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きりゅー@低速 @cocas_gottani

年の瀬の片付け、部屋の隅から見覚えのない小箱が出てくる。はて何を仕舞ったものだったか。開けてみれば、指先ほどのローズクオーツがいくつか綿に包まれていた。淡い薔薇色がとろりと薫る。薔薇か苺か、そのあたりの味をした蜜石だろうか。取り出してかざせば、ふわりスターが浮かんで消えた(与太話

2020-12-30 20:07:15
きりゅー@低速 @cocas_gottani

残った年始の気配を辿りながら、炬燵にだらりと身を任せる。じきに正月飾りを外して、それで一区切りとなるだろう。ふと目についたのは小さな石。いつの間にか、剥かれた蜜柑のそばにオレンジのジルコンがひとつあった。はて、取り出して置いていたのだったか。舐めると柑橘系の香りが立った。(与太話

2021-01-06 22:32:37
きりゅー@低速 @cocas_gottani

漏らした吐息が白く煙った。見渡せばあたり一面の雪原に粉雪、ああなんだ夢かとぼんやり思いを巡らせる。はてさて、どうやって目覚めたものか。踏みしだいた白は存外に硬質な音を鳴らして割れる。拾い上げてみれば、薄く雪色をした透石膏で、含めば雪溶けのような甘露が口に広がったのだった。(与太話

2021-01-12 20:13:56
きりゅー@低速 @cocas_gottani

乾燥させたハーブを丸薬にして、陽光と月光によくさらす。珊瑚色の花と緑の薬草、その配合は秘伝だそうで教えてはもらえない。できたユナカイトは湿気に注意して保存すること。軽い体調不良に服用すると、はやく効くと評判だ。独特の香気と、花の蜜を思い起こさせる甘さが特徴的な蜜石である。(与太話

2021-01-19 18:24:37
きりゅー@低速 @cocas_gottani

零下の冬に、細かく泡立てた真っ白なクリームを丸く出して夜風を通す。凍り、乾燥したそれは、うまくすると滑らかな舌触りの蜜石に変わるのだ。いくつかは形が崩れ、つながり、不思議な形になってしまうが、それもまた一興というものだろう。完成したメニライトはハニーミルクのような味がする(与太話

2021-01-24 22:13:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

世間ではもう催事の話が忙しい。出歩けば、各所で甘い香りが鼻をかすめる。ミルフィーユ、という名のチョコレート菓子を知ったのはそんな折だった。ふむ、と取り出したのは雲母の蜜石。塊のまま軽く焼き、ココアパウダーをまぶしてみると、ほろ苦さの後にさくりとした食感と甘さが広がった。(与太話

2021-02-01 22:58:32
きりゅー@低速 @cocas_gottani

片手に収まるほどの箱がひとつ届いた。開けてみると、茶褐色をした六角形が固まった、珍しい蜜石が入っている。褐鉛鉱の結晶は、この日に縁深い、甘い香りを漂わせていた。さて、誰からの気遣いであろうものか。ひとつ結晶を剥いで舐めれば、程よい甘さの、チョコレートの味が口に広がった。(与太話

2021-02-14 16:27:38
きりゅー@低速 @cocas_gottani

バナジン鉛鉱。ずっとチョコだなあと思っていたが、どうもチョコに見えているのは自分だけではなかったみたいなツイートがあったので、やっぱりチョコだよなあ、と思うのでありました(与太話

2021-02-14 16:29:08
きりゅー@低速 @cocas_gottani

あと瑪瑙もマーブル模様のチョコ感がある…(与太話

2021-02-14 16:32:54
きりゅー@低速 @cocas_gottani

蜜石の原料には氷砂糖が扱いやすい。梅を愛で、それから花弁を見繕う。濃い紅から白まで、目に楽しいそれらを集めて洗ったら、ざらりと瓶に詰めて冷暗所へ。氷砂糖に花弁の色が移ったならば、月光にさらして仕上げをしよう。結晶は薄紅色のサファイアのようだ。ほんのりと花の気品が薫る。(与太話

2021-02-24 22:27:45
きりゅー@低速 @cocas_gottani

誰が言ったか、今日はミントの日なのだそうだ。収集箱の中をさらえば、薄く青みを帯びたグリーントルマリンがひとつ見つかる。さて、やはりこれはミント風味の蜜石であろうか。匂いはひやりとした水の気配。舐めてみると、すうっと、ハーブのような香気が抜けていった。舌先に甘みが少し残る。(与太話

2021-03-10 22:46:52
きりゅー@低速 @cocas_gottani

出歩けば、葉桜が目につくようになってきた。さくら、と言えば、その名で親しまれる石があるなと、そんな連想が働いて、散策から帰ると保管箱をいくつか探った。取り出したのは、花弁のような配置が美しい小さな石だ。舌先にころりと触れた桜石は、散るように溶ける。淡い甘みの余韻が香った。(与太話

2021-04-06 22:04:03
きりゅー@低速 @cocas_gottani

寒暖差がひどい時期は、ときおり不意に体調を崩す。じわりと冷え込んできた部屋で指先をさすった。取り出した蜜石は秘蔵のルビー。手の中で少し温めてから飲み込めば、あかあかとした色そのままに、じわりと熱が体に回りだす。強めの甘みが口に残った。ベリーを思わせる淡い香りが吐息に乗る。(与太話

2021-04-15 00:03:14
きりゅー@低速 @cocas_gottani

屋内では暑いくらいの日も増えてきた。もう春も終わりの頃だろう。いっとう日の照る午後、涼を求めて蜜石に手を出す。薄緑のアポフィライトを、リキュール、ライム、テキーラに漬けて冷やせば、ふるりとした艶のあるゼリーの出来上がりだ。酒精と薄荷の香りがツンと口に広がり、すぐに解けた。(与太話

2021-05-11 19:17:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

雲の端から虹が見えた。根元の方角を確かめてから家路を辿る。さてはあちらかと、心当たりに連絡を取れば、やはり欠片が割れて落ちてきたという。後日、いくつか融通してもらった蜜石が届いた。雲の乳白色に虹が浮かんだオパールは、とろりとした甘さの中にフルーツのような風味が潜んだ逸品だ(与太話

2021-05-17 19:01:50
きりゅー@低速 @cocas_gottani

モリオンをひとつ、軽く握り込んで熱を移したら、カップに落としてミルクを注ぐ。しばらくおいて混ぜてやれば、カフェオレ風に仕上がるだろう。落とす前に酒精を加えて戻しておけば、コーヒー風味のカクテルにもなる。気分が黒くなりがちな時には、飲み干して寝てしまうのが良い。…良い夢を。(与太話

2021-06-22 00:21:11
きりゅー@低速 @cocas_gottani

もやもやとした引っかかりが気分をざわつかせ、寝るには少し落ち着かない。…そんな夜には、その靄ごと溶かして飲み込んでしまうのが早いだろう。薄くけぶる影を封じた水晶をひとつ、炭酸水に落としてくるりと混ぜる。影が解けて消えたなら、ほのかな苦みが癖になる、煙水晶のサイダーが完成だ(与太話

2021-06-22 00:06:10
きりゅー@低速 @cocas_gottani

色とりどりの方解石をいったん砂糖水で戻してから、軽く凍らせてひと思いに砕く。もらいもののワインにざらりと流し込めば、サングリアを思わせる風味が華やかな飲み物になった。梅雨明けの暑さに氷の冷たさが心地よい。ゆるりと揺らして飲み干せば、甘露がじわり、染み渡ってとけていった。(与太話

2021-07-17 19:38:05
きりゅー@低速 @cocas_gottani

気付けば栗の花もとうに落ち、遠雷の響く頃になっていた。暑さに辟易して引きこもっているところへ、久方ぶりの便りが届く。夏の雷を拾ったと、送られてきたのはルチルの蜜石。赤みを帯びた金の地に、裂けたような黄金が走る。溶かして飲めば、金紅色の輝きがちいさく爆ぜて消えるのだった。(与太話

2021-07-30 23:40:54
きりゅー@低速 @cocas_gottani

晩夏、残暑と季節は移り、涼むにはまだ少し早いが、秋に差し掛かる頃のこと。送られてきたのは夏空を固めた蒼天の石。鮮やかなスカイブルーのトルコ石は、戻して冷やせば、ほんのりと氷菓の甘みを宿していた。なにブルーといったのだったか…。ぼんやり思いを巡らせるが名が出てこない。はて。(与太話

2021-08-30 23:17:16
きりゅー@低速 @cocas_gottani

彼岸も過ぎ、暑さが去ったかと思ったものの、ここ数日はまたじわじわと汗ばむ陽気だ。すっきりしたいと手持ちを探って、取り出したのはライムグリーンの蜜石ひとつ。陽光に透かせばまばゆく燦めいた。そのスフェーンを軽く冷水にさらして舐める。果実の酸味とかすかな苦味、甘さが口に広がった(与太話

2021-10-06 17:26:03
きりゅー@低速 @cocas_gottani

秋をどこかへ置きやって、気の早い冬がやってきた。急な寒さに諸々の準備が間に合わない。暖を取ろうと淹れたカフェオレに、金茶色の蜜石をひとつ放り込めば、繊維状に解けたタイガーアイがきらりとカップに沈んでいった。キャラメルのような香りとほのかな甘みが、冷えた身体にじわりときく。(与太話

2021-10-22 21:52:54
きりゅー@低速 @cocas_gottani

遠く、菓子を強請る子らの声が聞こえてくる。今日はそんな日だったか。ハロウィーン、幽明の交わる祭典にはどんな石が合うだろうか。開いた箱には爪の先ほどのクリソベリル。灯火にかざせば、緑の輝きは赤く化ける。味も化けるという話だが、希少な蜜石なので、食べてしまうには惜しいのだった(与太話

2021-10-31 17:57:49
きりゅー@低速 @cocas_gottani

流石にアレキは食べづらいのである(与太話

2021-10-31 18:00:34
きりゅー@低速 @cocas_gottani

すっかりと引きこもっているうちに、時候は大寒も過ぎて立春の頃となっていた。根の生えてしまった体をなんとか動かし、部屋から外へと出掛けると、蝋梅の枝に蜜石を見つける。雲母の花に水晶の実を添えたスターマイカは、さくりと割れて蜜を落とす。甘やかな香りがしばし口に残ったのだった。(与太話

2022-02-06 22:31:02
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ふた月ほど引きこもっていたらしい(与太話

2022-02-06 22:34:05
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ちらちらと庭先に雪が舞う。暖を取るものはないかと思案して、ひとつ晶洞水晶を取り出した。芯をくりぬいたようにくぼんだそこに、適温の白湯をそうっと注いで待つことしばらく。ほんのりと石が熱を帯びたころに中身を含めば、蜜の溶け出した甘みが喉を温めていく。ほう、と吐息が細く零れた。(与太話

2022-02-12 16:22:19
きりゅー@低速 @cocas_gottani

これはたぶん熱燗でやってもいい(与太話

2022-02-12 16:23:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

あったかいワインとかで溶かしてもたぶんおいしくなる(与太話

2022-02-12 16:23:52
きりゅー@低速 @cocas_gottani

暦に春が訪れた頃のこと。催事で出たと送られてきた包みには、小指の爪ほどのルースが幾許か。淡い薄紅の色からすると、梅か桜かであろう。試しに一粒を口に入れてみると、芳醇な果実の甘みが広がった。…桃の節句に合わせた蜜石であったようだ。艶やかなトルマリンは、柔らかく光を弾いている(与太話

2022-03-08 19:53:44
きりゅー@低速 @cocas_gottani

花冷えの雨が窓を叩く。片付けてしまったブランケットを引っ張り出すも、体温を逃がした後では心許ない。冬は越したが、とワインを開けて火に掛けた。蜂蜜、シナモン、柑橘類と、仕上げにクリーダイトの欠片を少し。オレンジにきらめくホットワインは、舌先で小さく、パチリと熱を閃かせた。(与太話

2022-04-03 16:31:33
きりゅー@低速 @cocas_gottani

安定しない陽気にあてられ、心身の億劫な日が多い。寝床でぱらぱらと本などを捲るも気はそぞろだ。これはさすがにまずいなと、小箱を開いて取り出したのは爪ほどの蜜石。細かく煌めくアイオライトは、口内に含むと小さくはぜて、菫の風味がほんのり香る。さて、少しは気が晴れれば良いのだが。(与太話

2022-04-30 19:56:47
きりゅー@低速 @cocas_gottani

梅雨を前に、湿気を含んだ暑さが気になる頃になってきた。冷やした蜜石でも舐めれば涼が取れるかと、シロップを取り出して石をひたす。青みを帯びた緑色が目に心地良い。しばらく待って引き上げたアマゾナイトは、ほどよい固さでほろりと割れた。ひやりとした後に甘露がとけ、仄かな涼味が香る(与太話

2022-05-14 16:07:49
きりゅー@低速 @cocas_gottani

秋まで籠もろうと整えた家には、蝉時雨も酷暑も遠く、冷房を抑えているせいかどうにも眠い。スピネルをひとつまみ、窓辺で温めてからソーダに落とす。赤い泡沫がはじけて浮かんだ。好みでオレンジと割るのもいい。氷と軽く混ぜ、飲めば、カシスの風味がぱちりと香る。少しは効けばいいのだが。(与太話

2022-08-08 21:41:56
きりゅー@低速 @cocas_gottani

処暑の末、提灯売りが庭へ来た。秋の夜長にどうですかと、透かし鬼灯を箱から出す。読書灯にいいだろうか。ふと思いついて尋ねてみると、ちょうど蜜石が出たとの返事。明かりがつかないのでよく見れば、実が石になっていたそうだ。ついでに受け取ったアンデシンは、葉脈の籠の中で赤く揺れた。(与太話

2022-08-28 13:54:23
きりゅー@低速 @cocas_gottani

冬の気配がちらつく秋の頃、路地の奥に咲く薄紅色を見た。時期からすると山茶花であろうか。了承を得ていくつかの花弁を持ち帰る。痛まぬようにそっと洗い、煮沸した瓶に氷砂糖とあわせて詰めれば、思い出した頃に淡い結晶が幾つかできた。ころりとしたモルガナイトが花の色に淡くきらめく。(与太話

2022-11-26 21:48:27
きりゅー@低速 @cocas_gottani

お久しぶりです!!! 季節感を乗せようとするとこのネタは去年やったな…となって手が止まる! きりゅーさんは風流が分からんのもの!!!

2022-11-26 21:51:07
きりゅー@低速 @cocas_gottani

大晦日。ふと思い出したのは大掃除で出た石のことだ。長い夜にちょうどいいと、燗をつけ青いソーダライトを摘まんで落とす。ゆらゆら溶け出した蜜石は、仄かに夜気をたたせて香った。くっと呷れば、日の出を待つ静けさが喉を滑る。熱と酒精が腑にしみた。さて、朝まで怠惰に過ごすとしよう。(与太話

2022-12-31 20:36:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

雲はどこへやら、初夏の気配すら感じられる陽気に、この時期の天気は気まぐれで困ると、心でぼやきながら用を済ませた。手に入れたのはいくつかの蜜石と、涼を得る為の新しい茶葉。容器に詰めて一晩おけば、仄かに菫青石の花香が薫るアイスティーになる。これからの暑さにはもってこいだろう(与太話)

2023-05-01 15:48:09
きりゅー@低速 @cocas_gottani

連日の、初夏と言うには厳しい暑さ。暦と陽気とのずれに、順応しかねた体が不調を訴える。氷を満たしたグラスの中へ、ひとつ蜜石をかつりと落とした。ネオンブルーのアパタイトが、じわりと涼を吸い上げる。やや硬い歯ごたえを残した甘露は、割れた後にほろほろ崩れてひやりと溶けた。(与太話

2023-05-18 19:20:25
きりゅー@低速 @cocas_gottani

そろそろ何の石を食べてどれをまだ食べていないのかわからなくなっております! かぶってても気にするな

2023-05-18 19:23:36
きりゅー@低速 @cocas_gottani

少々早いがお中元がわりに、と小箱がひとつ送られてきた。ひやりとしたそれは冷凍のケーキだそうで、なにやら訳ありの様子である。注意深く見てみれば、一切れが菱亜鉛鉱に置換されているようだ。うっすらとレモン色の層をまとった白い結晶は、仕込めばさぞ甘い蜜石になるだろうと思われる。(与太話

2023-06-17 10:26:52
きりゅー@低速 @cocas_gottani

七夕を前に、折れたという笹を一束、譲り受けた。短冊など書く歳でもないがどうしたものか。さらりと葉を撫ぜると思いのほか硬質な手応えがあり、ぱきりと一葉の結晶が手に残る。青みを帯びた緑色の蜜石、藍鉄鉱が光を透過して燦めいた。指についた破片を舐めれば、仄かな香気と甘みが解ける。(与太話

2023-07-05 22:46:02
きりゅー@低速 @cocas_gottani

やっと酷暑が過ぎ、一息つくも、はやばやと冬支度に思いを馳せる日が続く。だが秋霖はくるのだから律儀なものだ。暖を取りながら庭を見ていると、不意の晴れ間に雨粒が煌めいた。急な冷え込みで結晶化したか、ダンブリ石の欠片が葉の上で目を射る輝きを放っている。これも秋の実りであろうか。(与太話

2023-10-10 17:05:02
きりゅー@低速 @cocas_gottani

雪のちらつく午後、掌ほどの包みがひとつ届けられた。差出人は旧知の花屋、中には淡い紅白の蕾。椿だろうか、と手に乗せれば、ひやりと雪花のような温度が伝わる。硬質なその感触に正体を察した。インカローズの蜜石だろう。しばし蕾を握っていれば、温まったそばから甘い香気が匂い立った(与太話

2024-02-05 14:47:01
きりゅー@低速 @cocas_gottani

不安定な天候と寒暖差、どうにも気怠い日が続く。春らしい晴れ間にやっと外へ出れば、桜はとうに散り、藤の頃となっていた。ひとひら、ふたひら、花弁を集め、軽く流水にかけて小瓶へ詰める。そこに種となる細石と氷砂糖をいくらか加えれば、じきにブルーレースの蜜石がころりと出来るのだった(与太話

2024-04-25 18:19:36
きりゅー@低速 @cocas_gottani

藤をね……見に行きたいなと、思ってはいまして…………(ついてこない元気

2024-04-25 18:21:25
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まとめたひと
きりゅー@低速 @cocas_gottani

創作と石、星と幻想