キャラスト創作のシリーズもの第1弾です。 ツイートの制限文字数いっぱいに、キャラバンの皆や関わりのある人々の何気ない日々や心情を綴ってます。 ゲーム中のストーリーやキャラバン内タップ台詞を元に創作していますので、ネタバレ等気にされる方はご注意ください。 下記タグで見ていただくことも可能です。 #140字のイアルのお話
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イキ@虚無壁打ち師 @nonbiri_journey

「触るな!そんなことしたって騙されないからな」 僕の頭を撫でようとするパットンに、反射的に声を張り上げた。 痛みを伴わない日常。食事はいつだって出来立てで、寝床は柔らかくて暖かい。欲しかったものがここにはたくさんあるのに。 一番頭を撫でてほしい人は、なんで想い出の中にしかいないの。

2023-07-07 09:25:43
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

たくさん焼いたから、と試作のパンを差し出すアメリアに、3個もらっても良いか尋ねた。 「どうぞ、こちら日持ちしますので」 もしかして1人で食べると思われたかも、なんて考えつつ歩いていたけど、すぐその意味を知ることになる。同じ数のパンを持ったポロとミリアも、自分のことを探していたから。

2023-06-24 01:05:11
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

お伽噺の英雄に因んだ名前も、今の居場所も生き方も、全部大切な人達から貰った。 何も持っていなかった自分の両腕では抱えきれないほど守りたいものが増えた。これからはボクが返す番だ。 「キミにも感謝してるよ」 ボクが付けた名を呼ぶと千切れんばかりに尾を振る家族に、まずはただいまのハグを。

2022-08-20 22:21:21
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

拙いリュートの旋律にも妻は顔を綻ばせて耳を傾けてくれた。歌い終わるといつだって、娘は目を輝かせてアンコールをせがんできた。2人の為ならいくらでも歌ったよ。 どうして吟遊詩人になったのかと訊ねられたら、僕は毎回こう返している。 「初めてのお客さん達の笑顔が、どうしても忘れられなくて」

2022-08-20 21:32:30
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「シュクは良いヤツすぎるのが欠点だナ~」 周りに気を遣って、自分はいつも後回し。 ばあちゃんはシュク自身をもっと大事にしてほしかったのかも、と言うと彼は笑った。 「カメにされちゃうくらい怒らせたけどね」 でも、カメは長生きでボク達と同じ海の仲間だ。ばあちゃんも照れ屋で不器用だよね。

2022-06-02 22:39:15
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

姉弟喧嘩につい口を出した。姉を困らせたい訳じゃなかったと呟く彼に、自分自身を重ねてしまったのかもしれない。 「姉ちゃん、今も走るの好きなのに…ダメだなぁ俺」 ふと、病床にいる自分の姉を思い浮かべた。 「お前の気持ちは伝わってるはずだ」 ワウガガも、俺の姉さんと同じ表情をしていたから。

2022-06-01 11:41:18
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「ワタクシメは長い間、勿体ナイことをしていたのでしょうか」 屋敷を出て初めて主の名を知り、世界の広さを知ったと彼は溢した。 「君は忠実に主人との約束を守り続けたのだろう?誰にでも出来ることではないさ」 自らも使用人のいる立場だからこそ、彼に伝えられることがある。 「君の主は幸せ者だ」

2022-05-31 18:05:56
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「世間で何と言われようとお母様は優しい人です」 「お父様もいつかきっと、分かってくださるはずです」 いつも凛然として、俯かないこの娘は強い。 だがなぁ、お嬢、儂は思うんじゃ。若いもんはもっと伸び伸びと笑ったり怒ったりしとる方がいい。 さぁ、今日はどんなちょっかいを出して怒られようか。

2022-05-30 12:21:32
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

血の繋がらない兄弟は困ったように呟く。 「ロン、いつまでそうしてるの」 「今おれ家出中だから」 目一杯眉間をしかめ、差し出された傘を睨み付ける。大きくて使い込まれた大人の傘。喧嘩相手の父の物だ。 「ぼくも一緒に謝るから」 大人になれない自分には、その傘が不釣り合いに思えて唇を噛んだ。

2022-05-29 13:18:03
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「オークってさ…便利なもの使ったら軟弱者だってケチつけられるよね」 プリアが遠目に眺めてる店を見て、気になるなら入れば良いと返した。最近よく目が霞むって言ってた婆さんの事でも考えてたんだろう。 「あの院長ならお前から貰ったもん大事にすんだろ」 「ボグスもたまには良いこと言うじゃん」

2022-04-03 09:49:58
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

戦場の片隅で、致命傷を受けた男が最期の頼みだと古びた鍵を託してきた。 「ヨルド、帰ったら……彼女に、これを」 帰還した後、友の想い人を探したが見つからない。後を追ってしまったのか、忘れたくて逃げたのか、それとも裏切ったのか。 何の鍵かも分からないものを握り締め、次の戦場に向かった。

2022-01-19 13:11:39
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

研究所の軒を見上げて、ガラッドから頼まれた書類を受取りに来た役人が呟く。 「今年も来たんですね」 そこに出来ていた巣から覗く雛鳥を一緒に眺め、私はこう返した。 「あっという間に成長して巣立っていく…あなた達と同じね」 すると、彼は家族の顔に戻って笑った。 「母さんは相変わらずだなぁ」

2021-12-03 11:32:52
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「未来のわたしへ」 幼い子達に譲ろうとした絵本にそんな手紙が挟まっていた。 魔法は上達したか、姉のように素敵な人になれたか、親友達と仲良く一緒に過ごしているか…過去の私は知りたがりだ。 少し離れた所から聞こえる歌声とキャラバン内を漂う焼きたてのパンの匂いに包まれ、自然と頬が緩んだ。

2021-11-24 13:36:54
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「ミャルねー、いつかあの虹の向こうに行くのが楽しみなんだ」 いつもより背中が小さく見えるミャルロの隣に座り、空を眺めた。七色の光が弧を描いて山の向こうに吸い込まれている。 「どの子も最高に可愛いビーストちゃん達だったから。皆で仲良くしてるといいな」 花を供え、彼女はまたねと呟いた。

2021-11-24 13:36:05
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

視界を彩る木々が燃えるような朱に染まっている。見事な景色の中でキャナルは溢した。 「きのこ狩りみたいに食べられるんじゃないんだ…」 「もみじ狩りに何を期待してたの」 カールは呆れたが、アンギラが思い出したように呟く。 「鶏足はもみじって呼ばれる珍味扱いでウマイぞ」 鶏狩りが始まった。

2021-11-19 22:39:01
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

使い古した得物を鍛え直し孫の守り刀にしたいと、老兵士から剣を預かった。そして依頼の品を仕上げた時、奇妙なチビが現れて言った。 「スコーラッド殿、感謝します。これでまた主のお役に立てます」 受取りに来た老人にその事を伝えると、男泣きしながら礼を言われた。孫に譲るのは止めにするらしい。

2021-09-14 11:45:35
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「力が欲しくば手を貸そう」 鍛練中に突然老人から声をかけられた。鋭い雰囲気に気圧されつつ、剣を構えベヒーモスの手綱を引く。彼との手合わせに没頭していると仲間が自分を呼ぶ声がした。 その瞬間、彼は忽然と姿を消した。辺りを見回し離れた茂みにいた一頭のキリンに気付き、僕は静かに一礼した。

2021-09-10 18:14:01
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

臆病者と謗られようと卑怯だと責められようと、これは息子の未来の為に選んだ事だ。使者から受け取った返事に目を通した。 「オークの患者でも受入れは可能か」 との問いに人間の医師はこう返してきた。 「可能だが、種族より先に病状をお聞かせ願いたい」 噂の名医は信頼に足る人物でもあったようだ。

2021-09-09 21:13:23
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「よくやった」 俺が褒めると幼い息子は屈託なく笑った。 「自慢の息子だ」 射手として認めてからは怯えた目でこちらを見るようになり、とうとう自分の前から姿を消した。 「流石だな」 今はそう呟くと、すれ違い様に彼はこう返す。 「父さんの息子だからね」 誇らしげに、あの頃のように笑いながら。

2021-09-05 16:18:20
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

幼馴染みを連れ、マーサはネロの街に繰り出した。 「個人的な買い物以外は、たまにこうして当番で担当してるの」 メモには日用品や消耗品が並んでいる。 「この歯ブラシの後の(オ)ってのは?」 「種族でサイズや毛の並びが違うでしょ。それはオーク用」 なるほど面白い、少女は笑って釘を咥え直した。

2021-08-20 12:41:23
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

ボトルのコルクが抜ける小気味よい音が響く。だがラスベルはそのまま再び栓をした。 「戻すの!?」 飲めると思っていた周りの反応に、彼は笑いながら答える。 「焦ってはいけないよ。抜栓して時間を置くと薫りに深みが増すんだ」 ちなみにこれは半日待つ、と付け足されキャナルはその場に崩れ落ちた。

2021-08-20 12:39:34
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

ソフィアは言いました。 「武人たるもの、怪我を恐れている訳にはいかない」 エルヴィも言いました。 「オークは戦士だ。傷は戦士の誉れだ」 ミリアは負けじと返しました。 「私はヒーラーよ。武人も戦士も、傷付いた人を治す役目なの。2人と同じで誇りを持ってるわ!」 一瞬で2人を納得させました。

2021-08-16 20:26:08
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

風が運んでくる祭囃子の音色。始めは故国風の調子で響いていたが、少し荒々しくなったのは恐らくグァラルが飛び入り参加したからだろう。 「カラミティ、良ければどう?少し変わった花火なんですって」 旧友の孫娘が紙撚りを数本差し出してくる。線香花火――潔く火花を上げ、散った男に似た花火だった。

2021-08-16 08:51:14
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

「わぁ、可愛いね。やっぱりデザイン違うなぁ」 「でも私達には…合わないのよね」 ワウガガとアロティがそんな会話を繰り広げつつ、手を見つめて悩ましげに溜息をついていた。 何を見ていたのか後から確認すると、エルフ領の情報紙のとある特集ページだったらしい。後で鍛冶職人達に相談してみよう。

2021-08-14 18:30:28
イキ@通りすがりのピエ党 @nonbiri_journey

あの人の笑顔が好きで好きで仕方なかった。 何もできなかった己の無力さと最後に離した手の平の温もりが生々しく蘇って、時たまどうしようもなく惨めになる。そんな時、愛娘は彼に似た笑顔を向けて私を見つめてくる。 大丈夫、大丈夫だからね。娘とその瞳に映る自分をあやすよう、優しく小さく呟いた。

2021-08-12 00:10:48
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まとめたひと
イキ @nonbiri_journey

雑多ゲーム垢。たまにグッズお取り引きします。フォロワー整理中(スパムからのフォローを放置されてる方はお別れしていってます)。 合わなければリムブロミュート駆使してください。詳細はプロフカード(↓のURL)参照です。アイコンはオレンヂさん(@yoshida_daidai)より。