P-PingOZ第14話『Good Mentor』

P_PingOZ @P_PingOZ

「じゃあ、良かった。実は先輩にお渡しする物があって！」なんとなく階段を下り始めているお二人。八重さんが通勤鞄から、長方形の封筒を取り出しました。「こちら」「うん」ハナダさんが受け取った封筒には、白地に水色のインクで『Invitation』と書かれています。「挙式の招待状です」41

P_PingOZ @P_PingOZ

「お？　おおー」ハナダさん、立ち止まって封筒を眺めます。「おめでとうでいい？」「ふふ、ありがとうございます。いいやつです」ハナダさん、青い目を大きく開いてから、にっこり笑います。「それは、おめでとう。ご両親、色々許してくれたんだ」「はい！　その節はご心配をおかけしました」42

P_PingOZ @P_PingOZ

「まったくだ」ハナダさんは、八重さんからの招待状を丁寧にリュックにしまいました。「実は」そのハナダさんに顔を近づけた八重さん、ヒソヒソ声になりました。「先輩だけお誘いするんです」「え？」「あんまりこっちの会社から人を呼ぶと、親も良い顔しないですし」43

P_PingOZ @P_PingOZ

八重さんのご実家は、ましろ地区に自社ビルを持つ食品輸入会社です。長子の八重さんがご両親の方針に反抗してこちらに就職したため、ご両親がやってきて、エントランスで喧嘩になったことがありました。その時偶然居合わせて、後輩である八重さんの肩を持ったのがハナダさん。44

P_PingOZ @P_PingOZ

「あの時先輩が応援してくれたから、親と交渉できるようになったんです。仕事もめちゃくちゃ助けてもらったし」「お相手は承知してるの？」まだ心配そうなハナダさんに、八重さんは頷きます。45

P_PingOZ @P_PingOZ

「どうしたの」隣で一緒に手すりに寄りかかったハナダさん、ご自分も本調子ではないはずなんですが、八重さんを気づかわしげに除きます。「車保の時、みんなの面倒な受電引き受けてくれて……調子崩されたの、そのせいじゃないですか」「いや、それとこれとは別よ」46

P_PingOZ @P_PingOZ

「嘘つき。お昼、うちの課長がそっちの課長と話してるの聞いたんですよ」八重さんに睨まれて、ハナダさんは顔を真下に向けます。何か言おう、としていらっしゃるのですが、顔を上げては八重さんの方を向けず、結局息を吐いて、うつむいてしまわれました。47

P_PingOZ @P_PingOZ

「いや、責めたいんじゃなくて！」八重さんが咳払いしました。「先輩が頑張ってくれたおかげで、私は元気に好きな人と結婚できたよって言うところ、見守って欲しいんです。こんなにスクスク育ちましたよ～！　ありがとうございます！　って」48

P_PingOZ @P_PingOZ

ハナダさん、首だけ八重さんのいる左側に向けます。「……良い子に育ったねえ」少し掠れた声で、ハナダさんは言いました。「こっちこそ、ありがと。ちゃんと先輩やれてたみたいで良かった」49

P_PingOZ @P_PingOZ

ぐす、という音がハナダさんから聞こえました。「実は部外秘の仕事でめちゃくちゃ忙しくて、1か月ぐらいコレで」ハナダさん、右手の人差し指を上下させます。このビル内だけで生活している、という意味です。「うわ」「で、午前の件でちょっと情緒もアレで、メシも食えてない」50

P_PingOZ @P_PingOZ

ハナダさん、手すりから勢いよく体を剥がしました。「メシ付き合ってくれる？」「オッケーです！」八重さん、体を反転させて元気よくお返事してくださいました。「じゃあ外行こう、外！　着替えるわ。先降りて待ってて」「え？　別に気にしないですよ？」「届いたきり着てないジャケットがあるから」51

P_PingOZ @P_PingOZ

そうして、エントランス階の階段でお二人は別れます。八重さんはハナダさんに手を振って、直通エレベーターで1階へ、ハナダさんはそれを見送って、各階停車エレベーターで社宅の階まで。幾分軽やかなハナダさんを乗せ、エレベーターがベルのような開閉音を鳴らして閉まりました。52

P_PingOZ @P_PingOZ

【スタッフ】ナレーション　ドロシー／音声技術　琴錫香／映像技術　リエフ・ユージナ／編集　山中カシオ／音楽　14楽団／テーマソング　「cockcrowing」14楽団／広報　ドロシー／協力　オズの皆様／プロデューサー　友安ジロー／企画・制作　studioランバージャック

P_PingOZ @P_PingOZ

P-PingOZ　「Good mentor」　終わり

P_PingOZ @P_PingOZ

こんにちは、P-PingOZ広報のドロシーです！　今日のエピソードはとても働く人のお話でした。みなさんも、適宜息抜きなどしてくださいね。

P_PingOZ @P_PingOZ

本放送ではお話しませんでしたが、こちらの皆さんに「上席」についてご紹介しますね。「上席」はRC保険会社の社内で開発された音声ソフトで、相槌、謝罪のパターンがいくつも登録されています。

P_PingOZ @P_PingOZ

理不尽な叱責や過剰な謝罪の要求をするお客様を、上席の登録音声から適切なものをタップして返答する「上席」係さんが、6課ではローテーション制で決まっています。社内では、その業務にDJというあだ名がついているそうです。

P_PingOZ @P_PingOZ

あとは、お名前についてです。第02特区ではその年のテーマカラーが決まっていて、その色にちなんだお名前を貰うことが多いんです。今回のエピソードで言うと、ハナダさんとターコイズさんがそうで、お二人とも青の年の生まれです。ターコイズさんはハナダさんの7歳年上、ということになります。

P_PingOZ @P_PingOZ

宝石のお名前をつけるという命名方法は、そちらにもあると聞きました！　こちらでも、ヒスイさん、ダイヤ（金剛）さん、瑠璃さんは、男女ともにとても人気です。

P_PingOZ @P_PingOZ

さて！　9月の更新もご覧いただいて、とてもありがとうございました。次回は11月を予定しています。配信のアーカイブができたら、またお知らせしますのでそれまでゆっくりお待ちください。

P_PingOZ @P_PingOZ

それでは、P-PingOZ広報のドロシーでした。またね！