#いいねしてくれた人をイメージして短文を書く で書いたものをまとめました 。 イメージSSを頂いたものも併せて飾らせていただいております。ありがとうございます!
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ダチョウ兄さん @dach0000023

奔る筆に揺らぎはなく。その筆致は踊る様に、切り裂くように、白を黒く塗り替えていく。細く、太く、強く、柔く。自在の動きに迷いは滲まず。流れる流水に似た動きは人を引き付ける。一つの筆から生まれいずるその形には、張りつめた精神が宿っていた。

2022-12-14 23:48:41
ダチョウ兄さん @dach0000023

気ままなようで、何かとせわしない。白い尾を緩く掲げて、心地よい場所をあちこちに。朝の陽だまり、昼の窓際、午睡はストーブ前に、夜は毛布に埋もれて。彼方此方へ場所を移しては心地よさに喉を鳴らして惰眠を貪る。猫の一日とは、気ままなようでせわしない。その答えとばかりに、欠伸を一つ。

2022-12-14 21:32:58
ダチョウ兄さん @dach0000023

穏やかな木陰は、人に安らぎを与えるものだ。湖畔を望むその大樹は枝葉を延ばし、行く人には木陰を、休む人には涼やかな風を与えた。そうして道に迷うものがあれば、その高い梢から行く道を示して見せた。その木は今も、なお高くそびえながら人の行方を見守っている。

2022-12-14 21:44:13
ダチョウ兄さん @dach0000023

鮮やかに色めく花とは、見た目以上に人を引き付けるものだ。暗闇に、日向に、場所を選ばず。あでやかにも可憐にも咲き踊る。一目とみれば目を惹かれ、けれど手折るよりもあるがままに咲き乱れよと思ってやまぬ。美しい花とは、時折そうして人に残り続けるものだ。

2022-12-14 23:25:00
ダチョウ兄さん @dach0000023

獣は走る。地を踏みしめて、飛ぶように走る。舞う雪を恐れず気にも留めず、冷え切った風を飲み込むように走る。毛並みは黒く艶やかで、雪原に墨を飲ませたように美しい。獣は一つも振り返らず、雪の中を走っていった。温かなわが家へ行くために。その獣は狼と言った。

2022-12-14 21:28:17
ダチョウ兄さん @dach0000023

宝石を抱いたような天鵞絨の美しさを知っているか。鮮やかにすべてを染め抜く光を知っているか。どこまでも高く、青く抜ける広さを知っているか。薄くたなびく菫色のベールを抱えて白むその色を知っているか。ただその天幕は幾度となく染め変わり、未だその果てを見せない。――空に焦がれる、我が心よ。

2022-12-14 23:29:00
ダチョウ兄さん @dach0000023

剣戟が見える。刃を一つ振るう度に、火花と共にかけらを落とすような。研ぎ澄まされて、そぎ落とし、至るために進む。そのそぎ落とされたかけらに写るのは、また別の光。温かな陽だまりに咲く花の色。二色は背反して混じらず、けれど並び立つ。そうあることが、正しいように。

2022-12-14 21:39:02
ダチョウ兄さん @dach0000023

荷馬車はゆっくりと進む。ゆらりゆらり、時折荷車の端から積みすぎた藁の端々を落として。御者もロバものんきなもので、鼻歌などを歌いながら急ぐでもなく進んでいく。空は高く、青く澄んで心地よい。どうせなら遠回りもいいじゃないか。荷馬車は行く。のんびりと。

2022-12-15 11:28:31
ダチョウ兄さん @dach0000023

深く、深く、ふかく。柔らかに積み重ねた布の奥。内側に微睡むような花の色は、真珠に似た淡さを持っていた。けれどその中に抱えた宝石の色は、しんと静まり返る水底を照らす様に強く、赤く輝いて。けれど今はまだ、ゆるゆると花弁に揺られて微睡みを続けて。ひときわ輝くその時まで。

2022-12-14 22:00:39
ダチョウ兄さん @dach0000023

暖炉が爆ぜている。薪が赤々と燃えて、優しい熱で部屋を満たしてくれる。ブランケットを分け合い、それぞれのマグカップに好きな飲み物を注いだ。外にはちらちらと雪が舞っているので、今夜は寒くなるだろう。暖かで穏やかな一晩を共有する楽しみに、心の柔らかい部分が暖かくなった。

2022-12-14 21:52:58
ダチョウ兄さん @dach0000023

ま白いものは美しい。冷たく、静謐で、なお輝いて見える。光に透けて薄青に輝くそれは、しかし何もかもを隠してしまう。かの人はそのま白い袖の下に、白む肌の下に何を潜めているのか。問いかけに笑うかの人の微笑みは、冷たくも美しかった。

2022-12-15 11:17:29
ダチョウ兄さん @dach0000023

ふわふわと浮かぶシャボンは、飴色の光の中できらりと反射した。その虹の膜は触れれば容易に消えてしまう、夢物語に似ているようだ。けれどそれはしっかりと、光を跳ね返してそこにある。あるが故に、美しく。あったが故に、儚く。そのどちらもを併せ持って、シャボンは部屋に満ちていた。

2022-12-14 22:04:39
ダチョウ兄さん @dach0000023

曇天はじわりと水の気配を湛えている。今はまだ乾いた空気も、いずれじっとりと濡れそぼるだろう。少し隙間の空いた魂の内側には、詰めるものを無くした焦燥感が募るばかり。失うばかりが道であった、けれどその先で見つけた眩いものに、ひどく焦がれているのかもしれない。掌に染みついた硝煙が嗤う。

2022-12-15 22:10:38
ダチョウ兄さん @dach0000023

優しい光。吹き消せばすぐに消えてしまいそうなほど小さな光。けれど何よりも、暗闇を優しく照らす光。その輝きは柔らかく、凍えたものにしみいるような熱を灯すだろう。優しい光。灯った熱は小さな灯火として、新しい光になった。優しい光、けれど何よりも強い光。

2022-12-14 23:35:09