@kiriutiharuka03 と言っていた奴がいた。そいつに悪乗りして、猫のアイツが『じゃあ、おそらく世界初の本にエビの寿司オマケでつけたれー』発言に繋がっているのだ。 「……まさか明(あきら)か」 すでに答えは出てるならば、聞くまでもないが、一応確認はする。ただし、お客様対応などもうしない。
2021-05-23 21:08:09@777nagomi 「せいかーい」 よくできましたとばかりに執事(仮)もとい明が笑う。 「ここまで気づかれないとは思わなかったね」 彼は意外そうだが、気づけという方が無理だろう。私の中で2大変人の片方だ。いつもおちゃらけていて、たぶん男性だろうということ以外、なにひとつわからない人間なのだから。
2021-05-23 21:21:54@kiriutiharuka03 そういえば、有名企業のCEO辞めて寿司屋開くとか言ってたぞ。変人中の変人だ。 「あ、ちなみにこのエビせんは、私から連絡して取り寄せたやつだから。ハルはあとでお代払ってよね」 ゲェッ、サラリとお代とか言いやがった。変人なうえに人出なしだ。 明らかに嫌そうな顔をすると、いきなり耳元に顔を寄
2021-05-24 13:38:40@777nagomi せてきた。 「おいくらですか?」 「うっ」 囁かれて、固まる。顔を離した明が、ニヤリと笑った。言った、言ったよ確かに!あまりに理想の男が現れたもんだから!いまにしてみれば公開しかないけど。 「だからそれね」 ちょい、と明の指がえびせんの箱を指す。 「で、いくらなのよ……?」 渋々、財布
2021-05-24 19:49:51@kiriutiharuka03 を取り出す。ある程度入ってはいるが、書籍のお代は寿司に消えるので、使えるお金はあまり多くない。 「箱で30000円+送料」 ニヤリと笑いながら囁かれる。 そして、予想外の金額が頭の中で何回もこだまする。 しかも、そのたびにハンマで頭を叩かれるかのよう。
2021-05-25 11:19:34@777nagomi は?たかがえびせんですよね? 「最高級品だからな」 なぜか得意げな明の手が、最後のひとつにかかる。 「ちょっと待てー!」 「なんだ、うるさいな。私のものを私が食べてなにが悪い?」 無常にも袋が破られ、高級えびせんは明の口の中へ消えていった。 「てか、ほとんどあんたが食べたのに、なぜ私が
2021-05-25 20:24:23@kiriutiharuka03 代金払わないといけないんじゃ!」 あまり褒められた行動ではないが、人差し指を明の顔に向けてビシッと指し示す。 すると、明は鼻先で笑い、私の人差し指を掴むと、無理矢理そらし、挑むかのような生意気な目で見てくる。 「食べたよな?」 ーーうっ。確かに食べた。二枚ほど。 私が二の句を継げずに
2021-05-26 10:55:39@777nagomi いたら、明が私の目の前に手を出した。 「ほら、払えよ?2万円」 財布の中には千円札が2枚。どう考えても足りない。それにやはり、奴がほとんど食べたのに私に払えとは納得がいかない。 「2枚分だけ……」 明の手になけなしのお札をのせる私の手は屈辱でぶるぶると震えていた。 「全部に決まってるだろ
2021-05-26 20:10:36@kiriutiharuka03 それとも、食い逃げか?」 これ以上ないほどの悪役顔。助けを求めて旦那をみれば、ついさっきまでの男気は何処へやら。お金の話が出たあたりから知らないフリをしている。 ーーやつはあとでシメる。 「ほらほらどうした。払えないなら、ハルの大切なメガネでも代わりにもらってやろうか?」 う、それは
2021-05-27 11:43:38@777nagomi 困る。これがなくなったら私の存在意義が……もとい、なにも見えなくなる。 「だいたい、ほとんど食べたのそっちじゃん。私、奢るとか言ってないし」 開き直りだとは思う。でも大企業のCEOの癖に、一般庶民から金を毟り取ろうなんてセコ過ぎない? 「は?そんなの関係あるか。これはハルカ宛に送られて
2021-05-27 17:25:07@kiriutiharuka03 来たものじゃなく、あくまで私あてにきたものだし」 そして、当然のように返される。 「ま、どうしてもって言うなら、チャンスをあげる」 え、チャンスとな?一瞬、期待を込めた目をしてしまったのは、私最大の過ちだった。 「今度うちの会社でCM作るんだけど、そのシナリオを公募するの。それに応募
2021-05-28 02:38:34@777nagomi しろ」 「……は?」 なにを言っているのだ、コイツは。散々、私の作品はクソだとかいっておいて、CMのシナリオに応募しろと?だいたい、シナリオは私の専門外だ。 「賞金は30万。このえびせん代を払っても優におつりがくる」 「30万……」 ごくりと喉が鳴った。それだけあれば次の同人誌、いや東京遠
2021-05-28 02:47:28@kiriutiharuka03 征も可能。 「え、そんなに」 横で旦那がボソリと呟き、何か皮算用を始めたっぽい。とりあえず、選ばれたとしてもお前の金じゃない。 「ただし、あくまで選ばれたらの話。落選すれば、本来は今日支払わないといけない代金に延滞金つけた額払ってもらう」 えんたい、きんだと?いくら、取る気だコイツ。
2021-05-28 02:52:02@777nagomi 「そーだな……30万」 「はぁっ!?」 思わず襟元を掴みそうになったが、それはかろうじて押しとどめた。 「そんな金、私に払えると思ってんの!?」 私は専業主婦という名のニート、旦那の薄給だけでやっているのは知っているはずなのだ。ちなみに同人誌活動費はあの手この手で作品を売って稼いでいる。
2021-05-28 02:58:28