農村の問題は、 「人」、 「土地」、「ムラ」の空洞化の3つに整理できる。 それぞれ、「過疎」、「中山間地域」、「限界集落」 の造語を生み出し社会問題化した。 しかし、それ以上に深刻なのは、 「誇り」の空洞化である。 農村の議論は、 誇りの空洞化を避けては、通れない。
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【中山間地域で進む3つの空洞化】いま農村地域には多面的な問題が発生している。特に山がちで条件不利性が強い中山間地域を対象として、その問題状況を整理すれば「人」「土地」「ムラ」の3つの空洞化と表現できる。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/rMs9uKcia6

2022-10-17 07:04:09
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【①人の空洞化】中山間地域における人の空洞化は、高度経済成長期に発現した。例えば過疎という新語が政府文書に登場したのは1966年であり最初の過疎法は1970年に制定されている。このように高度経済成長期には、その現象は山村をはじめ離島や漁村を揺るがしていたのである。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/WAgLdnRA0Z

2022-10-17 07:33:50
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遠田大亮 @DaisukeEnta

現在では当時から見れば人口減少はテンポを緩めている。しかし人口動態が従来とは質的に異なる状況に転化した。地域社会の「人口自然減社会化」である。1980年代後半以降、過疎地域全体を通じて人工は自然増加から自然減少(出生者数より死亡者数が多い)に転じている。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/deHCVVm1Ep

2022-10-18 07:16:37
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遠田大亮 @DaisukeEnta

さらに、それ以降、自然減少の幅は傾向的に拡大し他方で社会減少(転入者数より転出者数が多い)は1990年代に入るとやや沈静化傾向にある。そのため過疎地域における人工減少の要因は、自然減にウェイトが急速に移りつつある。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/Defk7E6uzS

2022-10-18 07:22:02
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遠田大亮 @DaisukeEnta

人口の流出はやや沈静化したものの人口構成の高齢化が進んだために新しく生まれる子供の数が少なく、そして高齢者の死亡により地域内人口が徐々にしかし確実に減少していく状況こそが現代における「人の空洞化」の実態である。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/baioZ3rB2T

2022-10-19 07:03:13
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【②土地の空洞化】農林業的土地利用の空洞化も特に1980年代半ば以降、顕著である。それは農林業の担い手不足の結果発生している耕作放棄、農地潰廃、林地荒廃等と表現される事態を指している。この、土地の空洞化は先に見た人口減少の自然減への転化とほぼリンクしている。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/QSfoVICrCu

2022-10-20 07:49:22
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遠田大亮 @DaisukeEnta

高度経済成長期の激しい人口社会減少(人口流出)によっても、現実には親世代が地元に残り、農林地を管理し続ける事が多かった。担い手不足はそれに抗する動きとして始まった農林業の機械化・科学化による省力化と親世代の長寿化のために広範囲には顕在化する事がなかった。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/ejzcVR9d8J

2022-10-21 06:44:22
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遠田大亮 @DaisukeEnta

しかし、その世代がリタイア期に入り、そして人工減少も自然減少化する事により、いよいよ農林地の管理主体不足が顕在化した。その結果、特に山村部で耕作放棄地の急速な増大が発生し、「中山間地域」問題という新しい言葉で国政レベルでも問題提起され始めたのである。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/wJR0HzAZ3F

2022-10-22 07:46:05
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遠田大亮 @DaisukeEnta

「中山間地域」という言葉は、中国山地等の特定の地域を指す言葉として従来から学会では使用されていたが、このように「平地の周辺部から山間地にいたる、まとまった平坦な耕地の少ない地域」全体を指すように、政策サイドが使い始めたのは1988年の事である。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/KOq0gez73A

2022-10-22 13:00:33
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【③ムラの空洞化】人や土地の空洞化は、「人が少なく、だいぶ寂しくなった」「農地が草ボウボウで景観が荒れている」と、視覚的にも確認できるものである。しかし、「ムラ(集落)の空洞化」はそうではない。集落機能の後退はあたかも忍び寄る様に発生するものである。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/hUBfEBaDi7

2022-10-22 13:01:19
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遠田大亮 @DaisukeEnta

地方自治体の職員でさえも管内すみずみの意識的な情報収集をしない限りは、なかなかその実態は見えてこない。少し古いデータだが2000年の統計により、山口県内の中山間地域の集落を対象として、集落単位の壮年人口(30〜64歳)の高齢化率、および寄合開催回数を図に示した。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/PG74IbgXsB

2022-10-22 13:41:56
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遠田大亮 @DaisukeEnta

これによれば、当然ながら壮年人口が少ない集落では高齢化の進行が著しい。「人の空洞化」の実態が確認される。注目されるのは、特に壮年人口が希薄化した集落では、集落の寄合回数が少なくなっている。一般的に、集落の寄合の開催回数は、集落活動の活発さを反映している。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/vXlouVcfqJ

2022-10-22 13:43:33
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遠田大亮 @DaisukeEnta

集落が何か活動を行うときには寄合を開催し全戸参加で物事を決めていくからである。従って寄合の少ない集落では活動も活発ではなく、集落の機能も低下している事が少なくない。その点で「人の空洞化」の進展した地域において「ムラの空洞化」の発生を見る事ができるのである。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/kiYQrXeBAr

2022-10-22 17:52:30
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遠田大亮 @DaisukeEnta

そして、この延長線上にいわゆる「限界集落」が発生している。「限界集落」という造語が大野晃氏により使われ、山村における新たな現象として問題提起されたのは1991年と言われている。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/MkOOtGBSry

2022-10-22 17:59:06
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遠田大亮 @DaisukeEnta

その対象地域は高知県であったが、そこでは集落内人口規模の縮小と高齢化が進み、農林地の荒廃に引き続き集落機能の著しい停滞が顕在化していたのである。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/c18OdWtpRA

2022-10-22 18:03:58
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遠田大亮 @DaisukeEnta

この様に、中山間地域で段階的に発現した3つの空洞化はそれぞれ「過疎」「中山間地域」「限界集落」と言う新語・造語により問題提起され現在に至っている。それぞれの現象は造語が必要なほど新たな現象であり、かつ、社会的な議論を要する重要なものだった事を表している。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/QvgT2qYbo5

2022-10-22 18:10:29
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【④誇りの空洞化】しかし、筆者は以上のプロセスの解明を追跡しながらも、こうした変動は事態の表層に過ぎないと認識している。その深層では、もっと本質的な空洞化が進んでいる。それは、地域住民がそこに住み続ける意味や誇りを見失いつつある「誇りの空洞化」である。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/tv4F3kBAQL

2022-10-22 18:17:04
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遠田大亮 @DaisukeEnta

ある山村では高齢単身女性が年に1〜2回の子供の帰省を待ちわびながら「うちの子にはここに残って欲しくなかった。ここで生まれた子供が可哀想だ」と言う。また若者定住を力説する農協の幹部は、別の場面で「今の若い人はこんな処では住まない。都会に出るのが当たり前だ」と言う。政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/oVl8P8B6eI

2022-10-23 09:15:32
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遠田大亮 @DaisukeEnta

筆者はこうした場面に一再ならず遭遇しているが、その度に地域の人達が地域に住み続ける意味や誇りを喪失しつつあると感じずにはいられず、それを「誇りの空洞化」と表現している。それは、かつて言われた「心の過疎」と重なるものであろう。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/JOT5IkvueP

2022-10-23 18:21:11
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遠田大亮 @DaisukeEnta

おそらく高度成長期から現代まで続く中山間地域からの人口流出の要因は所得格差のみならず「誇りの空洞化」のが根深くある。言うまでもなく、それは強いられた空洞化であり地域の人々が好んでそれを受け入れているわけではない。しかし農村の再生の議論には、避けて通れない。農村政策の変貌小田切徳美 pic.twitter.com/zo3mMKpfg9

2022-10-24 07:31:09
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まとめたひと
遠田大亮 @DaisukeEnta

農業、農政、農協等“農”に関してのツィートが多いです。 (個人的には)GHQの占領政策や押し付けられた憲法を金科玉条としたままでは、日本農業はもっと衰退すると考えています。 山形県農協中央会勤務。農協監査士。明治大学法学部卒。山形県酒田市出身。 過去のツィートは、以下↓のまとめサイト(min.t)からどうぞ。