『エビ』というタイトルの一次創作小説同人誌からはじまる、打ち合わせ一切なしのリレー小説。
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霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi そう、『エビ』というタイトルの本だけが。なにが悪かったか考えるが、全くわからない。なんなら、エビは絶対に売り切れると思っていたくらいだ。なのに今日の文フリ、『眼鏡』『リーマン』は完売したのに、エビだけが残っている。しかも、大量に。表紙が悪かったのかとも思ったが、これほど美味しそう

2021-05-16 19:55:28
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 なエビのお寿司のイラストに、本物のオマケ付きだ。文字通りお昼のお供に買われるはずと確信していたのに、蓋を開けてみればこれだ。 しかし、これは本気でやばい。 なぜなら、本は後で通販にまわせるが、オマケの寿司は今日が賞味期限だ。残りはおよそ三十貫。食べ切れるだろうか。

2021-05-16 20:08:52
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「……ま、なんとかなるだろ」 家に帰れば旦那がいる。ひとりでは無理でも奴に食べさせれば問題ない。しかし、荷物が多い。多すぎる。本や什器だけで大きなパッキン1ケース、さらに寿司を常温で置いておくわけにはいかず、クーラーボックスまで。……ん?もしかして寿司の現物を見せずに文字だけの

2021-05-16 20:13:45
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 案内になっていた? せっかくのお寿司が見えなくては意味がない。どのみち、このままでは売れ残る。1冊は私が買ったことにして、ディスプレイにしよう。そう思い、クーラーボックスからエビだけが十貫みっちり入ったパックを取り出し、本の横に並べる。これで万全と思ったが、客は来ない。

2021-05-16 20:20:41
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi もう、周りは撤収しはじめている。なぜだ、なぜ売れない。こんなに美味い寿司だというのに。今日の寿司は市内でも指折りの職人に頼んで準備した。少々値は張ったが、仕方ない。価格の2,980円はほぼ寿司代だ。寿司を買えば本がタダで付いてくるようなものだ、こんなにお得なものはない。

2021-05-16 20:26:00
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 そんな時、黒いスーツに銀縁眼鏡という、私の性癖どストライクなイケメン執事(執事は妄想である)が、革靴をコツコツと響かせながら私のブースに向かって真っ直ぐやって来た。 「おいくらですか?」 爽やかな笑顔とともに発せられた、バリトンボイス。これは、もはや大量破壊兵器だ。

2021-05-16 20:34:23
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「おいくらですか?」 「は?」 オウムのように彼の言葉を繰り返す。彼が一声発して固まり、自分の口から心の声が漏れていたのに気づいた。 「……いえ、なんでもないです」 顔が燃えるように熱くて上げられない。しかし彼はさらに私に声をかけてきた。 「これはおいくらですか?」

2021-05-16 20:47:50
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 と、とにかく、落ち着くのだ!人という文字を手の平に書いて飲む余裕はない今、灰色の脳細胞をフルに活性化させ、冷静さを取り戻すよう努める。 執事(仮)は、「おいくらですか?」と聞いた。つまり、私から何かを買おうとしている。 それはなにか?本だ。残っているのは寿司だ。違う、寿司がオマケの本

2021-05-16 21:03:46
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi だ。 「えっと……。エビをお求めですか?」 わかりきったことなのに確認せずにはいられなかった。 「はい。その寿司をください」 寿司……。彼の言葉に複雑な気分になった。しかし顔には出さずにクーラーボックスから新しい寿司を出す。 「2,980円……いえ、1,500円でかまいません」 大赤字だが

2021-05-16 21:32:43
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 「いえ、そのお寿司に1,500円では安すぎます。2,980円でも」 そう言うと、彼は皺のないキレイな1万円札をスッと差し出した。 「お釣りはいりません。いや、受け取れません」 ほんとに言う人いるんだぁ。ちょっと感動していると、彼は早速お寿司に手を付ける。 「あ、困ります!ここは……」 飲食禁止

2021-05-16 21:37:54
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi なのだ。 「これは失礼。しかし、寿司は鮮度が命です」 あやまってみせたものの、彼はかまわずに寿司を食べ続ける。すぐに運営スタッフが駆け寄ってきた。 「当会場でのご飲食はご遠慮ください!」 このまま会場を追い出されるのは仕方ない。もう閉会時間は迫っているし、それはいい。しかし来年は

2021-05-16 21:56:02
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 どうなるだろう。来年も来られたらいいなと思っていたから、注意だけで済むといいけども。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、目の前の彼は貪るように寿司(エビだけぎっちり)を食べている。すると、 「こ、これはやはり!」 と、突然叫びだした彼。その場にいた全員が驚き、彼を注視する。

2021-05-16 22:44:47
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「あ、あの伝説の、寿司職人の手によるものじゃないですか……!」 彼はまるで神の啓示でも受けたかのようだが、そんなに?確かに知る人ぞ知る名店の寿司ではあるけれど、握っていたのはただの気のいいおじいちゃんだった。この寿司もタダ持ってけ、なんて言われて慌ててお金を掴ませたくらいだ。

2021-05-16 22:51:45
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 そもそも、私の父親の幼馴染みらしく、ずっと地元にいた人のはず。どんなにすごい職人だとしても、そんな有名になるとは思えない。 しかし、彼の一言は絶大だった。 「おい、俺にも寿司くれよ!」 「あたしにも!」 さっきまで見向きもしなかった連中が、急に手のひらを返して我先にと寿司(本)を求める

2021-05-16 22:57:21
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi あっという間に寿司……もとい本は完売した。 「完売したのはいいけどさー」 帰り際、出口付近に設置されていたですゴミ箱を見て複雑な気分になった。そこには大量の『エビ』が捨てられている。 「せめて持って帰って捨てようよ?」 もう売り物にならないそれを拾い集め、重い荷物を引きずって家に帰る

2021-05-16 23:05:50
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 成功したというのか、失敗したというのか。いや、少なくとも、食べ物が無駄にならなかったのだから、良しとすべきか。 モヤモヤした気持ちで、迎えに来た旦那の車に乗り込むと、タイミングよく通知が来ていた。 『やほ。寿司売れた?(笑』 見慣れた猫のアイコンは、知り合いのもの。正直、謎の人物だ

2021-05-16 23:11:56
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 『寿司は、売れた。 寿司は、ね!』 ことさら、売れたのは寿司だと強調して送ると、すぐに返信が来た。 『売れたんならよかったじゃん』 『よくない』 よくない。私が売りたかったのは寿司じゃなく本なのだ。いや、寿司をメインにした時点で間違っているのはわかるんだけど。 『なにがよくないの?僕が

2021-05-16 23:27:04
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 寿司の本を出すなら、寿司をオマケにしたらウケるんじゃね?って言ったのを真に受けて、他のメンバーに総ツッコミされたのを強行したのはハルカでしょ?』 『そうだけど、そうじゃないの!』 『全くハルカはワガママだなぁ。あ、見張りが出てきた。また後で』

2021-05-16 23:33:51
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi そこからはなにを送っても既読すらつかなくなった。しかし、見張りって……?彼はどこかに監禁でもされているんだろうか。いや、ないし。そんなの。 「寿司、食べて帰ろうよ、寿司。じいちゃんとこで。軍資金もあるし」 運転席の旦那に提案する。今日、寿司で稼いだお金はぱーっと使ってしまいたい。

2021-05-16 23:39:55
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 「だね!ぱーっといこう!」 でも、エビは当分いいかな。と、心の中で付け加える。そういえば、私のアイコンもエビなんだよね。 ーーかえようかな。なんにしよう。メガネ?でも安直すぎるし、福岡県のマーク?いや、そこまで福岡愛ないし。 終わらない事を考えていると、車はお店の駐車場に着いた。

2021-05-16 23:44:26
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「よう!」 「……は?」 店に入った途端、あの執事(仮)が気さくに私へ手を上げた。 「なんであなたがここに?」 いやいや、意味がわからない。店を知っていたのなら、わざわざあそこで私から寿司を買う必要なんてなかったはず。しかもなんか、さっきとキャラが違うし。 「寿司、完売でよかったね」

2021-05-16 23:51:12
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 笑顔で、さも知り合いのように話しかけてくるが、全くの他人だ。 ーーこれは、ひょっとして危ない人? よくよく考えてみれば、イケメン眼鏡執事が自分に話しかけてくるなどおかしいに決まっている。さては何が目的か。金か名誉か。しかし、自分にはどれもない。考えあぐねていると、大将が顔を出した。

2021-05-17 07:05:29
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「寿司、全部売れたね」 「あ、はい!お陰様で!」 「そりゃよかばい」 ニヤッと大将が笑う。突っ立ったままもあれなので、執事(仮)からひと席空けて座る。 「なあ。……知り合い?」 執事(仮)をうかがいながら旦那がこっそり聞いてくる。私の好みど真ん中なんだから、旦那の心配は最もだ。 「違う。

2021-05-17 07:17:18
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 会場にいた変質者」 本来、眼鏡イケメン補正でこんな評価になるはずないが、出会ってすぐのドタバタで補正を上回るマイナスが入った。私史上異例の事態、緊急自体宣言とも言っていい。 「そ、そうか。珍しいな」 黒いものを感じたのか、旦那がそれ以上聞いてくる事は無かった。 「あ、申し遅れました。

2021-05-17 20:50:40
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi ワタクシ、こういうものです」 急に改まって差し出される名刺を、不審物かのように受け取る。そこには旧財閥系総合商社の、CEOという肩書が書いてあった。しかし胡散臭すぎて信じられるわけがない。 「なにが目的か知らないけど、うちにはお金なんてないから」 もらった名刺を適当に置く。 「えー、

2021-05-17 20:59:56
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 何か勘違いされてますね。私が興味あるのは、あくまで"寿司"です。あなたじゃないです」 イラッ。こいつ、イケメン眼鏡じゃなかったら殴ってる。眼鏡が可哀想だから堪えてやったんだぞ。 「私、今度会社をやめてお寿司屋やろうと思って、そしたら、会場でお寿司の匂いがしたので、これも縁と思って

2021-05-17 21:06:45
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 買ってみたらこれが貴女、最高級品じゃないですか!」 寿司のニオイ?そんなもん、あるか。あれか、この男の嗅覚は犬並みなのか?そんな疑問をよそに、男はぱくぱくと寿司を食べている。あんなに会場に食べたはずなのに、エビの寿司ばかりを。 「はぁ。そうですか」 適当に返事をし、大将にオススメを

2021-05-17 21:13:49
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 きくと、やっぱり初物と初鰹のタタキを握ったものが出てきた。 秋の戻りと違って、脂肪が少なく、さっぱりした味わいは、酢飯との相性バツグンで、少し汗ばむこの時期にはピッタリだ。 そして、食べ比べとばかりに、赤身の握り。初物とはいえ、炙らずに握った身は、噛む度にねっとりと旨味蛾溢れてくる

2021-05-17 22:51:46
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「食べてばかりいないで僕の話、聞いてくれないかなー?」 隣から若干尖った声が聞こえてそちらへ目を向ける。そこでは執事(仮)が不満げにエビのお寿司を口に放り込んでいた。 「僕のおかげで完売だったんでしょ?お礼くらいあっていいと思うんだけど」 それはそうだが、なんか言いたくない。特に、

2021-05-17 23:02:56
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 寿司だけ売れて、大量に廃棄された本を見たあとでは。それでも、社交辞令ぐらいはしてやってもいい。……眼鏡に。 「どうも、ありがとうございました」 「いえいえ、どういたしまして」 満足気に微笑んではいるが、向こうもそこまで気にはしてないようだ。 「大将、エビ追加。桶で」 なんだその注文。

2021-05-17 23:29:04
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi こいつは寿司が好きなんじゃなくて、エビが好きなんじゃないか。エビの食べ過ぎで痛風になるがいい。なんて願った私は性格が悪いが、仕方ない。 「ああ。読んだよ、『エビ』」 関わらずにおこうと決めたくせに、その言葉で食いついた。まさか、読んでくれた人がいるなんて思わなかった。

2021-05-17 23:45:56
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 そういえば、コレは『エビ』を買ったお客様第一号だった。 「そ、そう」 ーーどうだった? 続く言葉は、口から出ることはなかった。 とてもじゃないけど、聞けない。読む前とはいえ、あれだけ廃棄された本を見ては、聞く勇気など出てこない。ただ、買って読んでくれただけでいい。そう思っていたのに、

2021-05-18 20:02:46
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 彼はさらに続ける。 「まあ……。なんというか、クソだったな、あれは」 びくんと身体が大きく震えて固まった。あれが称賛されるような最高傑作ではないのはわかっている。でも、作者を前にして酷くない? 「あれなら寿司のおまけがないと売れないな。しかもプロデュースを間違ってそれでも売れないと

2021-05-18 20:28:19
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 なると、絶望だな。大将の寿司と、俺の宣伝能力に感謝しとけよ」 ーー否定は出来ない。少なくとも、完売したのは、コイツの呼び込みのおかげだ。でも、あんまりだ。 「では、どこが悪かったんですかねぇ?」 若干苛ついた風で旦那が聞き返す。 いい、これ以上傷口に塩を塗らないで!

2021-05-18 20:35:19
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「どこが?全部に決まってんだろーが」 しかし彼は旦那の怒号に萎縮するどころか、高圧的に薄っすらと笑った。 「それもわかんねーのなら、物書きとかやめろ」 「てめぇ!」 旦那がカウンターを叩き、勢いよく立ち上がる。 「……めて」 「表出ろや!ハルカがどれだけ頑張って、あれを書いたか知らねぇ

2021-05-18 20:42:46
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 だろ!俺は小説とか正直分かんねぇよ!でもな、頑張ってる奴を否定するような奴は我慢ならねぇ!」 「それはけっこうですが、そんな甘い言葉だけで」 「やめて!」 ヒートアップしていく二人に耐え兼ね、ついに大きな声が出る。何事かと、奥にいた大将が一瞬顔をのぞかせ、すぐに戻った。そして、静寂

2021-05-19 07:29:16
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi が訪れる。 「わかってるよ、あれが感情だけで突っ走ったつまんないものだって。だからみんな、読みもしないで捨てたんだって。わかってる、から……」 書いているときは楽しかった、でも冷静になれば嫌でもわかる。 「あの本は確かにクソだ。でも読まずに捨てるやつはもっとクソだ。万死に値する」

2021-05-19 07:45:59
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 「あぁ!?」 旦那が機嫌悪そうにうなる。普段温厚な姿からは想像もつかない。いつも何も言わないけど、こういう時に、思われてるんだと再認識できる。 「読んで面白いかどうかは、当人が決めることだ。作品としてクソだろうが、面白いと思うやつは思うし、世間的な名作でも、クソだと思うやつもいる。

2021-05-19 23:35:54
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 判断は人それぞれだ。しかし1ページも読まないでなにがわかる?作者に敬意を払わず、開きもしないで捨てるやつはクソ中のクソ、キングオブクソだ」 これはかばってくれているの……かな? 「それでも僕にとってはクソだったがな」 せっかくちょっと嬉しくなったのに、結局はとどめを刺してくる。でも

2021-05-19 23:43:18
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 悪い人ではないのかもしれない。「ま、僕には関係ない話だが」 言い終わると、また黙々とエビを食べ始めた。 「おや、終わっちまいましたか?」 ふと顔をあげれば、奥に戻っていた大将が大きな舟盛りを持って現れた。 「旨いもの食べれば冷静になるかと思って作ってきやしたが、無駄になっちまったかな

2021-05-20 18:02:42
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「あ、ありがとうございます!」 旦那を促し、舟盛りに箸をつける。 「なーんだ、エビがないなら僕はいらないね」 またポイッと執事(仮)がエビの寿司を口へ入れる。やっぱりこいつはタダのエビ狂いだ。あの本がクソだなんだ言ったのも、タイトルのわりにエビの割合が少なかったからじゃなかという疑惑

2021-05-20 19:48:59
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 すらある。 「あちゃー、ソイツは手厳しいね。そしたら、コイツはどうだい?」 大袈裟に大将が頭を叩くと、小さな箱を取り出した。 「にゃごみ名義で、ハルさんに差し入れよう。シロネコカスガの特急便で今朝届いたけど、中身はえびせんって書いてあるぜ」 みれば、えびせんには不釣合な桐箱だ。

2021-05-21 18:13:36
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi いや、どうしてあいつがここを知っている?まったくもって謎だ。 「食べる!」 私への差し入れだというのに、執事(仮)は勝手に箱を開けて中身を食べはじめた。 桐箱のえびせんってなんかあいつから聞いた気が……。 「アーッ!」 「でかい声を出すな」 執事(仮)は不満そうだが、そりゃ出るって。だって

2021-05-21 19:14:54
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 私への差し入れなんだから!だいたい、お前はエビを食べすぎなのだ。私だってエビをアイコンにするぐらいにはエビ好きなのだ。 これは私が食う! ハイエナの如き睨みで執事(仮)を威嚇すると、いそいそと桐箱の封を切った。 出てきたのは車海老の姿が丸々残った素揚げのようなもの。 えびせんなのか?

2021-05-21 19:24:10
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi これが。 「一個だけだぞ」 執事(仮)は渋々といった感じだが、何度もいうけどそれは私への差し入れだが? 少しえびせんを見つめたあと、ぱくっと一口。瞬間、目をカッ!と思いっきり見開いていた。 「こ、これは……!」 美味しい。エビの旨味をぎゅっと濃縮し、さらに殻のサクサク感があとを引く。

2021-05-21 20:04:46
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 そして、もう一噛みすると、さらにエビの旨味が溢れてくる。それこそ、無限に溢れてくるかのよう。旨味が消えるのは、それこそ全て飲み込んでいたとき。 私だって、ちょっとお高いエビせんべいぐらい食べたことあるが、これはその比じゃない。 エビせんべいという存在を超えた存在。

2021-05-22 21:37:26
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「お前もこれくらいの作品を書け」 ふと気づくと、箱の中身はほとんどなくなっていた。執事(仮)がひとりで貪り食っている。 「ちょっと!それ、私の!」 「なにを言う。これは僕が僕のために……」 そこまで言って彼が、しまったといった顔をした。 「僕のためになんなのよ?」 その隙に箱ごとダッシュ

2021-05-22 21:44:16
和美 @777nagomi

@kiriutiharuka03 して逃げようとした執事(仮)を、飼わさせていただいてるウサギとの格闘で鍛えた俊敏性を発揮して捕まえる。ここにきて逃しはしない。 「空き放題言いまくったんだから、今度はこっちのばんよ?」 若干ドスの聞いた声。隣で旦那が震え上がっているが、知ったこっちゃない。

2021-05-23 09:23:36
霧内杳/眼鏡のさきっぽ@文フリ福岡う31・32 @kiriutiharuka03

@777nagomi 「で?さっき言いかけたのはなに?」 こんな状況だというのに執事(仮)はへらへら笑っていた。 「てか、まだ僕の正体に気づかないのかい、ハルカ?」 正体?私の知り合いにこんなエビ狂いの変態なんて……。ん?ちょっと待て。そういえば私がお寿司の本を出すといったとき、タイトルはエビ以外認めない

2021-05-23 18:56:41

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