少年少女騎馬戦小説です。よろしくどうぞ。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

少年少女騎馬戦小説「四年五組 騎馬軍団の戦い」。毎週水曜日夜8時にツイートを追加します。 ツイートまとめ(mint) min.togetter.com/0kKwHVj ↓下記ではすでに完結済 小説家になろう ncode.syosetu.com/n4523ek/ bookwalker bookwalker.jp/ded7a5e91e-3a6… pic.twitter.com/aBJxGZbmbt

2021-02-17 20:00:09
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楠羽毛 @kusunoki_umou

*けいどろ(1)  およそ3メートル四方の砂場がある。  牢屋である。  今は、ふたりの囚人が中におり、すぐ外にはふたりの見張りが立っている。    けいどろ、という遊びだ。 『泥棒』は、決められたエリアの中で、好きなように逃げる。 『警察』がそれを追う。  警察に捕まった泥棒は、牢屋

2021-02-17 20:00:12
楠羽毛 @kusunoki_umou

に連行され、囚人となる。  囚人は、助けにきた仲間にタッチされなければ、牢屋から出ることができない。  すべての泥棒を牢屋に入れたら、警察側の勝ち。  時間切れまで逃げきることができたら、泥棒側の勝ちである。  さて━━  牢屋と設定された砂場の中にいるのは、小学校高学年くらいの少

2021-02-24 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

年と少女である。  少年はかなり小柄で、幼い顔つきではあるが、なんとなく目つきに険がある。  夏らしくない、裾長のワンピースをきた少女は、少年より少し背が高く、大人びてみえる。  ふたりは、砂場のまんなかあたりにしゃがみこんで、なにやら手を動かしていた。  小さな声で、なにやら話しな

2021-03-03 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

がら、砂山や穴をつくっているようだ。 「やる気ねえのかよ、」  ぼそりと、見張り役の、坊主頭の少年がつぶやく。  見張りは、男女ひとりずつ。  もうひとりは、目の大きな、細身の少女である。  ふたりとも、砂場のわきに突っ立って警戒しているのだが、まったく動きはない。 「ちょっと、見まわ

2021-03-10 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

りしてくる。」  見張りの少女は、くるりと見回してから、砂場に背を向けて歩きだした。 「おい、芽衣。」  少年は、不満そうに声をあげたが、すぐに思い直した。  砂場の西と北は、高さ3メートルほどの石垣でふさがれている。  南東にはトイレの建物があるから、攻めてくるには、南か東のどちら

2021-03-17 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

かをまっすぐ来るしかない。  芽衣は東に歩いていったから、自分は南を警戒していればいい訳だ。  背後で、がさりと、音がしたような気がした。  反射的に、砂場の方を見ると、囚人のふたり━━晶子と悠斗が、こっちをじっと見ていた。  こっちを、……いや、もしかすると、その向こうを。  晶

2021-03-24 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

子の手を見る。  ぱっ、ぱっ、と、じゃんけんをするようにすばやく動かしている。  まさか。  いや、前にも別の遊びで、似たようなことがあった。  こいつらは油断ならない。  南側にむきなおって、敵を探す。  見当たらない。が、建物の陰に隠れた可能性もある。  すこし離れたところには、生

2021-03-31 20:00:03
楠羽毛 @kusunoki_umou

け垣がある。  その後ろに潜んで、こちらに走るタイミングをうかがっているのかもしれない。  ちらりと囚人たちのほうを見ると、目をそらしてそしらぬ顔をしている。  ちくしょう。 「そこから出るなよ!」  捨てぜりふのように叫んで、  少年━━翼は、いらいらしながら東へと早足で歩きだした。

2021-04-07 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

くっくっくっ、と背後から、押し殺したような笑い声がおいかけてくる。 「……牢屋から勝手に出られるわけないじゃん。ねーぇ。」  ばかにしたような声。  生け垣まで、全力で走る。  あたりを見回す。  誰もいない。  くそ。  あわてて、引き返そうとしたとき、  ずざざっ、  と、砂を

2021-04-14 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

滑らすような大きな音が聞こえてきた。 *けいどろ(2)  数十秒前━━  ふたりの少年が、木々の間をぬけて走っていた。  童顔で細おもての美少年と、頭ひとつ背は低いががっちりとした体格の少年。  そして、彼らよりひときわ背が高く、足の長い少女が、後を追っている。  ほかの『警察』は

2021-04-21 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

、本堂のところで撒いた。  あとは、この少女━━葵だけだ。  葵をなんとか振り切って、牢屋にとびこめば、囚人たちを開放できる。 『泥棒』側である少年たちは、そう考えている。  制限時間まで、あと5分ほど。  今、囚人を解放できれば、勝ちにぐっと近づく。  しかし、葵は足が速い。  この

2021-04-28 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

ゲームに参加しているメンバーの中で、……いや、来ていない者をふくめても、仲間うちで一番足が速く、すばやい。  出くわしてから、まだ10秒と経っていないのに、もう追いつかれそうだ。  ふたりは、汗だくになって、必死で走っている。  がっちりとした少年━━豊正は、ちらりと目を走らせた。

2021-05-12 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

用意はできている。 「快、」  細おもての少年に声をかける。  頷く。  ちらりと、後ろをみる。  葵は、楽しげに笑っていた。 「もう疲れたの? おまえら」  走りながらとは思えないくらい、落ち着いた声で、 「ほーらっ」  あざけるようにいいながら、手をのばしてくる。  かわす。  転びそ

2021-05-19 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

うになる。  葵は、ますます楽しそうに笑っている。  もうすぐ、階段。石段をおりれば、砂場までもう少しだが━━ (いまだ!)  豊正は、全力で地面を蹴って、走るむきをかえた。  快も、ほとんど同時に方向転換する。  葵は、ふしぎそうに眉をしかめる。  ふたりが向かう先は、いきどまりだ。

2021-05-26 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

いけがきのむこうに、転落防止用の小さな手すりがあり、その先は崖である。  いや。  崖といっても、飛び降りられない高さではない。  2階建ての窓くらいだ。  ここを飛び降りるか、石垣をうまく滑り降りるかすれば、下はもう砂場である。 「よおし。」  走りながら、目で距離をはかる。  快と

2021-06-02 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

豊正は、いけがきの間をぬけて手すりに登り、そこから跳ぶはずだ。  その数秒の間に、捕まえてやる。  いけがきの手前から、手を伸ばすだけだ。触れるだけでいいのだから、簡単だ。  あと、三歩。  二歩。  一歩━━  大きく踏み込んで、ふたりを捕まえようとした葵の右腕に、だれかの掌がふれ

2021-06-09 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

「え?」  開襟シャツをきて、黒ぶちの眼鏡をかけた、色の黒い少年であった。  いけがきの中に伏せていたらしい。中腰に体をおこして、腕を掴んできた。 「蓮、」  葵は目をぱちくりさせて、とらえられた腕をじっと見た。  その間に、快と豊正は飛び降りてしまっている。 がえてんじゃないの。泥

2021-06-16 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

棒でしょ」 「間違えてないよ。僕が捕まったんだ。警察は泥棒を捕まえたら、牢屋まで連行するんだろ」  すました顔でそう言う。  何を言っているのかわかるまで、たっぷり数秒かかった。  ようするに、蓮は、自分が捕まるのとひきかえに葵を足止めして、快と豊正を逃がしたのだ。  しかも、石段

2021-06-23 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

のほうをまわって砂場まで蓮を連れていくとなれば、さらにタイムロスになる。 「……そお、じゃ……」  葵は、一瞬顔をしかめた後、にんまりと笑った。 「動くなよっ!」  ひと声さけんで、  蓮の背中と脚に腕をまわして、思いきりかつぎあげる。 「ちょっと!」 「あぶないぞ、」  あわてて叫ぶ少

2021-06-30 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

年を、こともなげに抱えて、いけがきに足を踏み入れる。  身長はだいぶ違うとはいえ、体重はそれほど変わらない筈だが、まるで赤子を扱うようだ。  横抱きにしたまま、膝をまげて、とん、と手すりの上にとびのる。かるがると。 「お前、まさか」  連は、おびえきった声をあげながら、両手で葵のシャ

2021-07-07 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

ツをつかんだ。  胸に顔があたる。葵は気にもとめない。姿勢を低くして力をためる。 「掴まってろよお」  しんそこ楽しそうにそう言って、すらりとした長い脚を空中へと投げ出した。  蓮は絶叫した。 *けいどろ(3)  また、数十秒ほど、時間をさかのぼる。  豊正と快は、大きな音をたてて砂

2021-07-14 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

場に着地した。  あらかじめ、晶子と悠斗が、大きな砂山をつくってある。そこをめがけて、飛び降りたのだ。 「よしっ」  にいっと笑って、晶子は豊正の手に触れる。悠斗は快に。  これで、2人は牢屋から出られるようになった。  すばやく周囲をみまわす。 「あっちに芽衣、あっちに翼が」  悠斗

2021-07-21 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

がみじかく言う。豊正がうなずく。 「芽衣のほうが遠いよ、あっちへ行こう」  早口で晶子が言うと、4人は東側へいっせいにかけだした。  翼は、もう気づいて、こちらへ向かってきている。  芽衣の姿は見えない。  砂場から、トイレの建物の横へと入る。翼からは死角になる。  と、いきなり、晶子

2021-07-28 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

が悠斗の右手首を掴んだ。  悠斗は、一瞬、とまどいを目にうかべて手元をみる。  長い指先に目がいく。くるんと、大人のように伸びた指が、きれいに手首に巻きついている。  晶子は、先をいく二人に目くばせをした。  そのまま、無言で、悠斗をトイレのほうへ引っ張っていく。  豊正と快は、二人

2021-08-04 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

のほうをみてうなずき、そのまま走っていった。 「ここじゃあ━━、」  悠斗は、不安そうに囁きかけた。晶子の考えていることはわかった。  二人がいるのは、トイレの入口を隠している壁の裏。砂場から直接は見えないが、その気になって横からのぞきこめば、まる見えである。 「大丈夫、翼は気づかな

2021-08-11 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

いよ」  右手首を握ったまま、左手で悠斗の肩をかるく二回叩く。  背丈は、悠斗よりほんの少し高いだけだ。けれど、こうしていると彼女はずっと大人のようだ。  近くで、舌打ちの音。悠斗は身を固くした。  それから、回りこんでかけぬけていく足音。翼だ。  砂場につくったでこぼこのおかげで、

2021-08-18 20:00:03
楠羽毛 @kusunoki_umou

ほんの一瞬だが足止めにはなったはずだ。  それでも、数秒後には、トイレのすぐ横を、気配が走りぬけていく。  少し、離れたところで、芽衣の声がきこえる。  豊正と快がみつかったようだ。逃げきれるといいが。  なぜか、蓮の悲鳴がきこえた。  二人は目を見合わせた。蓮は、わざと捕まって敵

2021-08-25 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

を足止めする役だ。豊正と快が降りてきたタイミングからすると、今ごろ牢屋に連行されているころだ。  つづけて、どしん、と大きな音。  少年たちが飛び降りたときよりも、ひときわ派手な━━  まさか。  悠斗は、晶子の掌にじんわりと汗がにじむのを感じた。  かすかな震えが、腕から伝わって

2021-09-01 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

くる。  横をむいて、顔をみる。  晶子は、こちらを見ていなかった。  ただ、震えながら、目をつりあげて嬉しそうに笑っていた。 *けいどろ(4)  着地してから数秒、葵はひざをまげて衝撃をこらえていた。  蓮は、葵の腕からころげおちるようにして砂場に座りこんだ。 「無茶苦茶すんなよ

2021-09-08 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

!」  かん高い声で、もう一度叫ぶ。 「いいじゃんか、……」  さすがに息を切らせて、葵はこたえた。二人とも、一瞬で汗まみれになっている。 「一番、近いんだもん。……ちゃんと、抱っこしといてやったろ?」  口角をあげて、してやったりとこちらを見下ろしてくる葵に、 「……ふざけんなよ、も

2021-09-15 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

う……」  蓮は、目をふせて呻くしかなかった。 「葵!」  東側から声がした。  翼である。  ひどく驚いた顔をして、トイレの脇を抜けてまっすぐ走ってくる。 「飛び降りたんか? ふたりで?」 「……二人でじゃねえよ」  蓮がそう呻いた。葵は、にんまりと笑ってガッツポーズをとった。  翼は

2021-09-22 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

ちょっと眉をしかめて、すぐ話題をかえた。東側をさして、 「逃げられた。あっちへ全員行ったはず。芽衣も」 「よおし。追っかけるよ」  翼の肩を、ぱしんと叩く。 「見張りは?」 「いらない。もう時間ないもん」  とんとんと砂をふみしめて、葵は足踏みをした。動きたくてたまらないようだ。 「勝

2021-09-29 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

手にダツゴクすんなよ」 「しねーよ、ばか」  蓮と軽口をかわしてから、すぐ走りだす。翼もあわてて後を追う。  脇目もふらずに。  それから十秒ほどして、晶子と悠斗が壁の裏から出てきた。 *  ポールのてっぺんに設置された大時計が、1時をさした。時間切れだ。 * 「……うっそだろー!

2021-10-06 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

葵は地団駄をふんで叫んだ。 「蓮、絶対ダツゴクしたろ! 駄目っていったじゃん!」 「してねーよ」  蓮は、肩を大きく上下させて地面にへたりこんでいた。最後まで逃げ切ったのだ。  晶子は、蓮を解放してすぐ、芽衣に捕まった。  豊正と、快と、悠斗は、つづけざまに葵に捕まり、まとめて連行

2021-10-13 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

された。  そのときになって、ようやく、葵は蓮が牢屋にいないことを知ったのだ。 「ちゃんと、タッチして逃がしたよ」  晶子が、ふんわりと目を細めながらいった。  ゲームが終わって、両チームあわせて11名が、砂場に集まっている。  ほとんど、汗もかいていないのは、晶子だけだ。 「嘘じゃん

2021-10-20 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

! だって晶子、逃げてすぐ捕まって……あ!」  葵は、ようやく思いあたって大声で叫んだ。 「……あー! 隠れてた! 隠れてたんでしょ!」 「うん、……そうだよ」  晶子は、こらえきれずくつくつと笑い声をあげた。 「そこにいたんだ! ずっりー!」 「ずるくないよ」 「ずるい!……あ、じゃ

2021-10-27 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

ーコイツが飛び出してきたのも、」 「うん、私が考えた作戦」 「ずっりぃー…」  葵は子どもっぽく頬を膨らした。晶子は、なだめるように手をふって、 「葵たち強いんだもん。作戦考えないと」 「そーお?」  葵の表情はころころとかわる。  軽いヤツだな、と悠斗は思う。  あるいは、もう少し違う

2021-11-03 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

感想をもった者もいたかもしれない。  いずれにせよ、この戦いは、晶子たち5組が葵の率いる1組に勝利して、幕をとじた。 *  ケイドロが終わって、なんとなく弛緩した空気になった。  快と芽衣は、それぞれ用事があるらしく、帰っていった。  葵たちはまだまだ遊び足りなかったが、夏の暑さに

2021-11-10 20:00:01
楠羽毛 @kusunoki_umou

は勝てず、木陰でだらりと休んでいた。 「おーい!」  ふいに、澄んだ高い声がきこえてきた。  道路のほうからである。  皆が振り返ってそっちを見ると、サマーカーディガンの上に革鞄を背負った少女が立っていた。 「結衣!」  葵がうれしげに叫んだ。少女は、かけ寄ってきてにいっと笑った。赤ぶ

2021-11-17 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

ち眼鏡の奥で、長いまつげが元気よく揺れた。 「何やってたの?」 「ケイドロ。こっちが1人少ないんだ。入れば?」  蓮がそう言った。なんとなく、そっけない言い方だった。 「やりたいけど、」  結衣は残念そうに目を伏せて、太腿のあたりをかるく叩いてみせた。「今日これだからさあ。」膝上丈の

2021-11-24 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

スカートのことを言っているようだ。 「いいじゃん。コイツもワンピだし」  葵が親指で晶子を指す。もっとも、晶子は裾が乱れるほど走っていない。 「丈がちげーでしょ。それにこれから塾なんだよねえ」 「サボれば?」  葵がこともなげに言うと、結衣は一瞬だけ暗い顔をして黙りこんだ。 「……それ

2021-12-01 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

よりさ、3時には塾終わるから、うち来ない? 『ハリーレース』買ったんだけど」  今月発売されたばかりのテレビゲームである。 「まじ? 行く!」  真っ先に葵が反応した。 「お前らも行くっしょ? 晶子は?」 「私、今日はだめ。早く帰らないと」  晶子は、うすく笑ったまま、首をふった。 「

2021-12-08 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

なんだよ。じゃー、……」 「おれと陸と翼は、このあと豊正の家にいくから。」  葵の機先を制するようにそう言ったのは、これまで黙っていた、茶髪の少年だった。蓮や悠斗のほうをみて、「お前らは? どうする?」と、続ける。  蓮は、すこし目線を動かしてから、 「俺も、豊正んとこ行こうかな。…

2021-12-22 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

…いい?」 「いいよ」豊正は頷いた。  最後のひとりとなった悠斗は、 「いくよ。3時半くらいでいいの?」 「うん!」  結衣はうれしそうにこたえた。 *  少しして、豊正と大和と陸と翼、それに蓮は、公園を出ていった。  去りぎわ、蓮は悠斗の袖をひっぱって、トイレのほうに連れていった。

2021-12-29 20:00:00
楠羽毛 @kusunoki_umou

トイレの入口の壁の裏、さっき、悠斗たちが隠れていたあたりに来て、 「さっきの、お前ちょっとよくないぞ。」 「え?」  言われて、悠斗は軽く眉をしかめて聞き返した。蓮はさらに声をひそめて、 「ああいうときは、男のほうに来るもんだろ。」 「ああ、……さっきの。豊正んとこに? 誘われてな

2022-01-05 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

いじゃん」 「関係ねーよ。そういうもんなの。」  おかしいな、と悠斗は思った。  こんなことを言う奴だっただろうか? 「女子と遊ぶなってこと? 晶子や葵はいいのかよ」 「そういうんじゃなくて……、」  蓮は少し苛立っているようだった。深く息をついて、 「みんなで遊ぶのはいいんだよ。家に

2022-01-12 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

行くとかっていうのはさ……」 「なに言ってるのかわかんねーよ」 「お前さ、」  言いにくそうに、しかしきっぱりと蓮は続けた。  眼鏡の奥の目が、じっとこちらを見つめていた。 「たまに、……言われてるんだぞ。晶子の金魚のフンって。」 「おまえ!」  悠斗は反射的に蓮の肩をつかんだ。蓮は目

2022-01-19 20:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

をそらさなかった。 「おれが言ってるんじゃないよ。でも、そういうのあるだろ。あんま女子と仲良くしてると。わかるだろ」 「わかんねーよ、」  吐き捨てて、肩から手をはなした。  目をそらす。 「こら!」  とつぜん、頭上から明るい声が降ってきた。  葵だった。  2メートルほどの壁の上に手

2022-01-26 20:00:03
楠羽毛 @kusunoki_umou

をかけて、こちらに顔をつきだしている。  ジャンプしてよじのぼったらしいが、息も乱さずににやにや笑っている。 「なに、こそこそしてんだ? オトコ同士で!」 「ばーっか!」  蓮は叫びかえした。悠斗はふっと息をついた。 *  かちゃん。  ドアがあいて、結衣が顔をだした。 「なに突っ立っ

2022-02-03 20:00:00