2022年6月~、Twitterに投稿した(約)140字小説をまとめました。
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 組織の長なら一度は「こいつ俺の右腕」とか言ってみたい。なんせ猫の手も借りたいほど毎日忙しいのだ。そんな「右腕」を派遣するサービスがあると聞き、さっそく依頼してみた。 「本日よりこちらに配属されました」 礼儀正しく挨拶に来たのは、キュートな茶トラの前足「そのもの」だった。 pic.twitter.com/jYb89j6Khz

2022-08-22 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #俳句の日 仕事で疲れた時は、路地裏にぽつんと佇む自販機に立ち寄る。なぜか週替りで有名な俳句が貼ってある自販機。管理者の趣味だろうか。やけに達筆である。誰にも見られていなくても、白いライトに照らされたそれを見ていると、不思議と心が落ち着いた。 ――そこのけそこのけ私が通る。 pic.twitter.com/f7nMp6cjU7

2022-08-19 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #世界猫の日 #妖怪の日 その古本屋の看板猫は、一説によると化け猫である。夜な夜な店主の目を盗んでは、月明かりの下、書物に読みふけっているらしい。先日も、店の坊やが深夜手洗いに起きたところ、店先で電気ブランをチビチビやりながら、宿題の作文に朱を入れる猫の姿があったという。 pic.twitter.com/i4v5cu6Xy8

2022-08-08 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #ハンバーガーの日 海辺のバーガーショップは夜が更けても繁盛していた。亡き妻が「カノジョ」だった頃、よく通った店。 「深夜のハンバーガーって背徳感あるよね」と、在りし日の彼女が笑う。 「再婚おめでとう」 幻聴を聞き流して思い出の味を頬張る。ここに来るのも、これが最後だろう。 pic.twitter.com/5B4ddfkjQ7

2022-07-20 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #海の日 悪の戦闘員の夏は暑い。 黒い隊服に、至近距離で浴びる爆風。「水着回」なんかに当たった日には、砂浜の照り返しで目まで痛い。さらに下手すりゃ、敵の新アイテム披露で週跨ぎコースだ。 「このまま泳いで足抜けしようかな……」 とりあえず女性幹部の水着姿を拝んでから決めよう。 pic.twitter.com/Z7d5wNAVhY

2022-07-18 08:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #ジェットコースターの日 子どもの頃、よく母と遊園地へ行った。 ジェットコースターが好きな僕は、何度も乗りたがり、それに付き合う母も、僕以上に笑ってはしゃいでいたのをよく覚えている。 実家にて、そんな思い出話をすると、母は苦笑いした。 「お母さん、ホントは絶叫系苦手なのよ」 pic.twitter.com/c1SRUvDCb1

2022-07-09 08:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #郵便番号記念日 生まれて初めてファンレターを書いた。 アイドルなんてどれも同じだと思っていたが、どんなにステージの端にいてもあの子を目で追ってしまう。なるほど、これが「推し」か。 手紙を投函し、ふと見上げる。 巨大な街頭モニターの中でデビューしたばかりの孫娘が踊っていた。 pic.twitter.com/QXQ6n5LsLP

2022-07-01 08:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #パフェの日 きょうは、ぼくの大好きないとこのお姉さんが来る日。 遊園地のカフェで、お姉さんは大きなパフェを注文してくれた。 「一年生になったら、一緒に食べようって言ってたもんね」と、笑うお姉さんの左手には光るゆびわ。 あこがれていたパフェは、ちょっぴりしょっぱい味がした。 pic.twitter.com/652xyPum6x

2022-06-28 08:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #UFOの日 地球外生命体との交流が進んで早数年。今日はX星の取引先との接待ゴルフだ。地球では古臭いやり方だが、宇宙人は珍しがるだろう。 出迎えに待っていると、なんとアダムスキー型円盤が現れた。 「我々の星では、誰も乗ってない旧型ですが。地球人はこういうのがお好きでしょう?」 pic.twitter.com/oJkDT6Ci5m

2022-06-24 08:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #かにの日 「タカアシガニって怪獣みたいでかっこいいよな」 「定番モチーフだよな。地域によっては食えるらしいが」 マジか、と色めき立つ友の頭上を巨大ハサミがなぎ払う。 「アイツも食えるかな」 「倒したら食ってみるか」 嘯きながら、俺たちは戦闘ロボに乗りこむ。これが最後の戦い。 pic.twitter.com/zHxevs7S9Y

2022-06-22 07:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #和菓子の日 大福、おせんべい、こんぺいとう。 色とりどりのお菓子が、掌に乗せられた。 「若者の和菓子離れなんていうけど、レイちゃんは気持ちよく食べてくれて嬉しいわあ」 最近、孫が相手してくれなくて、と嘆くご婦人方に囲まれて談笑する。 本当は、私が一番年上なんだけど。 pic.twitter.com/jt9c880JAB

2022-06-16 07:04:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 #傘の日 「ビニール傘って、よく盗まれるからさあ。目印の代わりにおフダを貼ってたんだよね。持ち主以外が勝手にはがすと、悪夢を見るって評判らしいけど、ホントかな?」 「……どうだろうね」 肩をすくめる親友の目の下には、くっきりと目立つクマが鎮座していた。 pic.twitter.com/mwf8JWzijs

2022-06-11 07:04:00
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