「努力をさせてしまっている」現パロ(転生炭善♀) 婚約者炭善♀。炭はグレー(と言う名の鬼狩り)もする実業家家系、善♀は極道(と言う名の鬼狩り家系)の家で片足が不随(神速は使えるし無理をすれば鬼狩りはできる)
2022-01-25 13:33:52さぞかし怖い女だろう。見合いの席で、滂沱し土下座した女だ。 妹だという少女に引き合わされた時もそうした。以来、他の家族に引き合わせるのは今のところ見合されている。
2022-01-25 13:33:53死ぬからな。すぐ、死ぬから。 鬼はいなくなってほしい。鬼が俺を、だれの責任でもなくスカッと気分よく殺してほしい。嘘だ怖い。死ぬのは怖い。でもそうなってほしい。ほんとに、ほんとに。
2022-01-25 13:33:53誰かが、誰かと手をつないで、幸せそうに微笑んだ姿を見た気がしたんだ。短かった生を、それでも精一杯に幸福に過ごした誰かがいた気がしたんだ。 そして、そいつらの過ごせなかった生涯の分も奪い取ったように、恥をさらして長く永く、生きちまった己がいたような気がするんだ。
2022-01-25 13:33:54「伊之助」「アオナは元気だ」 「…?」「カナヲも元気だ。お前が走ったからだろ。お前が、脚ぶっ壊してまで背負って蝶屋敷まで走ってきたからだろうが」 こわごわと俺はかつての親友を見上げた。断罪を下すなら、始まりの合図はこの男が出すのだろうと信じていたのだ。
2022-01-25 15:36:14「……伊之助」「んだよ」 「……お前、すげえ人間になったなあ」 やさしさと情のやわっこさを、つんつんした心に包んでまあるく研いだような音が鼓膜を優しくつつく。 伊之助は片眉をはね上げると、空を見てあー、と声を上げると、消えた。
2022-01-25 16:37:58「!?」俺にとっての轟音が響く。 ふー、ふー、と瞳孔の開いた眼でこちらを見て地面の石畳を砕いたのは、そこに居なかったはずのたんじろうだった。 苛立った、を通り越して憤怒に震えるその肌の音から、俺が推察できることがないのがさみしい。 俺は、できるだけ優し気な声を出した。
2022-01-25 16:37:59「……たんじろう、どうした?ねずこちゃんやカナヲちゃんたちと一緒じゃなかったか?」 たんじろうは答えず、一撃を避けて飛びのいた先の伊之助を一心に見つめていた。
2022-01-25 16:37:59「紋次郎」伊之助の声には、やっぱりどこか憐れむようなまろみがあった。 「取らねえよ」獣を慰撫する音を出すのは、昔は逆だったような気がしたのだけど。 彼らにしかわからず、俺にはきっと一生わからないだろうそのつながりの種類の違いに俺は、ふと、なんだか、さみしくなった。
2022-01-25 16:37:59――俺には、それしか価値がない。リスクが高すぎる。身内であっても、信用なんてできっこない。そういう人間が俺だった。 今も、ガタガタ震えてるんだ。片足で神速使って鬼の首切って、脚が幾重にも折れている。祈るように組み合わせたがる両手を、必死で口元にあてがってつんざくような語句を殺した。
2022-01-25 19:47:41――ごめんなさい。 ――ごめんなさい、ごめんなさい、爺ちゃん、かいがく。 死にますから。すぐに死にますこんな恥さらしな俺はすぐに死にます、家族を壊した俺は死にます。もう一生そんなの作らず壊さず死にます。ごめんなさいごめんなさい何もできない己でごめん。壊すことしか知らない己でごめん。
2022-01-25 19:47:41言ってはいけないことだった。出してはいけない悲鳴だった。ごめんなさいと言いながら、許してくださいと足元に縋って乞うている。のたうち回って、げえげえと血を吐きながら、それだけは言うまいと喉を締める。たんじろ、
2022-01-25 19:47:42大丈夫俺はすぐ死ねるから、お前にこんな言葉を聞かせるくらいなら俺はすぐに舌だって噛み食う。ごめん、ごめん、こんな恥さらしな奴が知り合いでごめんな。 ――お前をほんとに苦しめる女になる前にちゃんと死ぬから。 前も、今も、ほんとに、俺は、お前たちにとってだって厄介なばかりで、
2022-01-25 19:47:42「――起きたか」 「……いの、すけ」 お前がいるってことは、俺は死に損ねたんだなあ。 柔らかい布団の中で、涙がほとほとこぼれてしまった。 俺は、何時まで経ってもどうしようもないほどの愚図だ。
2022-01-25 19:47:43「使う」たびにそうなる女を、誰が歓迎するだろう。気持ちがいいものだと思うのだろう。 ごめんな、たんじろう。 「怖い怖い」って泣きわめく俺の匂いは、さぞ酷い悪臭のそれであったことだろう。 滑稽なそれを、まっすぐなお前はそれでも正そうと無駄な努力を重ねるのだろうか。
2022-01-25 19:55:36「だってそれであの子は死んだ!」 悲鳴のような声があふれた。 「俺が代わりに行ければよかった。足の不自由な男の俺があの家の人質代わりになった!結果赤紙の徴兵の末に、あいつの長男は死んだだろう!そんで、……!」 そうして、もう一人。 竈門の新しいお嫁さんになるはずだった人も殺した。
2022-01-27 16:15:08――ああ、君は。 鬼になっても、その音は残っているのだね。 「た、べ、さ、せ、て、」 「…いいよ」 逃げな、と背後の女の子たちの脚をはたいて立たせた。 「ただ、条件があるよ。俺と鬼ごっこして、つかまえることができたらだ」
2022-01-28 13:17:28たんじろう。 ほら見ろ、俺はお前みたいに鬼に慈悲深さなんて持たん。優しくすることがお前みたいにうまくできない。 なあ、君。昔、俺の渡した金で男と逃げていった君。 いつからそんな姿だったの。今の鬼は珠世さんみたいには鬼を増やせる強さがないから、大正の世からそんなだったの。
2022-01-28 13:17:29きれいな姿だったのに。面影もなくて孤独だったの。 今は晴天。路地裏の暗がりから、あの明るいところに出るまで、この俺の役立たずの脚がもてばいい。 なあたんじろう。俺はちっとも優しくも強くもないんだぜ。 この子を、殺そうと手早く判断してしまった、俺なんだ。 「合図をするよ、――せー、の!」
2022-01-28 13:17:29実は、この鬼の首を刈るのが長男か伊之助かで迷っています。確実に伊之助が刈る方が善♀の精神衛生上いい。 お前に、彼女を、俺の罪を斬らせてしまった。 「ぜん、つ」 ごめん、なあ
2022-01-28 13:17:30呼吸を脚に意識して回す。大丈夫。大丈夫だ。 あそこまでもてばいい。這いずってでも、食われながらでも、あの明るい場所にこの子を連れていければいい。 やらねばならない。 不思議と、そうせねばならぬと思ったら恐怖はなかった。
2022-01-28 13:24:38桑島家屈指の懐刀な善♀。組長である爺ちゃんと若頭のかいがくの傍で寝起きして、音で誰よりも不穏な輩に素早く対処するし、惚れっぽいってキャラクターで「うちのバカ娘の夢をかなえてください振りだけでいいから」って売り込むとまあ獅子身中の虫の考えてることが耳で丸わかりだこと
2022-01-28 15:02:44ただそういうハニトラは竈門家には必要なかろうと疑問に思ってたら「お前が『たんじろうたんじろう』って夜やかましいからだろうがドアホ」って言われる この世界線では割合仲良し桑島家。
2022-01-28 15:02:45宇随さんのことを『師範』と呼ぶ善♀。隠れ生きるのに特化した鬼が生き残ってる世界線、それがわかってすぐ超感覚を持つかまぼこ隊に白羽の矢が立ったけど、さすがに長男を再び前線に立たせることはできず、でも存在を明らかにしたら長男は絶対に前線に立とうとするし、
2022-01-30 10:51:51いいからお前は後続を育てろって言われても傷つくだろうなって善逸君と伊之助君は二人で話して決めてしまった。竈門兄妹を二度と鬼にかかわらせない、そのために善逸君はねずこちゃんですら振った。
2022-01-30 10:51:51先に蝶屋敷に戻るという名目で前線復帰したのは伊之助。だけど一番、鬼殺隊に戻れと圧力がかかったのは善。耳を期待されたのもあるけど、今こそ桑島一門の汚名を雪げと言われたのも本当。 でも、普段は脚がそんなに良くないってんで潜入調査の方が向いてた、そのために元音柱に弟子入り。
2022-01-30 10:51:52いろんな人に取り入る役目に就いた。おかげで産屋敷の発言力は高くなったし鬼殺隊は政府公認になったよ、やったね! しかしそのせいで戦時中の元隊士への赤紙と期待がすごいので結果結構恨まれた。
2022-01-30 10:51:52ねずこちゃんを振ったあとたんじろうくんは苦笑いしたけど、本当は烈火のごとく怒りたかったからちくっと刺した。 「お前は、もう一生求婚しない方がいい」 「うん」 そうする。
2022-01-30 14:09:33「善逸さん」 「なぁに」 「――待っていても、いいですか」 ああ、本当に聡くて、けなげで、強くて。 俺にはもったいないくらいの人だった。 「ありがとう」 俺は君たちに本当に幸せになってほしいんだ。
2022-01-30 22:07:41ぎ、と歯を食いしばった音がした。背中から回った腕が、俺の腕ごと包むようにして、激情をもって抱き込んだ。 「善逸、善逸、善逸、なんでだ」 激しい憤りの焔が踊る音がする。 それでもこの子が儚く崩れたその場所を踏みにじれぬのは、こいつが本当にやさしいからだ。
2022-01-31 02:38:45「違う!」喉を嗄らすような絶叫だった。 「優しいのは俺じゃない、優しいのは――」 「なあ、たんじろ、」 崩れた感触もなくなった指先が震えている。 笑ってくれよ。 「俺、この子の手を、初めて握れた」 ぎりりと歯を食いしばるお前は本当に本当に人が好い。 ならさ、俺を嗤えないのならせめて。
2022-01-31 02:38:45そしてその場所をぐりり、と踏みにじる伊之助がいるといいなと思いつつ最終決戦を生き抜いた猪がそれをできるかと思いつつなんだ…炭と伊のやさしさの形の違いって言うかそれを見て善がどんな形であれ笑えるかどうかなんだな()
2022-01-31 03:27:29ラストエピソード。 「だって私、あなたに振られてるんですよ」 「あ、うん…」 「いいんです。私今幸せで、それがどんな形でも構わないの」 ねえ、善逸さん。あの日愛した女性は、ちょこんとあの日の面影で目の前にかがむように座った。 「竈門の家は、愛することが好きなんです」 愛させてください。
2022-01-31 03:49:29