「もしかして森山、今お風呂から電話かけてる? 声が響いてる」 だから、そんなバブリーな発想に行き着くんだ。 「わかるか? 面接に行ったら防水ケースもらって。これからは風呂でもツイッターできる!」 「ツイ廃。笑」 「うるせー。つーわけで、そろそろ上がるから。埋め合わせは来週にでも」
2014-02-13 19:55:06「それまでに一度見舞いに行こうか」 シャワーが流れる音が聞こえる。 「いいって! お母さんか!」 「よく食べ、よく寝るんですよ、由孝」 何がそんなに面白かったんだか。笑 しばらく森山の笑い声が反響して聞こえた。 「あー…食欲なくて、昨日の夜からウイダーインゼリーしか食べてな…
2014-02-13 20:00:08何度かけても出ない。 元気そうだったからあまり心配してなかったけど、心配になってきた。 森の家そう遠くないし今から行ってみようか。
2014-02-13 20:15:07_
「森山ー?」 玄関から呼びかけてみる。返事はない。 風呂場へ急いだ。シャワーの音がする。曇りガラスに人影が見えた。 「森山!?」 思いきり戸を開ける。浴槽にもたれるように森山が倒れていた。慌てて抱き起こす。体は熱いのに指先は冷たい。嫌な汗が流れた。
2014-02-13 20:50:04「ん…」 森山の頬を軽く叩いたら、目を覚ました。良かった。打ち所が悪くて意識不明の重体とかだったらどうしようかと思った。ただのめまいか? どうして風邪ひいてるときに長風呂するんだ馬鹿! まだ意識がはっきりしないようだから、その辺にあったタオルで体を拭いてベッドに運んでやった。
2014-02-13 20:55:06ところで、みんな森山の部屋着と下着どこにあるか知らないか? …そんなこと呟いてないよな。クローゼット開てみたものの、洒落た洋服しか入ってなくてさ。(うわっ…このアニマル柄はないな…) たくさん布団かけておけば暖かいし大丈夫だろうか。
2014-02-13 21:05:05_
「お邪魔しまーす?」 玄関から誰か入ってきたようだ。しまった。急いでいて鍵をかけるのを忘れていた。 「不用心でsうわああああああああああああ」 振り向くと、真っ青なな顔の伊月がいた。
2014-02-13 21:15:03伊月の顔がみるみる赤く染まっていく。 「す、すみませ…森山先輩の誕生日すっかり忘れてて…思い出して、部活後に寄ったんですけど…うわあああ…お邪魔しました…っ!!」 伊月は部屋を飛び出していった。 オレは自分のおかれた状況を確認した。隣には全裸でベッドに寝ている森山。これはまずい。
2014-02-13 21:20:05「待ってくれ! 誤解だ!」 アパートの階段を降りながら下に向かって叫ぶ。 「森山が風呂場で倒れてたから!ベッドに運んだ!それだけだ!」 ピタリ。伊月が止まった。 「森山はまだ綺麗だから!」 伊月はまた走り出した。
2014-02-13 21:25:06やっと伊月を捕まえて誤解をとくことができた。 「ヘンな勘違いしてごめんなさい…」 「オレも悪い。テンパってたとはいえ言葉選びが悪かった。穴があったら入りたいよ…」 「…うわあああああああああやっぱり穴があったら入るんじゃないですかああああ」 「だから違う! そこから離れてくれ!」
2014-02-13 21:35:05「それ、プレゼント? 預かっておこうか? 森山に渡しておくよ」 「…じゃあ、よろしくお願いします。即席で用意したんでつまらないものですが。後でちゃんとしたの渡すんで」 袋の中には黒髪ストレートの女の子が表紙のグラビア雑誌が入っていた。意外だ。伊月はネタに走るタイプには見えない。
2014-02-13 21:45:02_
それじゃあ、と言おうとしたら、伊月に呼びとめられた。 「一つ、小堀さんに確認しておきたいことがあったんです」
2014-02-13 21:50:06「去年の試験、日向は最終選考に残っていました。オレはその応援に行ったんです」 「そうか」 「オレ達の一つ上の代で、残っていたのは元・大仁多の小林さんだけでした」
2014-02-13 21:55:07「君は“進む”って何だと思う? 」 「え…?」 「例えばオレがプロを目指して、アルバイトしながら自主練して、試験を受け続けたとする。自分では何かしているつもりでも、それは傍から見たら止まっているように見えるだろう。だから、オレ達はどこかで折り合いをつけ、その経験を糧に就活をする」
2014-02-13 22:10:07「持たない奴の足掻きじゃ進めないんだ。スポーツは残酷だ。持っている奴でさえ、いつかは体力が衰え、止まる。君の“日向順平”もいつかは止まるだろう」 「そんな…!」 「いいじゃないか。昔のチームメイトが今も頑張っていることで、君はそれを応援することで、誠凛のバスケに意味を感じる」
2014-02-13 22:15:03「それと同じさ。黄瀬じゃ遠すぎた。笠松はバスケをやめた。あの頃のオレ達には、海常バスケ部の意味が必要だったんだ」 「嘘じゃ、意味なんかないですよ」 「ああ、笠松が再びバスケを始めた今となっては意味のない嘘だ」
2014-02-13 22:20:06「君だって森山に隠してることの一つや二つあるだろう」 上着を置いて出てきてしまったから風が冷たい。 「っ…でも、オレは今が大事だってちゃんと伝えましたよ」
2014-02-13 22:25:02「そうさ、もう終わったことだ」 “高すぎた”──全て過去の話だ。 だから、不相応なものを欲しがってしまった。
2014-02-13 22:30:04いつだったか、黄瀬はオレを性善説主義者と呼んだが、オレには全ての人間が善人に見えるんだ。 簡単に騙されてくれる森山は、もしかして本当は何もかもわかってるんじゃないか、って。
2014-02-13 23:00:08_
サークルの部長、部活の主将、帰国子女…就活生の君達は、これからたくさん、自分よりずっと優れた人間に出会うだろう。今だから言うけど、意識の高い学生ほど学歴以外はほぼ嘘だ。森山はこうゆうことは教えてくれないだろうからオレから言っておくよ。笑
2014-02-13 23:30:02学生生活でやっておきたかったことはないか? 心残りはないか? なりたい自分になれるリベンジマッチだ。就活を存分に楽しめばいい。 オレからのアドバイスは以上だ。 https://t.co/4MVftLiHpv
2014-02-13 23:35:06嘘を重ねて虚しくならないかって? そうだな…ずっと虚しかった。けど、元より就活は虚しいものさ。 だから、止めてくれた森山を、飾らずそのままの自分で頑張る不器用な森山を、オレは応援したいと思うんだ。 誕生日おめでとう、森山。
2014-02-13 23:55:07
おはよう〜 うう〜っ。頭痛がひどい。 昨日、どうしたんだっけ。風呂に入った後の記憶がない。…そうだ! 小堀! 小堀が来て、それから…… テーブルを見ると、置き手紙が残されていた。小堀、いつまでいてくれたんだろう。
2014-02-14 08:00:06ハッピーバレンタイン!と言いたいところだが、今年オレ誰にもチョコもらえないんじゃねーか!? 部活に顔出して、マネージャーの女の子達から先輩命令でチョコせびりに行こうと思ってたのに…この体調じゃな。 ううっ…大人しく寝てます。
2014-02-14 08:10:07パンツ、パンツ…っと。 そうだ、みんな。オレの部屋着は洗面所のタオルのコーナーに一緒に入ってるから、オレの家に来たときのために覚えておくといいよ。(ばちん) 彼ジャーしてもいいんだぜ? オレと全てを共有しよう。
2014-02-14 08:20:04…はい。今度こそ薬飲んで寝ます。 朝から夢を通して君のハートにインターンに行くよ。今日は深夜残業じゃないよ。おやすみ。
2014-02-14 08:25:06_
「約束してたチョコ渡しにちょこっと寄ってみました。キタコレ!」 伊月黙れ。今オレは全身で綾さんの愛の残滓を味わっているんだ。 雪の中、伊月が見舞いの品にチョコを持って来てくれた。これで男としての沽券は守られた。オレの誕生日を忘れたのも許す!
2014-02-14 20:35:04「そうだ、日向に。オレからも応援してるって伝えておいてくれ」 「…は、はいっ」 「アレ、応募用紙書くだけで緊張するんだよな。オレも去年プリントアウトはしたものの、結局、送る勇気はなかったよ」
2014-02-14 20:45:03_
玄関のベルが鳴った。 「いいです、寝ててください。オレ出ますから。はーい、森山でーす」 ベッドから伸び上がって見る。宅配便のようだ。オレ何かポチったっけな…? 自分と同じくらいはある巨大な段ボールが部屋に運び込まれた。
2014-02-14 20:55:04オレの代わりに伊月が梱包を解いてくれた。熱もだいぶ下がったし、もう元気なんだけどな。箱の中から出てきたのは… らぶどーる…?
2014-02-14 21:00:05「…うわああああああああ森山先輩の変態!」 「違うんだ、伊月! 誤解だ!」 「近づかないでください気持ち悪い!」 「こんなもの買った覚え…あっ! コレのことだったのか」 「うわああああああやっぱり覚えあるんじゃないですかああああ」 「だから!」 クソッ! 小堀と笠松のヤツ…!笑
2014-02-14 21:05:06_
森山由孝さん 編集部よりサービス終了に伴うお知らせです。2014年3月21日(金)17:00をもちまして、リクナビ2014はサービスを終了します。終了後は会員画面へログインできなくなります。大切な情報は、あらかじめ転記くださいますようお願いいたします。 わざわざメールくれた。照
2014-03-14 22:56:06今日はラブラブフェスティバルだからリクナビ編集部のお姉さんも積極的だな。つーわけでハッピーホワイトデー! みんなに愛のお返しだよおぉ〜 オレの分身のようなチョコを見つけたんだ。キミの家に届け! 何もあげた覚えはないぃ!? あっ…うん。 http://t.co/KEC4taeb5Q
2014-03-14 23:07:54@tos 「よし。ツイッターの彼女達には写真を届けたしオッケー。現物は綾さんに渡しといてくれ。DIGOVAに負けない美味をありがとうございますってな」 「今の寒気がするツイートは見なかったことにします。(ハッ)由孝さんが“よs… 「言わせねーよ? それオレもう散々言ってるから」
2014-03-14 23:27:58