
星空を見つめながら君と語らうここは天国。僕は君とならいつまでだってここにいたいよ。僕は君に尋ねたね「ねえ、行きたいところはある?」君は答えた。小鳥の囀りのような声で。「ここ以外ならどこでもいいわ」 ははは、と僕は笑って空を見上げて彼女の白い肩を抱いたのだった
2021-12-16 19:24:13
私の趣味は他人の物語を想像することだ ゲームをしているあの子と、遠くでゲームをしているあの子は実は今同じゲームで共闘しているとか そして目の前の男性は 目の前の女性と目が合いそうになり視線をそらす これが僕の趣味の、他人の物語を想像することだ
2021-12-16 19:56:38
くずくずくずくず! くずばっか! 「私の周りにはどうしてこうもくずばかりなの!」 冷めた視線が私を嘲笑う。 「諦めな」 「これがお前の運命なのさ」 「葛粉工場に生まれたお前のね!」 今日も私は白い粉まみれ お客に上質なとろみを届けるためにせっせと働くのであった
2021-12-16 20:33:28
フワフワサクサクのスコーンに煌めく紅茶。ぽてりと盛られたクリーム。 「うまそう、でも庶民はこれで我慢するしかないんだよな」 湿気ってモサモサのスコーン、ティーバッグの紅茶、マーガリン 「庶民はまずそんなの食わねんだよな」 ブチリとテレビの電源が落とされた
2021-12-16 22:43:16
それの気配を感じる しかし振り向くまい 振り向いてそれが何か認識してしまったら終わりだ 卓上ライトに写し出される筆跡を目で追いながら意識をそらそうと努力する。 右、左、上、下 下、左、上、右 「いい加減にしろ!」 勢いよく振り返ると それは目の前にいた
2021-12-17 08:46:11
「人が焼ける匂いって嗅いだことある?」 「ないよ。あるの?」 「ないけどさ、でもこんな感じかなって思うんだよね」 そういって目の前の男は鉄板の上でじゅうじゅうと音をたてるステーキにナイフを入れた 「うま」 友達を続けるか真剣に悩んだ。
2021-12-17 08:58:37
真夏の夜 心霊番組を見ていた 「夜中にドアをノックされて見に行ったら誰もいないんです。でもずっと叩かれて怖かった」 その時自宅のドアがノックされる音が聞こえたので、見に行くと目の血走った男が包丁でドアを叩いていた ので即座に通報した
2021-12-17 09:15:49
「A、フォロワー数すごいね」 「ねー、この人とかさ同担拒否とかってほかのフォロワーと喧嘩してる」 「ファンコミュとかあってすごい!」 そんなことを話す女子学生を横目に何食わぬ顔でコーヒーを飲む男がスマホを高速で叩きながらぽそりと一言 「全員俺だけどね」
2021-12-17 09:40:59
友達がいない少女は熊のぬいぐるみがお気に入り 話し相手がわりにいつも話しかけています 「あなたが話せたらいいのにね」 するとあら不思議、熊のぬいぐるみが動いて話し始めたのです 「ぼく、お話しできるようになったよ!」 ぬいぐるみはゴミ収集車に乗って旅立ちました
2021-12-17 10:05:15
サンタがとある家にやってきた。煙突を降りるとあろうことか泥酔した住人と出くわした「誰だお前」「サンタです」サンタは事を荒立てぬよう優しく言った「あなたにプレゼントをあげましょう」「プレゼント?そんなものいらないから殴らせろ」パンチをサンタはプレゼントで防いだ
2021-12-17 15:41:23
寒い時期になると落ち込みやすくなるそうです。なので心○内科では患者が増えるとか。 「どういった方が来られますか」 そうですね、と医師。 「赤い服を着た高齢男性です」 トナカイに付き添われて来院するそうです。
2021-12-17 16:10:49
「アレとって」 夫が私を見ることすらなく言うのに腹が立った。 「アレじゃわからないわよ」 「わかるよ」 本棚見てごらん、と夫。 ただでさえ本が多いのにわかるわけない。 と思ったが案外早く見つかった。 「アレ」というタイトルの本が。
2021-12-17 22:28:04
『なぁ』 「あ?」 「あ?」 「俺が先だ」 「俺が先だ」 「何だよ」 「何だよ」 「真似すんなよ」 「真似すんなよ」 「ふざけんなよ」 「ふざけんなよ」 「だから真似すんなって」 「だから真似すんなって」 ガチャ 扉が開いた。 「オウムでもいるの?」 『いねーよ!』
2021-12-17 22:36:29
「そう簡単にしぬとか言うなよ。生きろ、生きてくれ!お前は生きなくちゃいけないんだ!」 そう言って男は生気を失った私の肩を揺すぶった。 私は朦朧とする意識の中呟いた。 「そんなに人件費削りたいですか」
2021-12-17 22:50:48
お正月、お盆、クリスマス あまりにも宗教に無節操すぎる。 日本人は神を信じていないのだろう。 「いや、そんなことないですよ。これだけ色々お祭りしていれば誰か一人くらいなんか叶えてくれるかもしれないじゃないですか」
2021-12-17 22:57:08
荒野にぽつん、とある苔むした石碑を眺めながら教授は言った。 「これはね、クリスマスの食卓にのぼるため命を落とした七面鳥の慰霊碑なんだ。近隣の店が1800年代に設置したようだね」 「へえ…」 「ちなみにこうとも書いてある。この石碑に書いてあることは全部嘘だと」
2021-12-18 09:51:52
僕の名前は三太。 この名前のせいでクリスマスは毎年憂鬱だ。 「三太!プレゼントくれよ!」 「三太!俺ニン○ンドース○ッチがいいな!」 「うるせえ!お前らにやるプレゼントはねえよ!」
2021-12-18 11:13:45
年下の友人に告白された。 あの頃はこれしか身長なかったのにすっかり大きくなってしまって。 「あなたの優しさにずっと惹かれてました」 もう年齢を理由に言い訳できない。 「いいよ。ただ君が思うほど俺は優しいお兄さんではないかもよ」
2021-12-19 13:36:07
#言葉の添え木「足音」 #140字小説 目が覚めて、家族の足音が聞こえると安心する。 特に病で臥せっているとき、近くで聞こえるととても安心する。 それは家も同じなのかもしれなくて 足音のしなくなった家は段々と朽ちていってしまうのだ。
2021-12-19 14:58:56
大好きな店のラーメンが行列なしで食べれた。有名店のケーキの最後の一個を買えた。行きたい舞台のチケットが当たった。幸福でたまらない。けれど頭の隅で鳴るこの警鐘はなんだろうか。いつもそう。私は幸せに浸る幸せを享受できない
2021-12-19 18:24:00
暗い空から降り行く雪に手を伸ばす。勿論冷たい。 こんな時は背の高いあの人に温めてほしい。 「あなたじゃないわよ、雪だるまさん」 心なしか先程より目の位置がずれてきているような。 ほら彼も待ちくたびれてる。 早く来て私の心を溶かして
2021-12-19 22:03:43
夢というものは面白い。 小説のネタにしようと夢の内容をノートにしたためることにした。 「それがそのノートなんですね」 パラパラパラ 「真っ白じゃないですか」 「覚えてなくてね」 小説家は今日も売れない。
2021-12-20 00:19:11
高齢の夫婦との会話。 「今シュウカツ中なんですよ」 ああ、そうだよな彼らの年齢なら 「シュウカツですか。ノートとかつけられているんですか?」 「はい、いろいろ情報を集めていましてそれらをまとめてノートに」 「面倒ですよね」 「全くです」 アッハッハ
2021-12-20 00:36:10