某100日後にタイトルを借りただけのラブコメ
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(朝斗) @Asatoiro

74日目 自分は彼女のサーヴァントなのだから、彼女の命令(要望)を叶えるのは正しい、異存はない。そういう契約だ。しかし、実際の所どうなのだ?嗜む菓子越しの視線ではなく、指先から届く鼓動ではなく、灰に埋もれた体内に灯る居心地悪い温もりは。「サリエリさん?」蜂蜜色の奥に答えはあるのか。

2020-02-02 15:48:22
(朝斗) @Asatoiro

76日目 藤丸立香は混乱していた。 彼のことは好きだ、周囲どころか本人にバレたのは仕方ない。その後も側に居させてくれる彼は優しい。迷惑でないならと甘えてしまった。以前よりべったりの自覚がある中、じっと目を覗き込まれた。綺麗な赤色。それが近づいてきて…唇同士が触れた?あれは夢だった?

2020-02-02 21:49:02
(朝斗) @Asatoiro

77日目 解決の兆しはなかった。触れた白磁の頬に薄く朱が乗るのも、顔を近づける程に逸る心音を聴き分けても、喉奥に蟠る感情、存在し得ないものの正体は不明。 しかし、蜂蜜色に見つめられるのは悪くなかった。繰り返せば針が進むかもしれない。見出すのは私でなく彼女に違いない――故に、今日も。

2020-02-03 18:33:30
(朝斗) @Asatoiro

78日目 尋ね返せればどんなにか早いだろう。どうしてこんなことを、何を思っているのかと。なのに、吐息が触れて、また体温が離れていくうちに頭が真っ白になる。 嫌われていないならいい。本当は利用されているのでも。好き、嬉しい。なんて狡い子なんだろう。 今日もひとり眠りがたい夜を過ごす。

2020-02-05 17:46:12
(朝斗) @Asatoiro

79日目 そんな中でギルくんが訪ねてきたのは誰の差し金なのか、外見に油断して不安を零したマスターを覗き込み「当て馬に配置されるのは不本意ですが、つまりこういうことですか?」反応が遅れた立香と、見目に反し妖艶さを醸す少年。その唇が触れる前に無言で肩を掴む、感情のひしめく柘榴石の瞳。

2020-02-06 11:50:10
(朝斗) @Asatoiro

80日目 人払いを終えた立香の部屋で二人きり、彼の行動に一番驚いているのは彼自身だった。「魔力供給ならば、お前が誰に触れようと構わない筈だ。見逃せないのは、我が病魔に侵されている為だ」不出来な死神なのだと躊躇って目を逸らす。横顔を見つめる、蜂蜜色が零れるほどに。「曰く――恋の病だと」

2020-02-07 18:27:18
(朝斗) @Asatoiro

83日目 べったりと言っても遜色なかった二人が別行動をしている。避けている様子はない、今日もお茶の時間を共に過ごしていたのは誰もが見ていた。今度こそふりだしだ、多くの者がそう思った。違うとすれば、どうやら正式にマイルーム専属になったこと。マスターの一日が彼のエスコートで始まること。

2020-02-08 12:53:23
(朝斗) @Asatoiro

84日目 消灯時間を過ぎたというのに不在のマスターを探すサ。食堂から何やら甘い良い匂いがする。「見つかっちゃった」フライパンを振りながら、内側には丸いキツネ色。「ぱっと作れるのなんてこれくらいしかないけど、もちろん一緒に食べていきますよね?」神妙に頷いて、手には二人分のマグカップ。

2020-02-09 19:42:09
(朝斗) @Asatoiro

85日目 食堂が騒がしい。アマデウスとニアミスを起こしているサ。あわや外装かと浮足立つ居合わせたサーヴァントたち。唯一平然としている天才音楽家の背中越しに割り込んでくる気づかわしげな声。「サリエリさん?」誰が振り返るより先に居心地悪げに背を丸める。「よかったら、お茶にしませんか」

2020-02-10 19:18:39
(朝斗) @Asatoiro

86日目 空き時間を借りてキッチンに立つ二人。泡立て器をゴムべらに持ち替えて、ふわりアマレットの匂い。「うまく出来そうかな?」オーブンを並んで覗き込みながら、いつかこれを得意レシピに加えようと微笑む、頬の端に感じる柔らかい視線。深紅の奥に琥珀色が揺れた気がしたのは気のせいだろうか。

2020-02-10 21:33:44
(朝斗) @Asatoiro

87日目 竜牙兵の一太刀を掻い潜り弦を爪弾く、揮う短剣に合わせて従者が引き金を引く。砂塵が掻き消えるのを見守ってサリエリが外装を解く。「お疲れさま!」真っ先に駆け寄る橙色に、口元が綻んで見えたのは錯覚ではない筈だ。ふらり、魔力の行使で揺れる足元を支える、その腕を甘んじて受け入れる。

2020-02-11 18:05:02
(朝斗) @Asatoiro

88日目 焚火を覗き込むマスターのすぐ側にどこからともなく現れた闇色のスーツの男。「眠れないのか」それには淡く笑みを浮かべてごまかして、「こうしていれば、貴方が来てくれるような気がしていたの」振り仰いだ両目は琥珀色を映す。「ねえ、手を握っていてもいい?」頷く代わりに手袋を解いた。

2020-02-12 21:36:24
(朝斗) @Asatoiro

91日目 鉄と煤の臭いに体躯を晒しながら焦土を見渡す。拾い上げた何かが耐えきれず中空で灰になる。まるで心象風景に似ている。腰に戻した短剣が熱い気がした。けれど、振り返る。頬に銀の影を浴びながら遠く輝く真円を真直ぐに見上げている。視線に気づき静かに振り返った。「そろそろ帰りましょう」

2020-02-13 21:48:05
(朝斗) @Asatoiro

93日目 娯楽室から聴こえるピアノと歌声を背に廊下を戻る。偶然向こうからやってきた赤髪の彼と目が合って肩を竦める。「入れ込むもんじゃねえって言ったろ」「薬師じゃなくて楽師なんだけど」やっぱりだめかなと傾げて、眼差しは真っ直ぐに。殿様が、マスターがそう決めたのなら。大きな口で笑う。

2020-02-14 21:33:39
(朝斗) @Asatoiro

94日目 室内は薄暗く、既に寝台に入っている。身動ぎの気配の後に小さくおかえりなさいと声がする。何と答えるのが正しいのか。仕方なく側に寄って前髪を梳く、枕を離れて伸びてきた指先を掬い取る。安心したのか再度呼吸が規則的に落ち着いて、体温と魔力を与えられながら僅かな時間だけ目を閉じる。

2020-02-14 22:22:30
(朝斗) @Asatoiro

95日目 引きずって行かれた先は娯楽室、ピアノの前。いつもよりは安定しているしと受け入れて、大人しく歌のレッスンを受ける。「こんな高い音、出ないよ…!」息切れの向こうで吊り上がる口の端。「お前ならいけるだろう?」意味深な視線に一気に顔まで熱くなる。「え、えっち!」抗議にも知らん顔。

2020-02-15 18:48:14
(朝斗) @Asatoiro

96日目 昼下がり、図書館の片隅。聴こえてくるのが規則的な呼吸音なのに気がついて隣の席に目をやれば、分厚い神話の本とともに意識まで手放している。我知らず苦笑を零し、頬にかかる髪を除けてやる。丁度通りかかったらしい司書と目が合えば、頬を赤らめて見ないふり。それにまた一人微笑む。

2020-02-17 20:01:15
(朝斗) @Asatoiro

97日目 どうもまた拗れているらしい。目は合わず言葉少な、と思いきやマスターは彼を気にしている様子。入口からマシュが呼んで、立ち上がって足を縺れさせる、その体躯を抱き留める。「  」忽ち顔を赤くして、一方の彼はすまし顔。食堂は賑やかだけど生憎僕には聞こえている。あの伊達男ときたら。

2020-02-18 20:50:23
(朝斗) @Asatoiro

98日目 そうしてもう二週間も蚊帳の外から眺めさせられた誰も彼もがじりじり息を詰めている。ねえあれ、指摘(ツッコミ)待ちなの?今まで通りのつもり?スルー推奨なの?連絡網に何と流せばいいのか。なるほど。と立ち上がったカルナさんが危なっかしくて全員で押し留める。一肌脱ぐなら巫女の仕事。

2020-02-20 21:33:47
(朝斗) @Asatoiro

99日目 「総決算に参りました」珍しい面子のお茶会に呼ばれても暢気な立香に突きつける。応援す(みまも)る必要の是非、真意の程。いつかのように「好きだよ」で済まされては堪らない。赤く染まった頬で見逃そうと口を開く…その腕を取る男の登場。「私のマスターを勝手に占領されては困るのだが」

2020-02-22 19:00:18
(朝斗) @Asatoiro

100日目 どちらともなく手を繋いで帰るマイルーム、寝台をソファ代わりに並んで、反して困惑しているらしい彼を見上げれば逃げ場もない。自分が分からない、これが正しいのか。悪化してはいないかと、それに立香は首を振る。そんなの自分にも分からない、けれど「わたしは…嬉しいよ」瞬きを数度。→

2020-02-23 20:55:53
(朝斗) @Asatoiro

分からなくてもいい、答えを定めれば何かが変(お)わってしまうかも。復讐者、サリエリ、灰色の男。だから誰でもない貴方として。朱に染まる頬を掬い、溜息と影が落ちる。 「明日の午前は待機だったな」「何をしてるの…!」「何をされたい?」その瞳で見つめられてとうとう言葉が途切れた。 【END】

2020-02-23 20:57:55
(朝斗) @Asatoiro

【蛇足後書】 というわけで『100日後に付き合うサリぐだ♀』 サブタイトル「実は80日目から付き合っていたサリぐだ♀」でした!最後20日間はひたすらいちゃいちゃを眺めた 長らくおつきあい頂きありがとうございました… と言いたいところですが80日目の詳細を短編にしてあるので引き続きどうぞ!↓

2020-02-23 21:01:44
(朝斗) @Asatoiro

「『100日後に付き合うサリぐだ♀』の付き合うことを決めた日のサリぐだ♀の話」全3枚 長らくおつきあい頂きましてありがとうございました! pic.twitter.com/UterIPaUwh

2020-02-23 21:07:05
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おまけ

(朝斗) @Asatoiro

先日の『100日後に付き合うサリぐだ♀』の50日目を切り出して短編にしました 配信見てくださった方ありがとうございました~ 『秘密の箱庭』① 全8枚 pic.twitter.com/bnu3k8fstf

2020-03-01 15:43:57
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(朝斗) @Asatoiro

② 前回の80日のやつと一緒にしぶにもまとめますね! pic.twitter.com/sQGYGx7ZXg

2020-03-01 15:45:32
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(朝斗) @Asatoiro

100サぐ♀リライトSS 4日目のはなし 1/2 せっかくなので表紙イラスト描いてくださった三月もらさん(@mola8181)に好きな場面選んで貰いました! pic.twitter.com/NUSBulJ1RS

2020-03-07 00:27:32
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(朝斗) @Asatoiro

2/2 針の筵or俎板の上のコイ(恋) 100日間の全貌はツリーに繋げます↓ pic.twitter.com/lPtx6OFZ26

2020-03-07 00:29:33
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(朝斗) @Asatoiro

×日後に付き合うサリぐだ♀的SS | 飛色 #pixiv pixiv.net/artworks/79851… 昨晩の4日目も追加しました! ついでに誤字修正も…

2020-03-07 11:48:38
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まとめたひと
(朝斗) @Asatoiro

ねじは吹っ飛んでるほうです。たまにまじめ。

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