くはせくん。「好きな気持ちって強いんだってこと」本刃より、素直なこどもの方がわかることだってあるのだ。
2024-05-06 00:30:04長谷部くんが来る。余計なものは片付けた。最後は彼が座るであろう床のラグとベッド。コロコロと粘着クリーナーをかけていると、心も落ち着いて――はこない。このベッドに腰掛ける彼を思い浮かべれば、疾しい妄想が湧き出して止まらない。自己嫌悪と期待に溺れそうになりながら、僕は手を動かし続ける。
2024-05-06 11:59:13「長船光忠です。連休明け、ちょっと辛いなっていう人もいたんじゃないかな?」深夜、スマホのラジオアプリから流れ出す声に、半ば気を失いかけていた俺の意識が浮上する。「一日、お疲れ様」労いの言葉が沁み、涙がこぼれた。そうか、俺は疲れてたのか。心をデトックスしながら優しい声に耳を委ねる。
2024-05-09 06:43:00貴金属店のポスター。『琥珀』の文字が目に留まった。伴侶の瞳に似た色に惹かれ、店を覗いてみる。なんでも、ヨーロッパでは結婚十周年に琥珀を贈る習慣がある、と。「あっ!」声が漏れる。俺と光忠も一緒に暮らし始めてちょうど十年。十年、と呟いて年月を噛み締める。今度の休み、彼と一緒に来よう。
2024-05-09 19:28:05長谷部くんが、僕の抹茶アイスを羨ましげに見つめている。「食べる?」僕からスプーンを奪い、彼はアイスを口へと放り込んだ。「旨い」戻されたスプーン。それを咥えていた唇。不埒な妄想で頬が火照るけれど、意識しているのは僕だけらしい。「ありがとう。俺の、食べるか?」無邪気な問いが恨めしい。
2024-05-09 21:45:43DKどうし、親友ポジのふたり 長谷部くんだって意識してるからこそ、光忠くんのスプーンでアイス食べるとか、試すようなことをしてるんだよなあ……
2024-05-09 21:58:13