本当の題名を、『キャバレーの女』(縁総受け傾向)キャバレーで働く「とある秘密」を抱えた縁を巡り、高等遊民な無や将校の兄上、商人の炭/吉さんが、それぞれの運命に翻弄される。戦前の退廃的でノスタルジックな俺の強めの幻覚Part.1
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ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

振るわれる腕に怯えるように身を縮こませていた"者"を自分は知っている。遠い遠い幼き頃だった。自分はその者をよく庇ってやっていた。ああ、弱者に手を上げるなんて、それではまるで── 「("父上"と同じではないか)」

2020-05-04 14:46:45
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

父を尊敬してるがあの厳格さを過ぎた苛烈さは、心底厭うていた。あんな男にならぬように、と思っていたのに。小刻みに震える【女】に手を伸ばそうとすれば、怯えたように身を縮こませる。伸ばした手はぱたりと落ち、「……すまなかった……」とポツリと謝罪をこぼし、体の上から退く。

2020-05-04 14:50:33
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

床に倒れたまま体を守るように小さくなって、くすんくすんと泣く様は幼子のようで、あんなに嫉妬心と憎らしく思えていた気持ちが萎えていき、庇護欲を掻き立てられる。守ってやりたくなるよう。震える背に手をあてれば、ビクリと怯える身体。宥めるように撫でれば、ひどく懐かしい気分になった。

2020-05-04 14:54:48
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

弱々しく呟かれる声に、首を横に振る。「それはできぬ」と、キッパリ答えた。手放せぬところまで来てしまっているからだ。「……奥さまがいらっしゃるのでしょう……」といわれた言葉に目を伏せる。「それでも、だ」と答えれば、俯く横顔で唇を噛み締める【女】を見ながら苦く笑う兄上。ぴぇん

2020-05-04 15:02:49
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「こんなの許されませんわ……」と呟く女を見つめながら、「そうだな」と肯定する。「それがわかっていらっしゃるのに、なぜ、」と重ねて問われれば、ふわりと口元を綻ばせて、答える。「焦がれてしまったからだ。──お前に、手を伸ばさずにいられぬのだ」 その答えを聞き、ほろりと涙を流す【女】

2020-05-04 15:07:30
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

ほろほろと泣く【女】をみながら、その涙を指で拭う。「(ああ、俺はこの【女】を手放せぬな)」と心底から思う兄上。たとえ、この女が他の男のモノだとしても、どんなに拒まれても。俺は、どんな手を使っても手に入れようとするのだろう。そう、確信してしまった。

2020-05-04 15:12:21
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「…………出ていって、ください」と静かで頑なな拒絶に一抹の寂しさを覚えながら、立ち上がる兄上。「……また」と言って部屋から出ていく兄上。パタリと扉が閉まったのを聞いて、【男】は兄上を叩いた手を握りながら、苦しげに呼吸をする。「──何故ですか、"兄上"」

2020-05-04 15:31:12
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

【男】はその場に膝を抱えて顔をうずめる。兄だった。父の暴力から守ってくれた、優しい兄だった。遠く離れていても、家族として、兄弟として、親愛はかわらなかったのに。それなのに、どうしてこんなことになってしまったのか。【女】もまた泣く。あの人だけは嫌だと。あの人は"兄"だからと泣く。

2020-05-04 15:37:22
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

こんな自分を知られたくなかったと、【男】は自分の身を恥じた。【女】もまた自分の身を恥じた。「ごめんなさい」という【女】を、「お前は悪くない」と【男】はいう。「"わたし"だけが悪い訳ではない。私も兄上に会えて嬉しかったのだから」 どうしたらいいわからなくて、独りぼっちで泣いた。

2020-05-04 15:54:41
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

兄上はキャバレーに通いながらも、やはり男──無様が【女】の関係を妬ましく思わずにいられない。あれから、【女】のことを調べようにも、情報が集まらない。未詳不明な妖しく、強烈で鮮烈な【女】。いっそ妻と離縁して、【女】を選ぼうか。そんなことを思うまで、じわじわと追い詰められる兄上

2020-05-04 16:08:29
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

【女】が無様に向ける視線には、愛しさや慈しみが滲んでいる。その視線を自分にも向けてほしい。そう苦悶して、追い詰められていく中、キャバレーの客たちの会話からある噂が耳に入る。 「【女】が辞めて、男と一緒に田舎へいく」 という噂が。

2020-05-04 16:13:11
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

それを聞いた途端、今まで萎えていた嫉妬心が膨れ上がっていく。男とは、無様のことであるのは一目瞭然だった。あの男と一緒に──籍を入れるというのか。俺の人生を、俺の心をこんなに乱して、狂わせておきながら。俺だけをおいていくというのか。そんなの、そんなの……「許してなるものか」

2020-05-04 16:15:35
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

ある日、兄上がキャバレーに行けば女はやめていた。その姿を探して街中を走り回れば、求めた【女】の姿があった。その腕をつかみ、引き止めれべ、驚いたようにこちらを振り返る【女】。「女の身一つでどこへ行く?」「あの男と一緒になるのか?あんな、日暮の男と」と問い詰める。

2020-05-04 16:23:59
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「女の身一つでも充分いきていけますわ」「あの人とは一緒ではありませぬ。私は独りでゆくのです」と、【女】は兄上の目を正面から見詰めて、その言葉を吐く。「お前の為ならば、妻子も捨てる」「お前を愛している」と口説くも、【女】は首を横に振るばかり。

2020-05-04 16:28:01
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「奥様や子供を大切になさって」「わたしにはあなたの想いには答えられないわ」と自分の腕を掴む兄上の手をそっと外し、「さようなら。どうか、奥様達とお幸せに」 そう言って去る【女】の姿を見ながら、縋りたくなる手をぐっと抑える。

2020-05-04 16:31:57
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

身を焦がさんばかりの強烈で鮮烈な運命の【女】に出会ってしまった、恋に狂い過ちを冒した、とある男の結末── pic.twitter.com/nXIaeLYG28

2020-05-04 16:58:10
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ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

喫茶店で待ち合わせをしていると、1人の【青年】が炭.吉さんのもとに近づいてくる。その姿を見つけて軽く手を挙げる、炭.吉さん。「よりちさん」と名を呼べば、【青年】はぺこりと頭を下げた。「すまない、遅れてしまった」そう言って申し訳なさそうにする"彼"に、炭.吉は朗らかに笑って首を横に振る

2020-05-02 18:55:51
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「すみれも会いたがっていましたよ。また、遊びにいらしてください」と言えば、【彼】は目を伏せる。誠実な人だから、自分が叶えられるかどうかわからないことを、簡単に約束したりしない。その様子に寂しさを感じながら、「そういえば、この間すみれが──」と他愛無い話をすれば、楽しげに耳を傾けた

2020-05-02 19:25:51
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「私は"わたし"が怖いんだ」震えるような声音で呟いて、俯く"友人"の姿を炭.吉は知っている。そんな【彼】の苦悩も孤独も、全て知っている。そんな【彼】が、破滅の道へを進んでいくのではないかと、心配で仕方がないのだ。だから、こうして【彼】との交流を続けている。

2020-05-02 19:20:17
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

街中で少し草臥れた様子の【彼】をみつけた。思わずその背に声をかければ、赤く腫らした瞳に仄暗い光をたえた【彼】が振り向いた。その手を引き、自宅への道を戻る。「(この人を独りにしてはいけない)」と、「(さもなくば、この人は消えてしまう)」と。

2020-05-02 19:31:04
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

「よりちさん、どうしたのですか。いったい何が……」と声をかければ、【彼】は項垂れながら、ぼんやりとそこに座っている。握る【彼】の手が震えていることに気づく。「よりちさ、」「…………れた」「え?」暗い声でポツリと零された言葉に泣きたくなった。「…………つかれた……」

2020-05-02 19:35:03
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

この話を書くかどうか分からないからネタバレしますが、よりちと兄上は生き別れの実の兄弟で、病弱だったよりちは【女】として育てられたことで、【女】と【男】の自分がいると思ってしまってるという設定があります。

2020-05-02 20:01:56
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

【女】としてのよりちは、浮世離れした妖しい雰囲気を持つ嫋やかな女性。 【男】としてのよりちは、素朴で物静かな、誠実で優しい青年。 兄上が気づかないのは幼い頃なことと、【女】のよりちしか知らないから。炭.吉さんは【男】のよりちしか会ったことがない。無様は、【女】も【男】も知る。

2020-05-02 20:07:32
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

ヨリはね、兄上のまえでは最後まで【女】でいようと思ったんだよ。 優しくて真面目な兄上がさ、自分の弟がこんなことになってたら心痛めるか、嫌われるかと思ったらさ、最期まで【女】として会って別れるのがさ、兄孝行だと思ったんだ。

2020-05-04 17:09:20
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

あ、そうだ。 ちなみにこれ「どれが成立してるの?」という問いには、「むざょり」です。 【女】は無様に惚れてました。【男】もまた惹かれていく自分や、【女】の自分との葛藤でどうしようもなくなり、無様の前から離れることを選びました。惹かれてしまったがゆえに、離れること選んだヨリでした

2020-05-04 17:17:49
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まとめたひと
ゆうさき@低浮上 @yu3k1_4r1

おい!!!!!なんで🎴の耳飾り触った!!!!!ゆうさき(腐/25↑) kmtの縁受け・黒十(字書き)/twst創作寮生·オリキャラ語り(🥥推しの右固定)/一次創作 ※単行本・プレイ感想ネタバレ 左右固定 自衛中 18↓FR等勘弁。アイコンは彩季さまから🙏 詳細はツイプロ