ツイート数の関係上、に誕生祭2021内には入れられないので別にさせていただきます…
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syakeP@アイジニアンソロ参加 @syake_chunithm

#依田芳乃 #遊佐こずえ #依田芳乃生誕祭2021 #依田芳乃誕生祭2021 #依田芳乃誕生日 芳乃お誕生日おめでとう! のわーるのんとブランこずえちゃんの妄想小説を送ります 『Part Of My World』

2021-07-03 00:03:00
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仄暗い海の底 暗くて静かな世界で静かに揺れる太陽の光を、大きな何かが遮った 「こずえー……あれ、ほしいー……」 グシャッ ひしゃげたような音を立てて、海を征く船は物言わぬスクラップへと変わり果てる

2021-07-03 00:14:48
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冷たい水に逃げ込んで、空気を吸おうと海面でもがく者たちも一人、また一人と海中へ引き摺り込まれていった 「また、帰ってこない……これで何度目だ」 海運業を営む男は水夫たちに怒鳴りつける 「お前たちは荷の価値がわかっているのか?」 「社長、御言葉ですが」 「なんだね依田君」

2021-07-03 00:14:49
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「船員が皆怯えています。あるものはクラーケンだ、あるものは海坊主だ、またあるものは……」 「馬鹿馬鹿しい、この時代にもなってまだそんな迷信を」 社長は長いため息を吐く 「大体どうやって鉄の貨物船がそんな生き物に潰されるというのかね」 茶々に臆せず船長は続ける

2021-07-03 00:14:49
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「……またあるものは、邪神ではないかと」 「はぁ……邪神か、なら神頼みでもしてくるか?」 「神頼み、ですか?」 「君、親戚に巫がいるとか言っていたな」 「ありますが、あの子はまだ」 「構わん、どうせそんなもんいないんだ。安心が買えるなら安いもんだよ」

2021-07-03 00:14:49
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「ほー、怪物退治でしてー?」 「そうだ、うちの社長は甘く見てるが、あれは“いる”」 「見たのですかー?」 「あぁ、ちょうど近海を航行しててな、海の奥に残骸と人が浮いてたのを双眼鏡で見つけたんだ、黒い何かで一つずつ、静かに水の中へ引きずり込まれて……」

2021-07-03 00:14:49
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「もう、心配はいりませぬよー、わたくしがしっかりと導きましょー」 「ごめん、俺が何にも力がないばっかりに芳乃に」 「気にすることはありませぬー、それがわたくしの務めであるゆえー」 それでも頭を上げない男に芳乃はもう一度語りかける 「そなたには、そなたの務めがあるのでしてー」

2021-07-03 00:14:50
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「わたくしをそこまで送り届けていただけますねー?」 「芳乃が命を張るんだ、俺も賭けなきゃいけない」 「必ず帰るのですよー。二人で」 キーコキーコ 櫂で小さな舟が進んでいく 「音が、振動があの者を起こすのです」 という、芳乃の言によるものだった

2021-07-03 00:14:50
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外海に出たのにも関わらず波は驚くほど穏やかで全て芳乃の言葉通りだ そんな舟で行こうものならたちまち転覆すると進言したが彼女は問題ありませぬーと一言 海を知る俺よりも正確に予測する芳乃に化け物の住む海域へ行くというのにも関わらず謎の安心感を抱いていた

2021-07-03 00:14:50
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「この辺だ、ちょうど船が最後の信号を発した地点」 GPS、全地球測位システムによって割り出された「怪物のいる場所」で舟を止める 「感謝いたしますー。わたくしが降りてからはしばらく動かずにいれば、岸の方へ流されますゆえー。何が起きても静かにしているのですよー」 「あぁ、ごめん」

2021-07-03 00:14:51
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「謝るのはなしと言ったでしょー?」 「大丈夫でしてー」 「そなたにはまだまだやることがありますからねー」 「頼む」 「頼まれましてー」 「ではー」 スッと静かに波ひとつない海へと滑り込んだ芳乃 しばらく流されて見えるものは芳乃の白装束だけになった時 それが不意に死装束と重なってしまった

2021-07-03 00:14:51
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力はないくせにこういう嫌な想像は昔からどうしても当たる 引き止めようと声を出そうとすると振り返って「しー」と指を口の前に立てる芳乃 全てお見通しと言わんばかりの芳乃に、親戚の少女にただただ祈ることしかできない自分が情けなく暗い気持ちのまま呆然と舟と流されていた

2021-07-03 00:14:51
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「さて、出てきてくれますでしょうか」 かなりの透明度を誇る水の底 それでも見えない深淵に向けて海面を叩く さながら魚を釣る擬似餌のように はたしてそれは現れた ゆっくりと下から這い出てきた蛸の触手のような何かはまさしくクラーケンのそれで水底へと優しく案内してくれる

2021-07-03 00:14:51
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自分のものを壊れないように扱うかのように 優しく だんだんと光が届かなくなってくる 暗い世界に目が慣れてくると水底に沈む数々の船が見えた 時代も様々形状も多様なそれは収集され丁寧に手入れされている

2021-07-03 00:14:52
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フジツボ一つついていないそれらの中にキラキラと光る積荷がおそらくそのまま、沈んだ時のままに配置されているのでしょう 甲板に立つ人もまた同じように沈んだ時の形を留めている ぶくぶくと水にふやけガスでパンパンに膨れている以外は…… 「こずえの、これくしょんー……どうー……?」

2021-07-03 00:14:52
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声に振り向くと、ここへ誘った本人なのでしょう 呼び声と同じ可愛い声をした小さな子供がおりました 「こずえというのですねー、わたくしは依田の芳乃と申しますー」 「よしのー……?」 「そうでしてー」

2021-07-03 00:14:52
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「こずえねー、ひととおはなししたの、初めてー……よしのは、こずえとあそんでくれるのー……?」 「いくつか聞きたいことがありましてー」 「いいよー……こずえ、おしゃべりも、すきー……」 「どうして、こんなことをしてるのでしてー?」

2021-07-03 00:14:52
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「こんなことー……?おにんぎょうさんを、あつめることー……?」 「人形ですかー」 「にんぎょうだよー……おしゃべりもしてくれないし、あそんでもくれないのー……でもいろんなかたちで、たのしいんだー……」 「わたくしは、人形を集めるのをやめて欲しくて、ここへ来たのでしてー」

2021-07-03 00:14:53
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「んー……それは、いやー……」 「その人形たちは陸では歩いてしゃべる、人なのでしてー陸の人々は困っておるのですー」 「でも、なにもいわないよー……?」 「それは、沈められているから、人は水の中では生きられませぬー」 「そっかぁー……」 「──よしの、うそつきだねぇー……」

2021-07-03 00:14:53
syakeP@アイジニアンソロ参加 @syake_chunithm

こずえの目から友好的な色が消える こずえ、やめないよー……」 「どうしてもでしてー?」 変わらない表情に、話が通じないならと、切り替える 被害が出ている以上、慈悲は捨て去らねばなりません 「それならば、退治するしかないですねー」 キラリと光る刃物を取り出す

2021-07-03 00:14:53
syakeP@アイジニアンソロ参加 @syake_chunithm

鏡のように光を跳ね返すまで磨かれたその刀身をまずは足を縛る触手に滑らせる 「よしの、いけないこー……きずつけたら、だめなんだよー……」 「誰も、教えなかったのですねー」 その強すぎる力ゆえに誰も嗜められなかったのでしょう 無垢なる瞳はまるで蟻を潰すように船を、人を潰していく

2021-07-03 00:14:54
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「ここで、終わらせましょう」 刀を構えてこずえを間合いに捉える ドスッ 突き出した刃はこずえに届くことはなく 足を掴んだ触手に引き戻された それを切る暇もなく暴れ回る触手に岩に叩きつけられて芳乃の意識は遠のいたのだった

2021-07-03 00:14:54
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「よしのー……おきたー……?」 目を覚ますと生まれたままの姿でこずえと対峙していた 「こずえのものー……こわしたら、だめー……」 「ぜんぶ、とりあげたからねー……」 「これで、よしのも、こずえのものー……」 「いっしょにあそぶ……あそべー……」

2021-07-03 00:14:54
syakeP@アイジニアンソロ参加 @syake_chunithm

「一緒に遊んだら、人形は集めないでくれますかー」 「いいよー……にんぎょうよりも、よしののほうがおもしろいからねー……」 「ずっと、ずーっと、よしのはこずえといっしゃにあそぶんだよー……」

2021-07-03 00:14:54
syakeP@アイジニアンソロ参加 @syake_chunithm

それ以来その海域で船が沈むことはなくなった しかしそこでは今でも楽しそうな子供の声が響くという

2021-07-03 00:14:55

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