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きりゅー@低速 @cocas_gottani

蜜が石になったものといえば、まずはなんと言っても琥珀だろう。しかし他にも似た石があることはあまり知られていないようだ。蜜石、と総称するそれらは水分につけてやるとシャリシャリした食感の甘味になる。今日は向日葵の蜜からできた方解石を手に入れたので、炭酸で戻して味わおうと思う。(与太話

2020-09-14 19:40:09
きりゅー@低速 @cocas_gottani

薄いミントのムースを箱に詰めて重石を置いたら、冷たい夜風にさらしながら数日おいて水気を飛ばす。そうすればほら、青がうっすら模様を描くラリマーの出来上がりだ。そのままかじってもよし、砕いて他のムースに加えてもよし、さくりと雲母のように割れる食感と、爽やかな風味が癖になる。(与太話

2020-09-14 21:24:01
きりゅー@低速 @cocas_gottani

だいたいの食べ物は水気を飛ばせば石になるし、だいたいの石は水分を与えれば食べ物になるのだ(与太話

2020-09-14 21:28:10
きりゅー@低速 @cocas_gottani

摘んだ花びらを満月に浸してあく抜きを。それから砂糖と好きな果実を添えて瓶詰めにする。水分が出てきたら砕いた角砂糖を種として入れよう。あとは勝手に結晶が育つだろう。湿度と温度は高すぎないほうがいい。仕上げに夕暮れか夜明け前の色を当ててやれば、カラフルな蛍石の蜜石が完成だ。(与太話

2020-09-14 22:12:22
きりゅー@低速 @cocas_gottani

加減を間違うと色石英ができる(与太話

2020-09-14 22:13:17
きりゅー@低速 @cocas_gottani

シナモンの皮をくるくる丸めて棒にしたら、食べやすい大きさに切ってから、溶かした寒天にとぷんと沈める。それをゆっくり冷やして固めて、じんわり水分を飛ばして乾燥を待とう。ときどき月にさらすのを忘れずに。シナモンと寒天がほどよく混ざり、カラっと乾けば黄色いトパーズの出来上がり。(与太話

2020-09-14 22:44:46
きりゅー@低速 @cocas_gottani

小さな翠銅鉱を手に入れた。そのままでは味が濃いというので、サイダーの中に入れてみると、じわりじわり、翠が広がる。出来上がったのはメロンソーダ、グラスの底には色の薄くなった鉱石がひとつ。口に含むと懐かしい味がした。不思議なもので、後味はどこかの森の薫香がかすかに漂う。(与太話

2020-09-15 18:50:25
きりゅー@低速 @cocas_gottani

そのまま食べたらきっと草餅とかの味がした(与太話

2020-09-15 18:51:30
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ああ、と小さく声が漏れた。割れてしまった。小さなかけらに分かれた天青石が、細かな光にきらめいて、うっすらと青く転がっている。…溜息をひとつ。今日の間食はこれにしようか。うすく蜜をかけてしばし待てば、じわりと柔らかくなり、ほのかなベリーと蜜の甘味が口に広がる琥珀糖の完成だ。(与太話

2020-09-17 17:58:18
きりゅー@低速 @cocas_gottani

金平糖を貰ったことを、すっかり忘れてしまっていた。梅雨を過ぎ、思い出したのは夏も終わる頃。さては溶けてしまったろうか、と申し訳なく思いつつ見れば、湿気にやられたのか、すっかり丸くなっていた。色とりどりのビーズのようなそれは、見れば石英のさざれ石に置換されていたのであった(与太話

2020-09-18 21:15:08
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ようやく月が欠けるというので、網を投げた。水盤の中でゆらゆらと光が揺れる。波紋を荒らしすぎないように気をつけ、そうっと網を引き寄せ、沈め、ゆらゆらと揺らして機会をはかると、こつりこつりと手応えがした。中には新品の月長石。まだ柔らかさの残る月の欠片は、仄かに薄荷の味がした。(与太話

2020-09-19 20:16:13
きりゅー@低速 @cocas_gottani

月齢によって味が変わるとか、なんとか(与太話

2020-09-19 20:22:02
きりゅー@低速 @cocas_gottani

庭の木に、季節外れの実が生った。はて、花は咲いたかと首をかしげ、しばらくしたが、いっこうに熟す気配がない。妙に思って摘み取ると、緑の蜜石がころりと取れた。そういえば星が落ちたと聞いたのだったか。かじったモルダバイトはまだ柔らかく、カリッと割れた中から葡萄味の蜜があふれた。(与太話

2020-09-20 00:10:09
きりゅー@低速 @cocas_gottani

モルダウ石、になるのかなとも思ったんだけど、わかりにくいのでそのままで。

2020-09-20 00:12:45
きりゅー@低速 @cocas_gottani

マスカットなら葡萄石もあるのだけれど、モルダバイトもなんか濃いマスカット味がしそう。落ちた星によってはキウイとか別の味がする(与太話

2020-09-20 00:14:55
きりゅー@低速 @cocas_gottani

宇宙硝子は何の味? みどりのおいしい果実のお味!

2020-09-20 00:17:49
きりゅー@低速 @cocas_gottani

荷物がひとつ届く。差出人は懐かしい相手。なにか変わったことでもあったか、手紙の一通でもあるかと箱を開けると、房になった黄緑色の蜜石が納められていた。添え書きによれば、マスカットが置換された葡萄石とのこと。糖分と寒さで結晶化してしまったらしい。食べ方が分からず寄越したようだ(与太話

2020-09-20 00:57:22
きりゅー@低速 @cocas_gottani

赤薔薇のジャムを注文した。薔薇輝石の欠片をよく吟味して、届いた瓶の中にいくつか忍ばせる。冷暗所においてひと月も待てば、欠片が成長をはじめるだろう。食べ頃になったら取り出して、軽く風を当ててやること。薄く割って口に含めば、かすかな香りとジャムの甘味が残ったフレークになる。(与太話

2020-09-20 15:26:40
きりゅー@低速 @cocas_gottani

午睡を邪魔され、久しぶりの相手から酒に誘われる。鯨飲することになるかもしれない、と取り出したのはアメジストだ。砕くにはすこし硬いそれを、シロップにつけて夜までおけば、淡い葡萄酒色のふるりとしたゼリーに仕上がる。容器に詰めて保冷すれば土産に良い。これで悪酔いは防げるだろう。(与太話

2020-09-22 16:53:36
きりゅー@低速 @cocas_gottani

沸かした湯に、大きめの蜜石をひとつ落とす。今日の気分はシトリンだ。薄い黄色がだんだんと溶けて境界をなくす。姿が見えなくなるまでかき回し、ひとくち味見をしてみると、ふわり檸檬の香りが広がる。甘さは少し控えめで。後味はほのかな蜂蜜の風味。いい具合のレモネードができた。(与太話

2020-09-26 14:09:35
きりゅー@低速 @cocas_gottani

夜市が広がるらしいと小耳に挟む。出掛けてみれば、秋の気配に浮かれて集まってきたのか、店主も品物も、客もさまざま、大小幽明みな関係なしに入り混じっている。いい夜があるよ、と売り込まれたのは藍色のオパールで、舐めればたちまち眠れるとのこと。夜空の味がするというが、はてさて。(与太話

2020-09-27 00:37:15
きりゅー@低速 @cocas_gottani

寝かせておいたベリルを取り出す。緑柱石の名とは裏腹に色の多い石だ。今日は薄く色づいたものだけを選んでリカーに漬ける。白藍、薄紅、浅黄、藤、うっすらとした石たちがゆらゆらと揺れながら沈んでいった。短めに漬けて引き上げれば琥珀糖に、もうすこし長く漬けておけばゼリーになるだろう(与太話

2020-10-03 18:49:41
きりゅー@低速 @cocas_gottani

酒漬けベリル、おやつにつまんでたらめっちゃ酔いそう(与太話

2020-10-03 18:52:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

冷え込み始めた空気の中を、氷砂糖の瓶を片手に日の出をめざして歩いてゆく。まだ空は暗い。小高い丘の上、起き出した小さなものたちと挨拶を交わしながらしばらく待てば、空のへりが明るくなりだした。オヤ、太陽を捕まえにきたのかい、と問いかける聲に、日長石が入り用になって、と頷いた。(与太話

2020-10-04 23:00:19
きりゅー@低速 @cocas_gottani

スライス瑪瑙をいくつか並べ、思案する。水分で戻すのも悪くないが、スライスは少し炙ってから砕くのもいい。トースターなら手軽に焼ける。表面はうっすらと焼き目がついて香ばしく、中はパリッと、軽い食感の甘味になるのだ。選んだのは赤の鮮やかなサードオニキス。苺の味でもするだろうか。(与太話

2020-10-08 23:38:06
きりゅー@低速 @cocas_gottani

オレンジ色っぽいサードオニキスは甘味というよりも鮭っぽいのでしょっぱいかもしれない(与太話

2020-10-08 23:56:10
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ラピスラズリのかけら、ひとつ。沸かした湯に落とせば鮮やかな藍色が溶け出してゆく。こがね色がちらちら輝き、じきに泡になって消えていった。蒸気はうっすら夜の匂いを含んで瑠璃色に香る。夢見が良くなるという古い処方だ。さて、少しは眠れるかと飲み干すと、まぶたが重くなった気がした。(与太話

2020-10-09 23:30:31
きりゅー@低速 @cocas_gottani

急に寒くなった陽気のせいか、雪に混じったアラザンに埋まる夢を見た。ころりとした銀色が降り積もり、寝転がった体のそこかしこに溜まってゆくのだ。甘いが息苦しい。目覚めた手元には真珠があって、ああお前の仕業かと腑に落ちる。照りのある鈍い白色は、苦情を受けて少し笑ったようだった。(与太話

2020-10-10 17:44:43
きりゅー@低速 @cocas_gottani

夕刻、陰干ししていた蜜石を回収して箱へと戻す。うすく緑の入った藍晶石が、こぼれてかつりと底に落ちた。幸いに欠けはないようだが、と拾えば、ひやりとした感触が指に伝わる。これは冷たいソーダの味でもするだろうか。ひとつくらいつまんでも構わないだろう、と誘惑の囁きが耳を掠める。(与太話

2020-10-11 20:27:43
きりゅー@低速 @cocas_gottani

金木犀の季節、折りよく見つけた桂花茶を一袋。コレを混ぜると香がいっそう立つョ、と小さな店主は蜜石をひとつつけてくれた。細かい金色を内包したルチルクオーツは、砕いた花弁を混ぜて作ったものだろうか。日に透かせばちらちらと輝き、鼻を寄せれば、秋口の甘い匂いをわずかに放っている。(与太話

2020-10-14 19:15:44
きりゅー@低速 @cocas_gottani

急に冷えた陽気のせいか、どうも風邪を引いたらしい。痛みはじめた喉には何がよいだろうかと、手持ちを漁ってみると、トロリとした琥珀が目についた。たしか蜂蜜は良いというし、この蜜石も悪くはないだろう。温めてからひとつ舐めると、ほのかな甘みと香りが広がった。さて、効けば良いのだが(与太話

2020-10-18 01:13:02
きりゅー@低速 @cocas_gottani

琥珀、樹液だしメープル系の味かなと思いつつ、謎の香りのする謎の蜜でもいい気がしている。美味は美味、しかし正体不明な甘い香りのする蜜石。(与太話

2020-10-18 01:15:43
きりゅー@低速 @cocas_gottani

庭の木に小さな客が来ているようだ。たくさんあるョ、と、さわさわ楽しそうな聲がする。その賑わいを肴に、一杯やろうかと戸棚をあけると、かたい!と、赤い粒がひとつふたつ転がってきた。さては柘榴石に当たったな、と笑みをこぼせば、これも食べたい、蜜にして、とねだる聲がするのだった。(与太話

2020-10-20 22:05:13
きりゅー@低速 @cocas_gottani

庭の柘榴から蜜石が採れた。砂糖と煮込んでゆっくり冷やす。赤いガーネットの色が綺麗に残った、いいジャムができそうだ。柘榴石を見つけてくれた小さな客たちに、礼もかねて分けてやるのも良いだろう。味見をすれば、酸味のある甘さが心地よく口に広がった。悪くない出来になりそうだ。(与太話

2020-10-22 22:24:28
きりゅー@低速 @cocas_gottani

紅葉が散る。砕けた破片は割れた石のようでもあり、鮮やかな紅色の雲母などがあれば、よく似るのだろうかと思考が遊ぶ。いや、色ならば、赤い…瑪瑙かなにかが近いだろうか。馴染みの店で尋ねてみれば、楓の葉をつけて作る蜜石があるという。カエデだけにメープル風味のカーネリアンだそうだ。(与太話

2020-10-26 22:21:40
きりゅー@低速 @cocas_gottani

天気雨の中、こつりと空の欠片が落ちてきた。明るい晴天の色をしたブルートパーズは、各所でいくつか降ったらしい。虹が割れる話はたまに聞くが、空の破片とは珍しい。どんな味がするものだろうか、試してみるのも一興だろうが、貴重な蜜石なので迷うところだ。空の味とはどんなものだろう。(与太話

2020-10-29 00:45:58
きりゅー@低速 @cocas_gottani

虹が割れるとたぶんバイカラーの蜜石が降ってくるのでたのしい(与太話

2020-10-29 00:51:55
きりゅー@低速 @cocas_gottani

金の星が空にのぼった。またたく光はちらちらと、黄鉄鉱のかけらを零す。夢も寝静まった深い夜に、ひっそりと星が地へ落ちる。眠れなかったものだけが、ちいさく輝く地上の星を見つけるだろう。鉄臭さが残るなら、干して風を通してやるといい。食べれば黄金の夢が見られるという噂の蜜石だ。(与太話

2020-11-04 18:57:11
きりゅー@低速 @cocas_gottani

猫が一匹、もの言いたげな瞳でこちらをじっと見つめている。あいにく、餌に良いようなものは持っていないのだが…。さて、どうしたものかと、ひと撫でして、お前、何か欲しいのか、と尋ねてみるが返事はない。代わりにぐっと手のひらを押される。すると、金緑のキャッツアイがひとつ転がった。(与太話

2020-11-08 22:25:05
きりゅー@低速 @cocas_gottani

ねこのキャッツアイ、おいしくはないがふかふかのけもの臭がしそうで別種のおいしさはある(与太話

2020-11-08 22:31:04
きりゅー@低速 @cocas_gottani

冬は氷晶石の精製がはかどる季節だ。もう少し寒くなった頃、霜柱を見つけたら、手早く氷の部分を切り出しておこう。崩さないよう容器に移す。重ねた霜柱の上から静かに重石を置いて、そのまま冷暗所でゆっくりと熟成させてゆけば、数日で結晶ができるはずだ。ひやりとした口どけの蜜石になる。(与太話

2020-11-11 00:27:44
きりゅー@低速 @cocas_gottani

立ち枯れた薔薇が結晶化していた。許可を得て、そっと花を摘み取ると、上物のデザート・ローズになっている。そんなものをどうするんだね、そんな問いかけに、食べるのです、と応じて笑った。これは焼き菓子のような食感の甘味になるので、と続けて言えば半信半疑と言った風。包んで持ち帰る。(与太話

2020-11-11 19:01:30
きりゅー@低速 @cocas_gottani

冬の海を固めて砕く。青く冷たい水の欠片は、ほのかな塩気を残した蜜石になるだろう。湿気を避け、冷暗所に保存して熟成させればアクアマリンの結晶になる。甘さの中に潮の気配を残したそれは、どこか涙のようでもある。枯れた水を呼び戻すとも伝えられる蜜石だ。たまには泣くのも良いだろう。(与太話

2020-11-23 00:17:12
きりゅー@低速 @cocas_gottani

氷砂糖を瓶に詰め、夜を待つ。青紫に染まりはじめた空に瓶をさらして色を写し取れれば、ひとまず上出来。時間を外すとムラができるか色が変わってしまうから、さらすだけとはいえ中々に難しい。これを繰り返して定着させれば、宵の色の美しいタンザナイトが出来上がる。穏やかな甘味の蜜石だ。(与太話

2020-11-27 23:25:40
きりゅー@低速 @cocas_gottani

とにかく億劫で、何もやる気が起きない。…そんなこともたまにはあるだろう。こんな時はアベンチュリンのきらめきに頼るのも良いと、オーソドックスな緑の蜜石をひとつ手に取る。光に透かせば、内包物が細かく砂金のように輝いた。口に放り込んで転がせば、泡がはじけるような感触がする。(与太話

2020-11-29 00:06:16
きりゅー@低速 @cocas_gottani

星月夜の庭を歩く。影に星をうつした蜜石は、新月の日によく見つかるという。ものは試し、夜の散歩も悪くはない。ランタンをかざしてしばし、視界の端でちかりと星がまたたいた。サファイアか、指先ほどのブラックスターがひとつ影の中から採れる。珈琲のような苦味の中に星の弾ける味がした。(与太話

2020-12-06 21:50:34
きりゅー@低速 @cocas_gottani

寒冷地では、冬の始まりに雪のような昆虫が飛ぶそうだ。参考資料に写っていた雪虫たちは小さな白い綿毛のようで、なるほど、ちらちらと降る六花によく似ていた。保管箱から取り出したのはオーケン石。白く細い結晶が密集した、不思議な形状の蜜石は、ふわりと甘味を残して口の中で消えてゆく。(与太話

2020-12-07 22:58:20
きりゅー@低速 @cocas_gottani

オーケン石は絶対ふわっと甘くてしゅっと溶けるに違いないのだ…(与太話

2020-12-07 23:00:43
きりゅー@低速 @cocas_gottani

空気が冷えて透明になる季節。凍て空は遠く高く、欠片をかすめ取れば鮮やかな薄青色の蜜石となった。噛めばぱきりと綺麗に割れる。氷砂糖に色を写したユークレースの結晶は、冬の冷たさと透明感をほのかにまとってきらめいていた。舌先に残る甘味のあとに、薄荷のような清涼感がうっすら残る。(与太話

2020-12-24 00:11:31
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まとめたひと
きりゅー@低速 @cocas_gottani

創作と石、星と幻想