沙崎マトメターノ

月刊 不穏な文章 Salan！ @samon87669893

@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢強情な君の口を割るにはこうする他ないと思ってだね。｣ スーツの内から薄い包みを取りだし、身動きの取れない高崎さんの横で中身を物色中。 ｢ふん、推理小説の真似事など気に食わんが致し方あるまい。｣ 静注用の自白剤を取り出しシリンジに補充している ｢愛のひとつでも囁いてみてくれたまえ｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 神経毒に侵された身体が重い。近づいてくる沙藍さんがシリンジを構えているのが見えた。 むき出しの腕を取られ、薬液を注射される直前。 「ぐ、ぁ゛、あ゛あぁ！」 しびれる腕を無理矢理振り回し、シリンジを弾き飛ばす。シリンジから漏れた薬液が僅かに地面を舐めた。 自白剤は嫌いらしい

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢長々喋るのは嫌いかね、私なりに配慮したつもりだが。｣ ｢…まあ、善い。｣ すっと高崎さんの頬を撫で、目を細めている ｢こうしていると…蜜月とでも言おうか、あの時の事を思い出すよ。なあ、高崎君。｣ 訥々と監禁中の様子を聞かせながら 予備の注射器で筋弛緩剤を手早く打ち込んだ。

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「ち、くしょ……！」 静奈は沙藍さんの目論見が崩せなかったのを悔やんでいる。 望まず脱力する体に苛立ちと絶望感が募る。聞かされた悪夢とも言える一ヶ月の記憶が鮮明に蘇り、指先に震えが走った。 自重を支えられない体は無様に床に沈んでいる。

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢君が思うより遥かに、｢君の身体｣は饒舌だ。｣ 沙藍は骨の抜けたように脱力した手首を丁寧に取り上げた。 ｢心臓で嘯く者など存在しまいよ。｣ 空いた左手で喉元を軽く抑えると、鮮明に蘇る悪夢に脈が一際速く振れる。 尋問は二択に絞られたようだ。 ｢君の事はよく知っている｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「だ、まれ」 急所に添えられた手が怖い。静奈にとって、沙藍さんは悪夢の根源でありトラウマだ。対峙するだけで膝が震える。けれど。 「お、まえ、に、教え、る、ことは、何も、ない」 縺れる舌で語る。 「お前、のこと、なんか、し、りたくも、ない」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 拭うでもなく流れた鼻血は既に濁った油彩の様に固まり、こびりついている。 ｢つれないじゃないか、高崎君。"親身に"してやったろう？｣ 喉元に添えられた手に力が篭もる。 ｢何を語るでも知るでもない、私は｢君に｣聞いているのだ。｣ 耳元で嫌に甘く、低い声が響く ｢何を企んでいる｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「ッ……！」 僅かに気道が狭められる感覚に総毛立つ。絞殺は一番恐れている死に方だ。だとしても。 「お、まえに」 震える体を、喉を、押し殺して心臓が叫ぶ。 「なに、も、教えて、やるもんか……！」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 頸動脈と橈骨動脈はその意思に反して饒舌に、高崎さんに何かの目論見がある事を示している。吐くように毒づく高崎さんを他所に、沙藍は訥々と語りかけている。首を絞める大きく骨ばった手に殊更力が入る。 ｢例えば、君の既知に｣ ｢｢君の不都合｣を｣ ｢｢なかった｣ことに出来るものはあるか｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「ッ゛、ぁ゛……！」 狭まった気道は恐怖感をあらわに呼吸を制限する。深く息を吸おうとして胸がせわしなく上下した。それでも静奈は沙藍さんへの悪態を止めなかった。 「だ、まれ…！」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW とくとくと指先に触れる心脈を小さく鼻で笑い、｢そうか｣と零す。 ｢高崎君、覚えているかね。｢君の初めて｣もこうだったと｣ ｢ああ、｢死んで｣いたのだ知る由もない。｣ ｢しかし、何度でも君は｢戻ってきた｣｣ ｢私の腕の中に。｣ 脈を取る手を離し、両手で白く不健康な首を締め上げる

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「あ゛、が！ぇう゛、ッ、ぁ゛！」 ぎりぎりと押しつぶされる気道は、「一番恐ろしかった死」を無理矢理に記憶の底から引きずり出した。こわい。怖い。薬で弛緩した身体ではろくに抵抗も出来ない。酸欠のせいで視界が霞む。焦点も合わなくなった視野に残るのはぼんやりとした赤だった。

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 事切れた高崎さんの瞳を閉じ、怒りと憎悪に歪んだ口元にキスを一つ。 やはり死後硬直は来ないのだろうなと思いながら鬱血した生気のない身体をするすると撫で、鎖骨を舐めている。 ならぬ心音に耳を傾けながら一篇の詩を思い返していた。

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4.沙藍と一篇の詩 ｢籠の鳥の窮屈よ｣から始まる一篇の詩。 永遠の命を持つと言われ囚われた孤独な鳥の衰勢を描く。 最後には一人の男が自由になりたがる鳥を籠から出しその衰え、声を飛ぶ力を失った鳥を絞め殺す。 ｢貴方が求めた景色はどこぞあらん｣ ｢幸せは何処にあるのでせうか｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@san_yu_kan_BW 夏のうちの子情報をまとめようと思ったけど、真面目に楽しんでるのリンゼルアくらいしかいないので解散

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 高崎さん、デートしてくれてもいいのよ？？(ﾆｺ)

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 静奈に聞いたら籠城の準備をはじめましたねぇ

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢ふん、所謂自宅デートと言うものか。｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「お前に対する籠城戦だっつってるんすよこっちは。来んな。死ね」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢相変わらずつれないな、高崎君。｣ 後ろ髪に誰かの指が通る感覚が残る

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「～～～～ッ！　き、しょくわるいんだよ…！」 前に踏み出してから振り向いて距離を取る

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢全く、気色悪いとは心外だな。私も人の子、傷心も良いところだ。｣ 軽く腕を広げてかつ、かつとよく磨かれた革靴の踵を鳴らしながらじっくり距離を詰めているな

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「そんなの知るかよ…！　ッ、こっちに来るな…！」 響く踵の音が怖いながらも、詰められた分の距離を開けていく。ぞくぞく悪寒が止まらない

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢喘ぎ、喚くばかりだった君がようやく話をしてくれるとは、私は嬉しい。感無量だな。｣ ｢前を見て歩きたまえよ、高崎君。｣ ｢…そう、教わらなかったか｣ じりじり壁際に追い詰めて行く沙藍 頃合とみて胸元のポケットから｢錠剤｣を取り出している。

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「っ…！　うるさい、うるさい五月蠅い…！　黙ってどっか行けよ…！」 距離を取れども背後にひたりと冷たい壁の感触。ぎくりと固まる体。取り出された錠剤に嫌な経験則が警鐘を鳴らしている

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 手元でぱちとPTP(錠剤のシート)を割り、取り出してからすっと高崎さんの手首をとって顔の横に緩く押し付けている。 ｢これは少しばかり変り種でね。｣ ｢何、君のあられもない声が聞きたくなったのだよ。｣ ｢蜜月と行こうじゃないか。｣ 空いた手で震える唇に錠剤を添えているな

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 添えられた薬、緩く握られた手。何かもが恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい…？否。どうしてあたしばかりが何度もこんな目に遭うんだ。全部こんな場所が、呪いが。いいや違う。 こいつが、こいつのせいであたしは。 気づいてしまった。ああ、恐怖すら塗り替えて視界が赤く染まる。手の震えが止まった。

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW ぐ、と強く拳を握る。 「……ッ、っのやろ…！」 目の前で余裕を崩さない沙藍さんを赤く染まった視界のまま睨みつけ、自由な方の手で思い切り殴り飛ばす。

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 震えが止まった事には気がついていた。 間を開けずその拳が下顎を強かに殴打する。ぐらりと揺らぐ視界、思わず膝をつき錠剤は白く残影を遺し床に落ちる。 ｢…随分と手荒じゃないか。｣ 頭を振り、立ち上がろうにも脳が揺れる。口元は薄ら喜びに歪んでいた。 (ようやく｢私｣を見るつもりになったか)

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「黙れ」 押し殺したように低い声が静奈の喉から這い出る。握りしめた拳が今一度沙藍さんの頬を打ち据えた。視界は未だ赤い。 ……今の静奈を捕えているのは明らかな怒り、身にかかる理不尽への憎悪である。 姿勢の崩れた沙藍さんの胸倉をつかんで地面に押し付ようとする。

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW 口内に確かな鉄の味が広がる。馬乗りになり怒りに染まる瞳に私はどう映っているのか。 血液混じりの唾液を唾棄し、沙藍は笑っている。 ｢折角だ、このまま抱いてくれてもいいのだぞ｣ よれたシャツの胸ぐらを掴み返し、倒れながら唇を奪う。

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 唇を割って侵入する舌が気持ち悪い。その先端に迷いなく噛みつき、床に叩きつけるように相手を引きはがす。 胸倉をつかんでいた手はジワリと位置を上げて喉を抑えつけている。 「その口閉じろって言ってんの……ッ！」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW (そうだ、そのまま。一層の事その手に感触を残して殺してくれ。) ｢……かはっ…｣ 押さえつけられた喉元から、言葉にならぬ喘鳴が漏れる。しかし、持てる言葉は一つではない。 沙藍は指先ですっと怒りに震える髪を梳く (…厭に視界が薄い。) (痛みか？苦しみか？) (そんなものはどうでも良い)

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 憎悪に塗りつぶされたまま髪に触れた手を振り払う。 近くに落ちているPTPを手繰り寄せ、沙藍さんの薄く開いた口をこじ開けて錠剤を3つほど放り込んだ。 そのままPTPを投げ捨てて、吐き出さないように口を抑えつけている。睨みつける目の奥は赤い。 （少しは） （あたしの苦しみ） （味わってみろ）

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢……！｣ 死に際しても尚余裕を残していた瞳が見開かれる。捩じ込まれたものは人智を越え、魔法で製剤された｢媚薬｣。一錠ですら人の身に余る。 ｢ああ…ははは、はは｣ 唇を伝う血液、奥底から沸き立つ死と色の衝動。口元を抑えるその手を払い、情動に任せて突き飛ばすと→

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW その場で己が身を掻き抱いて体を引き攣らせながら、身を丸めている。 ｢あはは、はは…高崎君、高崎゛くん゛… ！｣ 身悶えに息を切らし、額を地に擦りながら 沙藍は失神した。

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW ぱたりと動かなくなった沙藍さんを眺めつつ、警戒して距離を取る。 冷静さを取り戻すたびに荒くなる呼吸を抑えつけ、静奈はその場から逃げ出した。 自身の中で書き変わった感情には見ないふりをして。

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@san_yu_kan_BW うちの女、独占欲はあっても薄いというか相手の自由を尊重するのが多いな …あぁ、沙藍が居たわ ｢高崎君、君が何処に居ようが私は。｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「お前なんかに捕まってたまるか、死ね」

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢…何処に向けて吠えているのだ。｣ ｢久方ぶりだな高崎君。私は、此処だ。｣ 背後から高崎さんの前額を抑えて露出した頚部に添わせて注射針を穿刺、そのまま｢即効性｣の筋弛緩剤を注入。 ｢ああ、この間は痛かったとも｣ 目を細めて嬉しそうに末端から脱力する高崎さんを抱えて髪を撫でてる

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_BW 「？！　ッ……！」 弛緩して崩れる身体を捕えられ、苛立ちに歯噛みする。 「ざ、けんなッ……！そのまま、死ねばよかったのに……！」 髪を撫でる沙藍さんの手から逃げるように頭を振り、睨みつけている。

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@dach0000023 @san_yu_kan_BW ｢…ふん、面白い事を言うな。君が私を"殺さなかった"の間違いではないのかね｣ ｢幸いな事にあの薬を仕入れた店の在庫は潤沢でね。｣ 予め粉砕し生食に溶解した｢例の錠剤｣をシリンジに充填、高崎さんに見えるようにエアを抜いてから怒りに歪む歯列の隙間から流し込み、吐き戻さないよう掌で塞ぐ

ダチョウ兄さん @dach0000023

@san_yu_kan_18BW （回線切り替え） 「ぐ、ッ……！　ッ～～！」 口内に注がれた薬液を吐き出したくとも、口を押さえられてはどうにもできない。くい、とわずかに顎を持ち上げられたせいで、望まぬままに薬液を飲み込んでしまった。解放された口は酸素を求めて喘いでいる。 twitter.com/samon87669893/…

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@dach0000023 @san_yu_kan_18BW ｢そう睨んでくれるなよ｣ 喘ぎ喘ぎ沙藍を睨みつける瞳に背を逆撫でられながら草臥れたシャツの裾から掌を差し入れて焦らすように腰骨をなぞる ｢ふん、それもいつまで持つかだが｣

ダチョウ兄さん @dach0000023

@samon87669893 @san_yu_kan_18BW 腰骨を撫でられるだけでぞわりと肌が泡立つ。感覚の違和感に薬剤が効き始めたことを悟った。 「ッる、さい！　放せ、はなせ……！」 弛緩した身体をよじってどうにか逃げようともがくも、ろくな抵抗になってはいない

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@dach0000023 @san_yu_kan_18BW ｢…聞き齧った話だが、一つ与太話をしようじゃないか。｣ 腰骨を撫でていた指先がつつ、と不健康に白い腹を伝う。 ｢ある世界に七つの原罪を束ねる気の違った魔女が居たと言う。｣ ｢その魔女は惨遊館であらゆる罪の素を人へ売ったが｣ ｢結局人は｢色欲｣にのみ手を伸ばし｣ →

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@dach0000023 @san_yu_kan_18BW ｢魔女は｢色欲｣を助長する薬しか作らなくなった。｣ シャツをまくって骨張った長い指で胸をいやに丁寧に包み ｢愚かだとは思わんかね。｣ ｢…認めたくないか、高崎君。｣ ｢抗えると良いな？｣ 指先で固くなり始めたその先を擦る。