2022年6月~、Twitterに投稿した(約)140字小説をまとめました。
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絢李(じゅんり) @junri3106

『あぶないホーリーナイト』

2023-11-29 23:39:14
絢李(じゅんり) @junri3106

白い雪がイルミネーションに反射する。ホワイトクリスマスにはまだ早い繁華街。 「ロマンチックな光景ですね」 「どうせなら素敵な恋人と見たかったな」 「僕じゃダメですか」 「ダメでしょ」 私の返答に彼が苦笑する。 「大丈夫。本番には帰してあげますよ」 そう言って、立てこもり犯は銃を構えた。 x.com/HOJO_Kai/statu…

2023-11-29 23:39:12
【140字小説】方丈 海@書籍発売中 @HOJO_Kai

★お知らせ★ 「# 140字小説 2」の発売を記念し、ワニブックスさんから「第2回 140字小説方丈杯」を開催していただくことになりました✨ 【応募方法】 このポストの引用コメントにて140字小説作品を記載 【締切】 11/30(木) 詳細は添付画像の2枚目をご参照ください😊 ご応募 お待ちしております!

2023-10-21 16:22:11
絢李(じゅんり) @junri3106

音楽教師を定年退職して数年。最近、家に妙な客人が住みついた。なんと歌が下手な人魚だ。教えを請われ、時々、歌のレッスンをしている。 ある日、買い出し中、忘れ物に気づき、家に戻ると美しい歌声が聴こえた。 驚く私に気がついた人魚は、はにかんで舌を出す。 「私ね。年下の男の子がタイプなの」 x.com/HOJO_Kai/statu…

2023-11-29 23:38:31
絢李(じゅんり) @junri3106

今夜は研究室に泊まりこみ。 寝袋を準備し寝転がると、突如、枕元に着物の美女が現れた。 「もし、あなた。寝るなら反対側を向いてくださらない? 私の寝顔を見られたくないのよ」 顔を赤らめる謎の女に、そういうもんかと首をひねりつつ寝返りを打つ。 そういや、ここの骨格標本は「女性」だったな。 x.com/HOJO_Kai/statu…

2023-11-29 23:30:32
絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 今日は朝から、やけにボーダーの服を着ている人が多いと思っていた。道行く人もボーダー。職場の人もみんなボーダー。めずらしいこともあるもんだと、ふと気がつけば、給湯器もボーダー。オフィスもボーダー。空までボーダーだった。そんな馬鹿な。 「そのVRゴーグル壊れてない?」「あ」 pic.twitter.com/aztNuDCgSA

2022-11-30 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 肌寒い朝。季節はとうに変わったというのに、しまい忘れた扇風機のほこりを拭く。そういえば、「羽のある扇風機は家にない」とおもしろがって、夏場よく遊びに来ていた子の顔をしばらく見ていない。あの調子じゃ、たぶんコタツも知らないだろう。もう少し寒くなったら誘ってみようか。 pic.twitter.com/erffWlqkQT

2022-11-28 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 「なんかここ数年、俺たちハードワーカー気味だよな」 「異常気象だからね」 「どこかパーッと遊びに行きたい」 「でも、僕らが外に出ると、結局仕事みたいになるよ」 「じゃあ、ゲームの世界は?」 ……ということで、最近の風神雷神は夜な夜な、仮想空間に嵐を巻き起こしているそうな。 pic.twitter.com/ljvOGYcJ3H

2022-11-24 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 「あそこの美術館、超ブラックだって聞いたけど」 「うん」 「パワハラが横行してるとか給料安いとか?」 「いや、展示品が黒い」 「えっ」 「今は水墨画特集やってて、その前は鉄器。宝石のオニキスや黒真珠も所蔵してるし、あっ、最近、黒猫が庭に出入りしてるらしいよ」 「超ブラック」 pic.twitter.com/ENPdYDyjrg

2022-11-22 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 その地域では、熊は神の使いとして大切にされている。しかし、人々の生活を守るため、時には熊を退治しなければならない。そんな時、退治された熊に白無垢を着せて祀るのが地域の風習であった。再び神のもとに還れるように。 「それが、この巨大白無垢の正体?」 「いや、ただの想像だよ」 pic.twitter.com/Je1L8fPHKV

2022-11-18 08:15:00
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#140字小説 「こら、タカシ。おばあちゃん家に来てまでゲームばっかするんじゃないの」 「まあ、いいじゃない。あらタカシちゃん。かっこいいドラゴンさんだねえ」 「うん。超レア」 「それ終わったら、おばあちゃんとも遊んでくれる?」 「やだよ。おばあちゃん、全国チャンピオンじゃん。つよすぎ」 pic.twitter.com/VWKei3Cp9R

2022-11-17 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 久々の実家ぐらし。俺の実家は、鬼ヶ島の隅にあるのだが、鬼たちは基本的に気のいい奴らだ。ただ人間の常識が通じないのが、たまに困る。 先日も「可愛かったから」という理由で、隣村の娘さんを攫ってきてしまい、ウチの母ちゃんにこっぴどく叱られていた。母ちゃんは鬼よりもっと怖い。 pic.twitter.com/8ErYFKeTYS

2022-11-16 08:15:00
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#140字小説 ロクに地図にも乗ってないような秘境の町。ここにエイリアンの収容所があると、マニアの間で噂されていた。 「収容所だなんてそんな物騒なもんじゃないのにねえ」 「ピピポピパポ」 その宿泊施設が、町唯一のデイサービスセンターを兼ねていることは、住民たちにもあまり知られていない。 pic.twitter.com/qzaItYrhlG

2022-11-10 08:15:00
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#140字小説 「さあ、はじまりました。第108回『お守り選手権』」 「エントリーNo.1、部活の後輩が作ったマスコット」 「青春の甘酸っぱさが感じられます」 「2番、母さんが夜なべして編んだ手袋」 「まさに母の愛。これはつよい」 「3番、右目が見守りカメラになったテディベア」 「これ、呪物では?」 pic.twitter.com/v2969vPZyk

2022-11-09 08:15:00
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#140字小説 知らない土地を一人歩く。観光地から少し離れた、昔ながらの商店街。おそらく夏の商品だったであろう、涼し気なラベルの地酒を買いこんで、ホテルに戻った。 「まあ、こういうのも悪くなかったけどな」 窓から見える国道のネオンを肴に独り言つ。 出張から帰ったら、退職願を書こうと思う。 pic.twitter.com/Bt08XVO9bO

2022-11-08 08:15:00
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#140字小説 村の外れに小さなバス停があった。時刻表もボロボロで読み解くのも困難であった。 最近村に越してきた男が、その時刻表が暗号だと気づいた。巨額の金が取引されることを確信した男は、深夜のバス停に張りついたが、誰も来なかった。 男が暗号だと思ったものは、まったく偶然の産物だった。 pic.twitter.com/4FjAaYHrxY

2022-11-07 08:15:00
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#140字小説 その古代遺跡は謎に包まれていた。 考古学者、遺跡マニア、お宝ハンター。多くの人間が調査を行ったが、それが何のために作られたかわからないまま何百年も過ぎた。 ある日、ついに最奥の秘密の部屋にたどり着いた学者がいた。扉を開けると中には高層ビルが立ち並ぶ大都会が広がっていた。 pic.twitter.com/XwDGODhwOG

2022-11-04 08:15:00
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#140字小説 健全な精神と健全な肉体を併せ持つ者の体内に宿る、特殊物質が発見された。これを応用すれば、健康長寿、あるいは世界平和も可能かもと、研究者たちはこぞって実験を始めたが、その物質は健全な精神と肉体を離れた途端、化学反応を起こし劣化してしまうので、研究はなかなか進まなかった。 pic.twitter.com/QVT81YkcHS

2022-11-02 08:15:00
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#140字小説 アンドロイドにも、人間でいう健康診断が義務付けられた時代。 「アンドロイドの健診ってなにするの」 「人間と似たようなもんですよ。視覚や聴覚が正常に働いてるかとか、内部基盤に異常がないかとか」 「なるほど」 「あと、身長体重もはかります」 「それは、さほど変化がないのでは?」 pic.twitter.com/QjNQOBeAoT

2022-10-28 08:15:00
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#140字小説 親友からの手紙を缶に入れて土に埋めた。本当は燃やしたほうがいいのだろうが、彼女が書いたものをどうしても残したかった。 今頃、彼女は過去をすべて捨てて、地球の裏側にいる。彼女を閉じこめていた狭い世界の人たちには、けしてたどり着けない場所に。落ち着いたら会いに行ってみよう。 pic.twitter.com/KpNQkEPT7K

2022-10-25 08:15:00
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#140字小説 「むかえにきて」と彼氏からメール。 ため息をつき、深夜の国道をトラックで走る。私だって、明日早いのに。でも、迎えに行かないという選択はできない。このために大型免許も取った。満月が煌々と夜道を照らす。 「なんで変身する前に呼ばないの!」 「がうがう」 私の恋人は狼男だった。 pic.twitter.com/rQjZu0CXAG

2022-10-24 08:15:00
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#140字小説 20XX年、ペット型ロボットの不法投棄が問題となっていた。 「ねー、飼ってもいいでしょう?」 「あのねえ。ロボットとは言え、一度飼ったら最後まで面倒見なきゃいけないの」 いつの時代も変わらない親子の会話。その捨て犬ロボの中に、国家機密が埋められていることは、まだ誰も知らない。 pic.twitter.com/bLVflZFyso

2022-10-21 08:15:00
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#140字小説 人間の言葉には「来年の事を言えば鬼が笑う」とあるが、地獄の鬼だって先々の仕事に苛まれる日もある。 「新しい釜の製作ですが原料が不足してまして……すこし納期伸びませんか」 「無理ならよそに頼みますので」 「鬼ですか」 「鬼です」 ああ、死してなお追われる〈デッドライン〉よ。 pic.twitter.com/NA7vbf9vGi

2022-10-17 08:15:00
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#140字小説 「高橋さんって可愛いよな。お前、同じ部活だっけ?」 「まあな」 「どんな子?」 「そうだな……。気配り上手だけど、メールの誤字脱字がひどかったり」 「うんうん」 「買い出しに行くと詰め放題系がやたら上手かったり。あと、会うといつも飴くれる」 「……なんか、お母さん感あるな」 pic.twitter.com/0E13ehrYcc

2022-10-14 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 分け入っても分け入っても、虫と鳥のざわめきしか聞こえない山の奥に、その文具店はあった。 「ここでしか見えない色があるんです」 店主が指差す湖に反射する空が、青・灰色・桃色・橙と次々に表情を変える。 その色を閉じこめたインク瓶が、棚に並ぶのを見て、私は「ほお」と息をついた。 pic.twitter.com/DzMOI5ixy0

2022-10-13 08:15:00
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#140字小説 「なあ、今日の社食の日替わりメニューなんだっけ?」 「確か、エスカルゴ」 「エスカルゴ!?」 「昨日は、トナカイ肉の煮込みだったな」 「ザリガニのワイン蒸しが出たこともあったぞ」 「カエルの唐揚げは意外といけた」 「……なんで社食だけグローバルなんだろ。超ローカル企業なのに」 pic.twitter.com/0m5dqxF3vp

2022-10-12 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 狐火とは、火の気のない場所に怪火が出る現象。人を追いかけたり、道を迷わせたりするという。 「その狐火が引きこもってちゃ意味ないだろ」 「ご主人こそ買い物行きなさいよ。カップ麺何日目ですか」 夜道が明るくて当然の時代。超インドア派の狐と狐火は、人間社会に溶け込みすぎていた。 pic.twitter.com/PjN5zv4416

2022-10-11 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 「ねえ、そこの君。僕と遊ばない?」 すわナンパかと睨みつけるとパンダがいた。本物じゃない。昔の遊園地の隅にあるような100円入れて動くやつ。 「君の行きたいとこに連れてってあげるよ」 その言葉に思わず乗ったのは、疲れていたのだと思う。 「じゃあ、クソ上司の不正現場押さえに」 pic.twitter.com/HfEuGJEeoL

2022-10-06 08:15:00
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#140字小説 世の中には、そっくりな人が3人いるというが、そのドッペルゲンガーを遠隔操作できるとしたらどうだろう。こうやって自分が仕事をしている間に、推しのライブへ応援に行ってもらうこともできる。便利な能力を身に着けたぞ、と帰路について気がついた。操作されていたのは自分ではないか。 pic.twitter.com/GOAlDG27sM

2022-10-05 08:15:00
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#140字小説 ゆうくんのポケットには、たくさんのものが暮らしている。ハンカチさん、ティッシュくん、どんぐりさん、ブロックくん。ゆうくんがお家に着くと、ハンカチさんは洗濯かごへ、どんぐりさんは棚の上へ、ブロックくんは玩具箱へと帰っていく。 「またポケットのティッシュ出し忘れたでしょ!」 pic.twitter.com/tmXitLb4Jy

2022-10-03 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 「こちらのテーブルクロスはシンプルな柄で料理が映えると大変人気でして」「ほお」「さらにAI機能搭載で料理の味を辛口評価」「ん?」「裏返すと、鳥居と五十音表が書いてありコックリさん仕放題」「余計な機能ですね」「たまにAIとコックリさんがテーブルクロス引き対決を」「なんで!?」 pic.twitter.com/P6jKHxXe5f

2022-09-30 08:15:00
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#140字小説 それは螺鈿の美しい万年筆であった。 「こんな美しいペンを一本くらい手元に置いておきたいものですな」 「前の持ち主いわく、それは『寄生する万年筆』だそうですよ」 そんな馬鹿な、と買い求めて一年後。私の手元には、大量の万年筆とインク瓶があった。 「なるほど。殖えるタイプか」 pic.twitter.com/XANtvuiAk6

2022-09-28 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 1日ごとに記憶がリセットされる息子にケーキを買う。 「今日は、なにかのお祝いなの?」 「そうだねえ」 「あ、ぼくの誕生日!」 1年前の誕生日に記憶喪失になった彼にとっては、毎日がパーティーだ。いつか回復することを願って、1本ずつロウソクを立てる。生まれてきてくれてありがとう。 pic.twitter.com/zbBVjaEWRN

2022-09-27 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 18時の鐘が鳴る。子どもたちが手を振って駆けていった。大人たちもチラホラ帰路につく。空にはレンズの付いたドローンが、光を放ち、飛び回っていた。18時の鐘が鳴り終わる。ドローンはレンズの蓋を閉め、どこかに飛び去っていった。すると町も人も消え、あとには白い空間だけが残された。 pic.twitter.com/56MzWqBfF8

2022-09-26 08:15:00
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#140字小説 この土地で諜報活動をするなら、釣りは最大のコミュニケーションツールだ。しかし、スパイはまったくの釣り初心者だった。これはまずいと何度か夜釣りで練習するうち、親切な旅人がノウハウを教えてくれ、スパイはめきめきと釣りの腕を上げた。情報収集の結果、旅人は密漁者だとわかった。 pic.twitter.com/2kSwaIxMQP

2022-09-22 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 結婚式場に強盗に入るとか、どういう了見なんだろう。ドレス姿で手錠をかけられるなんてついてない。 「あのー」「なんだ」「悪いことする時は、標的の素性を確認したほうが」 ガチャン。屈強な参列客が部屋に踏み込むのと、同時に人質の手錠が外れた。 新婦は鍵屋、新郎は警察官であった。 pic.twitter.com/jaW9JLzBX0

2022-09-21 08:15:00
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#140字小説 毒リンゴを食べたのは七人の小人の一人であった。薄れゆく意識の中で彼は満足げに微笑む。仲間の機転によりまもなく魔女は罰を受ける。運が良ければ自分も助かるだろう。だが、たとえ命に変えても白雪姫を守れるなら本望だ。何よりこれで証明される。世界で一番美しいのは「私」であると。 pic.twitter.com/er3KWBX3hO

2022-09-19 08:15:00
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#140字小説 「隣町の魔女が、糖質オフダイエット始めたんだけど。映えスイーツの写真を撮りたがるもんだから、残飯処理要員でウチの花子さんが3kg太っちゃって」 「そりゃ迷惑な」 「だから、花子さん、最近、人体模型や二宮金次郎像と一緒に走りこみしてるんだよね」 「七不思議を増やすな」 pic.twitter.com/cLGdfM2yRC

2022-09-16 08:15:00
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#140字小説 「雲の形ひとつで、絵に季節感が出るよな」 「そろそろ、ひつじ雲の季節かな。こんな感じで配置して」 「おい、手抜き丸出しだろ。それ」 「どうせ見る人は気づかないって」 放課後、ふと秋空を見上げて少女はつぶやく。 「今日の雲、なんかコピペっぽくない?」 「ホントだ。全く同じ形」 pic.twitter.com/9PZr3UaJwp

2022-09-15 08:15:00
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#140字小説 太陽に敗れた北風は、旅に出た。焚き火をしている人間がいたので、大きく吹きつけると火は消えてしまった。小さく吹きつけると火は燃え上がった。 「何事もほどほどが良いということだな」 北風は太陽に会いたくなった。だが、近づきすぎると、きっとまた喧嘩になってしまうのだろう。 pic.twitter.com/m8t0TOSpjt

2022-09-14 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 学祭のラストに上がる花火は、結構本格的だ。 楽しい祭りの締め。しかも「一緒に見たカップルは結ばれる」なんてジンクスまでありゃ、学生たちは穴場スポットの取り合いで躍起になる。 おい、だからって人体模型を場所取りに使うんじゃない。お前のカノジョ、ドン引きして逃げていったぞ。 pic.twitter.com/eewbOIFOvM

2022-09-09 08:15:00
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#140字小説 「じゃあ、パパは仕事だけど、ママとおじいちゃんのいうことを、よく聞くんだぞ」 「うん。遊園地、すっごく楽しみ! ヒーローショーも見るんだ!」 そう笑う息子の手には、誕生日にもらった大きなソフビ人形が握られていた。 君のヒーローを輝かせるため、今日パパは最高の悪役を演じる。 pic.twitter.com/VEaNGxVkmd

2022-09-07 08:15:00
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#140字小説 高齢化の波は加速し、老人ホーム専用の宇宙コロニーが作られた。当初は低重力による骨や筋力の低下が懸念されたが、人類はついに、高齢者に適した重力や酸素濃度、筋力トレーニングの開発に成功。移住した老人たちは認知機能が改善され、今では地球に負けない独自の経済大国を築いている。 pic.twitter.com/f16f6ipVur

2022-09-05 08:15:00
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#140字小説 その百貨店は、イマドキ珍しく屋上遊園地が健在であった。家族連れで賑わうそれを、隅のベンチに座って懐かしく見やる。30年ほど前に流行ったキャラクターを模した乗り物に、子どもたちが群がっていた。その中に、見覚えのある顔を見つけ、思わず立ち上がる。あれは幼き日の私ではないか。 pic.twitter.com/TNtFsXqhWb

2022-09-02 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 小学3年生の時、初恋の人が転校した。 当時、クラスではビー玉集めが流行っていて、大きいものや綺麗な色のものは、「小さい玉2個分」など高レートで取引された。 「貸してあげる。次、会った時に返して」 そう言って、私に夕焼け色のビー玉を握らせた彼は、今どこで何をしているだろうか。 pic.twitter.com/eYrV7eI7nE

2022-08-31 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 放送部の日常は裏方業務。学校行事では進行が忙しすぎて、存在を忘れられがちだ。そんな放送部の中に、一際目立たない……否、誰も知らない「幽霊部員」がいる。いつの間にか機材が用意されていたり、なくした原稿がそっと置いてあったり。その部員の姿を見た者には、幸せが訪れるという。 pic.twitter.com/73NQuvtGUH

2022-08-30 08:15:00
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#140字小説 乙姫は悩んでいた。なんど時を繰り返しても、浦島は陸に戻り、老いてしまう。しかし、龍宮と陸の、時の理は変えられない。 ならば、と乙姫は自身が陸の生活に適応できるよう、体を鍛えた。浜に上がると子どもが亀をいじめていたので自慢の筋肉でこれを諌めた。浦島太郎の出番はなくなった。 pic.twitter.com/w7mbJjVq0P

2022-08-29 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 その商店街の時計は、すべて10分遅れている。チャイムの回数もずれている。駄菓子屋の看板婆さんは双子で、いつも交代で店番をしていた。氷屋ではドライアイスがよく売れる。因みに肉屋には謎の地下通路があるという。 「みんなでアリバイ工作でもしてるんですか」 「さあ、どうだろうね」 pic.twitter.com/rQT8IpEzPt

2022-08-26 08:15:00
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絢李(じゅんり) @junri3106

#140字小説 田舎町の小さな弁当屋に突然テレビの取材が入った。SNSで話題になったらしい。店主は朝から大量の弁当を作って大忙し。「これ美味しい」と自慢の唐揚げをにこやかに頬張るタレントに、ついにウチもここまで来たかと涙をぬぐうと、滅多に鳴らない電話がけたたましい音を立て、目が覚めた。 pic.twitter.com/UJIFDLuSnR

2022-08-23 08:15:00
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