勇を育てる弱視生活保護尾と出会った杉の話

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

おうちは一応二部屋あるんだけど、居間と寝室兼尾の仕事部屋になっていたので勇ちゃんのお勉強机が無いんですね。今までは居間でごはんと入れ替わりみたいにしてお勉強してたんですけど中学になるとそれでは済まなくなってきて、相談の結果杉んちをお勉強部屋に使わせてもらうことになりました。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

どうせ杉は尾んちに入り浸りで風呂と睡眠と服置き場くらいにしか自分の部屋を使ってなかったし、入学祝いを申し出たけど遠慮されてたからそのかわりかなって。 なので、テスト前は杉は勇ちゃんの邪魔をしないように尾んちにいる時間が長くなったし、隣の家とはいえ

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

夜遅くに家の出入りがあるのもバタバタしてあれだよね、と勉強に集中するテスト期間中とかは杉が尾んちに泊まって勇ちゃんが杉んちで寝るようになりました。 尾はヤダーって思うんですけどｗまぁ勇ちゃんの勉強のためなら仕方ない。しぶしぶ了承。（これでやっとすぎお二人きりになる状況を作れた！）

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

前述のとおり杉と尾は結婚しろうるせぇしねぇよおめえと一緒にいんだよで、心理的には勇に見えないテーブルの下で互いに足をがつがつ蹴りあってるような感じなんですが、別に毎日ケンカしてるわけでもなし、勇の進路の事とか柔道の事とかちょっと情報共有したりとか、一緒に洗濯もの畳んだりもします。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

そういう時にたまに「お前このままでいいのか」とか尾が言ってくるので「いいっつってんだろ」って杉は返すしついでに「お前いい加減諦めろ」って言ったり…。まぁ諦めろって言うとそりゃこっちのセリフだって言い返されるんですけどね。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

いつも埒が明かないので尾なんかは勇の話とかあからさまに話題逸らしをしたりするんですけど（むしろそれで決定的に決裂せずにいる）、最近勇ちゃんがテスト期間終わっても杉んちで勉強三昧でそのまま泊ってくるのでもう一週間くらい杉と尾で同じ部屋に寝てる。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

あんまり帰ってこないのでなんか言えないことでもしてるんじゃないかとちょっと尾ちゃんは心配なんですけど、杉は「まぁ…年頃だからなぁ」ってニヤニヤ。 「なんだ、年頃って」 「俺もさぁ、気ィ使ってエロ本とか置いておいた方がいいのかなとか思うんだけどさぁ…」 「……は？」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「いや、だからさぁ男の子っていうかぁ」 「…え？」 「そういう年頃かなぁって」 「そんなわけあるか！」 「いやあるでしょ！」 「……」 ちょっと言葉が見つからない様子の尾ちゃんを見てなんだかんだでブラコンなんだなぁって思ってほほえましく思っていた杉に、ふと疑問が。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「…そういえばお前さぁ…」 「？」 「処理とかどーしてんの」 「…そういうこと人に聞くか」 「いや、やっぱ青年男性だし？」 「誰もがお前みたいに元気が有り余ってるわけじゃねぇんだよ」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

言われて杉、尾が全くそういう処理してないの？って受け取ってびっくりして 「ちんちん腐っちゃうじゃん！」とか言ってしまう。 「腐るかアホ！」 「手伝ってやろうか？」 手を伸ばされる気配を感じて尾が杉の方面に足を出して蹴っ飛ばそうとした。 まぁもちろん杉が避けるのはわかっててやってます。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「ごめぇん」 ヘラヘラ謝られてコノヤロウ、とため息をついたところで杉が何かに気づいた気配がした。 「お、もうこんな時間か。残りもんのごはん、握ってあるし勇んとこ行ってくるわ。ついでに今日どっちで寝るか聞いてくる」 と立ちあがった。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

熱いほうじ茶を3人分煎れ、おにぎりと、あと冷蔵庫から沢庵とかかにかまとかちょこっとだして一緒にお盆に乗っけて、ついでに尾の前にもほうじ茶を置いて行く。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

安アパートで壁も薄いから、隣で杉と勇が何か話をしている気配は伝わってきた。 杉はすっかり勇のもう一人の兄みたいだ。尾にも、何かと話しかけてきたり、ほとんど入り浸りになったり、正直うざったいこともあるがすっかりなじんでいる。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

あいつ、俺の性事情にも興味があるのか…？とか、自分は勇の性事情とか考えたくねぇな…とか、まぁまぁぐるぐるしてるんですけどすぐに杉が帰ってきて「勇、今日もあっちで寝るって！」と尾の隣に腰かけた。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「そうか」 自分と一緒でないと寝ない子だったのにいつの間にか大きくなった。こうやって離れていくのか、と思うその気持ちの名前を、尾は知らない。 「寂しい？」 隣の杉元からふいに言われて、そうか、こういうのを「寂しい」というのか？と尾は考える。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

良くわからないが、人によってはこういうことを「寂しい」と表現する人がいるということはあるだろうということは納得できた。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

でも。元々一人で生まれてくるのに、誰かいなくなっただけで欠落を感じるのは理不尽な話ではないかと尾形は思う。前に生きた時はいるならいる、いないならいない、ただそれだけだったのに。 「俺はいるからな」 「……」 気軽に言う言葉ではないと、尾は思う。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

わざとらしく尾の方に寄るように座りなおしてくるから尾もそのぶんちょっとだけ離れるように座りなおす。 「あ、おがた、そのまま」 「？」 「頭にゴミついてる」 言われてじっとしていると、髪に手が触れ そのまま横から抱きすくめられた。 「…おい」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

抗議の意を表明すると、杉はへへっと笑う。 「こうしてると、寂しくなくなるんじゃね？」 そもそも「寂しい」もよくわからないのにそんなこと言われても尾はどう反応したらいいかわからない。 杉から上機嫌な空気を感じて、抵抗するのも場からしくてため息をついた。 「ゴミは口実か」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「あったよ、今取った」 するすると髪を梳かれて、こいつ髪いじるの好きだな、と今更ながらに思う。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「…嫌じゃない？」 「気にするなら聞いてからやれ」 「お前素直じゃないじゃん」 「…勝手に俺の性格を決めるな」 ふふ、と笑う気配が近い。 「こっち向いて」 文句言われてるくせに図々しい。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

半ば無理やり肩ごと杉の方を向かされて、めんどくせぇな、と思いながらされるがままにしていると気配が間近になって、額にこつんと肌が触れた。 「…すぎもと、お前顔の脂すげぇぞ」 「うっせぇよ」 「ちゃんと顔洗ってんのか」 こっちがいうのを無視して鼻をすり合わせるように顔を寄せられる。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「…こっち見て？」 いうことは無視する癖に要求だけはしてくる杉にあきれながら、閉じていた眼を開いた。ぼんやりと人の顔の圧があって、おぼろげにパーツが見えた。 「俺の顔見える？」 「…近すぎる」 「俺にはお前の見え方がわかんねぇからさ、教えてよ」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

睫毛の触れる位置で、息がかかる距離で拘束されて、前世の自分だったらともかく、今の尾には逃げようがない。 おぼろげな視界にでも杉の目の位置位はわかって、しかたねぇな、と尾は半ばあきらめの気持ちで呟いた。 「…相変わらず、目の色が薄いんだな」 「…うん」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

感極まったのか、ぎゅうぎゅうと抱き締められた。 「ずりぃよ、お前、そんなこと覚えてんの？」 「黒いところがよく見えねぇから言っただけだ」 聞いているのかいないのか、うんうんと頷きながら杉がぐいぐい近づいてくるから尾は複雑な気分だ。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

どうすんだこれ、とか思っているとどさくさに紛れて唇に感触を感じた。この距離だから喋るだけでも触れてしまう距離だったけれど明らかな意図があった。 「おい」 「事故です」 事故る距離だから喋れば自動的にまた触れる。 「この距離じゃなきゃお前から見えねぇんだからしかたねぇだろ」

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

言いながらまたちゅ、ってしてくるから尾は天を仰ぎたい気持ちになった。しかし物理的には拘束されていて一ミリも動けない。 「抵抗できない人間にお前は何をやってるんだ」 自分が言っても事故る。”何をやっているんだ”は自分もだ。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

「うん、お前唇やらかいな」 喋った結果の事故とかもうそういうのを無視してちゅ、ちゅ、って触れてくる杉にあきれながら、でも嫌悪感がわかないのが尾は自分でも不思議だった。杉元はやたらと上機嫌で体温も高くて暑苦しい。居心地が悪いはずなのに、本当に不思議だった。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

今回はここまで～！ やっと触れ合ったよー！

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

min.togetter.com/lgO0ZQW まとめも更新しました。 勇を育てる弱視生活保護尾と出会った杉の話

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

まとめたあとに言うのもナンですが、この間勇ちゃんはずっとまじめにお勉強しています。ごめんな…にいちゃん達がいちゃこらしてるのにな…。 尾ちゃんも杉に迫られて力づくで抵抗しないのは勇ちゃんのジャマにならないように、というのもあります。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

杉はもう逃げられないようにジワジワ距離詰める作戦で多少図々しくても(多少？？)気にしないことにして故意に「事故」ったりするんですけど、まさか自分の瞳の色を尾が覚えててそれを今の尾の目で認識してくれるなんて思ってなかったから、ちょっとだけ泣きそうになりました。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

この「事故」がうまく行ったので杉は何度もこのあとも「事故」るしそのうちふつうに隣にいるときにチュッて知ってくるようになるし、尾ちゃんは呆れと諦めでため息をつきつつされるがままなんですが、杉を嫌いにはならないんですよねーなんでだろーねー！

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

多分次の「事故」は尾のご子息が朝おっきしてるのを杉がうっかり見つけてお手伝いしたほうがいいかな？って… だって腐っちゃったら困るし杉は心配で心配で…🥺🥺🥺 さすがにそのときは尾も怒りましたが一時間もすれば杉部屋で寝ていた勇ちゃんが起きてくるので大っぴらにケンカするわけにもいかず…

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

勇ちゃんの前ではシャンとしていたい兄様なので…。 杉もそこは計算済でして…。

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

ちょっと話は戻りますが、尾は全くの全盲ではないので明るいとか部屋の出口はあっちとかはかろうじて認知できるイメージです。このへんは個人差もあるのであれなんですけど…。 なので、最初の「事故」の時に杉の瞳のことを言ったのは、肌と目の境界はなんとなくわかる、でも→

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

それ以外はよくわからない、と言うことは多分瞳の色が薄いのだろう、前世でもそうだった、という推理からの発言で、正確に言うと尾の目に杉が視えたとは言えないのです…。でも当たってたし杉も喜んでるのでその点に関しては尾ちゃん、心の中で少しだけドヤァ…となりました。