タイトルのまま💧
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ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

形状記憶繊維のを着せてたけど、あなたが着たかったのは、そういうシャツよね」「別に、家事をさせるために結婚したんじゃない。好きな女と生涯共にしたかったからだ。幸せにしたかった。でも」「でも、自信が無いから放流した?やめてよ。私に幸せか、って一言訊いてくれるだけで良かったのよ」

2020-06-28 14:45:22
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

そうしたら、きっと「幸せよ」と答えたのに。「やり直したとしても、またあなたの気が変わったらどうすればいいの?やっぱり幸せにできないから別れるって言われたら?そんなことされたら、もう二度と立ち直れない」冷めかけたコーヒーを前に、彼女の流した涙が落ちていく。

2020-06-28 14:45:22
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「もう嫌、何も考えたくない。死にたい」カチン、と音がして、陶器の細長い器に油紙を被せ、紙紐で括って封をしたものが、突然現れた。「な、なにこれ」続いて、もうひとつ、同じものが現れる。細く水茎も麗しい筆文字で、両面にこう書かれている。「全てを終わらせる薬」と。「毒……?」

2020-06-28 14:51:15
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

力のない声で、夢主は言い、その入れ物を手に取った。封をといて、中を確かめる。「夢主…?やめろ、それに触るな」「終わらせる…それもいいわね」口をつけ、1口分の液体を、tksmが止めるのも聞かず夢主はあっという間に飲み干した。「なんてことを……!!」慌てて夢主の喉に指を入れて吐かせようと

2020-06-28 14:56:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

したが、その時には既に夢主の身体が震えだしていた。「熱い…喉が、灼ける…」男の眦に涙が滲む。「ひとりでいかないでくれ……!!」彼もまた、細長い容器の封を切り、その中身をあおいだ。喉を灼くような、濃い酒の匂い。胃の腑が燃えるように熱くなり、その熱が全身を行き渡った。俺たちは死ぬ…。

2020-06-28 14:59:48
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「ああっ……」夢主が、切ない声を上げて、スーツの上着を脱いだ。「暑い…熱いの…」「え?」夢主の落とした容器、その表面にあった中身を表記していた文字が崩れ出す。“淫/乱”と書かれたそれを、tksmは信じられず二度見した。ハッとして、自分の飲んだものを震える指先で拾い上げる。“絶/倫”…。

2020-06-28 15:03:35
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「なんじゃこりゃああああああああああああああ!!!!!」

2020-06-28 15:03:36
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

かっかと燃えだした身体と、我儘を言い出した“せがれ”に手を焼きながら、tksmはテレビに目をやった。『お前らはいい加減素直になったらいいと思う部屋』「き、貴様…!!謀ったな…謀ったな…!!あああ!!」木馬に特攻するガ〇マ・〇ビの口調で男は叫んだ。膨れ上がる衝動に、今にも破裂しそうだった

2020-06-28 15:07:32
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

テレビの画面が、嘲笑うかのように変わった。

2020-06-28 15:08:02
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

『セッ〇スしないと、出られない部屋』

2020-06-28 15:08:25
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その夜、ひとつの争いが幕を引かれ、新しい物語が始まった。時に西暦2020年、初夏。太陽と月は巡りて、離れていた男女の溝が埋まり、打ち上げは二人の不在をものともせず深夜まで続いたという……。

2020-06-28 15:12:57
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

だが、こちらの盛り上がりは、その人明け方から夕方まで続いたと歴史には記されている(嘘です)

2020-06-28 15:14:18
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「ああー、いい結婚式だった」「まさか、あの一度離婚したもの同士で再婚するなんて、こんなことあるんだねぇ」「奥さん、妊娠三ヶ月だって。、tksm係長も真面目そうな顔して、やるもんだねぇ」結婚式の帰りらしい男女たちが、それぞれ引き出物の大きな紙袋を持って舗装された道を歩いている。

2020-06-28 15:24:40
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

少し離れた、同じ結婚式に参加したと思われるグループが、肩を落として歩く男を慰めながら歩いていた。「元気出しなよスズキちゃん。またきょぬーの女の子紹介してやっから」「まさか、飲み会でひっくり返ってる間に本命を元旦那に持ってかれちゃうとはねぇ…」「ひっく。夢主さん…綺麗だったなぁ」

2020-06-28 15:27:34
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「新居は、また旦那さんのマンションだって」「再スタートか。いいね」

2020-06-28 15:28:38
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その話を、一羽のカラスが聞いていた。その話を土産に向かったのは、あの古いアパートの敷地の隅にひっそりと祀られた、小さな社だった。『良かった。ちゃんと夫婦(めおと)になったか。あの女、時々泣き喚いて、ホントにうるさかったんじゃ。部屋からゴミの臭いがしてくるし』

2020-06-28 15:32:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

この社を管理してくれている大家も困っていたのだ。見たとこ訳ありだったし、注意したものの、帰ると風呂と睡眠で精一杯だったらしく、なかなか改善されなかった。『元旦那が引き取ってくれてよかった。これでしばらく大家も我も一安心じゃ』カラスの報告に社の主、小狐の姿をした神はほっと息をついた

2020-06-28 15:38:24
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

次の入居者が来るまで、この辺りも多分、静かに……ん? 空き室になった部屋に、大家と、丸坊主の若い男が入っていく。いかにも金に困ってそうな、ひょろりと細長い、胡散臭い感じの男だった。あー、また妙なの入れるつもりだよ大家は。人がいいものだ。守護者として捨て置けぬ。

2020-06-28 15:42:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

次は、どんな風に穏便かつ迅速に追い出そうかと、お供えのお稲荷さんを食べながら思案に暮れる狐神だった。  (終)

2020-06-28 15:44:07
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ここまでお疲れ様でした〜〜。

2020-06-28 15:45:40
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まとめたひと
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

アホ夢書き。昭和の女で金カ夢の人。腐と夢のいろんなのを見たり書いたり用の垢。最近は本人よりよりほぜ尾が好きになってきた感。いや、今でも推しなのは変わらないんだ……。 まろ marshmallow-qa.com/yumejodego?utm…