ように。 岩を壊すほどの力をこめて。 カルナーも上体をそらすが、ただ手を伸ばすほうが速い。当たれば、頭はつぶれるだろう。 しかし、その手が届くことはなかった。 雪ねずみの全身から一気に力が抜け、カルナーの前にどうと転がる。 その背中に、小剣がささっていた。 ちょうど心臓
2022-02-01 20:00:02の位置である。 鉄片入りの革鎧で全身を覆った大男が、渋面をしてそこに立っていた。 フォスター=リマム。囮を引き受けたはずの戦士である。 「遅れて、すみません」 言葉はカルナーに向けていたが、目線はそれを通りこしてエルとネリドのほうを見ていた。 エルは、いつのまにか膝をついてい
2022-02-08 20:00:01たことに気づいた。 「応、」 カルナーは満足げに頷くと、くるりと後ろをむいた。 つかつかと二人のほうに近づき、 「ご苦労だった」 言葉とともに、魔法球がひとつ、ネリドのところに飛んでゆく。 光球が触れたところから光が広がり、怪我がいえていく。 巫女と僧兵が使う、治癒の魔法であ
2022-02-15 20:00:00る。 「ありがとうございます、…」 ネリドはすぐに顔をあげたが、立ち上がることはできなかった。 治癒の魔法を受けると、体力を消耗する。傷が深いほど、その度合も大きい。 動こうとするネリドを制して、カルナーは言葉を続けた。 「エル=サラナよ。素晴らしい勇気だった」 エルは、顔が紅
2022-02-22 20:00:01潮するのを感じた。 「だが、方法は最善ではない。矢を受けただけでは、雪ねずみの突進は止まらぬ。あの場合、何としてでもネリドを線上から逃がす方法を考えるべきだった」 「はい」 こくんと頷く。全くその通りであった。 「とはいえ、その覚悟は珠玉である。他の者も見習うように」 いつのまに
2022-03-01 20:00:01か、雪ねずみの死体を囲むように、他の仲間たちも集まってきていた。 その中に崖を大きく迂回してきていたジャスを見つけ、フォスターは硬い声で言った。 「ジャス。……解体は、おまえ一人でやれ。半日かかってもだ。いいな」 はい、と消えいりそうな声で、新米の魔法使いは目を伏せたままうなず
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