140字小説の過去作500作くらい(あいまい)の中で、特に反響をいただいた約30選をまとめています! ☆全作品はこちら!https://togetter.com/li/1794188
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あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

昔から執筆している文章がいつまで経っても書き終わらない。そういえば息子は小説家だった、俺が死んだら続きを書いてもらおうか。専門家に相談するが、ダメですとたしなめられる。ここにきて精神論かと怒ると、そうじゃなくてと困り顔の弁護士。「何が何でも自分で書かないと、遺言書は」#140字小説

2022-03-28 21:14:29
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「もうこんな夢いらない」そう訴えたら、バクが私の夢を蹴飛ばした。 いや、せめてそこは食べてよ。なんで蹴るのよ。 「だって未練のある顔をしてたから」言葉に詰まると、進行方向に蹴っときましたので、とバクが笑う。「思い立ったらいつでも追いかけられるのが、夢のいいところですよね」#140字小説

2022-03-01 12:22:14
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

一階からまた父さんと母さんがケンカしてる声が聞こえる。母さんのヒステリックに父さんが応戦するいつもの感じ。このままだと夕飯が忘れ去られる可能性が高い。んもう、世話が焼けるな。僕は階段を駆け下り、二人の間に割り込むと、とびきり可愛い声を出して尻尾を立てた。「ニャアー」#140字小説

2022-02-22 12:19:23
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「タイムワープはもうやめます」男は科学者に言った.妻が病気の自分と結婚することにならぬ様に何度も過去に戻ったが。「なぜか結局彼女と結ばれるので…」 男が去った後、訪れた女に科学者は微笑んだ。「旦那さんは諦めたようです。だから貴女ももうタイムマシンを使う必要はありませんよ」#140字小説

2022-02-21 12:43:43
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「私は盲目の爺さんを騙していた」弔いに来た坊主に『飼い猫』が呟いた。「食べてやろうと忍び込んだのに,ニャアと鳴いたら嬉しそうに笑うから」 線香を焚き、爺さんから遺言だと坊主が口を開く。『油断させて毛皮を獲ろうとしたが、情が移ってしまった。私も全盲のふりをしてすまん、虎よ』#140字小説

2022-01-06 17:40:34
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

年代物のロボットがついに壊れたらしい。切なげに知らない名前を呼ぶので、そっと頭を撫でてやる。そう不安な顔をするな。私が付いてるから—— 寝息を立て始めた男の白髪を撫でながら、ロボットが、貴方は優しい人だと呟いた。「自分の名前を忘れても、私のことは忘れずにいてくれるなんて」#140字小説

2021-12-28 17:49:06
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「娘さんの腹痛はウソですね」医師の言葉に青白い顔をした母親はやっぱりと肩を落とした。まさかいじめ?娘は大丈夫なのかしら。すると医師は、大丈夫じゃないのは貴女じゃないですかと聞いた。「娘さんが言っていましたよ。貴女が働きすぎだから、休ませるために仮病を使っているんだって」#140字小説

2021-12-20 11:59:37
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「なぜ急に俺は牢から出されたんだ?」竜は姫に聞いた。希少な竜の涙を採取するため、長らく捕まっていたのに… 「沢山ある物は、価値が下がるのです」姫は宙を舞い、竜の頭上に降り立った。透き通る手で優しく鱗を撫で、耳元に囁く。「この前私が死んだ時、沢山泣いて下さったでしょう?」#140字小説

2021-12-11 17:25:50
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

ポテサラに肉団子。最後のお弁当には息子の好物を詰めた。雨の日も風の日も下手なお弁当を完食してくれた。一人暮らしを始めてもちゃんと食べるんだよ—— 返ってきた空っぽのお弁当箱に『5年間母親もやってくれてありがとう』と付箋がついていて、俺は妻の仏壇に手を合わせてほろりと泣いた。#140字小説

2021-11-29 18:39:32
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

戦争へ行く前、父はおまじないを教え、困ったら唱えるよう言った。やがて戦況が悪化し家に敵国の兵隊が押し入ってきた時、必死でおまじないを唱えると、兵は銃を下ろして私を抱き上げた—— 「なんで?」と膝の上で目を丸くする孫の頭を撫でる。「あのおまじないはね、敵国の恋歌だったのよ」#140字小説

2021-11-27 17:46:03
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「旅人にマスクを外させる試練、どちらが成功したのだ?」神様は北風と太陽に聞いた。「ひとりでは失敗しましたが、ふたりで協力したら嬉しそうにマスクを外し深呼吸しまして」と太陽。ほぉどうやって、と興味深げな神様に、北風は笑って「太陽の光で咲かせた花の香りを、私が運んだのです」#140字小説

2021-10-23 17:39:58
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

王は村人全員に石を渡して言った。「早く割った者に褒美を与える」大人達が石を叩き苦心する中、少女だけは懐に入れて大切に温めた。 数日後、少女の石にヒビが入った。割れ目はたちまち大きくなり、美しい金の鳥が顔を覗かせた時、ようやく大人達はそれが石なんかじゃなかった事に気づいたのだった。

2021-07-18 09:46:37
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

妻が具合が悪いというので慌てて会社を休んだ。こんな事、結婚生活が始まって以来初めての事だ…一体どうしたら…。突然、背後からシャツの襟を掴まれベッドに押し込まれる僕。冷えピタを貼られ呆然としていると、不敵な笑みを浮かべながら妻が言った。「こうでもしないと休んでくれないと思って」

2021-06-30 21:56:24