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ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「本体はともかく、限定コントローラーはプレミア付いちゃって手に入らないから……。廉価版のガンコトローラーしか売ってないかも」ogtは自分のスマホを出して、ネットショップで探し始めた。本気で欲しくなったらしい。「ああ、新品だと取り扱いがないな。廉価版は……ホントに玩具っぽいな。

2020-06-11 20:37:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

翌日……。 「映画の試写会の招待券? いいじゃないですか。ええと、『“Horizon of the moon”殺し屋から足を洗ったTksmは、田舎にある人里離れた一軒家を買い取り、穏やかに暮らすつもりだった。しかし……』ミステリーかな?」夢主が、iengから貰った封筒に入っていたものは、そのペア招待券。

2020-06-08 18:59:33
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主はよく聞いたことのない監督の作品だったが、後輩はよく知っているようだった。招待券に印刷された大まかなあらすじを読み上げ、いいなあとはしゃぐ。「この監督さん、好きなんです。一般上映が始まったら絶対行かなきゃ!良かったですね!『恋愛映画の大家、krrnk 監督が新境地に挑む、愛と感動の

2020-06-08 18:59:33
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

物語……』」そんなに凄い監督なのか。これは期待できそう。夢主はいそいそとそれを長財布の中にしまい込み、デスク下の通勤用のトートバッグに押し込んだ。「映画なら、距離も近いし、ちょっと怖い場面とかで“きゃっ”とか言って抱きつけて、一石二鳥ですね!……このieng先生のくれたチャンス、

2020-06-08 18:59:33
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

有効に使ってくださいね!先輩!そして、一刻も早く、エ|ロいお話聞かせてください」と両手で握りこぶしを作って喝を入れてくる。「エロいかどうかはともかく、良い結果になるよう祈ってて……」後輩の勢いに夢主は気圧されながら、気弱げに呟いた。まず、相手が誘いに乗ってくれなければ、成立しない

2020-06-08 18:59:34
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

イベントなのだ。けれど、夢主の心配は全くの杞憂に終わった。いつものゲーセンで、一通りのプレイを終えて二人してベンチで飲み物を摂っていると、有名な宇宙戦争を題材にした映画のBGMが店内のスピーカーから流れてきた。そこから件の映画の話となり、そこでカバンの中のチケットの存在を思い出した

2020-06-08 18:59:34
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主が話を振ると、意外なことにogtは二つ返事で了承した。krrnk監督のファンだったらしい。夢主はiengを心の中で褒め讃えるしかなかった。試写会の日に約束を取り付けたあと、夢主は上機嫌で高難易度と言われる隠しステージ9で、夢主は好成績を納め、ogtに褒められた。最高だった。

2020-06-08 18:59:34
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「意外だな。そういうのは苦手そうに見えたのに」浮かれたあまり、彼の言葉を、夢主は聞き流してしまった。

2020-06-08 18:59:35
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

……そして、それは、まったく彼の言うとおりだった。

2020-06-08 19:02:39
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

当日……映画の帰り……。 ……すごい映画だった……。夢主は、呆然とスタッフロールの流れる映画館のスクリーンをポカンと眺めていた。いつの間にか握りつぶしていた右手のポップコーンの容器を、先に席を立ったogtが黙って引っこ抜く。続いて、幸いにして、飲み終わっていた左手のペットボトルも。

2020-06-08 19:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「大丈夫か夢主……。真っ青だぞ」席を立ってぞろぞろと上映室の出入口から出ていく人々をよそに、腰が抜けた彼女の前にかがんで顔を覗き込む。その顔は、青いのを通り越して真っ白だった。「krrnk監督な。撮るジャンルを次々変える人で有名なんだ。恋愛ものを撮る前は歴史物だったんだが……」とogt。

2020-06-08 19:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「今回は身の毛もよだつホラーに……聞いてるか?」「聞いてましぇん……」まだ、席にいるの人々は、夢主と同じように、腰の抜けた人々だった。本当に、聞いてなかった。周囲に怖いもの無しと思われている彼女だが、人間である以上弱点はもちろんあった。科学的に説明がつかず、不条理で目に見えぬ対象

2020-06-08 19:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

つまり、幽霊含む心霊現象……。生きている人間の方がよほど怖いと人は言う。だが、夢主に言わせれば、殴るも蹴るも口先も効かない相手の方が、よほどタチが悪い。「凄かったな。流石の俺も、何度か声が出た……」夢主は、声も出なかった。主人公、tksmの方が、出てきた幽霊妖怪魑魅魍魎より

2020-06-08 20:15:55
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

怖かった。無名の俳優のはずだが、彼はまもなくこの映画で大ブレイクするだろう。凄まじい名演、怪演、大団円。しばらく夢に見そうだ。殺し屋家業で培った、ありとあらゆるものを武器に変えるその能力、包丁、豆鉄砲。鉛筆、消しゴム、警察手帳から、その辺にいた歩いていたおばさんまでが、彼に

2020-06-08 20:15:55
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

かかると武器になるのだった。 敵役の魑魅魍魎の総大将、ぬらりひょん役のkitも、とても可哀想だった。最後の最後、tksmがぶん投げたおばさんのトイレのサンダルが直撃し、美男の妖怪は帰らぬひと…妖怪…?となって駆逐されてしまった。不憫だった。

2020-06-08 20:15:56
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

最後、tksmはそこにいた妖怪をすべて駆逐し、彼らが拠点にし、tksmが買い取っていた屋敷に悪霊として棲みつく。そう、既にtksmは、ここに辿り着いた時には死人だったのだ……。という、唖然とするような恐怖のオチ。何故。最初は確かに愛と感動を予感させる始まりだったのに……。

2020-06-09 00:06:11
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「主人公が買い取った屋敷に住み着いている妖怪と、家を取り合うコメディかと思わせておいて、途中から恐怖ものに転換させるところが凄かったな」結局、腰を抜かした夢主はogtに抱えられるようにして上映会の会場から連れ出された。まだ顔色の悪い夢主を近くのカフェの椅子に座らせると、

2020-06-09 00:31:34
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

二人のいる席にやってきた女性従業員にogtは二人分の飲み物を頼み、向かいの席に座った。「面白かったな」「喜んでいただいたようで……良かった」夢主は肝が冷えるどころかコンニャクに変わったような心持ちだった。大画面でホラーなんて見るものでは無い。ogtはかなりの映画好きらしく、その監督の、

2020-06-09 00:49:19
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

これまでの作品についての蘊蓄も語ってくれた。話し方が上手いなと思う。聞いてて面白そうと感じた。「ブルーレイも持ってる。良かったら貸そうか」夢主の気持ちは、たちまち回復した。物を貸す、というのは信頼を得たという目安のように思えた。「恋愛ものもあるぞ。この監督のはみんな持ってるし、

2020-06-09 00:49:19
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ストーリーもなかなかいい」前作の“koi-tuki”も良かったというogtの話を聞いているうちに、コーヒーとカフェラテが運ばれてきた。彼女の好みのものを覚えてくれているのも、なんだか嬉しくて、こそばゆかった。「ゲームもいいけど、たまにはこうして、二人で出かけませんか?」夢主は、思い切って

2020-06-09 00:49:20
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

言ってみた。「あ、もしかして、彼女さんとか……」ogtが目を丸くして沈黙するものだから、夢主は一瞬、言ってて泣きそうになってしまった。「彼女なんていねえよ」あからさまに安堵を顔に出してしまったらしい。「なんだよ。その顔。まさか、俺と付き合いたいなんて言うんじゃないだろうな」

2020-06-09 03:09:26
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その言葉に、体温が全部顔面に割り振られたように熱くなった。「マジか……」「マジです」なんと言うか、さらなる勢いで、言ってしまった……。「彼女はいない…」ogtは、もう一度言った。「なあ、このままの関係じゃダメなのか?俺がここで断ったら、…お前はもう、俺とは会わないつもりなのか?」

2020-06-09 09:32:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「振られた相手に、どの面下げて逢いに行くんですか……」ああ、ダメそう。急ぎすぎた…。初めての、デートとも言えないお出かけに、これはなかったかもしれない。以前は合コンや人から紹介された男と割とスムーズに交際まではいけていたので、何となくいつも通り押してしまった。夢主の背中に、嫌な

2020-06-09 09:32:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

感じの汗が流れ始める。ogtは再び黙りこみ、しばらく黒々とした大きな目で夢主を見つめていたが、返ってきた答えは、「まあ、いいんじゃないか」だった。「は?」「しばらく、付き合ってみて、良さそうなら継続ということで」…ウォーターサーバーのお試し期間が夢主の頭をよぎったが、別に振られた

2020-06-09 09:32:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

わけでもなさそうだ。「俺と付き合ってもつまらんぞ。気の利いた話もできねぇし、遊ぶと言えば映画か、あのゲームか……」「あれ、ogtさん、家ではしないの?」「待て。家でもしてるのか?」実は、シューティングゲームは「wildcat」は、二年前に家庭用ゲーム向けとして移植されたことがある。

2020-06-09 09:32:38
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

残念なことに、テレビの位置が低く、ゲーセンの筐体を前にするように立った状態でのプレイをは不可能だった。結局、お行儀よくテレビの前に正座してスナイパーライフル(別売り)型のコントローラーを構えて遊ぶしかなく、その話をするとogtに馬鹿笑いされてしまった。「なんだそれ。俺も欲しい」

2020-06-09 09:47:24
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

“ワイルドキャット”の銃は、あのずっしり来るリアルなデザインがいいんだがな」「うちに来れば、遊べますよ」がっかりしたその様子が、なんだか可愛い、夢主はにんまりとした。「ぷっ、ogtさんがテレビの前で正座して撃つとか、きっと凄い絵面ですね」「付き合うと決めたばかりの男を、家に誘うお前も

2020-06-11 20:37:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

どうかと思うがねぇ」一気に正気に返った。「あ…」軽い女と思われた?しくじったと動揺する夢主へ、彼はニヤニヤしながら追い打ちをかけてくる。「気がついてるか? 緊張してると敬語になってるぞ」「え?ホントですか?」「その緊張が取れたら……お邪魔しようかな」おお……やったよ後輩ちゃ〜ん!

2020-06-11 20:37:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ガッツポーズを取りたくなるのを必死で抑え込むが、口元が変な形に緩みそうだ。カフェオレを飲んで誤魔化しながら、夢主は20数年の人生において、女に生んでくれたことをひたすら親に感謝した。ただ、後に報告した後輩には、再び「中学生の交際ですか!!」と怒られてしまったが…。

2020-06-11 20:37:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

しかし、夢主は確かに、その日、単なるゲーム友達からの関係を変えられたと実感していた。「この後はどうする?何か食べて帰るか?焼肉とか……」「あの映画見たあとで焼肉とか、嫌がらせ……?」本気で嫌がる夢主を見て、ogtは本当に楽しそうに笑った。今まで、皮肉そうにだったり、僅かに口角を

2020-06-11 20:37:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

あげるくらいでしか見られなかった、初めて目にする笑顔が嬉しかった。「じゃあ、お前の好きな物を」(今度こそ、今度こそ本当の恋人ができるかも……)空も飛べそうな気持ちだった。

2020-06-11 20:37:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

それからは、ゲームセンター以外の場所にも行くようになった。夢主の毎日は光り輝いていた。仕事がうまくいったという事柄以外に、こんな喜びがあったとは。ただ、後輩に報告できそうな色っぽい展開にはなかなかならなかった。“お試し期間”はなかなか終わらず、“手を繋ぐ”“腕を組む”から、全く

2020-06-11 20:37:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

先に進めなかった。以外に、彼は身持ちが固いのか…。“知り合いのΩ”についても、それとなく聞けば、はぐらかされるし……。けれど、時々強くその人の匂いに酔いそうになり、彼とのデートの途中に、隠れて中和薬を何度も飲んだ。あと、気になることがあった。街中を二人で歩いている時、αと思しき

2020-06-11 20:37:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

通りがかりの三十代半の男性に忠告されたのだ。 「お嬢さんかな?こんなことを言うと失礼だが、そろそろ抑制剤を飲んだ方がいい。ヒート前の香りがしてる。私は中和剤を飲んでいるから平気だけど、妙なのに絡まれると危ないよ」 隣にいたその妻らしい女性が、「良ければ私の抑制剤を分けてあげるわ」

2020-06-11 20:37:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「多分、それは俺だと思います」横から、ogtが口を挟む。会社の同僚にひとり、Ωがいて、俺の隣のデスクなので移り香でしょう。…そんなに、分かりますか?」「αだと、そういうのが分かるからね。多分、近くに気になる人がいるんだろう。そんな匂いだよ」「あなたったら。ごめんなさい、変なこと言って

2020-06-11 20:37:10
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

」女性が、慌てて夫の手を引き、こちらに頭を下げながら去っていく。ogtは浮かぬ顔をしている夢主に「気になるか?」と笑った。「そのΩには、好きな奴がいるのさ。ちなみに、俺じゃないぞ」「本当に?」「ああ、恋人候補もここに一人いるしな。それで手一杯だ」「αだと、匂いでそういうの分かるんだ。

2020-06-11 20:37:10
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

知らなかった…」女性αである夢主は、香りは認識できても、それに種類があるとは今まで知らなかった。あれは、そういう意味の香りなのか。どうりで強力なわけだ。βのogtは平気なのだろう。「…らしいな」彼も、さして興味もないようだった。

2020-06-11 20:37:11
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「その人、抑制剤飲んでるんでしょう?それでも漏れ出すなんて、どれだけ好きなんだろう?相手の人って、よっぽど素敵な人なのね」「ああ。本人は、知り合うずっと前からそいつを見てて、気になってた。案外、近くにいられて夢心地かもしれんぞ。しかも、相手はβだしな」夢主は驚いた。「そうなの?

2020-06-11 20:45:53
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

素敵ね。上手くいくといいな。その二人」「……それは、努力次第だろう?でも、上手くいくさ。きっとな」珍しく、ogtが自分から手を繋いできた。夢主は、驚きに心臓が跳ね上がりそうだった。

2020-06-11 20:45:54
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

カフェラテがカフェオレに変わってで笑うしかないw

2020-06-12 08:57:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

不思議なことに、その日を境に片方だけからと思われた好意の風向きが違うものになった。何かといえば“ワイルドキャット”攻略一辺倒なogtからの誘いが、本格的にデートらしきものに変わり、別れ際に初めて、しかも不意打ちのようなキスをされた時には驚きを通り越して 魂が飛びそうになってしまった。

2020-06-15 14:34:17
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

……ただ、恋人と呼べるものになったきっかけは、とてもロマンチックとは言えなかったが。

2020-06-15 14:34:17
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その日も待ち合わせしていた。ogtはその日、会社の飲み会だと言っていたが、そこから早めに抜け出す口実も兼ねての約束だった。頼まれていた通り、九時になったところで彼のスマホに連絡を入れ、待ち合わせ場所になっているイタリアンカフェに急いだ。今日は食事の後で映画館のナイト上映に行く予定。

2020-06-15 17:31:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

帰りは深夜になる。何となしに、もしかして、これは……と言う気持ちになるのも当然だった。むしろ、待ちわびていた。後輩と選びに選び抜いた勝負下着も万全。予感に胸弾ませる気持ちはあるけれど、今までの相手は、いわば交際のプロセスを消化するように応じていて、正直な話、夢主は以前付き合った

2020-06-15 17:31:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

αに指摘された通り、不感症気味だ。でも、今回は本当に好きになった相手だし、今度こそ大丈夫だろう…多分。二人席に座り、期待と不安を胸にogtを待つ夢主がいる席の前に、すとんと誰かが腰を下ろした。 知らない、若い男だった。こちらも会社帰りなのか、スーツ姿だ。背が高く、とてもハンサムで、

2020-06-15 17:31:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ひと目見ただけでαだとわかった。彼らはいつも自信に溢れ、目の中にいつも力があった。ogtも見た目はαにしか見えないが、落ち着いた印象の彼とは、雰囲気がまるで違う。 「こんばんは」「あ、あの、悪いけど――」人を待っているのだと言いかける夢主の言葉を遮るように、爽やかな笑顔で彼は言った。

2020-06-15 17:31:09
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「さっきから、とても綺麗な子だと思って君を見てた。ひとり?」「いえ、人を待ってるので……」ああ、それは残念だな、と彼は言った。「彼氏さん?」一瞬、これからそうなるのだと思いながら頷く。「僕と来ない? 君、Ωでしょう?相手は多分、βだね。そんな感じだ」うわ、やな感じ。

2020-06-15 17:31:10
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「私もβなの。あなたの番に相応しくないようで残念ね」都会にはαとΩも、地方から集まってくるものだから、出会ってもあまり驚かない。αはΩと番たい者が多いから、Ω専門でナンパに励むことも知っている。実際に見ると、あまり気分は良くないものだが。「またまた。君はΩだ。そんな匂いもするし…

2020-06-15 17:31:11
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

しつこい! 「会社の同僚にΩの子がいるから、その移り香ね。きっと」ogtの言ってたことがやっとわかった気がする。αは、そういう嗅覚に優れている。夢主も以前、理由を知るまでogtから漂う僅かな香りに悩んでいたのだ。「ふーん? そうかなあ?」そういうと、彼は胸のポケットから何か小さな容器を

2020-06-15 17:31:12
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

取り出した。透明な液体の入った、手の中に隠れるほどの大きさのアトマイザー。それを不意打ちのように夢主の襟元に持ってきて、いきなりひと吹きした。辺りに、甘いフローラル系の香りが漂う。「いい匂いでしょう?これ。恋心を誘う素敵な香りがする」気障なセリフが、文字通り夢主の気に障った。

2020-06-15 17:31:12
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まとめたひと
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

アホ夢書き。昭和の女で金カ夢の人。腐と夢のいろんなのを見たり書いたり用の垢。最近は本人よりよりほぜ尾が好きになってきた感。いや、今でも推しなのは変わらないんだ……。 まろ marshmallow-qa.com/yumejodego?utm…