キャラスト創作のシリーズもの第1弾です。 ツイートの制限文字数いっぱいに、キャラバンの皆や関わりのある人々の何気ない日々や心情を綴ってます。 ゲーム中のストーリーやキャラバン内タップ台詞を元に創作していますので、ネタバレ等気にされる方はご注意ください。 下記タグで見ていただくことも可能です。 #140字のイアルのお話
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イキ @nonbiri_journey

たった今、この国は主を喪った。 ヴァルメルの地に城を築き、暗黒王と恐れられ疎まれた男の最期を見届け、朧気な月灯りの中を駆ける。喜ぶ者、嘆く者…様々な思惑がせめぎ合うのだろうけれど、一介の刺客である私には関わりないこと。 ただ我が手により死者となった者の、罪に想いを寄せ安息を願った。

2021-08-10 11:34:54
イキ @nonbiri_journey

「ようヴィンガ、精が出るな」 帳簿を付けている最中、声をかけられ眉根を寄せた。よく飽きないもんだ、と皮肉を放つ相手に一瞥もくれず勘定を続ける。 「お前だってガキ共の面倒見るのを止められねぇだろ」 そう言うと奴は笑い飛ばし、銭袋を机上に置いた。 「流行り病の薬と子供服、手配ありがとよ」

2021-08-04 11:47:26
イキ @nonbiri_journey

「あれ、ハッタン?どしたの」 視界を覆い尽くす勢いの向日葵の山の中から、ミャルロ殿が顔を出す。聞けば早咲の花の種を取りビーストの餌にするという。 「成る程、何事かと思った。手伝おう」 「いつもありがとねー」 ワシの釣果も彼らの餌になる事があるが、この働き者の御仁にも差入れが必要だな。

2021-07-28 16:10:15
イキ @nonbiri_journey

焼き菓子の詰まった袋を前に、僕は彼の言葉を待った。 「ラルフ、余ったから…分け与えてやってくれ」 全く素直じゃない。普段なら周りに譲らない程の大好物なのに。 「陛下、ちょうど彼らからお茶に呼ばれてるんです。ご一緒に如何です?」 レーナの淹れるお茶は美味しいから、きっと話も弾むだろう。

2021-07-22 21:03:09
イキ @nonbiri_journey

100のお題より 079:素直になれなくて #140字のイアルのお話

2021-07-22 21:03:10
イキ @nonbiri_journey

どうしてあたしは今まで、何もしてあげられなかったんだろう。 ずっとエメちが苦しんで、それでも変わらずに笑ってくれてたこと、傍にいて分かってたのに。誰よりも大切な親友なのに… そんな事考えてたら、眠気に愛想を尽かされたみたい。普段気付けば寝てるのが嘘みたいに、悲しくて冷たい夜だった。

2021-07-16 12:11:56
イキ @nonbiri_journey

世界中探しても、ボクほどたくさん旅したラットルはいないと思う。 小さい頃、こっそり森に来た君とよく遊んだ。ボクを連れて帰ろうとしてバレて、周りから叱られた事も、きっと君は覚えてない。でも別にいい。 「君もキャラバンに乗る?」 そう言ってくれた君の隣が、またボクの特等席になったから。

2021-07-13 02:00:47
イキ @nonbiri_journey

「なぁ、悪いが明日は丸一日、アイツに休みをやってくれないか。嫁さんの誕生日には必ず休暇を取る奴だったんだ」 そうギャレッドから聞いているので、その件なら遠慮は無用だと、自分を呼び止めた仮面の男に伝える。 「……余計なことを」 呟く彼の声は微かに夜気を揺らし、風の中へと溶けていった。

2021-07-12 11:53:35
イキ @nonbiri_journey

雨粒が砕け散る。土や岩、葉に当たり、激しく飛沫を上げ続ける。空気を揺らす勢いの雨に目を白黒させてミーロが呟いた。 「メラ、ボク溺れないかな…?」 思わず笑いそうになる。初の大雨はそれだけ衝撃的なんだろう。 「オーク領ではよくある事よ」 こうして互いの常識を重ね合い、私達は仲間になる。

2021-07-06 13:44:45
イキ @nonbiri_journey

せせらぎの音が仄暗い水辺に静かに響く。ぽつり、と浮かび上がった光が宙を舞った。それは次第に数を増やして、さ迷うように行き交い始める。 「行き場のないスピリットみたいねぇ」 「お母様、蛍は生きていますよ。私よりも『生ける者』です」 娘は静かにこう続けた。 「でも、私は私で良かったです」

2021-07-05 17:23:27
イキ @nonbiri_journey

「ベネカさんはどれになさりますか?」 鍛練中、ソルヴィア姉妹からスイーツが差し入れられた。特別目を引いたのは真っ赤な果物が贅沢に乗ったタルト。でも私、騎士だもの。我先にと飛び付く訳にいかない! そう思ったのにエメットに笑顔でタルトを差し出された。気恥ずかしさで、少し頬が熱くなった。

2021-07-02 12:12:05
イキ @nonbiri_journey

「どちらさまかな?」 再会して最初に言われた言葉を、ワタクシメは覚えています。忘れていると告げられて驚きましたが、オトウサマが忘れた分を、ワタクシメは覚えていようと思います。 だからまた出会ったら、どうか名を訊ねてください。 アナタサマに付けていただいた、大切な名前があるのですよ。

2021-06-30 01:53:36
イキ @nonbiri_journey

奴隷商人だった頃、自分を必死で売り込んできたガキがいた。要領も良く知恵も回る。何よりそのギラついた目を気に入って連れていく事にした。どこに売り込もうか考えてた矢先、そいつは倒れた。持病があったらしい。 「騙してごめん」 「お前は何も間違っちゃいねぇよ」 力無く笑って、ガキは眠った。

2021-06-26 09:32:58
イキ @nonbiri_journey

親に店番を頼まれた。発声練習したかったのに、とふて腐れてるとお客が現れた。 「花束ちょうだい。ママにあげるの」 小さな手の平には3G。これじゃ花束は無理ね。 私は花を1本だけ選んで、アレンジメント練習用のリボンで飾り付けてみた。 「お花いっぱいだね」 その子は満面の笑みを浮かべた。

2021-06-24 23:56:13
イキ @nonbiri_journey

今日は見舞いに行く日だ。姉さんには心配ばかりかけているから、なるべく笑っていてほしい。 医院に着いてから、キャラバンの奴らに「手ぶらは良くない」と押し付けられた焼菓子を手渡すと、顔を綻ばせてくれた。 「皆さんにもお礼を伝えてね」 この笑顔には逆らえない。今日だけはお節介に感謝した。

2021-06-20 01:39:33
イキ @nonbiri_journey

いつもオレの踊りを観に来てくれる兵士がいた。オレ好みの装飾品やお酒に香水と、彼からは色んな贈り物を貰ったよ。 でも彼はある日、戦闘で負傷し、失明してしまった。 もう踊っても観てもらえないのかと沈んでいたら、上等な靴をプレゼントしてくれたんだ。 「君のステップを聴かせてくれ」 ってね。

2021-06-18 06:54:42
イキ @nonbiri_journey

スフィラの流れやそこから生まれ還ってくるものを、数え切れない程見てきました。自身が司る水にまつわるものは、何となく感じ取ることが出来たり、制御できたりします。 でも1つだけ、干渉できないものがありました。 嬉しい時も悲しい時も人と共にあるもの。彼を喪った時、私の目からも溢れたもの。

2021-06-18 01:22:53
イキ @nonbiri_journey

幼い頃、父を手伝いたくて薬草を採りに森に入り、迷ったことがある。途方に暮れ泣いていると地面に書かれた矢印を見つけた。指示通り進むと次の矢印が現れ、それを追ううちに村に戻れた事を思い出した。 「どうしてカラミティのメモ書きを見て思い出したのかな…」 道案内の紙切れを手に、僕は笑った。

2021-06-17 11:46:54
イキ @nonbiri_journey

クソオヤジと喧嘩した。居合わせたノヴァルに思わず愚痴を聞いてもらったけど、自分は親と話せないから喧嘩も仲直りも出来ないと告げられた。 「ノヴァルはディランが、羨ましいぞ」 「…ごめん」 ばつが悪くて思わず謝ると、伝える相手が違うと言われる。 仲直りすると約束したら、満足げに頷かれた。

2021-06-14 21:21:20
イキ @nonbiri_journey

歳の離れた妹に問われたことがある。私の闘いはいつ終わるのかと。何故そんなことを聞くのか念話で訊ねたら、あの子は無邪気にこう言った。 「全部全部終わったらね、またお姉ちゃまの本当の声で、モーリーとたくさんお話してほしいの。約束だよ」 あの日交わした指切りは、私の行く先を照らす道標だ。

2021-06-06 10:46:09
イキ @nonbiri_journey

永い年月をかけ様々な場所を渡り歩いた。各地で友人と呼べる者もできた。だが、彼らは待ってくれない。ふと思い出して会いに行けば 「ソロ、か…?忘れられたと思っていた」 なんて返してきたり、下手すれば物言わぬ石に名前が刻まれていたりする。 何故皆それほど急ぎ逝くのか。その儚さに嘆息した。

2021-05-27 11:51:26
イキ @nonbiri_journey

ロイスとドラクと、パパとママ。今日はみんなでいっしょにピクニック。バスケットからはお気に入りのパンのいいにおい。うれしくてたくさん走って、ころんで… ビックリして目がさめた。わたしを起こしにくる、おねえちゃんの声がする。ゆめの中とはちがうけど、大好きなみんなとの朝ごはんの時間だ。

2021-05-17 23:44:11
イキ @nonbiri_journey

100のお題より 077:幸せな夢から目覚めた朝 #140字のイアルのお話

2021-05-17 23:44:11
イキ @nonbiri_journey

とても素敵な石との出会いがあったとエドアルトは破顔した。どんな宝石なのか尋ねると嬉しそうに話し始める。 その石は持ち主のことが大好きで、常々役に立ちたいと願っているらしい。 「なので、こちらをアロティさんに届けていただけますか?」 と、乳白色で神秘的な輝きを放つ占い道具を渡された。

2021-05-16 11:29:42
イキ @nonbiri_journey

100のお題より 091:ムーンストーン (恋愛成就の力を秘めた宝石) #140字のイアルのお話

2021-05-16 11:29:42
イキ @nonbiri_journey

欠けた月が浮かぶ夜空に光の粒が滑って行く。ただ塵が燃えるだけの現象に願掛けをしたり騒いだりする奴らを、ずっと滑稽だと思ってきた。 「ラルミミ、今の!見えましたか?」 でも隣で子どものように目を輝かせ、喜ぶ彼女を見て柄にもなく思う。 この瞳に、できるだけ悲しいものが映りませんように。

2021-05-13 17:43:42
イキ @nonbiri_journey

今日の朝食は目玉焼きにしよう。 フライパンを温め、油を引き…頃合いを見て卵を割る。艶やかな中身が躍り出るのと同時に思わず声を上げた。 「エッダ、どうしたの?」 覗き込んできたレーナも2つ並んだ黄身に気付く。 「双子!ラッキーね」 彼女のとびきりの笑顔を見て、早速幸せな気持ちになった。

2021-05-12 18:21:36
イキ @nonbiri_journey

情けない、医者の不養生だ。土砂崩れに遭遇し、巻き込まれた人達を診ようと雨に打たれながら走り回ったのが原因だから、仕方ない部分もあるけれど。 「モーガ、具合はどう…?」 弟弟子がプリンを乗せた皿を手にやってきた。昔、よく母が私達にしてくれたように。 風邪の時のプリンは、家族のしるし。

2021-05-11 17:04:57
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まとめたひと
イキ @nonbiri_journey

雑多ゲーム垢。たまにグッズお取り引きします。フォロワー整理中(スパムからのフォローを放置されてる方はお別れしていってます)。 合わなければリムブロミュート駆使してください。詳細はプロフカード(↓のURL)参照です。アイコンはオレンヂさん(@yoshida_daidai)より。