楠羽毛
@kusunoki_umou
てんの?」 悠斗は言い訳をしようとして口ごもった。蓮の言葉が頭の隅にこびりついている。 「入ってよ。お菓子あるよ」 「ごめん、葵はこれないって……」 「うん、聞いた。あの子はもー、ねえ」 結衣はこともなげにそういって、軽く眉をしかめた。 一度家に帰った後、葵と一緒にここに来るはず
2022-02-09 20:00:00
楠羽毛
@kusunoki_umou
だったのだが、家を出る直前に葵から電話があり、行けなくなったと言われたのである。なんでも、母親の誕生日で、家族で出かける約束なのを忘れていたということだった。 「入んなよ」 結衣はもう一度そういって、悠斗を招きいれた。 * 玄関の扉をくぐると、ひんやりした冷気が肌をしめつけた。
2022-02-16 20:00:00
楠羽毛
@kusunoki_umou
幅広の明るい廊下を通って、リビングへ通される。 大人が横になれるくらいの白いソファに、結衣の弟の憲史が、ちょこんと座っている。 親の姿は見えない。家にはいるようだが、ほとんど会ったこともない。 「ゆーくん!」 憲史はこちらを見るや、目を輝かせた。 「ゲームやろうぜ! おれ強い
2022-02-23 20:00:00
楠羽毛
@kusunoki_umou
から」 言いながら、ばたばたと、ソファの対面にあるテレビに走っていく。 「待っててね」結衣はそういってキッチンのほうへ歩いていった。と同時に、ぐいと手のひらにコントローラーが押し付けられる。 「早くやろーぜ」子どもらしい押しの強い笑顔で、迫ってくる。 「わかったよ」悠斗はソファに腰
2022-03-02 20:00:00
楠羽毛
@kusunoki_umou
をおろした。 憲史は結衣によく似た、線の細いととのった顔だちをしている。 しかし、雰囲気はまるで似ていない。 「よーしっ」 憲史がゲーム機のスイッチを入れる。ロゴ画面がテレビに映った。 「あ、もう始めてる」 盆に三人分のジュースとクッキーをのせて戻ってきた結衣が、口をとがらせた
2022-03-09 20:00:02