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ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「ちょっと、いきなり何? いくらなんでも失礼でしょ?!」そんなものを吹きかけられるまでもなく、夢主はもう気に入った香りのものをつけているのだ。「香りも好みがあるでしょう? なんなのアンタっ!!」「おっとと。ごめん。ごめんね! そんな怒らないで! 悪かったよ」男は夢主の剣幕に

2020-06-15 17:31:12
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

椅子から立ち上がった。「……ホントにΩじゃないんだ? 残念。好みなのになぁ。βかぁ……」「βで結構。……あまりしつこいと、大声出すから」「ああ、ごめんごめん。失礼するよ」男は慌てふためきながら、愛想笑いとともに退散した。なんなの一体。失礼なやつ。1人でぷんすか怒っていると、間もなく

2020-06-15 17:31:13
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ogtから連絡が入った。少し遅くなるので映画館の方で待っていて欲しいという内容だった。夢主は半分残っていたアイスカフェオレを急いで飲み干し、映画館へ向かうことにした。襟元から香る匂いはもう、薄くなっていてあまり気にならなくなっていた。

2020-06-15 17:31:13
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

映画館の入口の前で、スマホを見ているogtを見つけた。今日の映画は、例のkrrnk監督の「鯉登恋情呪い歌・月の章」。愛と呪いがテーマの時代劇らしい。怖いものが苦手な夢主はタイトルに息が止まりそうだったが、あくまで前向きに考えた。内容はアレそうだが、寄り添う口実になりそうだ。…そんな余裕が

2020-06-16 02:41:15
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

あればだが…。ogtが観るものを決めさせると、いつもタイトルを言ってくれない。「レイトショーでホラー!!酷くない?!」「怖けりゃ俺にくっついてればいいだろ」駆け寄った夢主に、考えを見透かしたように彼は笑う。「うん……?」「なに?」「夢主…香水変えたんだな。いつもと、違う…?」

2020-06-16 02:41:16
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

やにわに、ogtの身体がふらついたかと思うと、夢主の方へ倒れ込んできた。慌てて自分より背の高い身体を支える。「どうしたの?!」「な、なんだか……おかしい。頭が……クラクラする……」映画館の警備員が気付いて、「御気分でも?」と声をかけてきた。「救急車を呼びましょうか?」「お願いし…」

2020-06-16 02:41:16
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「大丈夫……。持病の発作だから、薬を飲めば……!」上着のポケットから出した錠剤のシートをプチプチ押したかと思うと、素早く口に放り込む。「すまん……。今日は帰る……」警備員に頼んでタクシーを読んでもらい、まだ具合の悪そうなogtを車内に押し込み、迷ったけれども自分も一緒に乗った。

2020-06-16 02:41:16
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

弱々しいながら、焦りを含んだ声がタクシーの運転手に行く先を告げる。「……一人で…帰れる」「部屋まで歩けるんですか?運転手さんが困るでしょ?」「酔った人を一人で乗せられるの、困るのでこちらは助かります」酔っているわけではないが、紅潮した顔色にタクシーの運転手が誤解するのも

2020-06-16 07:29:55
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

無理はなかった。ogtが暑がって上衣を脱ぐのを手伝うとき、ワイシャツ越しに触れた体温が酷く高いことに気が付く。本当に病院に行かなくても大丈夫なんだろうか。再度勧めたが、“ogtは薬を飲んだから直に治まる”の一辺倒だった。

2020-06-16 07:29:55
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

なんの持病だろう? こんなの聞いた事がない。まるで……夢主はすぐに自分の考えを否定した。(Ωのヒートみたいだなんて)

2020-06-16 07:29:56
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

タクシーが彼の住むマンション入口に到着すると、夢主は熱に震える男の身体を支えながら車を降りた。「お姉さん、凄い力持ちだねぇ…」夢主が自分より体格の良い男の身体を背負うのを見て、運転手が驚く。αは生まれつき身体能力が高く、女性αの彼女も例外ではない。周りを驚かせないために、それと

2020-06-16 10:57:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

母親が望むような“女性らしさ”を演じるために、普段は表に出さないようにしていた。朦朧としているogtからどうにか部屋番号を聞き出し、彼の名誉のためにすれ違うマンションの住人の前では肩を貸す体勢でやり過ごし、その後はまた背負って彼の部屋へ急いだ。それより、困ったのはogtがなんのつもりから

2020-06-16 10:57:38
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主をぎゅうぎゅうと締め上げてくる事だった。あと、あと……。(背中に、なんか当たる……)男のそこは、些細な刺激でも反応すると知識では知っているが、自分の背中で起こるとなれば話は別だった。おんぶ状態のせいだろうが、ひたすらに恥ずかしい。なんの悪夢、そして何の罰ゲームかと神を

2020-06-16 10:57:38
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

恨みたくなりながら、ようやくogtの家に辿り着いた。上着のポケットから鍵を取り出し、夢主は想定外の理由で、想い人の住む場所へ足を踏み入れた。さすが大企業に務めてるだけあって、住む部屋も広かった。3LDK。シンプルで無駄なものひとつない合理的で、生活感のいまひとつないインテリア。

2020-06-16 10:57:39
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

住む場所はその人そのものを表すと思っている夢主は、彼らしい……と思いながら、その主を姫君を抱く騎士のように抱え直し、寝室を探して入った。彼をセミダブルのベッドに横たえた、その辺りで少し限界が来た。夢主の服用しているΩフェロモンの中和剤が切れ始めていた。

2020-06-16 10:57:39
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

何故なら、あの香気がベッドに横たわる彼のコロンに混じって部屋を漂っていたから。恋するΩの発するものの激しさときたら……。夢主は、オメガの後輩が今の恋人と出会った頃、遺伝子的な相性が低いのにも関わらず、こちらが当てられるような強いものを出していたのを思い出した。本人に自覚がないから

2020-06-16 11:28:12
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

よけいにタチが悪い。そういう時は抑制剤を多めとに飲んでとお願いしたくらいだった。強いものはこちらが中和剤を使っても効果が薄い。彼のデスク、その隣にいるΩ……。貴方も片思いなのか。誰かと番にならない限り、この強い香気はおさまらない。駄目だ。このままだと足腰が立たなくなる……。

2020-06-16 11:28:13
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

中和剤の入ったバッグを玄関に放りっぱなしだったのを思い出した夢主が寝室を出ようと背中を向けた時、急に後ろから手を引かれ、足に力の入らない彼女の腰が、ベッドにすとんと落ちた。「行くな」熱に蕩けて潤んだ目をした男が手首を掴んだのだ。「くすり……バッグを取りにいくだけだから」

2020-06-16 12:53:42
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

どういう訳か、軽く掴まれただけの手首が引き離せない。駄目だってば、と言おうとしたが、声が掠れて、上手く言葉にならない。おかしくなってきた。手首を伝わる体温。蒸散する互いの肌の匂い。脳が痺れ、下腹が熱くなってくる。そんな馬鹿な……。そのまま、引き寄せられて、仰向けに横たわる彼の

2020-06-16 12:53:43
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

うっかり切ってしまったのでここからtwitter.com/tanukidego/sta…

2020-06-16 13:09:26
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

上に身体ごと乗り上げさせられる。発熱した熱い掌が夢主の顔を左右から包み、噛みつかれるようにキスされると、夢主の理性は飛んだ。今までの、どこか躊躇いがちな軽いものと全然違う。完全な捕食者のような激しいそれ。熱い舌先が歯列を割り、夢主の、心持ち少し大きめの犬歯――結痕歯をなぞり、また

2020-06-16 13:01:20
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まとめたひと
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

アホ夢書き。昭和の女で金カ夢の人。腐と夢のいろんなのを見たり書いたり用の垢。最近は本人よりよりほぜ尾が好きになってきた感。いや、今でも推しなのは変わらないんだ……。 まろ marshmallow-qa.com/yumejodego?utm…