2 生田さんとは、同じ職場で働く女性の先輩社員。 フルネームは…生田絵梨花。 美人で明るくて、誰からも人気があった。 pic.twitter.com/eIWQsJmPia
2021-12-12 12:31:463 □□:何言ってんだよ。そんなわけ… 同僚:隠さなくていいって。見ればわかるから。 俺の言葉を遮るように、同僚が言う。 □□:いやいや、待てって。
2021-12-12 12:32:154 するとそこへ、生田さんの姿が。 絵梨花:□□君、来週よろしくね♪ □□:来週…? 絵梨花:あれ、聞いてないの?来週の木曜と金曜、私と□□君の2人で大阪に出張に行くことになったんだよ? □□:えっ…!? pic.twitter.com/WNWlCwR2bQ
2021-12-12 12:34:585 2人切り…しかも、泊りがけ…。 絵梨花:なんだ、ほんとに聞いてなかったの?まぁいいや、がんばろーね♪ 俺の肩をポンと叩き、去って行く生田さん。 同僚:よかったじゃねぇか。 ニヤニヤとしながら、話を聞いていた同僚が肘でつついてくる。 pic.twitter.com/RlUz0q8BWK
2021-12-12 12:35:436 □□:……。 同僚に見透かされた感があるのは悔しいが、この時…ようやく気づいた。 俺は、生田さんのことが好きなんだ― ―――――
2021-12-12 12:36:097 絵梨花:ん〜、美味しい♪ 新幹線の中、駅弁に舌鼓を打つ絵梨花。 □□:よく朝からそんなに食べれますね…。 絵梨花:だって美味しいんだから仕方ないでしょ?逆に□□君は食べなくて平気なの? □□:あんまお腹空いてないんで…。 絵梨花:ふーん。 pic.twitter.com/ghIZ2u7cnv
2021-12-12 12:40:368 □□:(こんなに華奢なのにどこに入っていくんだろう…。) すると 絵梨花:もう、そんなに見られてたら恥ずかしいよ〜/// □□:え…、あっ!すいません…。 はにかむ絵梨花に、ドキドキと鼓動の高鳴る□□。 pic.twitter.com/UCN8drdv0m
2021-12-12 12:41:179 誤魔化すために、目を閉じて俯いていると 絵梨花:ちょっと寝ようとしてるでしょ! □□:えっ? 絵梨花:だめだよ。寂しいから起きてて。 その一言に、きゅんとくる□□。 pic.twitter.com/xefWjlHoLM
2021-12-12 12:44:1510 絵梨花:そうだ、何か面白い話してよ。 □□:えぇ、そんな無茶な…。 絵梨花:早く〜! □□を急かす絵梨花。 □□:生田さんって…わりと無茶苦茶なとこありますよね。 絵梨花:…なんだって? pic.twitter.com/LlaURZQEwe
2021-12-12 12:44:3712 その後、仕事を終え会社が用意したホテルに到着。 名前は、✕✕✕ホテル。 □□:(まぁ…さすがに部屋は別々だよな。) もし一緒の部屋だったら…なんて馬鹿なことを考えながらカードキーを受け取り、もちろん別々の部屋にチェックイン。 □□は3階、絵梨花は4階の部屋だった。
2021-12-12 12:45:2813 荷物を降ろし、シャワーを浴びた後、部屋で寛いでいると、□□のスマホが鳴る。 絵梨花:『もしもし、□□君?』 □□:はい。どうしたんですか? 絵梨花:せっかくだし、よかったらご飯行かないかなって。 □□:(えっ!) □□:いいですね、行きたいです!
2021-12-12 12:46:0114 絵梨花:じゃあ…1階のロビーで待ってるね。 電話が切れる。 □□:(生田さんから誘ってくれるとか…ラッキーすぎる!) 陽気に鼻唄を歌いながら準備をする□□だった。 ―――――
2021-12-12 12:46:4315 ホテルを出て、雰囲気の良さそうな居酒屋に入る2人。 平日のわりに客が多く、店内はガヤガヤと賑わっていた。 □□:生田さん何飲みます? 絵梨花:んー、最初は生にしよっかな。 □□:すいません、生2つお願いします。 店員:あいよー! pic.twitter.com/mj5lIINGje
2021-12-12 12:49:0416 少ししてジョッキが2つ運ばれてきて、乾杯。 絵梨花:あ〜、仕事終わりに飲むと美味しいね♪ □□:はい! 絵梨花の笑顔を肴にビールを飲む□□。 □□:俺、出張好きなんですよねー。 絵梨花:どうして? □□:会社のお金で旅行行けるようなもんじゃないですか。 絵梨花:あはは、たしかにね。 pic.twitter.com/qYWMaU2NDW
2021-12-12 12:50:0117 すると 絵梨花:出張…かぁ。 なぜか、少し寂しそうな表情をする絵梨花。 □□:…どうかしたんですか? 絵梨花:…え?ああ、ごめん。なんでもないよ。それより、何か頼も? □□:…? pic.twitter.com/unfj9q1CV5
2021-12-12 12:51:0018 少しだけ不思議に思った□□だったが、それ以降は絵梨花も特に変わった様子を見せることなく時間がすぎていき… □□:明日もあるし…そろそろ帰ります? 時計の針は午後10時を回っていた。 絵梨花:うん…そうだね。 □□が席を立とうとすると
2021-12-12 12:51:5419 絵梨花:ねぇ…□□君。 □□:? 絵梨花:大事な話が…あるんだけど。 □□:え…? なにやら神妙な面持ちの絵梨花。 □□:生田さん…? 席に座り直す□□。 絵梨花:…。 なかなか言い出せないのか、黙ったままの絵梨花。
2021-12-12 12:53:4020 すると、その時 男:なぁ、✕✕✕ホテルって知ってる? 女:✕✕✕ホテル? 隣の席にいた、カップルの会話が聞こえてくる。 男:そう。出るって有名なホテル。 女:出るって…何が? 幽霊のように、両手を前に出して揺らしてみせる男。 □□・絵梨花:!? 思わず、顔を見合わせる2人。 pic.twitter.com/EP2EBtcxeO
2021-12-12 12:54:5621 男:なんでも、昔そこで命を絶った人がおるらしくて、その人の霊が出るんやって。特に、4階の部屋がヤバいらしい。 女:ほんとぉ〜? 男:ほんとやって。な、今度行ってみない? 女:え!嫌に決まってるやん! 男:大丈夫、俺が守ってやるから! 女:守るとか言うなら、最初から連れて行かんでよ!
2021-12-12 12:55:5423 会計を済ませ、ホテルに戻った2人。 □□の部屋には、絵梨花の姿が。 □□:ほ、ほんとにここで寝るんですか…? 絵梨花:だって私の部屋4階だよ!? □□:まぁ、そうですけど…。 思ったより怖がっている絵梨花。 pic.twitter.com/X0LPiMIKoq
2021-12-12 12:57:0424 □□:じゃあ…僕が4階の部屋に行きましょうか。 □□がそう言うと 絵梨花:えっ…何言ってんの!? □□:えっ? 絵梨花:1人にしないでよ…!! □□:えっ!? ――――― pic.twitter.com/pGxwVOosyn
2021-12-12 12:57:4025 浴室でシャワーを浴びる絵梨花。 …と、浴室の扉の前で見張り番をさせられている□□。 絵梨花:□□君、ちゃんと居るよね? □□:居ますよ。 扉にもたれるように座り、シャワーの音を聞く□□。 pic.twitter.com/0q9dssSC1p
2021-12-12 12:59:4426 □□:(この扉の向こうで生田さんが…。) □□:(乱入してみようかな。) □□:(…ばか!何考えてるんだ俺は!) 理性と煩悩の狭間で戦う□□。
2021-12-12 13:00:0328 実は、数年前に今の場所に移転されていた✕✕✕ホテル。 先程の心霊話、実際にそういう噂は流れていたもののそれは移転前のことで、今の新しい建物になってからはそういった噂は消え去っており、実際に心霊現象のようなことも起こっていないのだという。
2021-12-12 13:00:4529 □□:なんだよ…びっくりさせやがって。 安堵の表情の□□。 □□:(早く生田さんにも教えてあげないと。) □□:(あ、でも…そしたら自分の部屋に戻っちゃうかな…。) ―――――
2021-12-12 13:01:0130 絵梨花:なんだぁ〜、も〜!! シャワーから戻った絵梨花。 心霊話は誤りだったことを□□から聞かされると、安心して様子で 絵梨花:はぁ…ほんとに怖かった。 pic.twitter.com/Sun4QKEKN5
2021-12-12 13:02:3931 □□:生田さんって…意外とああいうの信じんですね。 絵梨花:ちょっと、意外ってどういうことよ! プクッと頬を膨らませる絵梨花。 □□:あはは、すいません。 並んでベッドに腰掛ける2人。 pic.twitter.com/twH9iaSf3a
2021-12-12 13:04:1732 □□:…。 絵梨花:…。 隣に座る絵梨花のシャンプーのいい香りが、□□の鼻先をくすぐる。 そればかりか、館内着から除く美肌が、やけにセクシーに見えてしまう。 pic.twitter.com/4voaLylR1I
2021-12-12 13:05:2233 □□:そういえば…生田さん。 絵梨花:? □□:さっきの…大事な話って。 絵梨花:あ…そっか。そうだね。 ゴクッと唾を飲み込む絵梨花。 pic.twitter.com/ApAd3L3ej2
2021-12-12 13:06:2135 □□:い、いつですか…!? 絵梨花:…今年いっぱい。 □□:…。 今年は、もう残り半月ほど。 絵梨花:…ごめんね、びっくりさせて。 □□:いえ…。 終始、俯いたままの絵梨花。 □□:…転職ですか? □□がそう尋ねると 絵梨花:笑わずに…聞いてくれる? □□:え…? ―――――
2021-12-12 13:07:1136 聞けば、昔からミュージカル女優になるのが夢だったという絵梨花。 しかし、学生時代に夢を叶えることができずに今の会社に就職。 就職してからはその夢は封印していたものの、心のどこかに未練が残っており、やがて、諦め切れないという気持ちが大きくなってきたのだという。
2021-12-12 13:07:4737 そういった気持ちから学生時代の知人に連絡をしたところ、それなら海外で演技の勉強をしてみないかという話があったのだという。
2021-12-12 13:07:5738 □□:…。 驚きで、唖然とする□□。 絵梨花:だから…今回の出張が、私がこの会社でする最後の仕事になる…かな。 □□:そう…だったんですか。 絵梨花:…うん。 絵梨花:…でもね。 絵梨花:自分で決めたことなんだけど…1つだけ、心残りがあって。 □□:…? pic.twitter.com/Oo7J8OMvNl
2021-12-12 13:08:5739 絵梨花:□□君…好きです。 絵梨花:ずっと…そう、伝えたかったの。 ――――― pic.twitter.com/fM0Vh25FxB
2021-12-12 13:09:4340 □□:…!!? 絵梨花:ふぅ…やっと言えた♪ 動揺を隠せない□□と、どこかすっきりしたような表情の絵梨花。 絵梨花:ごめんね…いきなり変なこと言って。 □□:ほ、ほんとに…無茶苦茶すぎますよ。 顔を上げ、絵梨花をじっと見る□□。 pic.twitter.com/csdMWVEgf2
2021-12-12 13:10:4141 □□:お、俺も…生田さんのことが すると、手で□□の口を塞ぐ絵梨花。 絵梨花:言っちゃ…だめ。 □□:…? 絵梨花:せっかく決心したのに…揺らいじゃう。 pic.twitter.com/hh0UlQY1BT
2021-12-12 13:11:2742 □□:そんな…ずるいですよ。自分だけ言いたいこと言って…。 絵梨花:…ごめん。 すると、スッと立ち上がる□□。 □□:俺…やっぱり4階の部屋に行きます。 絵梨花:え…? pic.twitter.com/DpM5iVUtdD
2021-12-12 13:13:0543 □□:心霊話はガセだったんだし…一緒の部屋に居る理由…無いですから。 絵梨花:…嫌だ。 絵梨花も立ち上がると、後ろから□□に抱きつき 絵梨花:そんなこと…言わないでよ。 □□:…。 絵梨花:少しでも…□□君と一緒に居たい。だめ? pic.twitter.com/NZwG8BTCgi
2021-12-12 13:14:2944 □□:…じゃあ、ヤラせてください。 絵梨花:え…? 驚いた表情の絵梨花を見て、笑みを見せる□□。 □□:そんなに言うなら…ヤラせてくださいよ。そしたら…ここに居ます。 絵梨花:…。
2021-12-12 13:14:5445 □□:…はは、これで軽蔑したでしょ。もう…俺のことなんて忘れてください。じゃ。 そう言い残し、荷物を持って□□は部屋を出て行った。 ―――――
2021-12-12 13:15:1146 □□:(これでよかったんだ。これで…。) ホテルの廊下をツカツカと歩く□□。 □□:(今さら好きだなんて言われても…もうどうしようもないじゃないか。) □□:(いっそ嫌われた方が…楽なはずだ…。)
2021-12-12 13:15:3447 途中自販機で缶ビールを買い、絵梨花が使うはずだった4階の部屋に入る。 □□:はぁ…。 絵梨花のことが、頭から離れない。 □□:…。 迷いを振り払うように缶ビールをイッキ飲みし、布団に潜り込む。
2021-12-12 13:15:5449 □□:んん…。 身体の上に重みを感じ、目を覚ます□□。 □□:え、ちょっ…えっ!? 真っ暗なのでよく見えないが、身体の上…太ももの辺りに誰かが座っている。
2021-12-12 13:16:3250 絵梨花:…あ、起きちゃった? □□:い、生田さん…!? 絵梨花:1人にしないでよ…ばか。 声が少し、震えているように感じる。
2021-12-12 13:16:50