140字小説の過去作500作くらい(あいまい)の中で、特に反響をいただいた約30選をまとめています! ☆全作品はこちら!https://togetter.com/li/1794188
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■コンテスト受賞作

夏のhoshiboshi140字コンテスト*一席(2023.9)

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

ドン。花火の鈍い音が、遠慮がちに家の中に流れ込んでくる。私はこの一年で骨が浮いたシロの横腹を撫でる。名前を呼ぶと辛うじてしっぽを振る体を腕に抱けば、ドン、と次の花火が上がる。去年は一緒に見たそれを、今年は瞼の裏に浮かべる。永遠に続くと思っていた当たり前の名残を、精一杯抱きしめる。

2023-07-31 23:58:54

140字小説方丈杯*優秀賞(2023.2)

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

ゴマはコマに鍵は柿に…巫女には濁点を除き別の物に変える力がある。そんな​​噂を聞いた意地悪な殿様、「タマゴを変異させてみよ」とニヤニヤ命じた。はて、タマコとはと皆が固唾を飲む中、飛び出したのは美しい白兎。失敗かと喚く殿様に巫女は微笑み、「いいえ、卵の点を2つ抜いたのです」#140字小説

2023-01-08 16:48:04

hoshiboshi140字コンテスト*佳作(2022.12)

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

喜怒哀楽。倉庫には、ヒト、という生物の感情が保管されていた。怒りはよく檻を突き破って逃げ出すので大変だ。悲しみが地面付近で動かない時は、喜びをふりかけてふわんと浮き上がらせる。 これらを一つの体に同居させていたなんて。彼らが住んでいた地球は、さぞ賑やかで、孤独な星だったのだろう。

2022-11-14 22:00:23

文豪たこ杯*たこ妬き賞(金賞)(2022.3)

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「6350たす72たす329たす…」辛い気持ちになると噂の計算道場に行った。30分間次々と繰り出される数字。今まで数多の秀才が泣かされてきたとの噂だが、俺は違う、絶対正解してギャフンと言わせてやる!呼吸が乱れ、視界が霞む。鉛筆の芯が弾け飛び、あと1秒というところで出題者が言った。「かける0」

2022-03-13 17:39:05

文豪たこ杯*スミ吐き賞(銀賞)(2021.12)

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

花瓶に水を入れてきて。頼んだのに夫は無視。子供達もムスッとTVばかり見てついに反抗期?こんな時相手してくれるのはポチだけね。なのになんでアナタまで変な声で鳴くの? もういいわと伸ばした手は花瓶を掴めず、代わりに揺れた花を見て息子がようやくくしゃっと笑う。 「母さん、そこにいるのかな」

2021-12-15 17:25:37

■お気に入り作品

あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「プロポーズされたの」 えっおめでとう…! 「しかも結婚指輪に婚姻届付きで」 えっえらく強気…! 「でも驚かなかったよ、最近彼にPC借りると指輪のWeb広告が表示されたし」 いやそれにしてもさ…? 「だから私も彼のPCで式場を検索しまくってやったのね、そういう広告が表示されるように」#140字小説

2023-04-22 17:50:28
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

新型スマホはAI搭載。持ち主を想い最適な挙動をするらしい。機種変更をした朝、男は告白相手の返信を待っていた。が、いつまでたっても返事が来ない。すぐに送ると言ってたのにな… 『そのメールなら削除しましタ』 は⁈なんで⁈ 『お察しくだサイ』 ?!?! …!!! #140字小説

2023-04-14 21:31:56
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

『15分以上遅れた患者は診察しません』待合室の壁には大きな張り紙が貼ってあった。気持ちはわかる。わかるが腑に落ちない。男はおもむろに立ち上がると、受付に診察券の返却を申し出た。なぜと問われて鼻を鳴らす。「他の病院へ行きます。いつも予約時間を15分すぎても診てくれないので」#140字小説

2023-03-17 21:16:24
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

私は家政婦ロボット。家主の娘に禁断の恋をしたら処分されてしまった。スラム街に佇めば、同じく捨てられたロボットが近づいてきて、元気出せよと錆びついた腕を差し伸べ言った。「せめて笑い飛ばそうぜ。これぞホントの身から出た錆ってさ」思わずギシギシ笑う。ようやくここで生きる決心がついた。

2023-02-06 21:51:42
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

家に帰ると、台所で祖母が紅茶を淹れていたのでびっくりした。「お疲れ様だねぇ」とカップを差し出す。おばあちゃんっていつもそう。疲労を察して好きなものをくれる。でも甘えるのも最後にするね。大好きだよと呟くと、祖母はすっと笑って、紅茶みたいに温かな光を放ちながら消えていった。#140字小説

2023-02-02 19:49:46
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

毎年"我が子検定"を受けている。子の趣味嗜好を問う記述式なのだが、年々難しくなり、20級になる今年はわからない問題だらけ。途方に暮れていると、そっと肩を叩かれる。振り返れば、今までアリガトとはにかむ娘。「来年から私が"親検定"を受けるね」視界の中で、あでやかな振袖姿がじわっとにじんだ。

2023-01-16 21:30:30
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

世紀の発明をした研究者。閃きのきっかけは同棲中の彼女の何気ない一言だったという。王宮での祝賀会で、女王は彼の隣の女に目を向け聞いた。「その方が研究の立役者ですね?」が。「いや…あれは別の女性で…」凍りつく会場。しかし女王はすまし顔で、「ではもう1つ、大発明ができますね」#140字小説

2023-01-12 19:34:41
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

「近ごろ童話の主人公が危機に晒されてるの」森の奥の家で少女がぽつり。 「竹林が荒れてかぐや姫は生まれないし、海亀が減って浦島は竜宮城から戻れない。わらしベはそもそもワラがなくて困ってるし」 赤い頭巾を頭にかぶり遠い目をする。「張り合いがないのよ。狼も絶滅しちゃったしね」#140字小説

2022-12-15 19:36:20
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

最近友人が悩んでる。「好きな人に好意の伝え方がわかんなくて…」しょんぼりしているので、好きってストレートに伝えて来なよとアドバイスした。「そうだね、頑張る…」立ち上がる友人にいってらっしゃいと手を振ると、彼は吹っ切れたように頷き言った。「好きです。付き合ってください」#140字小説

2022-10-07 17:26:35
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

俯いて林檎を剥く母を見下ろし思う。何でわざわざ皮でうさ耳を。手間かけたって病気が治るわけでもないのに… その夜、突然うさぎ林檎達に取り囲まれた。口々にがんばれとぴょんぴょん跳ねている。 これが愛か。 温かな涙が込み上げて、ついに私は病室の自分の体へ戻る決意をしたのだった。#140字小説

2022-10-03 21:20:04
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

#140字小説 「今朝、卵を割ろうとしたら全然割れなくて」 それは気味が悪いな。 「ガンガン叩いてたら間違ってお皿を割っちゃった」 それは君が悪いな。 「その後卵は割れたけど、結局目玉焼きは作れず」 どうして? 「中身がヒヨコになって、パタパタ飛んで逃げてったから…」 それは…黄身が悪いな。

2022-09-26 21:17:17
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

外国を旅する売れない画家。言葉が喋れなくても出国する頃にはペラペラになるという。コツは、これ何?と聞きまくり単語を覚える事らしい。でも最初はその聞き方もわからないのでは。すると彼は、まずは現地で自分の絵を見せるんですと悲しげに言った。「だいたい皆、これ何?と聞くので…」#140字小説

2022-09-02 21:34:43
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

数年後の自分に繋がる番号にかけた。が、電話の向こうは静寂。まさか僕、既に死んでる?ならば好き放題だと仕事を辞めた。遊び歩いた末に新たな夢を見つけ、妻と結ばれ子供もでき… 夜、電話が鳴る。 自由な世界へ羽ばたく為。最愛の人と出会う為。受話器を耳に当てた僕は、願いを込めて、押し黙った。

2022-08-26 21:11:05
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

祖母の誕生日には謎の電話がくる。毎年違う声で、トメ先生に代わって下さいと一言。少し不気味だったが、昔の教え子達よと嬉しそうなので放っておいた。 やがて祖母はこの世を去り電話は来なくなった。祖母の勤めていた学校が戦争で焼け、生徒が犠牲になったと知ったのは随分後の事だった。#140字小説

2022-07-03 23:10:11
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

#文披31題 Day3「謎」 『ご機嫌伺い』 祖母の誕生日には、謎の電話がくる。 #140字小説 #140文字小説 pic.twitter.com/pzyPdnoZTR

2022-07-03 23:10:13
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あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

金魚に名前をつけてはいけないらしい。名のある金魚には情が宿り、死ぬ時に寂しくて、飼い主を道連れにするからだそうだ。 そんな話を聞いた夜、赤い金魚を飼い始めた。願いを込めて、いとしい人の名前をつける。 金魚よ、どうかきみが死ぬ時は連れて行っておくれ。先に逝った、妻の元へと。#140字小説

2022-07-02 17:25:44
あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

#文披31題 Day2「金魚」 『みちづれ』 金魚に名前をつけてはいけないらしい———。 #140字小説 #140文字小説 # pic.twitter.com/kLQqNsKYK1

2022-07-02 17:25:46
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あやこあにぃ|作家&ライター @ayako_annie

世界から「あ」で始まる言葉が消えた。お礼も言えなくなり、4年3組では学級会が開かれた。困り果て、静まりかえる教室の隅で、仲間はずれにされていた転校生が手を挙げる。「ええ解決策が…」 その日を境に、彼の方言を笑う生徒はいなくなった。「おおきに」は今やクラスの標準語だ。#140字小説

2022-05-30 21:32:17