村田蔵六 新政府出仕編（江戸赴任期）

シービー @MrCB_Harukaze

軍務官判事（江戸在勤）村田蔵六は、大監察史三条実美を通して京の岩倉具視に兵力不足と増援を訴えた。「いずれ大挙して奥羽一掃これなくては百端の害を生じ候事目前に迫り候。大村益次郎より軍防局へ申し入れるべく候」と2000の精兵とちゃっかり金2000も申し入れている。

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江戸は彰義隊の抵抗が盛んで、江戸庶民が新政府よりも彰義隊を頼むような雰囲気も生じ、蔵六は「上野彰義隊盛んなるの祭は府内の人心彰義隊を頼み鎮撫府の名を用いず政体瓦解せり」と参与会計由利公正に手紙を送っている。蔵六は、対策として慶応4年5月5日、『江城日誌』と云う官判新聞を発行する。

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新政府の公式意見を伝えて人心の鎮静を図るのが大きな目的であった。徳川家の沙汰や彰義隊討伐の理由などが書かれていた。新政府は混乱を招かないよう、当初は彰義隊とは話し合いで解決しようとした。5月3日、大総督有栖川宮熾仁親王は彰義隊がかつぐ輪王寺宮に登城を求めたが、病気を理由に断ってきた

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また、相変わらず彰義隊による市中での官軍襲撃が続けられていた。蔵六は武力討伐よりほかないと当初から考えていたが、兵と軍資金不足により行動に移せずにいた。

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蔵六は戦費に20万両必要と計算し、横浜裁判所判事寺島宗則（薩摩藩）に横浜の外国商人からの資金援助を頼んだが、応じる者はいなかった。そこに、朗報が届く。5月6日、参与外国事務局判事大隈重信が江戸に到着する。

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外国事務局判事大隈重信（佐賀藩）が江戸に来たのは、旧幕府が米国に注文していた、当時の最新鋭軍艦ストーンウォール（甲鉄）号を新政府に接収するのが目的であった。そのための資金として大阪で25万両を商人から脅迫もとい工面して持参していた。

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大隈は慶応4年5月7日に江戸城に登城し、軍務官判事村田蔵六（すでに大村益次郎に改名していますが、基本的に村田蔵六と呼びます）と面会する。そして、大総督府の弱腰を糾弾し、本来軍艦のために用意した金であるが、全額彰義隊討伐に使うように、と申し出た

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ところが、蔵六は「貴君の言うことは道理であるが、現状では困難である」と答え、「まず甲鉄を受けとり、旧幕府に備えた後討伐すべし」と言った。大隈はそれを受けて米国側に受けとりの談判をしたが、「局外中立」と申し出に応じなかった。

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この頃、戊辰戦争が始まってからは、諸外国は新政府を日本の正式な統一政権とは認めず、戊辰戦争を日本の内戦と認識し、決着が着くまで新政府と旧幕府勢力のどちらにも味方しないことを表明していた（これは新政府が英国外交官アーネスト・サトウの教示により諸外国に依頼したもの）。

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おそらく、蔵六は榎本武揚率いる旧幕府艦隊に甲鉄が加われば、今後相対することになる奥州討伐時の最大の脅威になると踏み、まずは甲鉄接収を優先させたと思われる。その後大隈は再び大総督府に赴き25万両を譲った。

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蔵六は、今回は素直に受け取る。また、このとき佐賀藩兵の応援を得ることも決まったという。兵・銃器と軍資金に目処が立った蔵六は、大総督府を説得した。5月9日には三条実美から岩倉具視宛ての手紙に「彰義隊討伐が決定した」と記載されるに至る。

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彰義隊討伐決定のキーマンとなった大隈重信は「大村益次郎は、短期豪勇、現行俊警、また開国進捗を持し、特に兵事において最も精しく(略）当時の英雄豪傑としてそのたぐいまれなれし者」と回想録でベタボメしている。

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5月8日、彰義隊討伐の会議が開かれた。村田蔵六は討伐に自信があったが、海江田信義をはじめとした他の参謀は、3000人と言われる彰義隊をおそれ夜襲を唱えたりした。蔵六は「断然勅命によって正々堂々と討伐せねばならない」と一蹴する。

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会議では蔵六に対して執拗な難癖で反対する者が多かったが、蔵六は彼らを指さして「彼共は戦を知りません」と言い放った。会議の様子は寺島秋介の回顧談に詳しいが、蔵六が指さした相手が海江田信義であるとは語っていない（けど、ばればれである）

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薩長の関係を考えぼかしたと思われるが、それまでのいきさつから海江田を指していると考えて良いと思う。「戦を知らぬとは何事か、益次郎言語道断な奴じゃ！」と海江田が言い、会議は混乱した。このとき、東山道先鋒総督岩倉具定が寺島を隅に呼び意見を求めた。

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寺島は「なにとぞ大村の意見をご採用ください」と答えたという。結局、この会議は西郷隆盛が村田蔵六に一任という意見を述べ終会した。また、この前後で、蔵六が江戸に赴任した直後からの大問題であった「軍事指揮権」についてもほぼ決着が着く。

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蔵六と対立していた大総督府参謀林玖十郎は参謀を免じられている。西郷の一任を取り付けたことで東海道総督府参謀海江田もおとなしくなった。加えて、5月11日、江戸府判事を兼任することになり、実質的に軍事権と江戸・関東周辺の民政権を掌握した。

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この会議の様子は、大河『花神』総集編に収められていて、「あなたは戦をしらぬのじゃ」「御上に対しておそれがあろう」の名台詞もあり、ドラマ屈指の名場面と思います。終生蔵六の良き理解者であった寺島秋介をモロボシ・ダンが演じていて、良い演技を見せてくれます。